さっちゃんの まほうのて

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2011.01.21

さっちゃんの まほうのて

あと2カ月で今年度も終わり。その関係なのか、国の研修や公的プロジェクトの発表会が目白押しです。筆者も、国立特別支援教育総合研究所が開催するセミナーに1月27日28日の2日間参加します。テーマは「特別支援教育のさらなる進展へのチャレンジ-学習指導要領改訂にあわせて-」。国の障がい者支援の方針が大きく変わろうとしている中で学習指導要領が改訂され、それに基づいて、特別支援学校や特別支援学級、通級などがどのように変わるのかを学んできます。その報告を次号以降のメルマガで紹介する予定です。

平成22年度国立特別支援教育総合研究所セミナー1
http://www.nise.go.jp/PDF/H22semmner1_annnai.pdf

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【目次】
(1)障害者自立支援法等の一部を改正する法律
(2)mayaさんの「スクールカウンセラー奮闘記」12
(3)おすすめコンテンツ「さっちゃんの まほうのて」

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(1)障害者自立支援法等の一部を改正する法律

昨年12月3日に障がい者自立支援法の改正案(正式名称:障がい者制度改革推進本部等における検討を踏まえて障害保健福祉施策を見直すまでの間において障害者等の地域生活を支援するための関係法律の整備に関する法律)が参議院で民主党・自民党などの賛成多数で可決され、成立しました。

障害者自立支援法違憲訴訟原告団・弁護団と国(厚生労働省)との基本合意文書(2010年1月7日)に反した内容との批判があることは周知の通りです。
ただ、国の法律として成立したことは事実であり、それが施行されることでどのようなことが起きるのかを知っておくことは必要と考えます。そこで、今回は、改正された法律の概要について紹介したいと思います。

(1) 利用者負担の見直し

ア.利用者負担規定の見直し
従来の障害者自立支援法では利用するサービスの費用の1割を支払う「応益負担でした。それを利用者の家計の支払い能力に応じた「応能負担」としました。※利用者の家族の家計を含めるかどうか、また、1割負担が本当になくなるのか、という指摘があります。

イ.利用者負担の合算
従来、別々に上限が設けられていた障がい福祉サービス費用と補装具費用が合算した形で上限が設定され、負担が軽減されました。

(2) 障がい者の範囲の見直し

ア.障がい者の範囲の見直し
発達障害者支援法に規定される発達障害が対象に含まれるようになりました。つまり、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥・多動性障害です。※高次脳機能障害など他の障害が今回は含まれませんでした。

(3) 相談支援の充実

ア.相談支援体制の強化
地域における相談支援体制を強化するために、基幹相談支援センターを市町村に置くことができるようになりました。

(4) 障がい児支援の強化

ア.支援体制の一元化
障害種別に分かれていた施設を一元化します。また、通所サービスの実施主体を市町村にします。

イ.放課後等デイサービス事業の創設
表題の事業を創設します。また、20歳まで利用できる特例を設けます。

(5) 地域における自立した生活のための支援の充実

ア.グループホーム・ケアホーム利用の際の助成の創設
必要と認めた人には食費または居住費に対する特別給付を支給します。

イ.重度の視覚障がい者の移動支援の個別給付化
移動支援を「同行援護」として自立支援給付の対象とします。

(6) その他

ア.精神障害の救急医療の体制の整備
都道府県は表題の体制の整備に努めます。

ただし上記各項目の施行の日は異なります。(2)はすでに施行。(3)(4)は2012年4月1日からです。それ以外は政令で別途定めて施行されます。

なお、今回まとめた内容は、厚生労働省が法律成立前に出した法律案の解説ページを参考にし、それを参議院ページにある法律の全文で確認しながらまとめました。

厚労省ページ「障害者自立支援法等の一部を改正する法律案の概要」
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/soumu/houritu/dl/171u.pdf

参議院ページ http://bit.ly/gXvRfC

障害者自立支援法違憲訴訟原告団・弁護団と国(厚生労働省)との基本合意
文書 http://bit.ly/cRdHVj

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(2)mayaさんの「スクールカウンセラー奮闘記」12

<これまでのあらすじ>
アスペルガー症候群の状況と推定され小学校1年からずっと教室に入れず、休み休みながら保健室への登校を続けてきたA子。中学校に入学し、なんとか教室登校からスタートしましたが、2学期からは教室に入ることが難しくなり、校内の別室「ふれあい教室」から少しずつ授業への参加を始めました。
1年3学期が終了する頃には、午前中の授業に参加できる程度の持久力がついてきました。2年生になり少しずつ自分と向き合い始め、進路を考えるようになりました。3年生になり、専門学校への進路を自分で決意し、受験準備に嫌々ながらも取り組み始めました。

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3年生の7月、A子は専門学校のオープンキャンパスでの見学を終えて、専門学校を進路とすることを決意しました。決め手は少人数であったこと。やはり小人数での授業風景に、安心感が抱けたことが大きかったようです。直接見学に行けたことは、進路決定を飛躍的に進める結果となりました。

