0~2歳の成長と運動遊び 有害なストレスを成長のためのいいストレスにする

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2024.06.14

0~2歳の成長と運動遊び 有害なストレスを成長のためのいいストレスにする

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■   連載:0~2歳の成長と運動遊び
■□  連載:有害なストレスを、成長のためのいいストレスにする
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■ 連載 乳幼児に大切な運動って?!
     第2回 0~2歳の成長と運動遊び
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前回は0~2歳までは移動運動の技能獲得の時期ですよという話をしましたが、今回はこの時期の子どもの身体と運動発達について考えてみましょう。
「0~2歳」ってまだまだ一人で何もできない時期ねと思うかも知れませんが、生活習慣の獲得という視点から見るとまだまだですが、身長や体重の変化が生涯にわたる発達の中で最も大きく、運動面の発達も著しい時期になります。したがって、この時期に身体の発達に応じた運動遊びをすることが大切になります。

身長は出生時およそ50cmから1歳までにおよそ1.5倍の約75cmになります。一方、体重は出生時にはおよそ3kgから1歳ではおよそ3倍の約9kgになります。身体の組織の発育によって4つの型(一般型、神経系型、リンパ系型、生殖器型)に分類し、20歳(成熟期)の身体の発育を100として各年令の値を割合で示したスキャモンの発育曲線※によると、神経系型は、乳児期に最も急速に発育し、2歳で約60%、6~7歳で約90%になります。そのため、感覚(知覚)と運動の協調動作である運動コントロール能力を向上させるのに最適な時期であり、幼児期ですでに大人と同じような多様な動きのレパートリーを獲得できるのです。
また、体格の発達に着目すると、年齢とともにプロポーションの大きな変化が見られます。出生時に4頭身であったプロポーションが、2歳で5頭身、6歳で6頭身と成人に近づいていきます。このことから乳幼児は大人に比べて頭が大きく、手足が短く、重心も高い位置にあることが分かります。そのため、バランスが悪く不安定です。

※スキャモンの発育曲線

運動の発達をみていくと、3か月を過ぎると首がすわりはじめ、腹ばいにすると顔をしばらく上げていられるようになります。これは凄いことで、視界が変わるのですよね。寝た状態の視界の範囲は天井だけれど、腹ばいになって顔を上げると見える風景は一変します。床に落ちているものは、大人にとってゴミやほこりであっても、子どもにとっては初めて見る興味深いものなのです。

移動運動という全身運動より微細な動きで手指の動きがあります。3か月頃には目の前のものに触るだけだったのが、4~5か月になると手のひらと指でわしづかみにできるようになり、8~9か月には手のひらと指でつかむことができるようになり、10~11か月になると親指と人差し指でつまむことができるようになります。

1歳過ぎた頃に、目を離したすきにティッシュ箱からティッシュペーパーを1枚2枚と次々に指でつまんで引っ張って楽しんでいる子どもを目にすることがあります。大人にとっては困ったイタズラでも、子どもにとっては微細な指の動きができるようになったという進歩であり、大人と同じようにティッシュ箱からティッシュペーパーを指でつまんで引っ張ることができるようになったという学びにもなるのです。子どもの手指の発達を喜んで、1箱は勘弁してあげてくださいね。2箱目からはイタズラされないところにティッシュ箱を置きましょう。また、最近はティッシュ箱の玩具も販売されています。

そして、2歳頃には、それぞれの指を別々に動かすことが可能になり、指で「ひとつ」「ふたつ」を作ることができたり、指先をコントロールして円や点、線などを描いたりできるようになります。お絵かきの始まりかな?クレヨンを持ったら、あらゆるところに描き始めますよ。床や壁に子どもがいつでも絵が描けるように、模造紙を貼るのも一つの工夫ですね!(笑)

※手指の基本動作の発達 出典:「新訂 事例で学ぶ保育内容 領域 健康」、2019、p.47
 
全身運動では、4~6か月で仰向けの姿勢からくるりと回転して寝返りをできるようになり、6~8か月にはまだハイハイはできませんが、あとずさりができるようになり、お座りしておもちゃも持てるようになります。こうなると床に置かれたものや落ちているものは、すべて子どもにとっては興味深いものになり、それを手のひらと指でつかみ、五感を使って、「それが何なのか」を理解していきます。見て(視覚)、聞いて(聴覚)、触って(触覚)、舐めて(味覚)、嗅いで(嗅覚)という行為です。視覚で発見したものを触ってみてぬいぐるみなどの柔らかい触感が心地よいものは顔などに近づけ頬ずりしたり、見つけたものを拾って何でも口に入れたりします。これはヒヤッとしますよね。

