お茶でセルフケア~ポリヴェーガル理論の実践として~ 子どもの発達を支える専門家:リハビリテーション職

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2024.05.31

お茶でセルフケア~ポリヴェーガル理論の実践として~ 子どもの発達を支える専門家:リハビリテーション職

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■   連載:お茶でセルフケア~ポリヴェーガル理論の実践として~
■□  コラム:子どもの発達を支える専門家:リハビリテーション職
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■ 連載:ADHDセルフケア物語
     第3回 お茶でセルフケア~ポリヴェーガル理論の実践として~
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皆さんの好きな飲み物はなんですか?私はコーヒーではなく、緑茶・紅茶派です。5月中旬になると、いよいよ狭山茶の新茶が店頭に出てきます。えじそんくらぶの事務所がある埼玉県入間市は、日本一狭山茶の生産量の多いところです。隣の狭山市より多いというのは面白いですね。大小30以上のお茶屋さんがあり、それぞれこだわりのお茶を作っています。

お茶は温度により出てくる成分が違い、カテキン、テアニン、カフェイン、アミノ酸などのバランスによって味や香りが変化します。私のセルフケアの中で、お茶を入れて飲む時間はとても大切です。熱湯を少し時間をおいてさまし、そのお茶にあった適温にする。そして抽出時間も、お茶の個性を引き出すために試行錯誤という感じです。

お茶を飲むときにいつも思うことは、「人の才能の引き出し方も一律ではない」ということです。その子にはその子の能力があり、それを生かすも殺すも環境といえます。環境には親や支援者、友人、である皆様も含まれます。お茶でさえ、そのお茶にあった条件を整えるですから、子どもにもどんな環境や条件が適切なのか、いろいろ探っていきたいものですね。

私は30代でADHDとめでたく診断され、リタリンを処方されました。いろいろあって飲めなくなり、自分の能力を最大限引き出す方法を自分で研究しました。そして結局、セルフケア・ストレスマネジメントがまず大切という結論に達しました。

研究では、ADHDには認知行動療法が有効といわれることがありますが、すべての人に効果があるわけではありません。皆さんは、どんなタイプの方に効果が期待できないか、おわかりですか?

認知行動療法は、本人が不安などの感情や、遅刻などの問題行動と向き合うことが必要とされます。そのため、ストレス状態や疲労しきっている状態だと、認知が歪んでいたり思考力が低下していたりする可能性があり、継続して治療を受けることが難しいのです。ストレス状態、疲労しきっている状態では、学習も困難ということが感覚的にわかると思います。ですから何よりリラックス状態、つまり安心・安全の感覚が重要な土台なのです。

ところで皆様は、ポリヴェーガル理論をご存知ですか?ポリヴェーガル理論はここ数年、臨床心理の分野で注目されていますが、教育現場でも有効活用できると感じる方が増えています。

ポリヴェーガル理論は脳神経学者スティーブン・ポージェス博士によって1994年に提唱された、自律神経に関する神経理論です。一般的に自律神経には交感神経と副交感神経があり、リラックス状態のときは副交感神経が働き、活動したりストレスがかかったりすると交感神経が働く(逃走か闘争)と考えられてきました。ですが、副交感神経は進化のプロセスで異なる2系統にわかれており、自律神経系は3つの階層構造になっていると説明したのがポリヴェーガル理論です。

ストレス反応として有名なのは「逃走」か「闘争」かの2つですが、他にも「固まる(フリーズ)」というのがあり、これが一番強いストレス反応です。これを引き起こしているのが、2つの副交感神経のうちのひとつ、背側迷走神経系とされています。逃走も闘争もできず、動けなくなる状態はトラウマ患者の状態像をよくあらわしているということで、トラウマ治療の専門家に注目されてきました。

トラウマの原因はさまざまです。中でも発達障害と関連が深いのは、愛着障害でしょう。愛着障害はADHDとASDに似たような特徴を示すことがあり、これらとの鑑別が課題になっています。愛着障害が原因で多動、不注意、衝動性があらわれる場合はメカニズムが違いますので、ADHDの治療薬が効かないことが多いです。このようなときはトラウマの存在を意識する必要があり、ポリヴェーガル理論はその対応法として有効です。

