■ 連載:発達障害の生き辛さが、無敵の人に移行してしまうプロセスとは?
■□ 連載:記号計算に入ってから重視したいかずの合成分解---------------------------------------------------------------------------------------------------
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■ 連載:発達障害の凸凹、死角となりやすい二次障害とは?
第3回 発達障害の生き辛さが、無敵の人に移行してしまうプロセスとは?
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コミュニケーションの生き辛さを可能性に変える…イイトコサガシ・ワークショップを主催している発達障害当事者の冠地情(かんち じょう)です。
※イイトコサガシ・ワークショップ ■ ■
※冠地情の発達障害プロフィール
前回の話を簡単にまとめますと…
※建設的コミュニケーションが退化硬直しやすい発達障害当事者は、→生き辛さの元凶である『退化硬直』の恐怖。
・人間関係が広がりにくく
・好き嫌いの感情に支配されやすく
・他者と価値観をハイブリッドしにくい
要するに生き辛さが悪循環しやすい、その原因は非建設的コミュニケーションにある、と。
なお、退化硬直は私の造語であり、医療等のエビデンスは一切ありません。
非建設的コミュニケーションは言い換えるなら、エゴイスティックで自己中心的なコミュニケーション。そうなると他者と利益や居心地の良さ、組織運営を分かち合うwin=winが非常に難しくなるわけです。
また同時に、トラブルやアクシデントを予防すること、それらを最小限の被害で食い止めることも難しくなります。残酷な言い方をするなら…
『この人とは関わらない方が無難』
と多くの人から距離を取られやすい、ということです。
上記の状況を客観的に自己理解・自己受容するのは非常に困難、ということは言うまでもありません。(絶望的な結論が強すぎて、可能性を見いだせないから、です)
なので私の結論を再度、繰り替えさせて頂くと、思春期の早い段階から、建設的コミュニケーションを育成するインフラが必要…
国語や算数、理科や社会と同じくらい(人によってはそれよりも優先的に)必要というのが私の持論となります。
・意見を言語化する力が弱い
・他者の言葉を理解読解する力が弱い
・質問する力が弱い
という人がいくら授業を受けても意味が薄いからです。
しかし今回は理想の話ではなく、現実の話を進めていきます。
(建設的コミュニケーション育成インフラを求める声はほとんどないのが現状だからです)
では、なぜ発達障害当事者が退化硬直すると無敵の人になりやすいのでしょうか?
■他者にどう思われてもよい?
どうせ評価されないのなら堕ちるところまで堕ちてやれ、と自暴自棄になりやすい、ということです。
その開き直りが常態化し、また他者が放置し続けると、無敵の人にどんどん近づく、と。
もちろんそんな単純な話ではないです。
大体の場合、そうは言っても実際は心の中で承認欲求と闘っている場合が多くその結果…
・自己肯定感が低下
・プライドがずたずたに
・しかし誰にも相談できない
というストレスを抱えることになる…
これは私の実体験であり、経験則であることを強調しておきます。
■自分の将来について考えたくない?
お先真っ暗、ですからね。
かつての同級生と比較すると惨めになります、本当に。
年下の上司が当たり前になったり、年下の支援者に諭されたり…
ということを愚痴るのも難しくなります。
異世界転生ものや人生リセットものが流行るのも、それくらいのことが起きない限り、人生の逆転がありえないから、でしょう。
将来に夢が持てないことに対する理解・フォローがない、ということを大義名分にして、将来のある人たちに対する攻撃を正当化する。
SNSで執拗な誹謗中傷を重ねる無敵の人、ますます増えているように、私には思えます。→「匿名陰口仮想人格強調障害」
■社会の一員という意識、共存していく意識が弱い?
無敵の人にとって、社会は敵です。
社会が加害者であり、自分は被害者です。
共存する道を探るより、一矢報いたい…
という復讐心が強くなってしまう、燃え上がってしまう、止められなくなってしまう、と。
社会適応なんて言われたくない、自業自得なんて言われたら傷つく…
私も実は、初期のころは講演で「社会不適応を起こして、引きこもりになりました」と話しただけでフラッシュバック、でした。
俺は悪くない、なぜ俺が卑屈にへりくだらなきゃいけないんだ!という感情がマグマとなって押し寄せてくる、と。
その結果、私は「社会の構造不備(建設的コミュニケーション育成インフラが脆弱)が原因で引きこもりとなりました」と話すようにしたら、フラッシュバックがなくなりました。
(そして今ではこのエピソードを講演で話すようになりました)
■極端な白黒理論?
