ファシリテーションって何だろう?

MAILMAGAZINE
メルマガ情報

2018.09.07

ファシリテーションって何だろう?

■-TOPIC───────────────────────────────■
| まえがき
| 新連載:ファシリテーションって何だろう?
| 連載:アメリカ便り ESL/English as a Second Language
■──────────────────────────────────■

─■ まえがき
───────────────────────────────────────────
今回から、場づくりの技術である「ファシリテーション」について、三田地真実先生に解説をしていただけることになりました。

三田地先生から略歴メモをいただきましたので、紹介させていただきます。

大学卒業後、教員として働いた後、大学院に進む。その後、大学病院のST(言語聴覚士)として勤務した後渡米。アメリカのオレゴン大学教育学部博士課程修了。現在、星槎大学大学院教育実践研究科教授。教育・医療・福祉現場に 応用行動分析学とファシリテーションを普及することで、意味ある連携を促進したいと日々活動している。

 

───────────────────────────────────────────
─■ 新連載:ファシリテーションって何だろう?
───────────────────────────────────────────
「ファシリテーション」あるいは「ファシリテーター」という言葉も特別支援 教育が教育現場で定着するに従って時々聞かれることようになってい ます。 しかし改めて、「ファシリテーターって何をする人ですか?」と問われると、「うーん、何となく司会者みたいな役割?かな?」と曖昧な感 じになってし まうのではないでしょうか。

今回、5回にわたってこの「ファシリテーション」とはどういうことなのか、 「ファシリテーター」とは何をする人なのかということをお伝えしていきたいと思います。

特別支援教育の一つの大きな目玉は「校内で連携、校外の専門職や保護者との連携」して、児童生徒の教育的ニーズに合った教育・支援を行うことで、実際に校内委員会の設置率は公立小学校ではほぼ100%、公立中学校においても99.9%(いずれも平成28年、文科省データによる)になっています。しかし、実際に現場から時々聴こえてくるのは、「校内委員会はあっても、機能しない」という声です。

校内委員会に限らず、学校現場であれば職員会議、学年会議、その他様々な打ち合わせ、つまり人が集って話し合う場は沢山ありますが、「今日の会議は出席して良かったな」と思えるものはどれだけあるでしょうか。「時間を使って出席したのに、なんだったんだ?」と感じる会議は、言ってみれば「意味がない会議(話し合い)」でしょう。逆に、良かったなと思えるものは、その人にとってなんらかの効用・効果があったという意味で「意味があった会議」でしょう。

ファシリテーションとは一言で言えば、このような「意味のない会議」を「意味ある会議」に変容する技術と言えます。ファシリテーターとはそういう技術を駆使して、その場を意味あるものにする人のことです。実は司会者であって、かつ有能なファシリテーターでもある方も沢山いらっしゃいます。逆に議事を機械的に順番に進めていくだけの司会者もいます。前者はファシリタティブな司会者、後者はそうではない司会者とも表現できるでしょう。

ファシリテーターか司会者かではなく、その場で起きていることをよく観察して、どのように自分が振る舞えばその場が「意味あるものに」なるのかを考えながら行動できるのが、ファシリタティブな司会者と言えましょう。シンプルに表現すれば「成り行き任せの場」から「プロセスを調えた場」にするのがファシリテーターの役目です。

イメージとしては、荒地と整えられた畑のような感じです。ほっぽらかしていれば、土地も荒れ果てます。きちんと手を入れて整えることで、実りをもたらす畑として機能します。話合いの場もまさに同じなのですが、畑のように目に見えない「プロセス」を扱うために、成り行き任せになりやすいとも言えます。

※著者のリクエストで、荒地と整えられた畑のイメージを伝えられる画像を用意しました。
・荒地 (画像はこちら>>
・整えられた畑 (画像はこちら>>

それでは、実際にファシリテーターはどう行動すれば良いのでしょうか。これには、まず「意味ある会議」と「意味がない会議」と表現される会議に参加している人々の行動を整理してみることが肝要です。

ファシリテーションは「意味ある場になーれ」と言ってその場が変わるような魔法の杖ではありません。具体的に、その場で起きていること、つまりはその場の参加者の行動をしっかりと観察し、どのように自分が振舞えば、場が意味あるものになるのかを瞬時瞬時に考えて動くことが必要になります。次回は、代表的なファシリテーションのいくつかの技法についてご紹介しながら、ファシリテーターが何をする人かを具体的にご紹介したいと思います。

文献:「ファシリテーター行動指南書~意味ある場づくりのために」(中野民夫監修、三田地真実著、ナカニシヤ出版)(詳細はこちら>>

三田真実
(星槎大学大学院教育実践研究科教授、言語聴覚士)