通信制高校のサポート校を兼ねる専門学校をめざすことが決定したことで、新たな問題が生じてきました。それは専門学校の受験準備です。何故、専門学校の受験に準備が必要かというと、受験時の成績が良いと特待生として、入学金・授業料が半額に減額されるからです。ことの発端は、見学の際に専門学校の校長との面談の際に、「とても真面目で模範的な生徒さんですね!受験時の成績が良ければ特待生で受け入れます。」と提案されたのです。A子の両親も入学金や授業料が半額になると聞いて、なんとか特待生で入学して欲しいということになったのです。

A子は両親に頼まれて、嫌々ながらも受験準備をふれあい教室で少しずつ始めました。これまでは、“読み書き計算の基礎を身に付けておけばいいよ”と言われていたのに、いきなり“特待生をめざせ!”では混乱するし、不安も抱えてしまいます。予想通り、A子から「もう、特待生の受験を止めたい」と訴えがでてきました。SCは“どうせ受験はすること。特待生になれるかどうかは、専門学校が決めること。だからA子はやれることをやればいい。どんな結果が出ても、怒る人はいないからね。”と繰り返し話し合いました。
次第にA子の不安感や焦りは小さくなっっていきました。

この頃から、受験のための問題集(公立高校過去問)にも、取り組む時間を少しずつ持てるようになりました。しかし、応用問題を解くことは困難なので、各教科の基礎問題を中心に取り組むという枠組みを設定して、その範囲の問題に限定した取り組みを進めました。A子も、「これならできるよ」と言いながら少しずつチャレンジしてくれました。

このように、本人が“やる気”になってくれても、本人の能力に合わせて、課題設定を調整することが、取り組みの継続を可能にするための重要なポイントとなります。支援者による環境調整が重要なのです。

次回は、専門学校への受験に向かって、A子が苦手とする面接試験への準備を進める取り組みの様子を紹介してゆきます。
(文責:maya)

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(3)おすすめコンテンツ「さっちゃんの まほうのて」

今年度の青少年読書感想文全国コンクールの受賞作品として毎日新聞で紹介されました。その題材の本「さっちゃんの まほうのて」を読んで大変感動しました。そこで、本と感想文を紹介させていただきます。

さっちゃんは生まれつき右手の指がありません。幼稚園でのままごと遊びでお母さんの役をやるといった時に、友だちから「さっちゃんはおかあさんにはなれないよ!だって、てのないおかあさんなんてへんだもん。」と言われショックを受けて幼稚園を飛び出してしまいます。そして、家に帰って、お母さんに指が生えてくるかと質問します。すると
「ずっと、いまのままよ。でもね、さっちゃん。これが さちこの だいじな だいじなて なんだから。おかあさんの だいすきな さちこの かわいい かわいいて なんだから…。」

おかあさんに弟が生まれます。その病院の帰り道、手をつないだお父さんは
「さちこと てを つないで あるいていると、とっても ふしぎなちからが さちこのてから やってきて、おとうさんのからだ いっぱいに なるんだ。さちこのては まるで まほうのてだね。」

「さっちゃんの まほうのて」 http://bit.ly/hO7coW

田畑精一・先天性四肢障害児父母の会共同制作、1985年10月発行、偕成社、
B5判40ページ、1200円(税別)

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コンクールで大阪市長賞を受賞した大阪市立苅田小3年・伊藤樹くんは、幼稚園の時に高機能広汎性発達障害と診断されています。伊藤くんはこの本を読み、自分の経験を思い出して、作文を書きました。

先生から「そつ業までに、みんなと同じことができるように、みんなの倍がんばるんやで」と言われました。「今のぼくのままやったら、あかんってこと?」と、目の前が真っ暗になりました。障がいを持っていても、生まれた時から、これがぼくです。さっちゃんも、指がなくても、それがさっちゃんです。(中略)「さっちゃんの まほうのて」を、たくさんの人に読んでほしいです。そして、みんなで「障がい」のことを考えていきたいと思います。

毎日新聞記事
http://mainichi.jp/area/osaka/news/20110114ddlk27040361000c.html

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日本で最初にできた重症心身障害児療育施設、島田療育センター(東京・多摩センター)で公開シンポジウムが2月6日(日)に開催されます。テーマは、障害に対するコミュニケーション支援-AT(支援技術)の応用。中邑賢龍・東大先端科学技術研究センター教授の講演とパネルディスカッションが行われます。加藤仁道・多摩桜の丘学園主任教諭、中島重則・情報ボランティアの会(八王子)代表、岸野栄一・島田療育センター理学療法科長と共に、筆者も登壇し、デモとお話しをさせていただきます。その内容は、本メルマガでおなじみ mayaさんの、広島市立小中学校での実践の紹介です。

島田療育センターでは昨年6月にこども脳機能バランサーを購入いただき、それ以来、活用いただいています。関係者の理解を深めたいと10月に勉強会を催していただき、副院長以下、多数の方々に筆者の話しを聞いていただき、今回のパネルへの登壇要請となりました。

無料で定員100名です。関東在住の方、よろしければぜひご参加ください。

http://www.shimada-ryoiku.or.jp/info/H22sympo.html

次号は、2月4日(金)です。

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