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■ 連載:体験できないことは“バーチャル体験学習”で
■□ 連載:コロナ禍 Special Needsのある子供たち
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■ シリーズ:子どもゆめ基金のデジタル教材 「バーチャル体験学習」
第1回 体験できることがある、体験できないことは“バーチャル体験学習”で
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戦後の学習指導要領の改訂の度毎に社会見学や野外学習といった体験活動の重要性が唱えられており、2017・2018年に改訂された学習指導要領でも「実感しながら理解することができるよう、各教科等の特質に応じた体験活動を重視し、家庭や地域社会と連携しつつ体系的・継続的に実施できるよう工夫すること」などと明記されています。
しかしながら、限りある学校の予算や時間において体験活動をこれ以上増やすことは容易ではありません。また、子どもの障がいや病気の有無、あるいは住んでいる地域によっては体験できる内容に差異があるため、教育の不平等も指摘されています。加えて、世界中に新型コロナウイルスが蔓延し、第3波が第2波を超える勢いであることからも、ほとんどの体験活動はこのまま長期にわたって再開できないかもしれないという懸念が出てきました。読者の皆様の中にも、職場や自然に関わる体験活動などに参加され、その後の人生に大きな影響を及ぼしたという方がいらっしゃると思います。しかし、今の子どもたちにはそういう学習の機会が極端に少なくなっているのです。
2.コロナ禍で注目を集める「バーチャル体験学習」
さて、今回ご紹介させていただくバーチャル体験学習というプロジェクトは、新型コロナウイルスの影響で世界的に多くの学校が休校となった最中において、家庭で気軽にいろいろな現場を疑似体験できる教材として多くのメディアに取り上げられました。本プロジェクトは、筆者による幾度もの技術実証を経て、職場の様子を疑似体験するための教材を制作することを目的に、平成30年度に子どもゆめ基金の助成を得て実施したのが始まりです。その後、職場に限らず日本各地の“見どころ”を360度映像として、現在は100以上のコンテンツをYouTubeなどから順次配信しています。
※バーチャル体験学習
360度映像は、パソコンの画面をドラッグ、もしくはタブレットの画面を指でスライドさせることで周りの様子を確認することができたり、端末にジャイロセンサーが搭載されていれば、端末を向けた方向の映像を表示させたりすることができます。見たいところを見られるので、通常の映像よりもその場にいるような臨場感をもって視聴できます。それでは、次の節でバーチャル体験学習のコンテンツをいくつかご紹介させていただきます。
3.コンテンツの紹介
一つ目は職場見学の例としてアルミケースの製造現場をご紹介します。この会社は、精神障がい者の就労を支援し続けて長期就労を実現しています。就労するにあたって、どのような職場環境で、どのような作業をするのかを事前に経験しておくことは、離職率が高いといわれる障がい者にとってもとても重要であると考えています。しかし、実際には多くの職場を見学するのは難しいと思います。そのため、本プロジェクトでは、より簡単に多くの職場を知ってもらうための“きっかけづくり”として、各コンテンツの内容は浅くし、その分だけ多くの映像を制作しています。
現在は、障がい者就労の例としては一つだけとなりますが、より多くのコンテンツを配信することで職場定着率の向上にもつながれば幸いです。
二つ目は社会見学の例として貯留管の中をご紹介します。貯留管とは、集中豪雨のときに雨水を一時的に貯めるための施設ですが、整備が完了すると雨水が入るため、一般には立ち入ることができません。そのため映像としても大変貴重です。360度映像によって周りを見ることができるため、施設がどのような構造になっているのかがお分かりいただけるかと思います。
★須崎海岸
世の中には体験できることと体験できないことがありますが、容易に体験できないことについては、本プロジェクトがお役に立てればと思います。まだ産声をあげたばかりのプロジェクトですが、発展途上であるからこそ社会のニーズに柔軟に対応できればと考えております。
さて、いかがでしたでしょうか?見たいところを自由に見ることができる360度映像。実はこの操作性が“主体的な学び”と相性が良いんです。次回は360度映像による主体的な学びと実践例についてご紹介させていただければと思います。
◆今井 弘二(Koji Imai)
博士(理学)、学術普及連合会 代表
枚方市 スマートシティ推進アドバイザー
情報通信研究機構 イノベーションプロデューサー
大阪工業大学 情報科学部 客員准教授
情報通信技術(ICT)を専門とし、近年はICT教育の推進や地域課題を解決するための活動を精力的に進めている。
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■ シリーズ:アメリカ便り コロナ禍
第3回 Special Needsのある子供たち
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コロナ禍におけるアメリカ・マサチューセッツ州からのレポートの第3回目です。
