「気になる」子どもたちと私の関わり

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2019.12.06

「気になる」子どもたちと私の関わり

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■  新連載:「気になる」子どもたちと私の関わり
■□ 連載:合理的な配慮3 具体的な配慮、成人になっても
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■□ まえがき ■□--------------------------

2011年に何人かの仲間で、ヴァラエティ・カフェ※という企画を立ち上げました。「様々な個性が集う」という願いを込めて、名前をつけました。その仲間の一人で、事務局として奮闘してくださった原佐知子さんに今回から連載をしていただきます。下記のプロフィールをお読みいただければお分かりのように、様々な立場から「発達障害」に長くかかわってこられた経験を語っていただきます。

ヴァラエティ・カフェ 

原佐知子・プロフィール:
編集制作会社にて、書籍や雑誌の制作に携わり、以降フリーランスの編集・ライターとして活動。ライフワークとして、発達障害にかかわる書籍や雑誌等の編集や取材・ライティングに携わっている。

●発達障害にかかわる書籍の編集・ライティング実績
『ADHD、アスペルガー症候群、LDかな?と思ったら…』
(安原昭博:著 企画編集:原佐知子 明石書店)

『ADHD・アスペ系ママ へんちゃんのポジティブライフ』
(笹森理絵:著 企画編集:原佐知子 明石書店)

『気になる子の保育がうまくいく方法―困ったときの対応GOOD & NG45』
(ひかりのくに保育ポケット新書) 若林千種:著、原佐知子:編集協力)

『自閉症スペクトラムの子を育てる家族を理解する 母親・父親・きょうだいの声からわかること』
(企画取材執筆:原佐知子 金子書房)

『これからの発達障害者「雇用」』
(木津谷岳:著 企画編集:原佐知子 小学館)



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 ■ 新連載 「気になる」子どもたちと私の関わり
       第1回 幼児期
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私が、ミネルヴァ書房の「ふしぎだね!?」シリーズを企画制作したのは、もう15年ほど昔のことになります。そのとき私は、ミネルヴァ書房の本を制作する会社にいて、新規の図書館シリーズの企画を考えていたところ、はっきりとは理由がわからないけれど「気になる子」と言われる、育てにくい子どもがいることを知りました。

当時、小学校4年生くらいだった自分の息子の子育てにたいそう疲弊していたところでした。お友だちにちょっかいを出しては、怒られ、集団での活動が苦手で、ひとり、外れていました。興味のあることには並外れた集中力を示し、興味のないことは全くやろうとしません。一般の親御さんには、この悩みは全く分かってもらうことはできず、悶々としていたものです。

そんなこともあり、図書館に置く本のシリーズを企画するときに、見た目は普通でも、集団生活が難しい子どもたちがいるということを理解してもらうための絵本を企画したのです。今では、発達障害についてたくさんの本が出て、教育関係者で基本的な知識がない人はほとんどいないくらいになりました。マスコミでも記事やテレビ番組がたくさんつくられ、一般の人でも知っている方は多くなりました。でも、本当に理解している人がどのくらいいるのかは疑問です。

〇ほかの子とは違った息子に翻弄されていた

今回、コラムを書くことになり、久しぶりの母親としての執筆ということで、せっかくなので、自分の子育てと、発達障害について振り返ってみることにしました。

思えば、私の息子Yは、とてもかわいい赤ちゃんで、とびぬけて発育もよく、よく眠りよくミルクを飲む子でした。私は乳の出があまりよい方でなくて、Yにおっぱいを手で押さえられ、もういらないという仕草をされたことを覚えています。哺乳瓶でゴクゴクと飲みたかったのでしょうね。

4か月で保育園に入りましたが、そこは地域の小さな無認可保育所。Yは体が大きくて、ブルドーザーと呼ばれていました(笑)。Yがハイハイしてくると小さな赤ちゃんがつぶれてしまうからです。きかん気が強く、好き嫌いが激しい子でした。また、多動がひどくて、歩くようになった時、すきを見て家から逃げ出し近所の人に連れてきてもらったこともたびたびありました。