自分を過剰に正当化できるからこそ、無敵の人になれるのです。
社会に過剰な責任転嫁することができるからこそ、無敵の人になれるのです。
逆を言うなら、上記のような歪なバランスでないと生きるのが難しいから、無敵の人にならざるを得ないのです。
『やりたいことだけやらせてくれ…特別扱いしろ!受け入れてくれないなら、もうお前らとは話さない、一生恨む!』
というあまりにも自分に都合の良い(受け入れる側にメリットがほとんどない)極論にノイズが全くないからこそ、無敵の人なわけです。
犯罪を実行に移す人は少ないと思いますが、80 50問題※1に移行する人は少なくない!
というのが、全国を回った私の実感です。
※1 80 50問題 NHKハートネット
また、長期引きこもり当事者の中には
・自殺、犯罪を脅しに使う
・物を壊したり、家族に暴力を振るう
・無言を貫き、話し合いに応じない
という形で無敵の人を貫いているケースも多く、犯罪に至っていないのは単に家族がかなりの譲歩、我慢をしているだけ、だったりします。→「誤った成功体験を予防していくことが肝要!」
無敵の人エネルギーを育てる源は
『自己完結の自己満足』です。
発達障害当事者は自分ルールのこだわりで、
『自己完結の自己満足』に陥りやすい、と思ってください。
それが自然な人たちなのです。
色々な人の価値観を定期的に循環させていく、色々なルールをお互いに調整しながら落とし所を探ることが不自然(負荷・ストレスが多い)な人たちなのです。
次回は、発達障害当事者を無敵の人にさせないためには、どうしたらよいか?
という命題をイイトコサガシ・ワークショップの経験から述べていきたいと思います。
→「冠地さんの立ち位置は、ピアサポーターということでよいのでしょうか?」
◆冠地情(かんち じょう)
不登校・ひきこもり・いじめ・発達障害の四冠王だったと語る、イイトコサガシ代表。
全国各地でいいところを探し、互いに応援するワークショップ&講演会等を43都道府県で1000回以上開催、10000人以上が参加。
合言葉は「試した時点で大成功!」
NHK「ハートネットTV」「バリバラ」に出演。
嫌われる・孤立する・批判される勇気を武器に、文字通り生き辛さ界隈の異端児。
あすぴれんとテレビでYouTube番組「人間臭さTV」を放送。https://bit.ly/3VypTYU
東京都狛江市のラジオ局コマラジ・第四火曜日正午~13時のアフタヌーンナビにレギュラー出演。
東京都東久留米市のラジオ局くるめラ・第一火曜日18時~19時の超イイトコサガシ宣言でメインパーソナリティ。
著書『発達障害の人の会話力がぐんぐん伸びる アイスブレイク&ワークショップ』
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■ 連載:さんすう学習の基礎は概念の習得から
第4回 記号計算に入ってから重視したいかずの合成分解
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■ 連載:さんすう学習の基礎は概念の習得から
第4回 記号計算に入ってから重視したいかずの合成分解
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前回までお伝えしたこと
第1回 人気の教材は一人の学力不振児からうまれた第2回 さんすうの基礎・基本と教材としての表現
第3回 かずをどのように教えるのか
今回は、記号計算に入ってから重視したいかずの合成分解、かけ算、わり算の概念学習についてお伝えします。
〇かずの合成分解ってなんだ
前回は、「かずをどのように教えるのか」というテーマでした。
かずを日常生活の中で、五感を通して感覚的につかむ大切さをお伝えしました。
次のステップは記号計算への導入となります。
記号計算をスムーズに進めるためには、事前に身につけたい「かずの操作」があります。かずの「合成分解」です。
合成は合わせていくつ、分解は二つに分けるといくつといくつ、ということです。
3の合成分解・・・3は、〇と□(1と2がはいります)
4の合成分解・・・4は、〇と□(1と3、2と2、3と1がはいります)
5の合成分解・・・5は、〇と□
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20の合成分解、100の合成分解、1000の合成分解
までを、体感させるのです。
幼児でも、10までの合成分解を「さくらんぼ算」などと言って学習している例がよくありますが、できれば早い段階から20までの合成分解に取り組んでほしいのです。
その際、100までの合成分解に効果的な教具としておすすめしているのが、100玉そろばんや、100枚の数プレートです。
