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■□■ 連載:保育所等訪問支援の取り組みの事例紹介 前半
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■ まえがき
■□ 新連載:認知特性、気質力を考える■□■ 連載:保育所等訪問支援の取り組みの事例紹介 前半
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■□ まえがき ■□--------------------------
レデックスは、学びをさらに充実させるものとして、「認知特性」と「気質力」に注目して、本田真美氏(みくりキッズくりにっく院長)、馬場悠輔氏(こどもとかぞくのサポートルームKNOT代表)、粂原圭太郎氏(完全個別オンライン指導塾「となりにコーチ」代表)と本田式認知特性研究所を設立しました。研究所の取り組む「認知特性」「気質力等について、今回から連載で紹介させていただきます。
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■ 新連載:認知特性を考える
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当研究所は、認知特性や認知機能、気質力といった「理解し、糧とし、表現する」ための機能の、測定方法や活用方法を研究し社会の様々な領域で活用いただくための活動を行うべく2022年に設立されました。すでに当研究所の成果は、Eテレ「バリューの真実」やMBS系「100%アピールちゃん」などのTV番組や各種雑誌でも取り上げられ、漫画「ガクサン」にも掲載されるなど非常に注目をいただいています。
さて今回の記事では、私たちの活動の根幹である「認知特性」についてご紹介させていただきます。この記事をお読みになって、今より少しでも人生が快適に、生きやすくなったと感じていただければ幸いです。
■認知特性とは?
「認知特性」とは、見る・聞く・読むといったインプットと、それを理解・整理・記憶する処理、そしてそれらをもとに書いたり話したり表現するまでの一連の方法と、人によって異なるその偏りのことを言います。先生や講師が勧める学習方法を実践しても結果が出ない場合、自分はどこか劣っているのではないかと落ち込みがちですが、それは能力が劣っているのではなく、認知特性の違いのためにその効果を発揮できていないだけというケースが、実は大変多く見られます。
例えば、ラジオ講座やCD教材で英語を浴びるように聴くことで飛躍的に英語力が上がる人がいる一方、ひたすら書くことで力を伸ばす人や、文の構造や単語をきっちり整理・理解することで高得点を取れる人がいます。その違いこそが、まさに各々の認知特性の違いです。
■6つの認知特性タイプ
私たちは、認知特性を大きく3つに分けて考えます。視覚優位:目で見た情報を処理するのが得意なタイプ、言語優位:読んだ情報を処理するのが得意なタイプ、聴覚優位:耳で聞いた情報を処理するのが得意なタイプです。
そして、その大きな3つの傾向をそれぞれ2つずつ、以下のような6タイプにわけて捉えています。
1) カメラタイプ(視覚優位):写真のように、2次元で捉え思考するタイプ
2) 3Dタイプ(視覚優位):空間や時間軸を使って考えるタイプ
3) ファンタジータイプ(言語優位):読んだり聞いたりした内容を映像化して思考するタイプ
4) 辞書タイプ(言語優位):読んだ文字や文章をそのまま言葉で思考するタイプ
5) ラジオタイプ(聴覚優位):文字や文章を「音」として耳から入れ情報処理するタイプ
6) サウンドタイプ(聴覚優位):音色や音階といった音楽的イメージを理解・処理できるタイプ
■認知特性タイプのバランス
認知特性テストを受けると「あなたは○○タイプ」という結果にのみ目を奪われがちですが、その他のタイプのスコアにも着目する必要があります。例えば「あなたはラジオタイプ!」という結果が出た場合、視覚情報や文字情報はその人にとっては無駄なものなのでしょうか? いいえ、決してそんなことはありません。タイプごとの偏りが表示される結果を見ると、一番高いスコア以外のタイプもそれに近いスコアになっていることがあります。1タイプのスコアだけが突出している人もいますが、全体的に差異が少なくバランスが取れている人もいます。突出型にもバランス型にも、それぞれに合った学習スタイルや生き方があります。
大事なのは、ひとつのタイプだけに囚われず、すべてのタイプのスコアとバランスを確認して傾向を把握し、最適な思考や処理の仕方を導き出すことだと私たちは考えています。
■結果の捉え方「認知特性は優劣ではない」
認知特性テストを受けた後、「特別良いタイプが無い」「極端ににスコアが低い分野がある」という悩み相談を受けることがあります。しかし忘れたくないのは、認知特性とは個人の情報処理の好みや向き不向きであって、良し悪しや優劣をはかっているものではないという点です。
タイプごとに凹凸の無い人は、バランスよく各特性を持っているので、どんなインプットでも柔軟に対応できると考えられますし、スコアの低い特性がある場合には、その特性に特化したような勉強法はその人に合わないものとして効率よく回避することができます。
■認知特性は変動する?!
