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■□ まえがき ■□--------------------------
2021年の1回目の配信となります。今年もご愛読よろしくお願いします。
さて、今回から新しい連載が始まります。障害や支援という概念を根本的に見直すべきという考えで、ぜひ読者の皆さまに理解していただければと思います。
今年は、様々な領域について、その理解を深める連載と並行して、国の少なくない予算を投じて開発され公開されているデジタルコンテンツを、シリーズとして紹介していく予定です。読むだけでなく、いつでも使える形になっているデジタルコンテンツの数々を、実際にご活用いただいて、皆様の生活に役立てていただければと思います。
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■ 新連載:合理的配慮の誤解を解く鍵は「社会モデル」にある
第1回 障害の「社会モデル」は世界の常識
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このエッセイでは、全4回にわたって、合理的配慮を提供する時、読者のみなさんに絶対におさえておいてほしい考え方として、障害の「社会モデル」を紹介していきます。第1回では、「社会モデル」と切り離しがたい関係にある「バリア」という現象を入り口にしながら、「社会モデル」の要点と、それが登場してきた背景について簡単に説明します。
■ まえがき
■□ 新連載:合理的配慮の誤解を解く鍵は「社会モデル」にある
■□■ 連載:主体的な学びを支援する360度映像
---------------------------------------------------------------------------------------------------■□■ 連載:主体的な学びを支援する360度映像
■□ まえがき ■□--------------------------
2021年の1回目の配信となります。今年もご愛読よろしくお願いします。
さて、今回から新しい連載が始まります。障害や支援という概念を根本的に見直すべきという考えで、ぜひ読者の皆さまに理解していただければと思います。
今年は、様々な領域について、その理解を深める連載と並行して、国の少なくない予算を投じて開発され公開されているデジタルコンテンツを、シリーズとして紹介していく予定です。読むだけでなく、いつでも使える形になっているデジタルコンテンツの数々を、実際にご活用いただいて、皆様の生活に役立てていただければと思います。
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■ 新連載:合理的配慮の誤解を解く鍵は「社会モデル」にある
第1回 障害の「社会モデル」は世界の常識
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このエッセイでは、全4回にわたって、合理的配慮を提供する時、読者のみなさんに絶対におさえておいてほしい考え方として、障害の「社会モデル」を紹介していきます。第1回では、「社会モデル」と切り離しがたい関係にある「バリア」という現象を入り口にしながら、「社会モデル」の要点と、それが登場してきた背景について簡単に説明します。
私は現在、東京大学の教育学研究科にあるバリアフリー教育開発研究センターで働いています。読者のみなさんは、バリアフリーと聞くと真っ先に、障害者や高齢者などが自由に移動できるようになるために、段差をなくしたり、エレベーターを設置したりすることを思い浮かべるのではないでしょうか。車イスユーザーなどの移動を妨げている段差が「バリア」で、スロープなどを設置してこの段差をなくしていくことが「バリアフリー」だと理解しているでしょう。一般的にバリアフリーとは、バリア(社会に参加することをさまたげているもの)を取り除くことを意味しますので、この理解は間違っていません。
しかしバリアという現象には、段差のような物理的なバリア以外のものも含まれます。たとえば「特定の人の入学を認めない」といった制度的なバリア、「特定の人たちに伝わりにくい情報の提示の仕方をする」といった文化・情報面のバリア、「特定の人たちに否定的なレッテルを貼る」意識上のバリアなどです。このように、バリアにも様々な種類のものがあることをふまえると、バリアに直面するのは障害者や高齢者だけではないということがわかります。むしろ、バリアとは社会や組織の環境、制度、ルールなどが設計・設定されるときに考慮に入れられていない人びとが直面させられてしまう不利や困難のことだと理解することができます。
さて、このバリアという現象に着目してきた学問領域として最もよく知られているのがディスアビリティ・スタディーズ(障害学)です。そして、ディスアビリティ・スタディーズの基礎に据えられているのが「障害は社会的につくられるものだ」という考え方-障害の「社会モデル」-です。おそらく読者のみなさんの多くは、学校教育やメディアを通して「障害は、その人の心身機能の問題だ」と学んできたと思います。このため、「障害は社会的につくられる」という考え方をすんなり受け入れることは難しいでしょう。そこで、次のような問いを考えることから始めてみることにしましょう。
ある会議に、英語の話せない日本語ネイティブのAさんと、日本語の話せない英語ネイティブのBさんがいるとしましょう。この二人のうち、どちらが「言葉の壁(バリア)」を経験すると思いますか?
