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■□■ 連載:子どものスポーツ傷害について思うこと
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■ まえがき
■□ 新連載:ヤングケアラーたちのものがたり■□■ 連載:子どものスポーツ傷害について思うこと
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■□ まえがき ■□--------------------------
今号は、最近話題になっているヤングケアラーに関する新連載をお送りします。若者支援の専門ソーシャルワーカー事務所SURVIVEの代表である美濃屋裕子氏より、ヤングケアラーの実状例を実例をもとに情報と想いを共有していただきます。
もうひとつの連載はスポカル実行委員長の本田一輝氏より、保護者の方にこそ関心を持ってもらいたい、スポーツ傷害の予防につながるコンテンツをご紹介します。
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■ 新連載:ヤングケアラーたちのものがたり
第1回:「ママはがんばってる」七海のものがたり―
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今回から、私が出会ったヤングケアラーたちについて、事実を元にした完全にフィクションのものがたり形式でお送りしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
◆ヤングケアラーって知っていますか?
家族にケアを要する人がいる場合に、大人が担うようなケア責任を引き受け、家事や家族の世話、介護、感情面のサポートなどを行っている18歳未満の子どものことです。ケアが必要な人は、主に、障がいや病気のある親や高齢の祖父母ですが、きょうだいや他の親族の場合もあります。
令和3年度の調査では中学生の17人に1人、全日制高校生の24人に1人がヤングケアラーとされています。これは私の個人的な印象ですが、定時制高校ではかなり比率が高くなるのではないかと感じています。中学生では1日4時間、全日制高校生では1日3.8時間を世話(ケア)に費やしており、その時間が1日7時間を超えるケアラ―も全体の1割を占めています。
◆ヤングケアラーたちがしていること
ヤングケアラーがしている「世話(ケア)」にはどんなものがあるのでしょうか。
一般社団法人日本ケアラ―連盟によると以下の世話(ケア)があげられています。
・障がいや病気のある家族に代わり、買い物・料理・掃除・洗濯などの家事をしている
・家族に代わり、幼いきょうだいの世話をしている
・障がいや病気のあるきょうだいの世話や見守りをしている
・目を離せない家族の見守りや声かけなどの気づかいをしている
・障がいや病気のある家族の入浴やトイレの介助をしている
・日本語が第一言語でない家族や障がいのある家族のために通訳をしている
・家計を支えるために労働をして、障がいや病気のある家族を助けている
・アルコール・薬物・ギャンブルなどの問題のある家族に対応している
・がん・難病・精神疾患など慢性的な病気の家族の看病をしている
・障がいや病気のある家族の身の回りの世話をしている
こういった家族の世話(ケア)を担うことで、家庭学習や睡眠時間が不足することになり、学業や部活といった学校生活がおろそかになったり、同年齢の友人たちと遊ぶことができず、孤立していったり……と子どもの生活に影響を及ぼしています。さらに、そのことからの学業不振や、家族の世話のために進路を変更せざるを得ないことは、将来の職業選択にもマイナスの影響を及ぼしかねません。
◆「ママはがんばってる」-七海のものがたり―
定時制高校に入学したばかりの稲川 七海(仮名:高1女子)に対する中学校からの申し送りは「ひとり親家庭。学校を休みがち。遅刻多い。真面目でいい子だが成績はいまいち」という1行のみでした。「真面目でいい子」と書かれながら、「学校を休みがち」「遅刻多い」「成績いまいち」というギャップ。これは何かしんどさを抱えている生徒のサインです。
夏休み前、七海の担任より「家庭の事情で、学校生活に影響が出ているので話を聴いてほしい」と面談予約がはいりました。相談室にあらわれたのは、校則通りの膝丈スカートに第一ボタンまでしめられたシャツ、きちんとまとめられた長い黒髪……まるで学校パンフレットに載せられそうなほど、「きちんとした」少女でした。付き添いには、今年初担任だという若い男性教諭の高島先生。
「七海は普段からすごく真面目なんです。全日制にも行けた成績だったんですが、お母さんの世話のために、定時制を選んだんです。中学の時多かった遅刻は減っています。先日、お母さんの急な病院同行のために定期テストが受けられなかったんです。このままだと成績はもちろん、指定校推薦で保育士の専門学校に行きたいという進路希望にも影響が出てしまう。なんとかなりませんか」高島先生は、我が事かのように悔しそうに、拳を握りしめてそう話しました。
「うん……でも、いいよ。どうせ勉強苦手だし、家族のほうが大事だもん。しょうがないよ、家族だし」七海は、自分よりもはるかに憤っている担任に気遣いながら話します。