認知特性は生まれつき備わったものでこれを変えることはできない、と思われる方も多いかもしれません。視覚優位、聴覚優位といったある程度の傾向は確かにありますが、その人を取り巻く人間関係や、教育・文化などの社会環境によって認知機能は変動する可能性が指摘されています。
視覚優位だと思っていた人が、ラジオをよく聞くようになってから、聴覚的な思考をすることが増えてきたというケースもありますし、Youtubeやインスタグラム、TikTokなどのビジュアルメディアが身近に浸透してきてきる昨今、若い世代を中心に視覚優位者の割合が増えてきていると考えられます。
認知特性はある日突然極端に変わるような性質のものではありませんが、一方で絶対的・固定的なものでもないということも覚えておきたいポイントです。
■認知特性以外の要素:学習能力
例えば聴覚優位の認知特性テスト結果が出た人に「1日最低2時間、計画的に毎日CD教材で学びましょう」と提案したとして、それだけで成果を上げることができる人は一部だけでしょう。
その人の計画力や抑制力(我慢する力)などの違いによって、長時間一つのことに集中できる人もいれば、1個1個に集中しながら、いろいろなことに細切れに取り組んだほうが効果的な人もおり、計画と実行を繰り返して進めることができる人もいれば、計画を立てること自体が苦手な人もいます。
抑制力や計画力の他、記憶力・計算力・空間認識力等を、当研究所では「認知機能」あるいは「学習能力」として定義しています。認知特性と並行してこれらを測定し、認知特性と掛け合わせて分析することで、さらに個々に適した学習スタイルが提案できると考えています。
■認知特性以外の要素:気質力
一方、せっかくその人の認知機能も加味した最適な学習スタイルを提案したところで、新しい方法への適応ができなかったり、そもそも「成績を上げたい」「志望校に受かりたい」といった欲求が低かったりしては、やはり効果を上げることが難しいといえます。
私たちは、このようなその人特有の行動や反応を決定する特質として、「気質力」という力にも着目しています。気質力には適応力の他、こだわりの強さや想像力、コミュニケーション力、時間力、継続力といった力が含まれます。これらは、より良い生き方やより効果の高い学習方法を見出すための重要なファクターです。
本田式認知特性研究所では、認知特性に加え、これらの機能や力を総合的に分析し、個々の特性や能力に合った最適な方法を見つけるお手伝いができるよう、日々研究と開発を行っており、今後認知特性テストを活用した各種サービスを提供していく予定です。
ご興味のある方は、当研究所のWebサイトにまずアクセスしてみてください。TwitterやYoutubeでも情報発信を行っています。また、LINEの公式アカウントに友達登録をしていただくと、無料で認知特性テストを受けていただくこともできます。
アクセスお待ちしております!
