発達障害の凸凹、死角となりやすい二次障害とは?

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2022.10.21

発達障害の凸凹、死角となりやすい二次障害とは?

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■   まえがき
■□  新連載:発達障害の凸凹、死角となりやすい二次障害とは?
■□■ 連載:さんすうの基礎・基本と教材としての表現
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■□ まえがき ■□--------------------------
今回から始まる連載は、久しぶりに当事者の方からの寄稿です。編者が発達の困りに関わることになった初期の頃、Variety Cafe という会合を一緒に立ち上げた仲間の一人、冠地情(かんちじょう)さんは、自分を含めた発達の困りをもつ成人の方々が生きやすくなる方法を模索して、精力的に活動を展開されています。

Variety Cafe

冠地さんには、過去に連載をしてもらっています。興味を持たれたら下記を読んでいただくと、その当時から6年間を経た現在の冠地さんに一層関心をもってもらえるのではないかと思います。

イイトコサガシからはじまるコミュニケーション 2016年2月からメルマガ連載
 
 
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■ 新連載:発達障害の凸凹、死角となりやすい二次障害とは?
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皆さん、私は発達障害の当事者であり、当事者活動として建設的コミュニケーションに特化したイイトコサガシ・ワークショップを13年(1000回以上)開催・運営してきた、冠地情(かんち じょう)です。

今回は当事者の視点から、幻想が先行しすぎていることで置いてきぼりになっている生々しいリアルを問題提起し、少しでも生き辛さを緩和するヒントになれば、と思っております。

よく言われる話として、発達障害とは…
できることと、できないことの凸凹の差が激しい障害、と紹介されております。

しかし!
全国を回って、色々な発達障害の当事者と交流してきた私からすると、上記の定義はかなり恵まれている当事者、です。
一般就労と障害者就労の間で悩むような、いわゆる発達「グレーゾーン」障害の当事者、というのが私の見解です。

※講演をしたり、書籍を出したり、メディアに出演したりしている当事者(私含む)はほとんど上記だと思ってください。

では大半の発達障害当事者は?
『凸は平均レベルで凹が致命的に低レベル』
しかも凸が3割で凹が7割…要するに半々ですらない、と。
そうなると、どうなりやすいか?
はい、凸が凹に染まりやすくなります。
当然ですね、できないことが多いとやる気が失われ、自尊心が傷つき、何をやっても無駄?という感覚が強まりますから。
『ピンチになればなるほど燃えて頑張る、努力する!』
という発達障害当事者は極々わずかで、早い段階で諦めてしまう方が圧倒的多数だろう、というのが私の見立てです。

さて、ここからの話は私の専門分野である建設的コミュニケーションに限定してお話させていただきます。

※私の目的は、コミュニケーションの生き辛さを可能性に変える! なので。

建設的コミュニケーションの凸と凹をわかりやすく表してみます。
1.凸 多種多様な事柄に柔軟な形で興味、関心、好奇心を持つことができる。
  凹 興味、関心、好奇心の幅が著しく狭く頑な(こだわりが強い)、入り口がそもそも小さい

2.凸 自分の伝えたいことを色々な他者に伝わるように、わかりやすく言語化したい、という意欲が強く、その能力が高い
  凹 他者と何かを共有したいという意欲が弱く、能力が著しく低いため、わかりやすくする必要性をほとんど感じない

3.凸 他者の意見、感想などを客観的に好意的に正確に理解したいという意欲が強く、その能力が高い(色々な可能性を踏まえて柔軟に理解したい)
  凹 他者の意見、感想などに対する興味と能力が著しく低い

4.凸 質問から始まる色々な展開に興味、関心、好奇心が強く、精度の高い質問を創り出す能力が高い
  凹 質問に対する興味、関心、好奇心が著しく弱く、同時に質問を創り出す能力が著しく低い

さて、皆さん。
もし上記の凹に対して思春期の発達障害当事者が、具体的な試行錯誤系プログラムに参加せず、放置していたらどうなるでしょう?

※座学は× 勉強は知識を増やすことが目的で、実際の建設的コミュニケーションの経験値にはなりえないのです。

現状維持でしょうか?
違う、断じて違う!(強調)
というのが全国を回りながら、13年当事者活動をしてきた…コミュニケーションのワークショップを試行錯誤してきた私の見解です。

講談社から拙著(漫画)が出ていますので、よろしければご参照ください。

冠地情著、かなしろにゃんこ。漫画 

凹が底ではない、ということです。
凹は適切な試行錯誤系プログラムなどに参加(定期的)しないと…
劣化します。
衰えます。
腐敗します。
退廃します。
硬直します。

参加しているけど、取り組んでいるけど、色々と試しているけどできない…
習得速度が他の人より遅い、同じミスを繰り返す頻度が高い…
というのは大きな問題ではないんです、私からすると。
稼働しているわけなので。
経験値としては積み重なっているので。
原因や課題が可視化構造化されやすく、共有しやすくなっているので。

しかし、意識的に避けている、先送りにしている場合は?
使わない機能はどんどん、衰えます。
(筋肉や関節と同じです。それとも脳機能だけ別ですか?)
苦手意識、心の傷、失敗体験のあるものは更に衰える割合が増し、回復に時間がかかります。

そして周囲の人がこの状況を理解しにくいです。
上記を発達障害の問題にしている当事者、ご家族、支援者が大変多いですが、これって完全に二次障害では?
というのが私の問題提起です。

そしてこのことは発達障害界隈でほとんど話題になっていません。
予防が大切なのに、です。
対処療法ではほとんど間に合わないのに、です。
次回はこの問題を更に掘り下げていきたいと思います。

