療育畑で30年かけた取り組み!家庭でできる療育のコツ

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2020.03.27

療育畑で30年かけた取り組み!家庭でできる療育のコツ

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■  新連載:療育畑で30年かけた取り組み!家庭でできる療育のコツ
■□ 載:発達障害がある子の年齢を3割幼く考えて接する育児で変われた私
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■□ まえがき ■□--------------------------
今回から、橋本美恵さんと鹿野佐代子さんのお二人による連載がスタートします。。お二人は共著で『誤学習・未学習を防ぐ!発達の気になる子の「できた!」が増えるトレーニング』と『未来に飛び立て!発達の気になる子の大人になるためのチャレンジ<学齢期編>』の2冊の本を出版されています

誤学習・未学習を防ぐ! 
未来に飛び立て! 

前者では、「いつかできるようになるだろう」と先送りした結果、知識や体験を積まずに未学習で成長してしまった事例や、わかりにくい声掛けや誤解を与える接し方で起きてしまった誤学習の事例を取り上げ、それらが起きない対処法をまとめています。後者では、思春期に差し掛かった子どもへの接し方や性教育の取り組みについて取り上げています。

この2冊のエッセンスを、本メルマガで紹介してくださいます。ご期待ください。

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 ■ 新連載:療育畑で30年かけた取り組み!家庭でできる療育のコツ
            第1回 子どもの不器用に嘆くなかれ!折り紙「やっこさん」から始める療育
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手がうまく使えないと言って悩んでいる親御さんに向けて、家庭ですぐにできる療育のエッセンスを連載でお伝えします。まず初めにご紹介する療育は、折り紙を使った「やっこさん」です。不器用な子どもが、親と「やっこさん」を折ることでびっくりするような対人面の変化がありました。基本となった例をご紹介します。

5歳で初めて相談の勝也君は一瞬も椅子に座ることができず、「多動」と言われて両親ともに悩んでおられました。勝也君を観察していたところ、多動に加えて体や手の使い方が不器用でもありました。お母さんは多分、多動を落ち着かせてほしい思いで相談に来られたのだと思うのですが、折り紙の『やっこさん』を勧めました。お母さんは最初、半信半疑な様子でしたが、意を決して翌日からやっこさんに取り組まれました。椅子でむずかる子どもを工夫しながら導き、殆どをお母さんが折っていかれました。次の日も、また次の日も繰り返して折っているうちに、子どもが椅子に座るようになっていきました。

私の療育もこのお母さんの子育ても『やっこさん』が原点です。その後、「勝也は学校へ行って座って学べるようになりました。」と言われました。数年後の勝也君は、中学校は特別支援学級に在籍、卒業後は特別支援学校へ行きました。今年の春に就職が決まりました。折り紙から始まった「人に添う」「手先を使う」力が認められ、スーパーで店員となって働きます。

実は、この取り組みは折り紙を折るということ以外にもさまざまな工夫を取り入れています。まず机と椅子の高さを子どもに合ったものにしました。椅子は足裏を床につけて安定する高さ、机はひじを付けて動きやすい高さがベストです。お母さんの立ち位置も工夫してもらい、まずは後ろから手を添えて言葉かけを少なくして一緒に折り、その手添えを徐々に減らしていくようお伝えしました。やっこさんの工程は4回折ってひっくり返し、また4回折ってひっくり返すので分かりやすいものです。

一般的には、教えたいことをつい声かけしてしまうものです。「それ」「こっち」「そうじゃなくて!」などは、子どもからするととても分かりにくいのです。それよりも、親が手を添えて運動や感覚を入れるように導くことが重要です。手を添える時にも力を入れ過ぎると、子どもは「痛い!」と嫌がるので、力の入れ具合を配慮し、動きの方向性や手触りなどを入れるようにします。運動や感覚というのは分かりにくいので、時には私が保護者の後ろに回って手を添えますと「力を入れられると痛いのですね。」と実感されます。援助にも段階があり、手を添えることから指をさすことへ、そうして横で一緒に折るようにします。最終的には声かけから見守りへと導きます。援助を減らしていき、子どもの「できた!」感を増やすようにしました。