今回の連載の最終回では、Special Needsを持つ子(障がい児)たちへの対応がどうなっているかをお伝えしたいと思います。
3月中旬に、州知事の決定の下、全ての学校が閉校措置となりました。それにより、基本的には障がいを持つ子供たちも自宅隔離となりました。
しかし、特に障がいの度合いが重い子達で、家族から離れて暮らしている子どもたちなどは、すぐに家に戻ることが難しい場合もあります。
そのような子供たちと家族のために、エマージェンシー・ケアとして特別な届出を州に出した上で運営をした学校(私立の学校)もありました。保育園なども、医療従事者、警察・消防などのファースト・レスポンダーの家庭向けにエマージェンシー・ケアとして運営していたところもありました。
前回のレポートでお伝えしたように、閉校措置を開始した直後の、公立の学校に通う子供たちの家庭学習のサポートは、市町村によって異なりました。
9月からの新年度は、IEP(Individualized Educational Plan, 個別学習支援計画)を持つ子や障がい児教育学級に在籍する子は、サポートの必要性の度合いが高いことから、優先的に登校することができています。
通常学級に通う子供たちにはリモート学習のみを行っている市町村でも、障がい児学級だけはコロナ禍以前と変わらず、登校して学校内で授業やセラピーを直接受けることができています。
リモートで自宅から学習するというのは、障がいがあってもそうでなくても、自己管理能力を求められるので、特に学年の低い子供には難しいことです。課題のペース配分を自分で考えて、おもちゃ、テレビ、ゲームなどの誘惑から集中を切らすことなく机に向かわなければなりません。
障がいを持つ子にとっては、ルーティーンに沿って、整った学習環境の中で学ぶことはとても重要です。
家庭で、保護者が働きながら全てを管理するのは負担が大きいので、マスクの着用や手洗いはもちろんのこと、日々の健康チェックなどをし、細心の注意を払って、登校を選ぶ家庭が多いようです。
もちろん、登校させるのが不安な場合は、リモート教育を選ぶことも可能です。
通常学級の子と同様に、クラスの全員が集まる朝の会などのソーシャルタイムや、音楽や体操の時間があったり、IEPに作業療法、運動療法、言語療法などがあったりする子は、ビデオ会議ツールを使ってセラピストと1対1の時間をもつこともあります。
必要な教材や道具は事前に配布日が指定され、取りに行くことができます。パソコンや教材をはじめ、バランスボール、ダンベル、ヨガマット、粘土、ハサミなど、その子に必要なもの、学校で好んで使っているものも貸し出してくれて、セラピストが画面の向こうの保護者やシッターさんに指示しながら行っています。
在宅の時間が多いことで体幹が弱ってしまうことのないように、また刺激を求めての常同行動、反復行動が増えないように、毎日運動を確保するようアドバイスを受ける子が多いと聞いています。
保護者面談や各種アセスメント、IEPミーティングなども、現在はビデオ会議で行っていることがほとんどです。
最近、担当する幼児のIEPミーティングに参加する機会がありました。実際に会議室でやっていたのと同じように、各セラピストが丁寧に報告をしてくれて、保護者の質問や意見に明確に対応してくれていました。
特に障がい児教育の世界で、初めてのプロセスを踏んでいる親御さんに対しては、これからの子供の教育に前向きになれるよう、子どもに対して必ずポジティブな言い方をしていると感じました。
それから、公立学校に通っているすべての子供向けに、各市町村で決まった日時に「Grab n’ Go Breakfast & Lunch」と称して、無料で子供達のための食材を配っています。
果物、サラダ、シリアル、チーズバーガー、サンドイッチ、チキンナゲット、ビーフナチョス、マッシュポテトなど、メニュー(糖尿病対策メニュー、グルテンフリーメニューなどもあり)はいかにもアメリカンなものが多いですが、このパンデミックの影響で収入に影響が出ている人たちが多数いる中で、子供への対策としてはとても親切な取り組みであると思います。
学校は、子供たちにとって勉強だけではなく社会性を学ぶ場でもあります。その機会が奪われてしまっている現在、「Learning Pods」と呼ばれる、少人数のグループ・ラーニングも人気だそうです。
専門の先生を雇う場合もあれば、保護者の中で音楽が得意な人、絵が得意な人、ヨガやダンスができる人、プログラミングができる人などが子供たちの先生となって、登校できない子供たちが少しでも社会性を保てるように、共に学ぶ場を作っている様です。
障がいを持っていてもいなくても、年齢に低い子供たちは特に、人との関わり合いを通して学ぶことが多いので、長期化するコロナ禍の影響を少なくするために、感染リスクを鑑みながら、オンライン上だけではなく、できる取り組みを模索している様です。
3回に渡りお送りした米国・マサチューセッツ州からのコロナ禍における教育現場のリポートはいかがでしたか。
子供たちの学び、また子どもを持つ親にとって有益と思える情報がありましたら、またの機会にお伝えしたいと思います。
まだまだ世界中が混乱の中にいますが、子どもたちが安心して学べる場所が少しでも早く戻ってくるように祈っています。
◆礒恵美(いそ めぐみ)
ボストン在住
■□ あとがき ■□--------------------------
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