「働く」を支えてくれる地域資源や支援はどんなものがあるの?

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2021.10.22

「働く」を支えてくれる地域資源や支援はどんなものがあるの?

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■   連載:「働く」を支えてくれる地域資源や支援はどんなものがあるの?
■□  連載:私が変わることで現状を変えたい
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 ■ 連載:ちょっとしたことで上手くいく 障がいのある人の「働く」を知る
                    第3回 「働く」を支えてくれる地域資源や支援はどんなものがあるの?(最終回)
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前回は雇用する企業が採用にあたって見ているポイントをもとに、「働く」に向けてどのような準備をしておくと良いのかについてお伝えしました。

近年、発達障害や精神疾患を持つ人の就職件数は増加傾向にあります。とはいえ雇用する企業側はまだまだ試行錯誤の段階です。最終回の今回は「働く」を支えてくれる身近な支援機関についてお話します。

支援機関といってもそれぞれに「役割」が異なります。いろいろな支援機関がありますので、ここでは「働く」ことを軸に5つの代表的な支援機関をご紹介します。それぞれの特徴を理解しうまく活用していきましょう。

1)地域若者サポートステーション(通称:サポステ)
2)発達障害者支援センター
3)就労移行支援事業所
4)障害者就業・生活支援センター(通称:ナカポツ)
5)社会福祉協議会(生活あんしんセンター、地域福祉権利擁護センター等)

では一つずつ見ていきましょう。

1)地域若者サポートステーション(全国177箇所)
障害の有無・種別に関係なく、「就活一歩手前」の悩みをもつ若者のための支援機関

「障害のこともあるけれど何よりも働くことを中心に相談したい」という場合には、「地域若者サポートステーション」を利用してみましょう。利用料は基本無料です。

生活の安定や人生設計を考える上で、就職は大事なポイントになります。保護者の方々にとっても本人にとっても、「働くこと」は非常に大きなテーマになっていることでしょう。しかし、
・社会に出ることに自信がない
・就職活動って何をしたらいいかわからない
・就職活動をやったけれども上手く行かなかった
・面接など企業とのやりとりへの不安で、応募ができない
というような状況で無理に動いても上手くいかずに落ち込んでしまう可能性があります。仮に仕事が決まっても、自分のこと(障害の症状や特性含めて)をよくわからないままに就職してしまうことによって、職場で行き詰まってしまう人もいます。

サポステでは、広く「今仕事についておらず、働くことになやむ若者」(対象年齢:15~49歳)を対象に、カウンセリングや就職についての相談にのってくれます。また、各種プログラムを受講することができます。

2)発達障害者支援センター(全国97センター)
発達障害をもつ方の駆け込み寺、子ども・大人どちらの相談も受け付け

発達障害者支援センターは、発達障害の方々やそのご家族にとって支援の入り口となる場所です。就職に限らず色々な相談をしていきたいという場合には地域の「発達障害者支援センター」を訪ねてみましょう。利用は基本無料です。

発達障害者支援センターは、まだ診断や手帳がない方であっても相談を受け付けてくれます。
「発達障害のことでとにかく困っているけれど、何に困っているのか切り分けがつかない」
という場合にも話を聞いて問題の整理をしてくれるところです。本人だけでなくご家族の相談も聞いてもらえますので、
「本人に危機感がなく、動いてくれない」とか
「本人とどう接したらいいかわからない」
といった相談も行えます。また、必要に応じて本人のニーズにあった専門の支援機関や利用できるサービスを紹介してもらえます。

3)就労移行支援事業所(全国3,000事業所以上)
障害者向けの職業訓練、就労支援施設

就労移行支援事業所は職業訓練と就労支援を行う施設です。仕事の訓練、職場のマナー、書類の書き方・面接のコツなどの就職活動、そして就労後の職場定着までをサポートしています。
利用にはお住まいの自治体が発行する訓練等給付の受給者証が必要です。ほとんどの方が無料で利用できますが、前年度の収入によっては一部自己負担金が生じることがあります。
※詳しくはお住まいの自治体の障害福祉課などへご相談ください。
就労移行支援事業所は、最大で2年間の利用が可能です。

さてこの就労移行支援事業所ですが、どんなサービスを行うかについては個々の施設に任されています。つまり施設によって訓練内容がまったく異なるのです。パソコンを使った訓練が得意なところ、手作業系の訓練が得意なところがあります。また、発達障害の方が多いところ、うつ病の方が多いところ、統合失調症の方が多いところというように利用者の構成にも違いがあります。その結果、どのような障害への対応が得意なのかも施設によって異なっているのです。

ほとんどの施設では事前の見学や体験を受け付けています。施設の雰囲気や訓練内容、職員の対応が自分にあっているかを確かめるため、ご利用の前に必ず見学・体験されることをおすすめします。支援センターに頼めば、見学や体験の申し込みなども仲介してくれます。

4)障害者就業・生活支援センター(全国336センター)
障害者の職業生活における自立を図るため、就労と生活の両面から一体的な支援を行う
※東京23区は各区ごとに「就労支援センター事業」としてセンターを設置