冠地情(かんち じょう)
不登校・ひきこもり・いじめ・発達障害の四冠王だったと語る、イイトコサガシ代表。
全国各地でいいところを探し、互いに応援するワークショップ&講演会等を43都道府県で1000回以上開催、10000人以上が参加。
合言葉は「試した時点で大成功!」
NHK「ハートネットTV」「バリバラ」に出演。
嫌われる・孤立する・批判される勇気を武器に、文字通り生き辛さ界隈の異端児。
あすぴれんとテレビでYouTube番組「人間臭さTV」を放送。https://bit.ly/3VypTYU
東京都狛江市のラジオ局コマラジ・第四火曜日正午~13時のアフタヌーンナビにレギュラー出演。
東京都東久留米市のラジオ局くるめラ・第一火曜日18時~19時の超イイトコサガシ宣言でメインパーソナリティ。

 
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■ 連載:さんすう学習の基礎は概念の習得から
             第2回 さんすうの基礎・基本と教材としての表現
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今回は、概念として身につけるべき「さんすうのことば」をどのように教材化しているのかという内容です。

概念として身につけるべき算数の用語が、小学1年生で200以上あるという内容については前回お伝えしました。また、計算学習に入る前に必要な学習についても触れましたが、この考え方を伝えるときに必ず説明をさせていただいている定義があります。基礎と基本の定義です。

〇基礎と基本の違い
日常の生活で、何か新しい技能なり技術を身につけるときに言われるのは、「基礎・基本」を大切にしなさい、というものです。だれも、これに異議を唱える人はいません。

ところが、これから身につける技術もしくは技能で何が「基礎」で、何が「基本」ですかという質問をなげかけると、反応はほとんど返ってきません。
基礎も基本も区別なく扱っているのです。
通常はそれでいいのかもしれません。

ただ、それでは困る場合があります。さんすうの学習で上位学年になり、つまづいたときです。遡行学習(さかのぼってつまづいているところから学習)するときに戻り先が明確にならない場合があるのです。多くが、基礎の習得でつまづいているのです。

保護者に対して、「さんすうの概念がしっかり身についていないから学習が進まないのです」という説明をしても伝わりません。そんなとき「基礎と基本の区別」を保護者に理解していただき、基礎からやり直しましょう、と伝えると納得してくださるのです。

よく指導者向けの研修で、「基礎と基本の違いをわかりやすく説明できますか」という問いを投げかけます。なかなかわかりやすい説明は返ってきません。基礎と基本の違いを説明するのは難しいのです。

そこで当方からは、保護者に理解してもらう説明の例を示しています。
身近なスポーツに例えて基礎と基本の違いを説明するわけです。

説明要旨は以下です。
・スポーツの基礎は、しっかりした「体力」とけがを防ぐ「柔軟性」
・スポーツの基本は、競技、種目ごとに必要となる「型」
スポーツの場合、競技内容に関係なく基礎となる体力、柔軟性をしっかり身につけながら、競技種目に合った型を何千回、何万回と繰り返すのです。

「基礎」「基本」は両方大切ですが、基礎なくして基本は成り立ちません。

以上のような説明をさせていただきます。

さんすうにも「基礎」と「基本」があり、「基礎」がなければ、無駄な時間を費やしてしまうということをお伝えします。

時には、教科書の歴史を交えてお話することもあります。教科書の話をするときに、好事例が「黒表紙から緑表紙への教科書の変遷」です。昭和初期に出てきた緑表紙が、さんすう教育の考え方を明確に示しているという内容です。具体的には下記の2つの参考資料をご覧ください。

[PDF]教育史にみる 算数教育の変遷 
尋常小學算術(緑表紙)復刻版 

〇教材としての表現
では、さんすうのことば(概念)はどのように身につけていくのかという方法になります。
もちろん一番の理想は、生活の中で具体物を見せながら、ことばを理解していくことです。
その際には、子どもの意識を集中させたうえで語りかけていかなくてはなりません。意識が緩慢なままでは、学習効果は低くなるからです。

ただ、最大の課題は通常はそのような活動は、親子もしくはごく近い関係者でしかできないということです。しかも、その活動自体が難しいのは誰も知っています。

そこで、教材の出番となるのです。

弊社の教材で人気の、就学前の教材で「よみかたれんしゅうちょう」(A4・全27ページ)という教材があります。
これはまさしく「さんすうのことば」を身につける最初の教材です。

※よみかたれんしゅうちょうの例

内容は、声を出して短文(30文字程度)を2回読ませて、該当する欄にまる(〇)を付けさせるという作業をさせる仕組みです。

・おおきいほうに〇をかきなさい
・ちいさいほうに〇をかきなさい
に始まり、
ながい、みじかい、たかい、ひくい、ふとい、ほそい、おもい、かるい、おおい、すくない、はやい、おそい・・・ことばが続きます。

1ページあたり4分、全体で27ページありますが、時間をかけ3回ほど繰り返すと、ことばと基本的な概念が身についてきます。

それができると、「さんすう文章題」シリーズに入っていき、四則演算を含む文章題学習に入っていきます。「よみかたれんしゅうちょう」が、かずの概念を身につける最初の教材になっているのです。

ここからさんすう学習が始まります。

次回はかずの学習になります。
◆新村一臣(にいむらかずおみ)
株式会社エジソンクラブ 代表取締役
株式会社新村教育研究所 代表取締役


 
■□ あとがき ■□--------------------------
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