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● まえがき
● 新連載:発達を支援する生活動作
● 連載:アメリカ便り:米国の学習指導要領(2)
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● まえがき
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今回から「生活の中での動作」に関する連載がスタートします。Qシリーズや凹凸書字教材シートなど、子どもの動作の観察に基づいた支援の工夫を盛り込んだ教具や教材の開発で有名な鴨下賢一先生です。
下記に鴨下先生の紹介をまとめておきますので、ご覧ください。
○鴨下賢一先生略歴
専門作業療法士(福祉用具・特別支援教育・摂食嚥下)、日本発達系作業療法学会副会長。
1993年に静岡県立こども病院へ入職し、発達が気になる子どもたちへの支援、特別支援教育への支援、福祉用具の開発を手掛ける。
主な著書には、『発達が気になる子への生活動作の教え方』『発達が気になる子へのスモールステップではじめる生活動作』『発達が気になる子へのソーシャルスキルの教え方』『発達が気になる子への読み書き指導ことはじめ』(以上、中央法規出版)、『発達が気になる子の脳と体をそだてる感覚あそび』(合同出版)などがある。
2019年に退職し、福岡県福津市にて「リハビリ発達支援ルームかもん」を開設し、地域の発達が気になる子どもたちとその家族への支援を開始している。
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● 新連載:発達を支援する生活動作
第1回 発達を支援するためのキホンのキ
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1.生活リズムを整える
毎日の生活リズムを整えることは非常に重要になります。寝るのが遅いことで朝ぎりぎりまで寝ている場合には、朝ご飯をしっかりと食べたり余裕を持って準備することが難しくなります。夜は早く寝て、朝はしっかりと起きることを心がけます。十分な睡眠がとれていないと、昼間に眠くなってしまったり、逆に過覚醒の状態になったりして落ち着きがない状態になります。
睡眠はレム睡眠(体は眠っているのに脳が起きている)とノンレム睡眠(体も脳も休んでいる)と二つの種類があります。3歳ぐらいになると大人と同じ様に90分程度の周期で繰り返すようになります。5歳以降になると体力もつき、お昼寝も無くなって夜まとめて寝られるようになります。夜しっかりと眠ることで成長ホルモンも分泌され脳や体の発達に良い影響をおよぼします。
朝太陽の光を浴びることで体内時計がリセットされるといわれています。日中もしっかりと日を浴びることで眠りに必要なセロトニンも分泌されやすくなります。
生活リズムを整えるためには寝る時間と起きる時間が大切になります。夜更かしをしている場合は一日の流れを見直す必要があります。基本的な対応としては、夜寝るのが遅くとも朝は決まった時間に起こすことです。昼寝の時間が長すぎるようであれば、二時間程度で起こすようにします。寝る一時間前からは、テレビやビデオ、タブレットやスマートフォン、パソコンの画面を見せないようにします。眠るための環境を整えることも大切です。玩具を片づけ、布団などを準備して部屋を暗くします。
これら基本的な対応をしても夜寝られないようであれば、一度小児科や専門の医師に相談されることが良いでしょう。眠りを誘う薬を使うことで、睡眠リズムを整えていきます。次第に薬を必要としなくなる場合もあります。感覚の未熟性の「感覚過敏」が原因で、少しの音や光などで眠りが浅くなっていることもあります。この後紹介する生活動作を獲得していくためにも、余裕を持った時間が必要になります。
2.生活環境を整える
子どもの行動は環境に大きく左右されます。様々な感覚刺激を選択して処理することが未熟なために、見えるものや聴こえるものが多いことで注意集中力が低下しやすくなり、様々な活動に影響をおよぼします。