この問いに対し、みなさんの多くは「この二人がどのような場に置かれているのかによって、答えは違ってくる」ということに気づくでしょう。もしこの会議が、日本語でのやり取りを中心に進められる場だったなら、日本語の話せないBさんがバリアを経験することになります。しかし逆に、英語中心のやり取りが行われる場だったなら、英語の話せないAさんがバリアを経験することになります。そして、日英の通訳が入った場だったなら、AさんもBさんも大きなバリアを経験しなくてすむ可能性が高くなります。
ここからもわかるように、バリアを経験するかどうかは、その人の特徴、特性、能力(この場合、どの言語を話せるか)によってというよりは、その人がどのような場に置かれているのかによって決まります。この意味で、バリアは絶対的なものではありません。特定の差異をもっているからというだけで、いつでもどこでも同じバリアに直面するわけではありません。むしろ、バリアとは相対的なものです。その人がバリアを経験するかどうかは、その人の周りの環境がどうなっているのかによって変わりうるのです。
このように、障害のあるなしを相対的なものとして捉える見方のことを、障害の「社会モデル」といいます。私たちは、障害者が不利や困難を経験している時、その原因はその人の心身機能や特性にあるとつい考えがちです。たとえば、障害者が一人で移動することが難しい、学校で勉強したり会社で働いたりすることが難しいのは、その人が立って歩けなかったり、頭がうまく働かなかったり、耳が聞こえなかったり目が見えなかったりするからと考えがちです。ディスアビリティ・スタディーズは、こうした考え方を障害の「個人モデル」と呼んで批判の対象にし、これに代わる考え方として、障害の「社会モデル」を提唱しました。これにより、障害者の不利や困難の原因は、障害のある人の存在を考慮に入れず設計・設定されてきた社会の環境、制度、ルールなどの側に見出すことができるようになったのです。
「社会モデル」の考え方は国際的にも広まり、現在では多くの人たちが「よく考えてみると、『社会モデル』の方が、実際に起きている事柄を適切に説明できる」と考えるようになっています。事実、2006年に国連で採択された障害者権利条約は「社会モデル」の考え方をふまえた内容になっています。いまや「社会モデル」は世界の常識だと言えるでしょう。
では、この考え方を、学校現場で、あるいは合理的配慮を提供する時に、どのように使っていけばよいでのしょうか。次回以降、3回にわけて、この問いに答えていきます。
◆飯野 由里子
東京大学大学院教育学研究科
附属バリアフリー教育開発研究センター
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■ シリーズ:子どもゆめ基金のデジタル教材 「バーチャル体験学習」
第3回 教育現場への展開に向けて(最終回)
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1.360度映像に対する教員の評価
バーチャル体験学習は、普段はなかなか見ることができない日本各地の"見どころ"を360度映像でご紹介するプロジェクトです。新型コロナウイルスが蔓延する中で、家庭で気軽にいろいろな現場を疑似体験できる教材として多くのメディアに取り上げられています。
第1回では360度映像の操作性と社会見学や野外学習などの内容について、第2回では360度映像が"主体的な学び"を進めるうえで有用であることをご紹介させていただきました。そして、今回は360度映像に対する教員の方々の評価からお話しさせていただきます。
当初、バーチャル体験学習はYouTubeのチャンネルの一つとして配信していましたが、ほとんどの学校ではYouTubeの利用を禁止しています。そこで、学校での利用用途や実用性を評価するために、試験的にホームページを開設して東京都内の小学校を対象にアンケート調査を行いました。本調査では、各学校に在籍する教員1名に360度映像を最大で5つまで視聴してアンケート用紙(※図1)に回答してもらうように依頼し、87校から有効な回答を得ました。
※図1
さて、それでは結果をみていきましょう。まず、映像時間に関してですが、本プロジェクトが提供する360度映像の時間は小学3年生ぐらいの集中力に配慮して5分程度以下としており、アンケートの結果でも段階評定法の5件法の3の項目「(長くも短くも)どちらともいえない」と回答した数が一番多く、概ね想定内の回答でした。
次に、授業における利用に関して※表1の結果をご覧ください。授業で「利用したい」と回答した割合は87%(76名/87名中)でした。そして、利用方法について、「教員が説明をしながら(利用する)」と回答した割合は44%、「教員の説明なしに(利用する)」と回答した割合は52%であり、教員の主導による学習と、児童が主体となる学習の両方を想定していただきました。なお、「利用したくない・利用できない」と回答した13%(11名/87名中)の内、8名は「学校の教育活動やカリキュラムに沿う内容を見つけにくい」などの理由であり、その他の回答も360度映像そのものを否定するものではありませんでした。
※表1
2.リニューアルしたホームページの紹介
小学校の教員を対象としたアンケート調査では、当プロジェクトが提供する360度映像の時間は概ね妥当であり、多くの方に授業での利用を希望していただいていることが伺えました。その一方で、目的の映像を見つけにくいなどのご意見もありました。また、ICTの学習環境を整備することは喫緊の課題となっていることを考慮し、当プロジェクトのホームページをリニューアルすることにしました。
ホームページでは、文部科学省の新学習指導要領やその解説を参照して、教育目的で利用できそうな内容を選定して載せています。キーワードを入力して選択できる他に、「教科」や「学年」を選択して見たい/見せたい360度映像を絞り込めることが大きな特徴であり(※図2)、インストールの必要なく、主要なウェブブラウザ(Google Chrome、Microsoft Edge、Safari、Firefox)で視聴することができます。
※図2
さて、3回にわたってバーチャル体験学習の取り組みをご紹介させていただきましたがいかがだったでしょうか?新型コロナウイルスの影響によって中止を余儀なくされている体験活動ですが、そもそも実施するには時間や費用がかかり、地域や障害による不平等などの課題があります。本プロジェクトはそれらの解決のために新たな体験活動の在り方についての試行も進めていますので、またの機会がございましたらご紹介させていただきます。ご期待とともに温かく見守っていただければと思います。本プロジェクトが日本各地の見どころを知るきっかけとなり、未来を担う子どもたちの大きな成長の一助となることを願って。
博士(理学)、学術普及連合会 代表
枚方市 スマートシティ推進アドバイザー
情報通信研究機構 イノベーションプロデューサー
大阪工業大学 情報科学部 客員准教授
情報通信技術(ICT)を専門とし、近年はICT教育の推進や地域課題を解決するための活動を精力的に進めている。
■□ あとがき ■□--------------------------
次号は1月29日(金)です。