また、折り紙をいきなりやるのではなく、準備として完成見本を作って子どもに見せてあげたり、工程の折り紙見本を紙に貼ってめくって見せることもあります。また、やっこさんを折ることが難しい場合には、三角を折れたら「できあがり」とするなど、子どもに合わせて目標を考えていきます。

折れるようになるまでは、紙を破る子もいれば、隠す子もいます。それは何らか理由がありますので、考えながらやり方を工夫します。何事もすぐにできるものではありませんが、あるお母さんの名言があります。「療育は漢方薬のように後からじわ~っと効いてきます。」そして、関係性という、目には見えませんが大切なものを育てていくことになります。

一生懸命に折ったあとは、顔を描きます。手を添えたり、自分で描きたがる子もいます。子ども達は上手く折れたらニコニコ笑顔、角が合わずにズレたやっこさんには渋い顔を描きます。何だか自分の顔を描いているようで、楽しみな瞬間でもあります。日付と名前を書いたらできあがり。日付を書くことにより、親子で成長を感じることができます。沢山折れたら「お友達!」とやっこさんをつなげて遊んでいる子どももいます。

そして、大きなカレンダーを用意してもらい、毎日1枚ずつ折れたやっこさんを貼ってもらっています。1か月するとカレンダー一面がやっこさんになって、「1か月」を見て実感します。家族に見てもらい、子どもが褒められたり、注目されたりするようにしていきます。

何か子どもにしてやりたいと願って来られる親御さんに「家庭でできることを一緒に考えましょう!」と、共に30年間取り組んできました。療育は、方向性をもった工夫と配慮の子育てです。私はこれまで家庭療育を紹介し、それらの実践を「誤学習・未学習を防ぐ!発達の気になる子の『できた!』が増えるトレーニング」に集めました。これからも、そのような家庭、園・学校などで「できた!」が増える療育をご紹介します。

発達の気になる子シリーズの著者
橋本美恵&鹿野佐代子


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 ■ 連載:いい意味で"諦める育児"で、反抗期も親子で笑い合えた
         第2回 発達障害がある子の年齢を3割幼く考えて接する育児で変われた私
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ADHDと広汎性発達障害がある息子リュウ太が、児童精神科で診断を受けることになった経緯は私の著書の「うちの子はADHD」というコミックで書いています。が、ペアレント・トレーニングで“うちの親子関係が良くなった!”という話は講演で話すのみです。今回はそのお話をさせていただきます。どうぞお付き合いくださいませ。


息子は授業中に教室に居ることができずに廊下で寝ながら過ごしたりする自由奔放な子でした。周りに合わせて生きることを好まなかったので周りの子からは「変なヤツ」と思われていたのでしょう、からかいなどもあってケンカに発展…人間関係のことでいつもトラブル続きでありました。

トラブルがあると家に帰ってきてもイライラが続きます。週3日は、グチを2時間、毒を吐きまくる生活でしたから、私も精神的にまいってしまって親子喧嘩になっていました。息子は学校のグチを言いたい、私はグチをやめてほしい、そこで人間関係がうまくいくコツを息子に伝えようとしたのですが、発達障害のある小学生にはできない要求ばかりしてしまい、親子関係がギスギスしていました。

トラブル続きで精神的な疲れがピークになったのがリュウ太、小3~小4の頃。当時は育てにくい我が子を「かわいい」とは思えなくなっていたのです。その頃にクリニックで発達障害の診断を受け、ADHDと広汎性発達障害があるとわかりました。