「誰も悪くないし、しょうがないよ」
「誰も悪くない、は同意だね。でも、しょうがない、はどうだろうか」しょうがないかどうか、一緒に考えてみたいから、もう少し詳しく今の状況をきかせてもらえないかと切り出した私の言葉に、七海はぽつりぽつりと話をしてくれました。
七海が小学校1年生のとき、軽度の知的障がいをもった母親が糖尿病の進行により、片足を切断することになったこと。幼い七海の世話をすることができなくなったため、七海は施設に預けられたこと。早く母親と暮らせるように、施設の中でも自立した生活を心がけていたこと。中学校進学を機に自宅に戻れることになり、七海と母親の二人暮らしが始まったこと。少しおっちょこちょいなところがあるけど、明るい母親が大好きであること。何よりも、ずっと母親と一緒に暮らしたいと願っていること。七海が学校を休んだり、勉強ができないことで、母親が責められることがつらい、母親と引き離されてしまうことが怖い……
「ママはがんばってる」七海は何度も何度も繰り返しました。七海は母親が「がんばってない」と思われたり、七海自身が「いい子」でないと思われたら、「ちゃんとできてない」と見做されて、施設へ戻されてしまうのではないかと思っているようでした。そもそも母親が「がんばっていない」と思われること自体に、深く傷ついているようでした。
ヤングケアラーには、「いい子でなければならない」「家族を責められたくない」といった想いを強く持っている場合が少なくありません。そして、過剰すぎる負担に応えきれなくなったとき、「がんばりきれない」自分が悪いんだ、どうせ自分なんか……と自己肯定感が下がってしまうことがよくあります。
◆ヤングケアラーのための制度は少ない。でも、できることはある。
私は、児童相談所の担当者に連絡を取り、七海と七海の母親を支えている支援機関を集めたケース会議を開きました。ケアマネージャーや訪問看護など母親の支援者と、学校側が定期的に連絡を取り合うことになり、七海が定期テストや学校行事を休まなくてよいように、母親への支援計画を組んでもらえることになりました。また、学校内でも、七海の状況について、学年会で取り上げてもらい、理解のある対応を求めました。
七海とも面談を行い、自分の限界感に気づくためのセルフチェックや、SOSの出し方について話し合いました。大好きな母親との生活を続けつつ、将来の夢を叶えることは不可能ではないこと。そのために必要なのは、七海自身が無理を重ねることではなくて、周囲のサポートを上手に使えるようになることなんだと、時間をかけながら七海は少しずつ理解していきました。
現在、一部の先進的な自治体を除いて、ヤングケアラーのための支援制度はほとんどありません。しかし、既存の制度や支援機関が、密に連絡を取り合い、直接の支援対象である病気や障がいの当事者だけでなく、ヤングケアラーも含めて、家族全体の問題をとらえて、支援をすることで、ヤングケアラーの負担を減らすことは可能です。学校が合理的な配慮をしていくことも大切です。
七海は、この春、高校を卒業し、第一希望の保育の専門学校に進むことになりました。
担任の高島先生は言います。「僕は、最初、正直施設に戻ったほうが、七海のためだと思っていました。そんな単純なことじゃなかった。でも、七海はこれから、同世代と比べても大変な道が待っている。本当に良かったんだろうか、どうすればよいんだろうか、という気持ちもあるんです」
◆美濃屋 裕子(みのや ゆうこ)
1982年生まれ。臨床心理学科卒業後、民間企業へ就職。
その後、紆余曲折を経て児童福祉業界へ。15歳以降の“若者”世代への支援の手薄さに危機感を感じ、若者支援専門のソーシャルワーカー事務所SURVIVEを設立。同代表。高校スクールソーシャルワーカー、公的機関の外国人教育相談のケース会議アドバイザー等を兼任。
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■ シリーズ:子どもゆめ基金のデジタル教材
新連載 :一人でも多くの子どもがスポーツを好きになるサポートを家庭から
第2回 子どものスポーツ傷害について思うこと(最終回)
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みなさんは子どもの頃、保護者の方に「虫歯になるから歯磨きをしなさい!」と注意された経験はありますか?
この経験は、ほとんどの方があるのではないでしょうか?■ シリーズ:子どもゆめ基金のデジタル教材
新連載 :一人でも多くの子どもがスポーツを好きになるサポートを家庭から
第2回 子どものスポーツ傷害について思うこと(最終回)
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みなさんは子どもの頃、保護者の方に「虫歯になるから歯磨きをしなさい!」と注意された経験はありますか?
何故、保護者の方はこのように注意するかというと、自分の子どもが虫歯にならないようにするため、すなわち予防策として子どもに行動を促しているのです。そして、虫歯になることは子どもにとって良くないことという認識を持っていると思います。
では、みなさんは、スポーツ少年団や部活動の指導者から、例えば「その姿勢は膝の靱帯を損傷する危険があるから直しなさい!」と注意されたことがあるでしょうか?