 

───────────────────────────────────────────
─■ 連載:アメリカ便り ESL/English as a Second Language その2
───────────────────────────────────────────
前回に続き、アメリカで英語を母国語としていない子たちが現地校で英語の環境にスムーズに馴染み、学習環境を整えるための支援システム・ESLについて、今回は実際の授業例を紹介します。

英語を「英語で」学ぶときに重要なポイント、ご存知でしょうか。
英語に限ったことではありませんが、やはり、視覚化された教材はとても大きな助けになります。これは外国語教育のみならず、年齢の小さい子、それから障がいを持つ子供たちにも当てはまることですが、視覚化してあげるということは、理解力に大きく影響します。
まさに、「百聞は一見にしかず」です。

現在は各クラスルームに映像機器やタブレット教材が配置されている事も多いので、写真、絵、映像などをたくさん活用します。

まず、キンダーガーテン(小学校入学前の1年間の公教育)での授業例をあげてみます。
低学年の子たちには、理論で説明するアプローチより、まずは楽しい、やってみたい、と思ってもらえることが大切です。

教科書を持ち出すのではなく、ゲームや歌や一度は見たことがある本などを使って導入していきます。例えば、アメリカの子どもが必ず知っている”wheels on the bus”という歌があります。

※YouTube動画 Wheels on the Bus | Cocomelon (ABCkidTV) Nursery Rhymes & Kids Songs (動画はこちら>>

この、誰もが知っているであろう曲を使って、バスでのお出かけについて話そう、というテーマの授業です。

The wheels on the bus go round and round, round and round...
The doors on the bus go open and shut, open and shut...
The horn on the bus goes beep beep beep, beep beep, beep...

ここに出てくる名詞(wheels, doors, horn)とそれに繋がる動詞(round, open and shut, beep)が導入したい単語です。タイヤ=回る、ドア=開く・閉まる、クラクション=ビーッと鳴る、という具合です。

名詞と動詞は文を作るのに必須なので、単語のみの会話から文章を話せるようになるための勉強です。そしてgoが付く名詞によってgoesにもなります。

次に、6年生での授業例です。
この頃になると、私たち日本人が中学校で受けたような英語の授業に似てきます。
比較の文法を教えるのに「Russia is bigger than Italy (ロシアはイタリアより大きい)」「Japan is as big as New Zealand (日本はニュージーランドと同じくらいの大きさだ)」と、既に6年生の生徒が知っているであろう(もしくは、視覚補助教材があればすぐに理解できるであろう)知識を織り交ぜながら、例文をたくさん使ってbig-bigger-biggestやas big as?という比較を表現するための文法を学んでいきます。

他にも、リーディングに特化したクラスがあったり、同じ母国語を話せる子とペアにして助けてもらえるようにしたりなどの対応があることもしばしば見られます。長い夏休み中も、英語力が落ちないようにクラスを無料で開講してくれたり、有料だけれどマンツーマンの指導をしてくれる地域もあります。人口の多い都市で、多様な人の集まっているところ程、サービスが充実していることが多いです。

アメリカでは、どうしても学力の進み具合が順調に行かない場合には、義務教育中であっても留年するという選択肢もでてきます。(学校側から言われることもあるし、親の方から英語力をしっかり身につけたいから1年遅らせたいと要望を出すこともできる)

英語力の進み具合によっては、高校卒業までESLから卒業できないと言うこともありますが、大学進学の際にも留学生扱いとは異なり、ESL学生専用に貸与型奨学金の枠がある学校もあるので、必ずしもネイティブの様に英語ができることだけが全てではありません。
この国で暮らしていく為に、自分らしさを表現できる様になる為の語学力をつける。
それがESLの1番の目的なのではないかと個人的に思います。

母国語訛りがあるから。
文法が完璧じゃないから。
一語一句聞き取ることができないから。
英語が母国語でないことを後ろめたく感じさせるのではなく、どう自己表現、自己実現をしていくのか、そういった事を大事にするにも多民族国家の大切な教育の一つです。

この9月から、新しい学年で学んでいる沢山のESLのEnglish Language Learnerにとって、今年度も実り多い一年になることを願ってやみません。

礒恵美(いそ めぐみ)

─■ あとがき
───────────────────────────────────────────
台風と地震、立て続けの自然災害に遭われた方々に、心よりお見舞い申し上げます。一日も早く、通常の生活水準に戻ることを祈念申し上げます。

次回メルマガは、9月21日(金)の予定です。

メルマガ登録はこちら

本文からさがす

テーマからさがす

全ての記事を表示する

執筆者及び専門家

©LEDEX Corporation All Rights Reserved.