児童精神科では、障害のある子どもの親向けに「ペアレント・トレーニング」を行っていて、「参加してみませんか?親の指示に従えない子でも聞き分けられるようになる育児のコツや、一人ひとりの子どもに合わせた伝え方やほめ方を一緒に探っていくことで、親子関係が良くなりますよ」と誘ってもらいました。

※ペアレント・トレーニングに誘われた

「そんなことで発達障害がある子の育児が楽になるくらいなら苦労はないわ!!」と少しやけになっていました(笑) しかし、そのペアレント・トレーニングに3回ほど参加したことで、その後の育児が本当に楽になったのです。

心理士さんから教えてもらったことの中から特に役に立ったのはコレです※。
 
※役に立った対応の仕方

ADHDの特性から、なくし物や忘れ物が多い息子を育てているうちに、私は口うるさいガミガミ母ちゃんになっていました。ですから、怒らないで育てるということは難しかったのですが、「怒っても子どもは変わりませんよ、むしろ状況は悪化します」と心理士さんに教えてもらってから、ガミガミいわなくても、たいていのことは注意でOKなのだと心に刻みました。

そして目の前のこの子は小4(10歳)であっても、精神的に心はまだ小学校1年生(7歳)なのだ。これまで息子が指示通りにできなかったことの多くは、私が無理な要求をしてきたからではないか!?と気がつきました。

心理士さんは「親が、子どものできることとできないことを理解しないと、できないことを要求してしまう。そして、子どもができないと叱ってしまい、子どもは自己肯定感を下げてしまう。自己肯定感が下がると、ヤル気が出ないなど心の病になることもある」と教えていただきました※。

※できることとできないことを知る 
 
私はハッ!!としました、「ソレ私じゃん!!」と。これまで息子の自己肯定感を下げることばかりしてきたのだと反省しました。小1の子と思って接する。いつも3割は幼いんだと思いながら育てる。この子ができる範囲のことだけを指示するようにすればいいのだということをペアレント・トレーニングの中で気づいたのでした。

ガミガミ言わないで生活をすると、不思議なことに私の心は穏やかになっていくのがわかりました。息子が約束の時間になってもゲームをなかなか止めないことや、明日の学校の準備をなかなかしないことなど、生活の中では問題はいっぱいあります。が、ガミガミ言わない生活を続けていくと「どれもそんなにガミガミ言うほど緊急性の高い事柄じゃないよね、別にきちんとやれなくてもしょうがないし、焦ることはないことばかりよね、大した問題じゃないわ」と、何故か思えるようになってきたんです。

※ゲームを3時間やっても、、 

世の中には、本当はガミガミ言いたくない親と、ガミガミ言いたくて子どものあら捜しをする親がいるような気がします。あら捜しをやめると、ガミガミ言わなくてもよくなるということがわかり、ガミガミ言いたくない私は、あら捜しをやめる選択をしたわけです。

息子も、私がガミガミ言わなくなってからは、家の中で伸び伸びと好きなことをして過ごすようになりました、とくに創作活動は意欲的に行い、工作やお絵かきなど何時間も集中して作業を行えるようになりました。自閉症児特有の、同じモチーフの細かい描写が1枚の中にいくつも描かれている、芸術性ある作品を作っているのを見ると、ルネッサンス!と言いたくなる気分でした。

創作は穏やかな暮らしの中で華を開きますものね。それに創作中の息子はおとなしく一人の時間を楽しみ、全身全霊で目の前のことに打ち込むので静かに過ごしています。イライラしてグチる息子とは正反対の穏やかな姿がありました。

「この穏やかな時間が息子に良いのね!そして私にも良いんだ!」とやっと気がついたのでした。

次回は怒らないで育てるということを深く考えてみたら、科学的にも脳と体に良いということに行きついた話をお送りします。

かなしろにゃんこ。
著書『発達障害 僕にはイラつく理由がある!』講談社
 
 

■□ あとがき ■□--------------------------
次号は、4月10日(金)の予定です。

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