就労前から就労後まで、就労面だけではなく生活面も含めて一体的に支援するのが特徴です。名称の就業と生活の間に「・」が入っているために、通称ナカポツと呼ばれています。本人からだけではなく、その家族や雇用している企業からの相談にも応じています。

前回お伝えしたように、雇用している企業も職場を離れたプライベートなところで起こる問題のフォローはできません。しかしながら、生きていれば日々生活面でも様々な変化が起こります。そうしたときに相談できる先として、次にご紹介する「生活あんしんセンター」とあわせて、お住まいの地域の"ナカポツ"がどこにあるのかを知っておくと良いと思います。

5)社会福祉協議会(生活あんしんセンター、地域福祉権利擁護センター等)
社会福祉協議会内にあり、日常生活支援の一つとして金銭管理も支援してくれる

生活あんしんセンターや地域福祉権利擁護センターは、高齢や障害のため金銭管理の不安がある方への支援を行う機関です。相談のみなら無料です。

今はお子さんにかかるお金については保護者である皆様が管理されている場合が多いと思います。いずれお子さんが就職などで独立されるにあたって、
「自分で金銭管理ができるのか心配だ、不安だ」
という保護者の方も多いのではないでしょうか。電気や水道の料金を払い忘れてしまわないか、保険や積立などの大事な書類を、失くしてしまったりしないか、等です。

これらのセンターでは以下のようなことをしてくれます。
・貯金通帳や保険証書など、重要書類の預かり
・預貯金の出納代理・代行
・公共料金の支払い代行
・金銭管理に関わる自宅への定期訪問
・自宅訪問の場合は1回1,250円~2,500円くらい
・書類預かりは250円/月程度
詳細はお住まいの自治体の社会福祉協議会にお問い合わせください。
 
以上、今回は代表的な支援機関についてご紹介してきました。他にも支援をしてくれるところはまだまだあります。まずはお住いの地域に「働く」ことを支援するところとしてどのようなところがあるのかを調べることから始めてみてください。

さて、いかがだったでしょうか?
この3回のシリーズを通じて少しでも皆さんのお役に立つ情報を届けられていれば幸いです。

◆對馬陽一郎
特定非営利活動法人さらプロジェクト
就労移行支援事業所/就労定着支援事業所 さら就労塾@ぽれぽれ 職業指導員
對馬 陽一郎著、林 寧哲 監修、翔泳社 
對馬 陽一郎、安尾 真美著、林 寧哲 監修、翔泳社


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 ■ シリーズ:子どもゆめ基金のデジタル教材
           新連載   :少年が自分の人生を決めていくために
                          第3回 私が変わることで現状を変えたい(最終回)
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前回は、長男の友達のヤンチャ君たちと、私の家族との奇妙な同居生活から気づいたことをお伝えしました。

そんなある日、私が息子の非行で疲弊しきっている頃、ある方にこう言われました。
「お母さんが息子さんに負い目を感じているうちは、息子さんは前に進めない。これだけ向き合っているんだから自信をもって」と。

私はハッと我に返りました。たしかに私は、離婚したことや、寂しい思いをさせていることに対し、自分自身にずっと負い目を感じ続けていました。

それを身近で一番に感じていたのが息子でした。その一言にとても気持ちが楽になったというか、救われたというか・・・

それからの私は、私が変わることで息子も変わってくれる!と根拠のない自信を持てるようになり、どんなことがあっても息子を見放さないと腹を括ることができ、強くなれた気がします。
同時に、自分自身で新しい人生を創りたいという決意も自然にできました。
    
・私が変わる (法人設立へ)
私は、非行問題を、見て見ぬふりをするぐらいなら、自分自身で子どもたちの居場所をつくろう!と考えました。

温かい会話を通して、少年たちに信じてもらえる大人になれたらいいな。
居場所の中で、温かいご飯を囲み、生活習慣を整えてあげられたらいいな。
温かい雰囲気の中で就労支援ができたらいいな。
そんな場所をつくろうと思い立ちました。

そんな私の想いに賛同してくれる仲間もみつかり、私はひとりじゃないんだ!と沢山のパワーをもらいました。

そして、方向性もまだハッキリと定まらない中、とにかくおかえりと迎えてあげられる場所をつくりたいとの想いのままに、一般社団法人を立ち上げました。

・子どもゆめ基金への応募
これは今でも不思議に思うのですが、自分が動こう!と決めて法人を立ち上げてから、次々といろいろな話が入ってきました。
その中のひとつに子どもゆめ基金の、教材開発事業があげられます。

非行少年はキャリア教育の機会を得られないまま、ドロップアウトをしてしまい、非行に走ることが多いのが現状です。

私は非行少年たちとの会話から、職業の選択肢が建設業しかないと諦めてしまっている少年が多いことも気づかされました。それは決して建設業が駄目だという訳ではなくて、いろいろな選択肢があることすら知らない少年がいるということです。

子どもたちはいろいろな可能性をもっています。
それぞれに適した仕事が必ずあるはずなのです。

それを、子どもゆめ基金の教材開発で表現できないか?と思ったのです。

過去に非行歴のある、元ヤンチャ君が現在、様々な職種で社会の中でしっかりと働いている場面を取材し、リアルな映像として映し出したり、自立するために必要な費用などの豆知識を、できるだけわかりやすくまとめ、DVDを通して視聴者に見ていただけるようにしました。