100玉そろばん
100枚の数プレート
デジタル教材を使用したくなりますが、リアルの教材を使い、量の感覚をアナログで感じ取るのは子どもにとって、具体的にイメージがつきやすく優しい学びになります。
たし算の繰り上がり、ひき算の繰り下がりの理解をスムーズにさせるためにも、20までの合成分解をしっかり身につけて欲しいのです。
〇たし算への具体的なアプローチ
すでにさんすうのことばで「あわせる」と「ふえる」を概念として身につけている子にとって「+」という記号にあまり抵抗感はありません。
〇+□=△
という記号計算に問題なく入っていけます。
とはいえ、ことばから式をたてる(立式)となると、そこには壁があります。
ことばを記号に置き換えるのは、抽象化の第一歩であり、はじめての経験だからです。
理解するには、慣れが必要になります。簡単な文章問題を何回か式にする練習をするのがお勧めです。
ただここも個人差があり、一日もかからず理解できる子もいれば、何日もかかる子もいます。時間を空けての繰り返しが大切です。
そして、計算練習に入っていきます。
1桁の計算学習から2桁の計算に進むときにも小さな壁があります。繰り上がりです。
教科書には繰り上がりの手順について記述してあります。
20までの合成分解をマスターしている子には、すんなりとイメージできますが、合成分解の学習が不十分だと理解まで少々時間がかかります。何度も繰り返すトレーニングが必要になります。
〇ひき算の学習
ひき算は概念としては前回お伝えしたように、「のこりは」、「ちがいは」ですが関連することば、「すくない」、「たりない」なども同じようにひき算のなかまのことばだと理解する必要があります。
計算に入ると、1桁の時は問題なく理解できるのですが、2桁になり繰り下がりのひき算は、とても大きな壁になります。
しかも繰り下がりの考え方を教科書では、2通りの計算方法で示しているのです。
「減加法」と「減々法」です。
減加法で12-9は、12を10と2に分け、10-9をやって、その答えの1と2をたして3とします。
減々法では、12-9は 9を2と7に分けて、12から2を引いてさらに7を引き3とします。
答えは一緒でも、やり方が2通りあり、相当のトレーニングをしなければ、理解しづらいのです。
繰り下がりのひきざんは、1年生にとって最大のハードルです。
それだけに充分な練習が必要になります。
〇かけ算の導入
かけざんの導入の際、かけ算九九を覚えることばかりに目が向きますが、大切なのはかけ算とは何なのかということを導入の段階で実感してもらうことです。
すでに、かぞえるときに「2つずつ」、「3つずつ」、「4つずつ」、「5つずつ」・・・数えることを知ってもらっていますので、これを便利にするのがかけざんだということを実感してから九九の学習にはいります。
このとき、かけ算(〇×□)を、〇が□個分という、倍数の概念を身につける点は重要です。この点については、高学年になるとどちらでもいいのだからこだわらなくてもいいのではないか、という考え方もあるようですが、かけ算は倍数という概念にこだわりたいです。
〇わり算の導入
これも意外と計算の手順だけに意識が向けられますが、導入の際に必要となる概念があります。等分除と包含除という概念です。
等分除・・・対象をいくつに分けるという考え方
包含除・・・対象にいくつ含まれているかという考え方
これは、例として
30センチのテープを3つに分けたら1つの長さが何センチになりますか(等分除)。
30センチのテープから、10センチのテープがいくつとれますか(包含除)。
です。
計算式自体は、同じになりますが計算の意味が違います。
式は同じでも、答えにつく単位が違ってきます。
この違いは、概念として重要です。計算の方法を身につけることも大切なのですが、おさえておきたい概念なのです。
4回にわたり、計算に入る前の基礎となる概念についてお伝えしました。
小学高学年になれば当たり前のようなことでも、さんすう学習の入口では、かなりハードルの高いことばかりです。
成長してから振り返ってみるとだれでもわかることだけに、こだわって指導されることがないのが現実です。
ここの理解を不十分なまま、学習を進めていくことがさんすう嫌いにつながる、一番の原因だと思っています。
弊社の教材、「基礎学習練習帳シリーズ」は、かずの概念の習得にこだわって作成されている教材です。皆さまのお役に立てる機会があると信じています。
次回は最終回として、幼児低学年の図形学習についてお伝えします。
■□ あとがき ■□--------------------------
次回は、12月9日(金)を予定しています。
メルマガ通算300号まで、あと3号。