また、副交感神経のもう一方である腹側迷走神経系は社会交流に関する役割を果たすといわれています。ここに、セルフケアが関わってきます。セルフケアやストレスマネジメントでリラックスし、安心・安全の感覚を感じることで、闘争や逃走、フリーズではなく人間らしいかかわり(落ち着いた話し合いなど)ができるようになるのです。 

ポリヴェーガル理論では、環境が安全・安心と感じられるか、危険と感じるかで3つの自律神経系が切りかわると説明されます。環境、つまり皆様の声がけや態度がとても重要である理由がわかっていただけるかと思います。

えじそんくらぶでは、この分野の第一人者のお一人である浅井咲子先生の講座を企画しました。ぜひ皆様も支援の幅を広げるために、新しい理論を学んでみませんか?どのようにすればご自身やお子さん、生徒さんが安心安全がえられるか、多くのヒントが学べると思います。

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第23回 令和6年度 えじそんくらぶ定期総会後講演会

「発達性トラウマや愛着の問題へのポリヴェーガル的ケア」

愛着障害や発達障害のNGと周囲に思われる行動の多くが、ポリヴェーガル理論を学ぶとストレス反応であることがわかります。
安心・安全を感じるためのご自身にあった具体的な対応を、多くの方に学んでいただければと思います。

日時:令和6年6月15日(土)14時~15時30分

オンライン開催

講師:公認心理師 浅井咲子先生

定員:90名

対象:当事者、支援者、保護者など興味のある方

参加費:正会員無料(家族も無料です)準会員:500円 一般2,000円

すでに半数以上の参加予約が入っていますのでお早めに!
申込みはこちら

◆高山恵子 
NPO法人えじそんくらぶ代表。臨床心理士。薬剤師。
昭和大学薬学部 兼任講師。
アメリカトリニティー大学大学院修士課程修了(幼児・児童教育、特殊教育専攻)、同大学院ガイダンスカウンセリング修士課程修了。
児童養護施設、保健所での発達相談やサポート校での巡回指導で臨床に携わる。
AD/HD等、高機能発達障害のある人のカウンセリングと教育を中心に、ストレスマネジメント講座等、大学関係者、支援者、企業などを対象としたセミナー講師としても活躍中。また、中央教育審議会専門委員や厚生労働省、内閣府などの委員を歴任。
これまでの経験を生かし、ハーティック研究所を設立。最新刊『発達障害・愛着障害・小児期逆境体験(ACE)のある親子支援ガイド』(合同出版)等、著書多数。



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■ コラム:公式YouTube「レデックスチャンネル便り」
      第2回 子どもの発達を支える専門家:リハビリテーション職
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1.こどもの発達を支える専門職
レデックスチャンネルにて公開された動画コンテンツを、メルマガの読者様向けにコラムでご紹介しています。本編のYoutubeと併せてご覧ください。

第2回も、前回に引き続き「こどもの発達を支える専門職」シリーズを取り上げてみます。
子どもの発達に関わる職種はいくつかありますが、今回はリハビリテーション専門職である「理学療法士」「作業療法士」「言語聴覚士」のそれぞれの専門分野を紹介します。
動画ではこどもの領域を中心に詳しく話をしていますが、本コラムでは大人の領域についても触れたいと思います。
 
 
2.リハビリテーション専門職(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士)(2023年12月18日公開)


(1) リハビリテーション専門職とは
リハビリテーション専門職とは、医療・介護・福祉などの分野でリハビリテーションを主に行う「理学療法士」「作業療法士」「言語聴覚士」といった療法士を指します。
それぞれ国家資格を持つリハビリテーション技師で、医師等と連携し、理学療法、作業療法、言語聴覚療法を行います。
理学療法士はPhysical Therapistの頭文字をとって「PT」とも呼ばれます。同様に、作業療法士はOccupational Therapist「OT」、言語聴覚士はSpeech-Language-Hearing Therapist「ST」です。

リハビリテーションというと、病気や事故で失った身体機能の回復というイメージが真っ先に浮かぶことでしょう。
「リハビリ=機能訓練」のことと思われがちですが、辞書で調べてみると、
・社会復帰させる
・地位・権利を回復する、元の状態に戻す、修復する、復興する
とありました。