本田式認知特性研究所
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■ 連載:作業療法士が行う保育所等訪問支援
第2回 保育所等訪問支援の取り組みの事例紹介 前半
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〇事例紹介
支援開始当時、中学1年生(地域の中学校支援学級在籍)であった男児。
診断名は自閉スペクトラム症とダウン症。
療育手帳A1を取得し、新版K式発達検査では全領域20。
CARS(Childhood Autism Rating Scale:小児自閉症評価尺度)は38.5と重度自閉症。
1.保育所等訪問支援の契約に至るまで
本児の卒業した地域の小学校から中学校に、サポートノートと視覚支援のツールが引き継がれていました。しかし、保護者は中学校でこれらがうまく活用されていないことで、不適応な行動が増えたことに不信感を抱いていました。このため、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー、県の巡回相談を依頼し、第三者を交えながら問題解決を図っていました。また、本児が通っていた療育機関から学校訪問や助言が行われる等、連携をとっていました。しかし、これも数回行われた程度で問題解決には至らなかったようです。更に家庭と学校は、2週間に1回、校長を含む合理的配慮を求める話し合いの場を設けていましたが、平行線のままで、大きな改善には至りませんでした。このため、保護者は2学期からは直接支援が可能な保育所等訪問支援を希望されて契約に至っています。
2.本児の状況
学校での様子として、「床に座り込んだら動かない」「すぐに寝転ぶ」「机の上に物があると床に落とす」「教材を投げる、破る、壊す」「コードや女性の髪を引っ張る」「活動や学習に取り組めない」といった不適応な行動が挙げられていました。担任の先生(以下、担任)はどう対応すれば良いかがわからず、これらの「不適応行動(子どもの目線で、そうせざるを得なかった結果の行動)」を「問題行動(大人の視点で捉えた行動)」と捉えていました。まずはこのような視点の掛け違いから修正していく必要がありました。
この不適応行動を考える際に重要な視点として、「氷山モデル」※1という考え方があります。目に見える行動面(氷山の一角)だけに着目するのではなく、その水面下にある行動を引き起こす要因に着目し、働きかけるという支援の基本的な考え方※2で、作業療法のアセスメントもこれにあたります。
すなわち、行動の背景にある対象者の障害特性や環境要因(どんな環境でどんな人がかかわっているか)、その人のもつ過去の経験(記憶)等の相互作用を踏まえて支援する必要があります。この考え方を担任と共有し、本児の行動の「なぜ?」を一緒に考えていきました。
※1 氷山モデル:ハーバード大学のマクレランド教授が、能力を測る新しい概念としてコンピタンスを提唱した際に説明のために使ったもの。
※2 水野敦之:気になる行動には理由があります(氷山モデルで考える)
3.担任の思いと考え方
先述したように、本児にかかわる人も含めて環境であり、担任がどのような思いで、どのような考えを持って本児にかかわっているかを知ることが重要です。また、小学校・中学校、さらには学校ごとに制度の違いや異なる文化があるため、その折り合いをつけることが重要です。そして、当然ですが、担任は対象となる生徒だけではなく、複数の生徒に対応しなければならないことを踏まえる必要があります。
これまで担任は、小学校からの引き継ぎや外部の専門家からのアドバイスを受けて、視覚支援を実践してきましたが、男児の行動が変わらないので、あまり効果的ではないと受け止めていました。また、担任とOTを含む外部の専門家が使用する「評価」という言葉の定義が異なっていることに気づきました。OTは「評価」を「本児の情報を収集し、課題を分析する」意味で使用していたのに対し、担任は「成績をつけること」と捉えていたのです。職種によって言葉の意味するところが異なる場合があるため、しっかりコミュニケーションをとることが重要であると感じるエピソードでした。
担任は「今のまま大人になったら本児が困ってしまう」と良心的な考えから、不適切な行動には叱責する様子が見られていました。本児の障害特性や行動の背景の理解不足によって、担任が支援の方向性を違えてしまっている状況でした。さらに受容コミュニケーションが難しい本児に対してとった担任の対応が、逆に混乱を招き不適応行動になるといった悪循環を生んでいました。本児が帰宅後、何の脈絡もなく、突然「ダメ」「しません」といった担任の言葉をまねて繰り返す等、誤学習にもつながってしまっている状況に陥っていました。
また、担任は「本児はきっとできない」という前提に立ち、本児の身の回りのことは全介助で対応していて、このような日常のかかわりが、本児の将来に向けた発達の可能性を摘んでしまっている状況となっていました。担任自身も本児のことで手いっぱいとなり、トイレに行ったり、教材の準備をしたりする時間が確保できない様子でした。こうした担任の思いや現状の大変さを理解したうえで、本児に必要な支援を一緒に検討していきました。
4.支援の提案