このDVDについては、非行に関わる現場だけではなく、公立の中学校でもキャリア教育に良いと、お褒めの言葉をいただくこともありましたが、やはり、一番に気づきをもたらしたい相手は、非行少年たちだということには変わりありません。

少年らに観てもらうことで、今の自分、未来の自分へと、選択肢の幅を少しでも増やしてもらい、何かしらの気づきをもたらすことができれば、制作した私たちの想いも報われることでしょう。

・子どもゆめ基金の教材開発の2年間
子どもゆめ基金の教材開発事業によって、DVD制作を2年継続して制作させてもらいました。その間、本当にいろんな人に出会うことができました。

特に2年目は地元である沖縄を飛び出し、東京と名古屋でも取材をさせていただきました。

普段通りの生活をしていたら、絶対に知り合えないような人に出会えたり、人から人へと繋いでもらえたりと、ミラクルな時間を過ごさせてもらいました。

そして何よりも、私たちのやりたいことは、けっして夢物語ではなく、既に似たようなことをされている方もいるということに、勇気をもらいました。

子どもゆめ基金の教材開発事業の2年間は、教材制作を通して、私たちの進むべき道を目の当たりにした、学びの2年間でもありました。
あやふやだった眼の前に一本の大きな道が現れたようでした。

・日本財団 子ども第三の居場所事業
この事業は、小1~小3までの児童を対象とし、居場所の中で、子どもたちの経験や体験不足を補いながら自己肯定感を高め、子どもの視点に立ち、子どもの育ちをサポートするという目的をもっています。

放課後から子どもたちを預かり、遊び・学習・食事・入浴と支援を行い、子どもたちが安心して過ごせる環境を整えています。

条件の合う建物がなかなか見つからず、開所までかなりの時間を要してしまいましたが、現在では、利用する子どもたちも増え、関係機関や地域の方々、スタッフにもめぐまれ、子どもたちと毎日楽しく過ごせています。

更に、今年度より、行政から同様の事業も受託することができ、現在、2か所の居場所運営を展開しています。

・自分の進むべき道が見えた!
私たちの法人名は「HOMEおかえり」です。
どんな時でも、誰でも、自分の家のように帰ってきてもらいたい。
「おかえり」と温かく迎えてあげたい。
そんな想いからつけた名前です。

HOMEつまり、家は温かさが大切です。「温かい会話」「温かいごはん」「温かい雰囲気」の中で、寄り添いながら、子どもたちの次のステップを見出してあげる。それが私たちのできる支援だと考えています。

現在、子どもたちのHOMEは完成しました。次なる目標は、障がいをお持ちの方のHOMEをつくることです。そして、非行少年のHOMEへとステップアップしていければと考えています。

私たちが進むべき道はしっかりと見えています。少し遠回りをしたのかもしれないけれど沢山の方々の協力で、着実に前に進んでいます。本当に感謝しています。

・まとめ 
「諦めずにチャンスをつくり続けたい」これは私たちが常に考えていることです。

100点じゃなくていい。30点でもいい。
コツコツと、自分たちにできることをまずやってみる。

息子が非行に走った頃は、その現実さえ恨みましたが、今はその経験がすべて役に立っていることに驚いています。点と点が、時を重ねるに連れて線になり、私のしんどかった経験、体験も今となっては大切な宝物だと感謝しています。

私は直感と感情で行動するタイプなので、周りが大変かもしれませんが、感謝を忘れずにこれからも猪突猛進で進みたいと想います。

支援する側、される側だと差別するのではなく
一緒に過ごせる
温かいHOMEを増やし、笑顔をたくさんつくっていきたいです!

※子どもゆめ基金助成で開発したデジタル教材は下記でご覧ください。
【2019年度作成版】~扉を開こう~
【2020年度作成版】~君の仕事を見つけよう~

※ご希望の方にはDVDを無料で郵送します。下記フォームよりお申込みください。
(申し込みはこちら>>

◆赤平若菜
一般社団法人HOMEおかえり代表理事
2012年 保育士として勤務
2014年4月~2020年3月 うるま市役所児童家庭課 家庭児童相談員(嘱託職員)
2018年8月 一般社団法人HOMEおかえり設立
2019年4月 子どもゆめ基金教材開発事業受託
2020年4月 同上(2回目)
2020年7月 日本財団 子ども第三の居場所事業開始
2021年4月 行政受託 子どもの居場所事業開始

■□ あとがき ■□--------------------------
レデックスが開発した製品「視覚認知バランサー」が、東京都立盲学校で使われている実践が収録された書籍が刊行されました。朝日新聞社著、Gakken出版の『学びに凸凹のある子が輝く デジタル時代の教育支援ガイド』です。子ども・保護者・教師からの100の提言という副題が示すように、さまざまな困りを持つ子の支援に関する情報が収録されています。書店で見かけられましたらお手にとってご覧いただければうれしいです。

次号は、11月5日(金)の予定です。

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