4月には、公立の保育園に入ったのですが、噛みつきがひどく毎日迎えに行くたびに、保育士さんから「今日は〇〇ちゃんを噛んだ」と聞かされたことを覚えています。発育が早くて、体も大きいので、保育園ではジャイアン状態でした。でも、保育園のママたちはみんな忙しい仕事を持っており、父母の間でのトラブルはそうそうありませんでした。小さいころから一緒のお友だちや親御さんが多かったので、みんなYのことをわかっていてくれたからだと思います。

年長になるにつれ、やはり保育士さんからいろんな愚痴?や困っていることを聞かされるようになりました。2歳でお兄ちゃんになったYは、寂しかったのかもしれません。でも、小さいころから見てくれていた保育士さんや仲良しのママパパに支えられ、子育てはそこまでつらくはありませんでした。

小さいころから感覚過敏はあったようで、偏食もひどいし、Tシャツやトレーナーなどのタグは本人が切り取ってしまっていました。偏食は、私も保育士さんなどに言われていたので、食べさせようと必死でしたね。でも今思えば、食事の時間が楽しくないものになってしまっていたのはよくなかったと思います。

いわゆるジャイアン型の子どもの子育ては、母親にとってはつらいものです。外でいろんなトラブルを起こしてくるからです。私には姉しかいないので、男の子の成長過程も分からず、予想を上回ることの連続でした。謝ってばかりということもあり、Yを叱ってばかりしていた気がします。特に外では、叱らないことには周囲に対する申し訳が立たないからです。

うちの実家は、父親が厳しかったので、余計に怒られてばかり。半面、パパの実家は赤ちゃんのころから私の仕事などで長期間預けることもあり、とてもかわいがってもらっていました。私と姑はウマが合い、信頼していたので長期間預けられ、そこが救いだったと思います。いくらトラブルを起こす子でも、怒られてばかりでは自己肯定感が低くなります。Yが自己肯定感を高く持ち続けられた理由は、きっと姑や舅のおかげと今では深く感謝しています。

そんなこんなで、保育園でのYはいろいろ大変でしたが、周囲に支えられ私は何とかやってこられました。

〇発達障害って何だろう?

発達障害とは、先天的な要因によって主に乳児期から幼児期にかけてその特性が現れ始める発達の凸凹です。発達障害には、精神・知的障害や身体的な障害を伴うことがあります。近年では、知的障害を伴わない発達障害が認められるようになり、知的障害のない場合を発達障害ということが多くなりました。しかし、ある程度成長し、正常に発達したあとに、疾患・外傷により生じた後天的な脳の障害は発達障害とは呼ばれず、高次機能障害として区別されます。

ある療育機関のスタッフの話では、2~5歳が療育機関(発達障害の特性のある子どもが教育を受ける機関)への問い合わせが多いそうです。最も多いのは、1歳児検診で指摘されて、行政の支援センターなどに相談しに行きます。次に多いのが、幼児教室に行っていて他のお子様との違いに愕然とするケースです。相談先がわからず、ネットサーフィンしているうちに療育機関のHPにたどり着いたというケースも多いです。

3歳健診以後、就学まで健診等が行われず、発達の問題を持つ子どもたちが、その問題に気付かれないままに就学し、「多動のために通常の学級で席について授業を受けることが出来ない」、「ちょっとしたことで興奮し他の児童へ暴力を振るう」、などの問題が小学校入学後に生じています。

上記のようなことがないように、5歳児検診を行っている自治体も多くなったようですね。私の息子もきっとそんな子だったのだと思います。でも当時はあまり知られておらず、私の場合は仕事の関係もあって、この後よく知ることになりました。

何か他の子と違うと思ったら、まずは、かかりつけの小児科や保育士さんや幼稚園の先生など、心を割って話せる人に相談できるとよいですね。特に今の時代、マスコミなどで発達障害については話が独り歩きしていることも多いです。お子さんの大事な時期を無駄にしないために、お子さんの発達について調べてみることをお勧めします。




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 ■ 連載 ディスレクシアとは?
      第4回 合理的な配慮3 具体的な配慮、成人になっても
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合理的な配慮というよりは一人一人の教育的なニーズに応えるための調整と変更である。本人の希望、実際の困難さ、その時々の学習の目的、リソースなどによってできることは千差万別である。日本では大学のセンター試験の在り方から本格的に適用が始まったのだが、受験の際に、高等学校で同等の「配慮」がされていてそれが有効であることが示される必要があるため、未だLD(学習障害)なのでと言って配慮申請をする受験者は55万人中50名いるかいないかである。

