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■ 連載:スケジュールは、安心、見通し、そして自分で活動を組み立てる力になる!
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■ 連載:療育畑で30年かけた取り組み!家庭でできる療育のコツ■ 連載:スケジュールは、安心、見通し、そして自分で活動を組み立てる力になる!
■□ 連載:スペクトラム親子の付かず離れずコロナ生活
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第4回 スケジュールは、安心、見通し、そして自分で活動を組み立てる力になる!
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私たちもそうですが、予定が立たないということは、「いつ始まるのか」と緊張したり、「いつ終わるのか」と不安になりますね。特に子どもの場合、先のことが分からないと不安が強まります。そのようなことからも、予定をスケジュール化することは、活動とその流れを分かりやすくし、「安心」をもたらします。そして、「見通し」が持ちにくい子どもには予定を知らせるだけでなく、予定に伴う行動への工夫や配慮も施していきます。最初のうちは、子どもにとって楽しみな活動を「予定」として知らせて、その通りに出来事が起こることを体験させることから始めましょう。
やり方は、まず今日中にできる予定を立てます。例えば、「公園へ行く」「工作をする」などです。そして、活動内容の準備物を示します。「公園へ行く」は帽子やスコップ、「工作をする」は、空き箱やセロテープなど、子どもが分かるような準備物を示します。子どもに応じて、実物、絵、写真、文字などを使っていきます。ポイントは、声をかけるだけでなく、実物や記入したものを指さしや手添えで「注目」させ、確認させることです。そして、予定が終わったら、活動内容を消して「終わり」を知らせます。文字であれば線で消す、絵カードやメモならば取り外して、裏返しにします。つまり、「どこまで終わったか」を分かりやすくします。ずっと掲示したままでは、進捗が分からず、終わりが無いのでスケジュールを見なくなるからです。
次のポイントは、終わり方です。活動の後は「ブランコ楽しかったね」「新幹線を描いたね」と子どもと対話しながら一緒に片付けて、ふり返ります。片付けの時間をとり、「楽しかった」「おもしろかった」という共感をしながら、子どもの気持ちも収めていきます。それは、子どもが次の活動に向かいながら「また今度」に期待を抱くことができるからです。子どもに「また今度」という思いが無いと、「終わり」は二度とできなくなると思い、激しく抵抗したり、気持ちの切りかえができなくなっていくことがあります。
さて、実生活は変更の連続なので、『予定変更』を教えることも大事です。中学1年生の和也君(仮名 自閉スペクトラム症)は、幼稚園の頃から療育を続け、ようやくスケジュールが分かるようになりました。ところが、学習中に時計ばかり気にしています。スケジュール通りに進まないと気が済まず、時間通りに終わりたくて仕方がないのです。
そこで、ある日の療育の始まりに「時計ばかりを見ていると時間が過ぎてしまいます。時間通りに行かない時には予定変更することがあります。」と言って、私が『変更』という文字をスケジュールの紙に書いて見せました。案の定、課題に集中しないので終了時刻が延びてしまい、怒り出しそうになりした。そこで私が「時計ばかり見て勉強が進まないので、予定変更です」と言って、スケジュールの紙の『変更』を指すと、その時は気持ちをぐっとこらえて『予定変更』を受け入れました。
スケジュールを理解し始めた時には、その通りにできないことに混乱して言動が乱れる場合があります。そのままやり過ごしてしまうと、行動しなくなったり、感情のコントロールが難しくなってしまいます。だから、『変更』というキーワードを使い、その通りにならない場面や環境を意図して作ります。時間をかけて、受け入れる姿勢へ導くことは、実はとても重要なのです。
また、予定が『中止』になった場合も考えてみましょう。突然、予定内容が無くなると、混乱したのち、落胆します。それが泣き喚くことや暴言、かんしゃくなどにつながっていきます。「無いったら無いの!」と怒られると、中止の時は怒られるんだ、と誤学習させてしまいます。そこで、前もって代替えの内容を考えておきます。例えば、楽しみにしていた外出が無くなった場合は、家でおやつ作りに変更するなどの代案の用意をしておきます。子どもも親も心づもりがある方が過ごしやすくなります。そして中止の時には、「やりたかったね」「残念だったね」という共感をもった一言が大事です。