また1981年の世界保健機関(WHO)の定義によると、
「リハビリテーションとは、能力障害あるいは社会的不利を起こす諸条件の悪影響を減少させ、障害者の社会的統合を実現することを目指すあらゆる手段を含む。
さらに、リハビリテーションは障害者が環境に適合するための訓練を行うだけではなく、障害者の社会的統合を促すために全体としての環境や社会に手を加えることも目的とする。」
とされています。

Rehabilitationは、Re(再び)+Habilitateに分解できます。ラテン語のhabills(適する)が由来といわれており、直訳すると「再び適する(状態になる)」となります。
このようにリハビリテーションというのは、医療や機能回復に限定した概念ではなく全人的な広い意味を持つ言葉なのです。
“その人らしく社会の中で自立して生活できるように支援する”というのが最近の主流の考え方になってきており、子どもも大人も、高齢者も、より良く生活するためにQOL(生活の質)の向上を考慮した支援が求められています。

リハビリテーションというと、元ある機能の回復や再獲得という意味合いが強くなってしまうので、こどもや先天性疾患の場合は、“Re”の部分を取った「ハビリテーション」であるという考えもあります。
こどものリハビリテーション(ハビリテーション)は、生まれ持った機能を最大限に生かしつつ、さらに発達を促していく必要があり、自立のためにそれを支援することがこどもを対象とした療法士の役割になるのです。

(2)こどもの理学療法士(PT)
 
「からだのスペシャリスト」である理学療法士は、立つ、歩く、座るなどの日常生活上の基本となる動作と身体づくりを支える専門家です。
主に運動療法や物理療法(温熱、電気等)用いて、心身機能の回復・改善、悪化の予防を図ります。
先天的な疾患や病気、事故の影響により運動発達、筋肉・関節・神経などに障害があるお子さんには、姿勢や呼吸も含めて、運動機能の獲得や発達促進を支援します。
痛みの緩和や二次障害予防といった観点でもリハビリを行います。また、補装具(車いす、杖、歩行器等)の選定から装着・使い方等も提案しながら、生活を支える環境づくりも行います。

大人の場合は、医療・介護はもちろん、健康増進や介護予防の分野でも活躍する療法士もいます。
災害時に避難所に赴き、体操指導や環境調整、助言を行う「災害リハビリテーション」という分野も近年大きく発展しています。
高齢者の身体機能の低下や転倒予防などで理学療法士の力が必要とされています。

最近では、「発達性協調運動症」という発達障害も注目されるようになりました。
神経・筋疾患や機能損傷による運動障害がないにもかかわらず、年齢相応の生活動作や運動に不器用さを抱える子たちがいるということが明らかになっています。
特に学齢期は運動を起因とした二次障害が生じやすい環境にあるので、専門家として理学療法士の関わりが必要とされています。
理学療法士は、生活機能の獲得に必要な姿勢や身体づくり、学校や家庭で使用する道具の工夫も含めてサポートします。

(3)こどもの作業療法(OT)
 

作業療法士は「遊びを通して育ちを支える作業のスペシャリスト」です。
「作業」というと、一見分かりにくいかもしれませんが、「作業」とは、人が起きてから寝るまでに行うすべての生活行為のことを指します。
こどもにとっては「作業=遊び」であるため、「遊び」を主な手段として関わりながら、その子を取り巻く環境を調整し、発達や成長を支援します。

具体的には、食べる、入浴する、勉強する、友達と遊ぶ、買い物する、といった行為に必要な運動や認知機能、コミュニケーションを作業療法士は取り扱います。
そのため、非常に幅広くお子さんをみることができるのが特徴です。
改めて考えてみると学校生活というのは非常に「作業」が多く、学習に必要な道具の操作から、食事や着替え、掃除から休み時間の過ごし方まで作業の連続です。
また保護者や支援者、教師といった環境も含めて調整し、より良い生活環境を提案するのも作業療法士の役割です。
生活の場に直接出向いて環境調整の助言を行う巡回相談や保育所等訪問支援といった立場で、活躍している療法士もいます。