ディスレクシアへの具体的な配慮は文部科学省が出している「対応指針」※と新学習指導要領※にも明記されている。

文科省対応指針

 
読み書きの困難への具体的な配慮はその困難さや、本人学習スタイルに適合した効果的な学習方法、その時点の学習内容などに応じて、次のような変更や調整が考えられる。ここでキーワードとなるのが「マルチ」である。マルチセンソリーアプローチ(印刷された文字から学び手書きで記述するだけではなく、聞いて理解する、触ったり動いたりして身体感覚や触覚で学ぶ、食べたり匂ったりの体験から学ぶなど多感覚に訴える学習)やマルチプルインテリジェンス(多重知能:文字だけではなく、数字、音楽、絵画、他者理解、自己理解、自然理解などの能力)※を使った学習が求められる。これらを念頭に「質と量」の変更と調整が求められる。

※マルチプルインテリジェンス関連推薦図書:
『学び方にはコツがある! その子にあった学び方支援』涌井恵著、明治図書
 
1)教室環境:静かな、刺激が少ない、わかり易い掲示などを整える

2)指導方法:わかり易い、順序だった方法、内容理解ができるように工夫をする

3)教材:音声教材やイラスト、写真、ビデオなど文字媒体以外のものを用意する

4)読みやすい工夫:文字媒体で伝えるなら変更ができるものとしてフォント(モリサワのUD教科書体)、サイズ(大きすぎると意味が入らないので適度なもの12ポイントくらいがうれしい)、紙、インク、や背景の色、行間、ルビを振るなどがある。

5)書く:板書はプリントで渡す、写す字を限定する、記述式を選択肢に変更、連絡帳などにはメモを支援員などが代わりに書くなど書くことの困難さに応じてできることが多くある。

6)表現方法:記述するだけでなく口頭、絵画、写真、歌、演劇など文字以外の表現方法を選べるようにする。またそれらを可能にするキーボードで文章を指先の感覚と動きで打つタッチタイピングや考えをまとめたり覚えたりするのに役立つマインドマッピング※などのスタディースキルを伝授する。

※マインドマッピング トニー・ブザン(Tony Buzan)が提唱した思考・発想法の一つ。頭の中で起こっていることを目に見えるようにした思考ツール。

7)    覚える方法:例えば漢字などの場合は何百回か書いて覚えるのではなく、どのような覚え方が良いのかに応じて、部品を唱えながら覚える、絵のように覚える、物語を作って覚えるなどの方法がある(学研から出版された小学全漢字おぼえるカード※を推奨する)。

 
8)ICTやATの活用:アナログでは色付きの定規や50音表などをそばに置くというものから、タブレットの各種アプリで読み上げ、調べ、書く代わりにキーボード入力や音声入力をすることができる。また、デジタル教科書で音声以外は拡大縮小、背景の色を変更する、ルビを振る、ルビの色を変更するなど音声の質はまだ改善の余地があるが相当対応できる。

9)評価する:読み書きに時間がかかるのであれば本人の疲労の具合と調整しながら時間延長、キーボード入力やタブレットのしようなどのICT、記述の代わりに選択問題にするなどをした上でどの程度配慮をしない場合と変化があるかを見極めて、調整や変更を加えた上で評価する。それを最終の評価に反映して、他の教科や放課後デイ、次の学年、次の学校へつなげていく。

このほかに、読んで理解をするだけではなく、覚える、書く、発表する試験を受けるなどで随所に調整と変更をしていかないと本来の力を十分に発揮することは難しい。また、本人の得意であったり興味を持っていたりする分野を優先することや、強みである部分(聴覚、視覚、立体、プレゼンテーション能力など)を使っての学習、本人の自己肯定感を小さな成功を積み重ねて培うなどはディスレクシアがある児童生徒に限らず心得ておきたい。

※ ディスレクシアの特徴イメージ

藤堂栄子
星槎大学特任教授
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■□ あとがき ■□--------------------------
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