筆者は担任の日頃の労をねぎらい、担任が大切にしていることに寄り添いつつ、本児の特性への理解を求めると同時に、実際の場面に直接介入することにしました。これには頻繁な訪問が必要でしたが、自治体の理解が得られ、当初は週に1~2回の頻度で訪問を実施することができました。
訪問先では、生活に直結しないものは必要とされず、すぐに実践できる具体的な支援・アイデアが求められます。今回も実施するための人的コスト(マンパワー)、時間的コスト(対応にかかる時間)、空間的コスト(物理的な環境)、経済的コスト(教材や環境整備にかかる費用)、労働コスト(準備にかかる労力とサポート)がどれくらいか、期待される効果や成果、成果が得られるまでの時間の見通しを伝え、一方的な提案ではなく、担任と共に考え、取り組んでいきました。※3
※3 小西紀一(監),酒井康年(編):発達が気になる子どもを地域で支援!保育・学校生活の作業療法サポートガイド.メジカルビュー社,p95,2016
5.物理的な環境調整
まず支援学級の物理的環境から整えることにしました。本児は机の上にものがあると落としたり、コードがあれば引っ張ったり振り回したりといった衝動に駆られるところがあります。これに指摘や注意が入ることによる負の循環を断ち切るため、本児にやってほしくない行動はできない環境にしました。
具体的には机の上には物を置かない、コード類はガムテープで目隠しをする、かごを固定して動かないようにするなどを行っています。これに加え、担任と学習する場所、一人で過ごす場所等、どこで何をするのかを明確にして本人の指示理解を助けました。周囲からの刺激を遮断できるようにパーテーションを設置していますが、これは本児だけではなく、同じクラスの生徒も周囲の刺激に左右される特徴を持っていたため、互いにこの環境を活用することにしました。
6.見通しとスケジュール
次にスケジュールの活用を見直しました。重要なのは、「自分で今から何があるのかを理解して、活動する場所に移動ができる」ということになります。これまでは、次に行う活動のシンボルコミュニケーションカード(以下、シンボル)を先生が手に持って、本児が自発的に動けるように提示していましたが、実際は常に声かけをしながら誘導している状況でした。そして、この次々に行われる声かけが本児の混乱を招き、「自分で移動する」ができていない状況になっていました。
まず(1) 聴覚情報はすぐにその場から消えてなくなるのに対して、視覚情報はその場に残り続けるというメリットがあること、(2) 情報が残ることによって、本人のタイミングで確認したり、再度情報を確認したりできること。そして(3) 言語指示は伝える人の感情が入ってしまいますが、視覚支援のイラストや写真は感情が入らないことを担任と確認し、視覚支援のメリットを再確認しています。
先述のように、矢継ぎ早な声かけが不適切な行動を引き起こしている要因の一つと判断したので、伝える際の表情や声かけを意識してもらい、シンボルを提示する際は、待つこと、黙って身体誘導をすることを留意してもらい取り組んでいます。感情コントロールが重要であることから、急かさず、心穏やかに表情良く本児に接してもらうといったペアレントトレーニングの技法も伝えています。
次に、それまでのシンボルによるスケジュール提示では、移動の途中で本児の注意の持続が途切れてしまうことがあったので、本児自身に目的地までシンボルを持って移動してもらい、目的地に着いたら、手にしたシンボルと同じイラストや写真を付けたポケットに入れて、マッチングを行う形に変更しました。
本児が移動の途中で止まった際は、急かさず待ち、再度シンボルを提示しながら身体を誘導するようにしました。そして、活動終了時には、使用していた物品を箱に入れるという手続きを取り入れました。また、活動が終わった際は必ずトランジッションカード(スケジュールが提示してある場所に移動するための手がかり)を提示したり、身体誘導をしたりして次の活動が確認できるようにしました。
これまでのスケジュールは教科の時間割になっていて、本児からするとメリットがなく、モチベーションも上がらない状況でした。そのため、ヘッドホンを装着して本児の好きな電車のDVDを観たり、音楽を聴いたりする活動を授業に取り入れてもらうようにしました。
これはモチベーションを高めるだけが目的ではなく、外出先等でもヘッドホンを装着する習慣をつけるためでもありました。実際、ヘッドホンを装着して音楽等を聞けるようになったことで、学校の集団活動や病院の待ち時間に活用することができ、大いに役立っています。また、スケジュールは本児が今からすることの予定、すなわち、いつも担任が声かけをしている個別的なスケジュールを提示してもらうようにしました。そうすることで、より具体的に本児が何をしなければいけないのかを理解して行動することができるようになり、シンボルを見て自分で「移動」ができるようになっていきました。
◆高橋知義(たかはしとものり)
株式会社LikeLab 保育所等訪問支援事業 Switch 管理者、作業療法士
著書「発達が気になる子の脳と体をそだてる感覚遊び」(共著、合同出版) 「発達が気になる子の学校生活における合理的配慮」 (共著、中央法規出版)「教室でできるタブレットを活用した合理的配慮・自立課題」(共著、中央法規出版)等多数。
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