日常生活で『変更』や『中止』は必ずあります。その通りなるように整え過ぎると不意の出来事に感情をコントロールできず、乱れた言動で本人も家族も疲れてしまいます。それらを想定し、スケジュールを工夫して導いていくことは、本人が思いがけないことに出合った時に自分自身で対処していく力となります。
スケジュールを示す際のポイントとして、流れは上から下へ、または左から右へと方向を一定にしましょう。期間は数分、数時間、1日、1週間、1か月、・・・と少しずつ延ばしていきます。また、数字で順番を示し、時計の絵や時刻を予定内容と合わせて表示します。時計が分かってきたら、「〇時になったら晩ご飯にします。今、何時?」など、時計を見るように仕向けます。子どもが自分で判断して行動できるようにしていきたいので、順番や時刻が分かるようにしていきます。
次の段階として、1週間のスケジュール表を使っていきます。日曜始まりで日曜日から土曜日までの並びを教えます。「日曜日は週の始まり」として学校に備えて支度をしたり、体調を整える日とします。月曜日を始まりにすると、いきなり学校が始まるなどの緊張が高まる子どもがいます。そして、予定を書く時のポイントは、大人が「苦手な予定」ばかり書き込まないこと、「できない約束」や「嘘」を書かないことです。それらは、スケジュールを見るのを嫌にさせ、信頼を失わせてしまうからです。
次に、子どもに予定を書かせますが、その週にあるイベントや忘れてはいけない事柄、約束などを書くように導きます。初めは子どもの視点で、遊ぶ予定ばかりだったり、妙に細かいことまで予定に書き込んだりするかもしれません。その時は、優先する内容や実際の予定になるように大人が補足し、修正をします。禁止だけでなく、子どもがふり返って考える機会も作ります。
1週間のスケジュール表で曜日の理解が進むと、次は1か月のカレンダーを活用します。カレンダーに直接予定を書き込むので、数字の欄に白枠があるものを選びましょう。「11時 コンビニで買い物」など、時間、場所、メインの行動を具体的に子どもが書きます。
予定を明確にするためには、家族が意識してカレンダーを活用されることをお勧めします。例えば、自治体から配られる「ゴミ収集カレンダー」と照らし合わせて、「今月の第1・第3火曜日は、5日と19日」というように確認します。カレンダーの1段目が必ずしも1週目にならないことを理解しにくい子どもがいます。その場合に前月の日付の部分に「×」印や「/」を付けると理解しやすくなります。実体験はカレンダーの見方を学ぶチャンスになります。また、お父さんやお姉ちゃんが何を、どうしているのか等、カレンダーに家族の予定を書いたご家庭もありました。家族の予定が分かることで安心し、行動が落ち着いた子どももいます。きょうだいの「修学旅行」「受験日」それに伴う準備期間などを知らせておくことも重要です。
※参考例『カレンダー〇月』
大樹君(中学校3年生 自閉スペクトラム症)は、激しいかんしゃくのために買い物先で思う通りにならないと大暴れし、保育園年長から療育を始めました。まず、スケジュールと時間の関係は密接なので、時計の読み方から教えました。時計は60までの数字を使うので、数字カードを使って100までの数を理解させました。小学生になり、楽しみな活動が時計の目印と一致させるようにスケジュールを組み、実体験を積みました。時計を目安に行動できるようになると、大樹君は腕時計を身につけて外出できるようになりました。スケジュールを並行して教えたところ、かんしゃくは激減して家族で買い物ができるようになっていきました。そして、1年間のカレンダーに「始業式」「夏休み」「運動会」など行事を書いたポストイットを貼り付けると凝視しました。
彼はカレンダーに向き合いながら、8月のところに「ホテル」と書いた付箋を貼り付けました。以前に家族と行ったホテルに行きたいという希望でした。「夏休みに行ったホテルに行きたいのね。」と代弁すると、カレンダーを凝視していました。それは、彼にとって1年の流れの意味が分かった瞬間でした。かんしゃくは、彼自身が混乱し、困っていたことから起こる行動でした。ですが、予定したことがこれから起こることと知ることで、かんしゃくが無くなり理解する姿勢に変わっていったのです。
さらに、時刻表の読み取り、買い物に進んでいきました。スケジュールは、彼の心の安定と社会生活を送るための手立てとなっています。中学校卒業後の春休みに、スケジュールの手帳を持ってきてもらいました。「4月〇日」の欄に彼の字で「入学式」と書き入れたのを見て、私はお母さんと共に喜びをかみしめました。
場面が変わったり、予測がつかなかったりする時、心は疲れてしまいます。スケジュールは予定を知る安心になります。そして、一つひとつの実体験が経過の中で見通しとなり、スケジュールは子どもの中で意味を持つようになります。良きスケジュールは、本人の意欲につながり、自分で活動を組み立てる力になっていきます。さらに、未来の夢や希望を描けたら素敵なものになることでしょう。