8~11か月でハイハイができるようになり、つかまり立ちをするようになり、支えられて歩くこともできるようになります。この時期の子どもは、ハイハイで自分が興味を持ったところに移動が可能になり、またつかまり立ちすることで、視線が高くなり視界が広がっていきます。そうなると、危険がいっぱい!歩行器に乗せたり、柵で遊ぶ場所を制限したりしてしまいがちです。

この後、12か月~1歳6か月でひとり立ちし、ひとりで歩けるようになります。移動運動の技能と知的能力は相互に密接な関連を持ち、相互に影響を及ぼし合いながら発達しています。こんな事例があります。2歳になり保育園に入園したA児は、入園時に顔にケガをすることが多くありました。父親が「家では顔にケガをすることはなかったのに、保育園ではなぜケガをするのか」と園に言ってきました。保育士は顔のケガの原因は歩いていて転ぶときに手をつかず、転んでしまうことにあると考え、父親に家では同じようなことがなかったかを聞いてみたところ、小説家の父親は自身の仕事場に1m程の柵で囲まれた中にA児を入れていたので、転ぶようなことはなかったと返事が返ってきました。

A児は狭い範囲での移動しか経験していなかったので、転んでも手を出すことができなかったのです。腕の筋肉を使って身体を支えるハイハイすることで、頭や顔を床にぶつけないようにするという経験をしているのですね。つまり、腕と足を連動させるハイハイの動きは、「ケガから身を守る力(安全能力)」につながっているのです。

狭い家の中で、子どもがハイハイしたり、歩いたりするスペースを確保し、その中にあるものにアクセスする環境を作ることは容易ではないかもしれませんが、子どもが自由に移動して遊べるように、部屋の中の家具の配置などを工夫することが大切ですね。
子どもの手が届くところには、危険なものは置かないようにします。手指の動きができるようになると引き出しなども開けていきますので、そんな子どもの手の届く引き出しには子どもの玩具を入れておくのもいいですね。いつもそこに○○が入っていると分かると、片付けができるようになった時にその引き出しにしまう行為もできるようになりますよ。

 子どもの運動の発達を理解すると、大人がイタズラだと思っていたことも、子どもの発達には大いに重要なことだということが分かるのではないでしょうか。このような例があります。4歳のB児がカプラ※を積み上げ、塔を作っていると、1歳のC児がハイハイをして近づいてきて、その積み上げたカプラに手を伸ばして触り、塔を崩してしまいました。カプラは「カラ・カラ・カッシャーン」という軽やかな心地よい音がしました。この音にB児の意欲がかき立てられたのか、B児が再びカプラを積み上げると、C児は再びハイハイして塔に近づき、手で触りカプラの塔を崩しました。崩すという遊び(行為)がしばらく繰り返されました。

※カプラ フランス生まれの長方形の積み木。皇室の愛子様が子どもの頃に使っていたことで話題になりました。

移動運動の技能を獲得した子どもは、まっすぐ目標に向かったり、興味をひかれているものに近づいたり、自分の意思で世界を広げていきます。子どもは新たな技能を身につける喜びと自信を得て、有能感をもつようになります。大人は子どもが自分の身体を通してものごとを理解する生活(遊び)を見守ってあげましょう。

◆土井 晶子(どい あきこ)
学校法人藤村学園 東京女子体育大学・東京女子体育短期大学
こどもスポーツ教育学科(保育内容研究室) 


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■ 連載:ADHDセルフケア物語
     第4回 有害なストレスを、成長のためのいいストレスにする
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皆さんは「いいストレス」と「有害なストレス」があるのをご存知ですか?ストレスは悪いもの、という印象が強いかもしれませんが、いいストレスもあります。
たとえば、難しい課題の締め切りまであと10分しかない!という状況でストレスを感じながらも、やる気スイッチが入ったり、集中力が高まって何とか仕上げた、という経験があるかもしれません。ほかにも、テストを一夜漬けで乗り切ってきた方もいらっしゃるかもしれません。

このように切羽詰まってからようやく集中力を発揮して、何とかするというのはADHD系の人に多く見られるパターンです。ADHD系の人は脳の報酬系に課題があり、なかなかやる気スイッチが入らないため、このような傾向になりやすいといわれています。

このような追い込まれた状況で、ストレスは火事場のバカ力を発揮するための強い味方になってくれます。ほかにも、プレゼン前の心臓がドキドキしている状況を、緊張して力が発揮できないかもしれないと考えるのではなく、体も頑張って準備してくれている、だからいける!などとプラスに解釈することで、能力を発揮しやすいといわれています。あるいは、少し難しい課題をこなしていくことで自分の実力がアップしたという場合も、いいストレスといえるでしょう。