残念ながら、私の周りにはそのように注意を促された経験をもつ保護者はほとんどいませんでした。みなさんは、どうでしょうか?
虫歯とスポーツ傷害を比べるのはナンセンスかもしれませんが、保護者の方の意識として子どものスポーツ傷害に対する予防意識が虫歯予防の歯みがきのように浸透すれば、子ども達はより楽しくスポーツに取り組めるのではないかと感じています。
子どものスポーツ傷害の発生件数は、スポーツ外傷・障害予防ガイドブック※1によると小学校高学年(10~12歳)の男女だけでも年間約51,500件の報告がされています。未報告分や小学校低学年生、中学生を含めるとさらに多くの子ども達がスポーツ外傷・障害を負っていることになります。
※1 スポーツ外傷・障害予防ガイドブック 公益財団法人スポーツ安全協会・公益財団法人日本体育協会 監修
私の実体験としても、知り合いのバスケットボール指導者の指導現場を視察させていただいた時に、まだ小学生なのに膝の痛みのためサポーターをしている子どもの多さにびっくりしました。そして、そのうちの何人かの保護者の方にお話をさせていただきましたが、「サポーターをつけさせているから……」とのこと。私はそのお話を聞きながら、失礼ながら「サポーターをつけていても、膝が痛いのは治らないよな。」と思ってしまいました。サポーターはあくまで予防や痛みの緩和を目的にしたもので、読んで字のごとく「サポート」する道具なのです。その子の痛みの根本的な解決にはつながらないのです。そのことを認識している保護者の方はどれくらいいるのでしょうか?
また、指導者の意識はどうでしょうか?近年、様々なスポーツ協会や団体から「子どものスポーツ傷害」について報告や研究、改善策などが発表されていますが、まだまだ浸透していないのが現状ではないでしょうか?練習メニューをこなすこと、休まずたくさん練習することが重要視され、子ども達の「痛み」は二の次になっているのではないでしょうか?
こんな言葉は聞いたことありませんか?「痛いなら休んでなさい。」
確かに、痛みが取れるまで練習を休んでいれば症状は改善されますが、多分その子は練習を再開したらきっとまた同じ症状が現れます。理由は、根本的な改善を施していないからです。そして、なにより上手くなりたいと練習を頑張ってきたその子は、膝の痛みより仲間が練習している姿を体育館の片隅で一人で見ているほうが心が痛むかもしれません。
その時、保護者の方は何をしてあげられますか?
子どものスポーツ傷害の根本的な原因は(突発的な外傷を除くと)、ほとんどの場合が筋肉・関節等の柔軟性の低下にあるとも言われています。特に成長期の子どもは、筋肉の成長よりも先に骨の成長が起こります。そして、骨の成長に筋肉の成長が追いつかず、筋肉が引っ張られた状態です。この状態を続けたまま運動を繰り返し関節を動かすことで、疲労が蓄積してオーバーユース(いわゆる使いすぎ)の状態となり、骨と筋肉の結合部の腱等が炎症をおこし痛みを発生させます。これらの症状の改善策は、筋力を鍛えると共に、筋肉の柔軟性を維持することが非常に重要と言われています。
体の柔軟性が低下することで痛みの原因になるばかりか、関節の可動域が減少しよりよく体を動かせず、結果、子どもの上達を妨げることにつながってしまいます。
「出来ないから、出来るへ!親子で学べるスポーツコーチングガイド」※2では、一人でもスポーツ傷害で苦しむ子どもが減り、万全な状態でスポーツに取り組めるように、「子どものスポーツ傷害の基礎知識と対処法」というコンテンツを盛り込んでいます。
※2 出来ないから、出来るへ!親子で学べるスポーツコーチングガイド
虫歯予防と同様に、一人でも多くの保護者の方が「スポーツ傷害」に関心をもち、お子さまのプレーだけでなく、日頃のケアにも配慮していただければ、痛みを我慢しながらプレーを続ける子どもが減り、スポーツがより楽しくなるとの私たちの想いです。
本教材は主なスポーツそれぞれに多くみられる「スポーツ傷害とその対処法」をわかりやすく解説していますので、是非参考にしていただければ幸いです。
◆本田一輝
スポカル実行委員会 実行委員長
株式会社セブンスギア 代表取締役2012年より北海道札幌市を中心にスポーツ&カルチャーを無料で体験できるイベント「スポカル」を企画運営。スポカルは、年間で約8万人強の来場者がある親子に人気のイベントに成長。野球・バスケ・サッカーなどのメジャースポーツからセパタクローやスポーツチャンバラなどのマイナースポーツやダンス・書道・茶道・ヨーヨー・けん玉・ドローンなどのカルチャーも一度に体験出来るのが特徴の無料イベントです。
■□ あとがき ■□--------------------------
次号は、12月3日(金)の予定です。