発達の気になる子シリーズの著者
橋本美恵&鹿野佐代子
誤学習・未学習を防ぐ!発達の気になる子の「できた!」が増えるトレーニング
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■ 連載:障がいのある子の医療
第2回 スペクトラム親子の付かず離れずコロナ生活
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今回もコロナ生活のお話を続けます。
外来、といいましても、コロナ以降は様変わりし、院内に入っていただかないで携帯電をつないでお話だけで体調や生活の様子を伺い、お変わりないようならいつもの薬をお出しする、リモート外来。熱の人は別室に空間を分ける、もしくは、風邪の人は夕方に来てもらうなど時間を分ける、ゾーン分けをしているクリニックも増えました。
なんといっても、発生患者のほとんどは医療関係者。しかも亡くなっている医者の多くは開業医や救命救急医。つまり、「コロナに感染しているとは患者さんも医者も知らない状態でかかりつけ医に来られたり、救急車で運ばれて来たりして、濃厚接触(マスクをしないで数分至近距離で話したり、ガウンやフェイスシールドをしないで気管挿管やのどの診察)しただろう医師たち」です。
感染症専門医は実は今まで一人もなくなっていません。つまり、きちんと予防すれば防ぎえるウイルスだというのと同時に、症状がなくても、すべての患者さんがウイルスをお持ちかもしれない、自分もそうかもしれないと想定し、日常の診療でも常に防御をしなくてはいけない時代になっていることを、私物を広げた外来の机の上の電話の前で一人しみじみ感じています。だって、最も有効なのが、ステイホーム。家にいながらの診療は、感染予防の観点からはベストではあります。でも診察したり診断したりする本来の業務は・・・・あ、脱線しすぎました。すみません。
年子で生まれてきてくれた我が家の子どもたち。そろって自閉症(現在は自閉スペクトラム症)と知的障害と診断されてからもう十何年も経ちました。自閉症なんて言うものが、小児科の教科書の中でだけ見る「先天性の脳障害のひとつ」だったのが、「わがやのまいにち」になるには十分な年月ですよね。そして、自分の特性にも気がつき、受け入れもしてきたように思います。
記憶力だけはそこそこいい(サヴァン※じゃないけどね)私は、「絵を描くのが好き、体育が好き、授業は気に入ったところしか聞かない、字を読むのが好きなくせに、会話は苦手で人見知りのわりに好奇心旺盛でいきなり走り出すし、何か聞いても、ろくすっぽ答えない」。つまりは、いわく「扱いずらい子やわーあんたー」。今の時代なら、まあ、「集団になじまないアレな子」とマークされていたでしょう。
※サヴァン症候群 自閉スペクトラム症の一種で記憶力が普通の人に比べて極めて高い。映画レインマンのダスティン・ホフマンといってわかるでしょうか。カジノに連れていかれ、場に出たカードをすべて記憶し、ブラックジャックで大勝ちしていました。
自分でも自覚したのは遅くて、10歳くらい。出先で母に「トイレどこ?」と聞いたら、「突き当りを左」と教えられ「突き当ったら!曲がれない!!」と無性に腹が立って母に当たり散らしたとき。そういうことを言っているんじゃあないと気が付きつつも、理解できないことを言う母にあたるのだから、始末に負えません。
ことばの綾、というのが分からない。字面をそのままとらえてしまう。「ねえちょっと手を貸して」と言われたら、多分あの頃なら両手を差し出していた自信があります。「この子ったら予定が変わることにもひどく弱い」とも言われたのは、大学のころ。一人車で遠出する予定だったのが、必要なくなったときだった。それこそ物を投げんばかりに混乱して怒鳴ってしまった女子大生のくせに。それがまあ曲がりなりにも、外来というかなりコミュニケーション能力の必要な仕事を続けているのは・・・・・またもや脱線しすぎましたね、ほんとにすみません。
これが、親の育て方ではなく(かなりそう思って恨んだりしてました、申し訳ない)性格の悪さのせいばかりではなく(なんでこんな変わった子と付き合ってるの?と親友が私のことを揶揄されてるのを聞いたことがある)普通とは違う脳のせいだとわからせてくれたのが、子どもたちでした。どれだけ気楽になったことか。そして子どもたちの「理解できなさ」は自分の持っていたのと同じ。予定が勝手に変わることへの違和感はぬぐいがたいものがあるのは、手に取るようにわかります。
そして、コロナが来ちゃいました。今世紀三度目の新興感染症の襲来。目に見えぬ殺戮者ウイルスたちは生きた細胞でしか生きられないので、これと戦う薬もワクチンもないからには、私たちも互いに生きた細胞から離れるしか道はありません。戦略的撤退ですが、効果は確実なのはわかっています。