ですが、このような一夜漬けや火事場のバカ力は毎日続くでしょうか?そうです、それを何日も続けていたら、体がストレスホルモンでボロボロになってしまいます。「実力+1」の課題を与えられたとき、私たちは成長しますが、先が見えない状況の中、「実力+1」をこえる難しい課題を、誰のサポートも受けずに続けていくというのは、心身に悪影響を及ぼす「有害なストレス」となります。

「教育虐待」という言葉を聞いたことがある方もいるかもしれません。お子さんに合っていない課題を、「あなたの将来の幸せのため」といって、ただただ頑張らせるというのは、有害なストレスになることが多いです。これを学校や学童クラブなどでやれば、教育マルトリートメントとも言えますね。

私は教育者として、親として大切なことは、目の前にいる子どもに対して、その子の「実力+1」、つまり「いいストレス」を与え、達成感を与えることだと思うのです。一斉授業が問題であるということは、不登校の人数を見ても明らかです。同じ課題を、同じ教え方でクラス全員に押しつけることは、決していいことではないと思います。

多くの先生もそのことに気づいているのですが、なぜかやめられない。ここには色々な理由があるでしょう。親も実は同じなのです。自分の子どもであっても、うまくいく条件は違います。よく「同じように育てているのに、上の子と違って下の子はうまくいかないんです」とおっしゃる方がいますが、よく考えてみると、同じように育てているからうまくいかないんですよね。早くそのことに気づいて、教育虐待にならないように、そして子どもたちが過剰適応にならないよう育ってほしいなあと常に思っています。
学校などに適応する練習は確かに大切ですが、本来の自分を強く抑圧してまで適応することは、精神疾患の原因にもなり、その子のためにはなりません。それぞれの子がうまくいく条件を探し、その子の良さを引き出して自己実現できるようにサポートしたいですね。

発達障害(ADHD、ASD)や愛着障害、発達性トラウマなど、いろいろな診断名がありますが、オールマイティに支援できる、いくつかの基本的な概念があります。前回までにお伝えした問題解決力やポリヴェーガル理論(安心・安全)というのはその1つです。それらを、私の当事者の視点で、実生活に応用するためのポイントを随所に入れた講座をアーカイブで配信します。

キーワード
・神経心理ピラミッド
・ポリヴェーガル理論
・SOSを求める
・合理的配慮の活用法
・2つのセルフエスティームの違いと過剰適応の防止
・問題解決力 など

えじそんくらぶの第21期 夜間講座5回分の総集編で、『発達障害の人が自己実現力をつける本 社会に出る前にできること』という本のエッセンスを網羅した講座です。まだ知らないキーワードが1つでも入っていたら、ご参加をお勧めします。

離島等からの参加もあります。ぜひ多くの支援者や保護者の方に、お子さんのうまくいく条件を探して提供してほしいと思います。特に発達障害のあるお子さんには、「アンバランスのまま育てる」「真のセルフエスティームを高める」ことが、何より重要です。過剰適応しないために何が必要か、具体的にお話しますので、よろしければご参加ください。

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第21期第6回 総まとめアーカイブ配信講座  
・第1回~第5回までの内容を講義形式でお伝えします。

【日程】録画配信日(6月28日の予定)から2週間限定配信

【講師】高山恵子/NPO法人えじそんくらぶ代表。臨床心理士。薬剤師

【対象】 
ADHD等発達障害のある方、その傾向のある方、そのご家族、支援者、学生(高校生以上。親子で参加する場合は小中学生も可能です)。
2E、ギフテッド、自己理解・他者理解、合理的配慮などに興味のある方。

【テキスト】
『発達障害の人が自己実現力をつける本 社会に出る前にできること』
(高山恵子 講談社 税込1,650円)

【参加費】1回分 会員 /学生 1,500円 一般2,500円

詳細・お申込み
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◆高山恵子 
NPO法人えじそんくらぶ代表。臨床心理士。薬剤師。
昭和大学薬学部 兼任講師。
アメリカトリニティー大学大学院修士課程修了(幼児・児童教育、特殊教育専攻)、同大学院ガイダンスカウンセリング修士課程修了。
児童養護施設、保健所での発達相談やサポート校での巡回指導で臨床に携わる。
AD/HD等、高機能発達障害のある人のカウンセリングと教育を中心に、ストレスマネジメント講座等、大学関係者、支援者、企業などを対象としたセミナー講師としても活躍中。また、中央教育審議会専門委員や厚生労働省、内閣府などの委員を歴任。
これまでの経験を生かし、ハーティック研究所を設立。最新刊『発達障害・愛着障害・小児期逆境体験(ACE)のある親子支援ガイド』(合同出版)等、著書多数。


■□ あとがき ■□--------------------------
次回は、6月28日(金)の刊行予定です。
 
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