作業療法士は特に生活動作に精通しており、大人でもADL(日常生活動作)やIADL(手段的日常生活動作)を含めたリハビリテーションを実施しています。
こどもの具体的な支援については、鴨下賢一先生より詳しくご寄稿いただいています。
鴨下先生は、当社の「Life Skills-生活機能発達支援プログラム-」の監修もしていただいております。

発達を支援する生活動作/鴨下賢一(全5回)
 第1回:発達を支援するためのキホンのキ
 
また、「感覚の困り」を精査して、助言するというのも作業療法士が得意な分野になります。
当社の「感覚・動作アセスメント/KIDS」を監修いただいている岩永竜一郎先生は、自閉スペクトラム症の感覚の困りについて解説いただいております。ぜひ併せてご覧ください。

発達障害の感覚の問題(全5回)
 第1回 自閉スペクトラム症の感覚処理障害
 

(4)こどもの言語聴覚士(ST)

言語聴覚士は、「ことばとコミュニケーションのスペシャリスト」です。
また実際は「言語」だけではなく、「聞く」「話す」「食べる」の領域を専門としているのが特徴です。
その対象は広く、ことばの遅れや偏りがある子の言語獲得やコミュニケーションの支援、発音の障害(サ行がカ行になる等)や吃音、そして聴こえに関する障害も含まれます。

大人の場合(一部子どもも含みますが)、脳血管疾患などで脳機能の損傷に伴う「高次脳機能障害」の支援も言語聴覚士の得意とする分野です。
高次脳機能障害は、注意障害、記憶障害、遂行機能障害、言語障害等により、日常生活に支障を来す状態を言います。
その中でも、言語機能に障害を負った方を「失語症」といい、話す、聞く、読む、書くことに様々な困難が現れるため、言語聴覚士がリハビリテーションを行います。

また、大人もこどもも共通しているのが、摂食・嚥下障害です。
口を使うというのは「話すこと」と共通する部分であるため、「食べる」という分野も言語聴覚士の専門になります。
うまく咀嚼できない、飲み込めない、それらの原因を考え、必要な練習を行い、適切な食事の形態や食材についての助言を行います。

我が国の死因のトップ5には「肺炎」がランクインするようになりましたが、誤嚥性肺炎というのは高齢者にとってリスクの高い疾患であり、
食形態や姿勢、運動などで予防を支えるのが言語聴覚士の役割でもあります。

(5)療法士はどんなところで働いているか
リハビリテーション職種は、やはり医療に携わる人が多く、医療機関に所属する療法士が最も多いです。
大人が中心になりますが、介護分野でも多くの療法士が活躍しています。療法士が訪問してリハビリテーションを行うというようなサービスに従事している人もいます。

残念ながら、こどもを専門とする療法士がまだまだ少ないというのが現状です。
こどもを対象とした場合、発達センターや療育センターなどの行政・公共施設に勤める人もいます。
最近では児童発達支援や放課後等デイサービスなどの児童福祉施設で働く療法士も徐々に増えています。



作業療法士の荻野圭司先生が、こどもの作業療法士についてご紹介いただいている記事があります。

放課後等デイサービスで、作業療法士が求められること/荻野圭司(全2回)
 第1回:作業療法士ってどんな仕事?
 

また、各職能団体のホームページに仕事紹介のリーフレットなどがありますので、療法士の仕事にご興味のある方はご覧いただければと思います。
参考までに、理学療法士協会をご紹介しておきます。

 公益社団法人 日本理学療法士協会

3.おわりに
今回はリハビリテーション3職種をご紹介しましたが、4月26日に「看護師・保健師」、5月27日に「心理職」について取り上げています。ぜひ再生リストもご活用ください。

◆ 大野 南(おおの みなみ)
レデックス主任研究員、言語聴覚士(ST)
適応指導教室で不登校の小・中学生の支援に携わる中で、発達障害による二次障害を目の当たりにし、一念発起して言語聴覚士の道へ。
放課後等デイサービスや自治体の発達センターでの発達支援の経験を活かし、現在はレデックスで教材開発や支援者への間接支援を行っている。
子どものことばの相談・療育も続ける二足のわらじST。
 
 
■□ あとがき ■□--------------------------
次回は、6月14日(金)の予定です。

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