政府が出した、「三密を避ける」はちょっとわかりにくい。(1)家にいる (2)2m(このごろは1mに)距離をとる (3)それでも医療や介護、支援者、必要なお買い物など近づかなくてはいけないときにはマスク。これを求められる生活が始まりました。
せっかく子どものカレンダーに書いて伝えておいた予定がことごとくつぶれていきます。同窓会も、キャラクターショーも、おじいちゃんの家にお泊りも、全部中止。何度も何度もカレンダー中止になった日を指しながら、「いく、おじいちゃんの家、潮干狩り」と伝えてきます。「そんなに潮干狩りが好きだったんだな~じゃあせめて、アサリを食べさせてあげようなー」と、健常者の旦那が次善策を提示しますが、そうじゃない。「○○したい」というのは、「○○」をしたい、のではなく、「○○する」ことを変えるな、という意味合いです、私たちにとって約束です。「6月の週末にはアサリ取りに行く」は、一度やったのだからすでに法として成立する。「A=B」は常に「A=B」であるはず。たとえ、嵐がこようとも、熱をだそうとも、政府が緊急事態宣言を出そうとも。
なぜ変更するのか、理由だけでもわかれば耐えられるもの、ある日突然脳腫瘍が見つかった患者さんが「一番つらいのは、治るかどうかや手術の痛みではなく、どうして自分がこうなったのか理由がないこと」と言ってひどく納得したことがあります。事実は変わらなくても理由が分かれば救われる、分からないということは、これからもまた自分の体に裏切られるかもしれないという底知れない不安を持ち続けるということになるのでしょう。それはスペクトラムの不安に通じます。想像力の欠如といわれる特性ですが、変更されることの不安は、大声や、巻き戻し歩き(数歩進んでまた戻る)、昼夜逆転の形で、現れてしまいました。
さらに毎日通っていた作業所に通えなくなるということ、いつもしていた外出が禁止される生活を強いられるということ、どれだけの負荷になるか、感染そのものと同じくらいそれが不安でした。
今子どもたちがお世話になっている作業所は、原則閉じていますが、たいへんありがたいことに閉じこもり生活でかえって自傷他害などをおこし健康被害が危惧される人、家族にとっても生活が成り立たなくなる人のため、希望者利用を許してくれています。さらに帰宅途中で支援者さんとの外出をルーチンとしてきましたが、これも、当初から人込みを避け(独語がひどいので普段からできるだけ近寄ってほしくない)、オープンエアの場所で、会話は減らし(もともとしないからね)、食事はできるだけラーメンのようなカウンターで(これもむしろウエルカム)と工夫(?)して続けています。
よく利用させていただいていた図書館や本屋、ブックオフ、水族館、博物館、スポーツセンターも、軒並みクローズ。仕方なく足を延ばした小田原城や鎌倉周辺も来ないで状態。行く場所がなくなりとうとう、遠くの広い公園まで歩いていき、トイレで着替えて、一緒にランニング、腹筋背筋腕立てして、お茶飲んで帰る日々ですが満足そうに黙々と取り組んでいます。
もともと、支援者さんとの信頼関係があるからこそでしょうが、その体力がすばらしい。支援者というと、退職後の高齢者や、子育ての落ち着いた年代の女性がいままで多くお世話になってきましたが、やたら走りたがる、うちのこのような若い利用者には、体力的にそん色ない人が、もっと増えてほしいなと思うことがあります。
福祉業界の賃金の低さゆえだと思いますが、経済的に自立できるほどもらえている人が少ないためか、必要な人材が根付いていただけないことが多いと感じます。
日本は、コロナ予防のための生活規制を求めたものの補償もせず緩めの規制だったので、子どもたちのこういった活動で逮捕されたりはしませんが、ヨーロッパでは外出にも許可証が必要だったりと、かなり厳しかったようです。ヨーロッパの自閉症者たちは、たいへんだろうなと思っていたら。自閉症啓発デーだった5月4日。フランスではマクロン大統領が自閉症者と支援者に対してメッセージを発しました。自閉症者の外出規制を緩和します、と。
次回は、閉じこもり生活による健康被害(生活不活発病)と意外なメリットについて。お読みくださりありがとうございました。
ひつまぶし(内科医)
■□ あとがき ■□--------------------------
オンラインシステム:Zoomを取り入れました。資料やアプリを画面に表示し、カーソルで指し示しながら説明できるので好評です。「開発者が語る」シリーズとして、以下の連続セミナーを開催します。1回のみでも参加可能です。■□ あとがき ■□--------------------------
5月27日 学習障害の原因を探る
5月28日 自閉症と聴覚情報処理障害の共通点
5月29日 「朗読がにがて」の意外な理由
6月2日 認知特性を知って行う個別発達支援
6月4日 多くの子が持つ感覚の困り
来週月曜日以降、セミナーページに追加していきますのでぜひ閲覧ください。
次号は、6月5日(金)です。かなしろにゃんこ。さんのマンガコラム最終回です。