例えば食事を食べる時にはおもちゃを片づける、テレビを消して食事に集中できる環境を整えます。子どもは本があれば破いてみたり、台があれば登ってみたり、水道の蛇口から水を出して遊んでみたりします。大人はついそれを叱ったりしますが、一向に止めてはくれません。次第に叱り方がエスカレートしてしまいます。子どもはその時は泣いて謝るかもしれませんが、また繰り返すでしょう。これは子どもにとって本があるから破いてしまいたくなる、台があるから登ってみたくなる、蛇口から水か出るから遊びたくなるのです。
したがって、破かれては困る本は子どもの手の届かないところに片付ける、台は片づける、水道の元栓を閉めるなどの対応をして、出来なくすることを一番にする必要があります。
もちろん本は破かずに見ることを教えていく必要がありますが、年齢が低い間は破く感覚を楽しんでいるのです。子どもが自分の本を破いた時には、一緒にセロハンテープなどで貼って直してみると良いでしょう。どうしても破きたいこどもには、破いても良い本を与えると良いでしょう。
親は子どもの発達が気になると「厳しくしつけなくてはいけない」と思われることがよくあります。大きな声で叱ったり、時に叩いたりすることもあるかと思います。子どもは低年齢の間はその対応で一時的に叱られたことを止めるでしょうが、再び繰り返します。厳しくしかっても子どもが繰り返すのは、子どもが一番恐れていることは、親に見捨てられることだからです。意識的ではありませんが叱られてもよいので親との関わりを保とうとするのです。親がそれに気づけない場合に、悲しい虐待に結びついてしまうことがあるのです。
また、子どもは自分が体験したことを他の子どもや、成長して力を付けると親に向けて行うようになります。他の子どもに大きな声で叱ったり、叩いたりするようになるのは親として望んでいないことだと思います。他の人にされては困る事は、親も子どもにしないようにします。ただすべての環境を整えて子どもにされては困ることをなくして、放任しておいたら良いということではありません。子どもには社会で生きていくためのルールを、段階をおって教えていく必要があります。
ただ叱るのではなく、具体的にどのようにしたら良いかを時間をかけて教えていきます。
3.基本的な対応と言葉かけ
まずは「生活環境を整える」を行います。子どもの好ましい行動を増やすためには、好ましい行動をしやすい環境を整えます。例えば片付けであれば、子どもが片づけられる程度の量にする、片づけやすい棚や箱を用意するといった具合です。そして子どもが自ら片づけたり片づけようとしたときに、すぐに注目し褒めます。上手く出来た時だけでなく、たとえ失敗しても好ましい行動をしようとしたら、「本を片づけて偉いね」などと具体的に褒めることが大切です。
子どもが自分で頑張って取り組んでいる時にはすぐに手伝わずに見守ります。すぐに手伝いすぎるような、過保護・過干渉な状態ですと子どもの自尊感情が育たなくなってしまいます。自分で出来るようになると自信になり自ら取り組む力が育っていきます。
子どもが好ましくない行動をするときには、安全が確保されているのであれば基本的には無言で対応をします。例えばおやつの時間ではないのにおやつが欲しいと要求してくることがあります。その時には「おやつの時間に食べようね。」と伝えます。子どもは欲しいのでぐずったり、いろいろ手を変えながら要求してくるでしょう。しかし毅然とした態度で一貫して「おやつの時に食べようね」としか言わないようにします。
子どもの言ってくることにそれぞれ応答していると子どもはさらにぐずったりします。大泣きしている時などはじっと落ち着くのを待つようにします。叩いて来たりしても反応しないことが大切です。「叩いたらだめでしょ」というのも反応していることになります。大人が我慢できない場合にはその場から離れるようにします。落ち着いたら「おやつの時に食べようね。我慢できて偉いね。」と伝えます。
くずったことでおやつを与えたりすることは、ぐずると要求がかなうことになります。要は大人が子どもにぐずったらおやつをもらえるということを教えていることになります。大人が子どもに脅し文句を言うこともあります。例えば「そんなに泣いているなら晩御飯もなしね」と言ったりします。しかし、その後晩御飯が出てくるのであれば、言った意味は無くなります。脅し文句は意味がないだけでなく、子どもが他の子どもに対して言うようになるだけなので止めましょう。
外出先でぐずられて困る場合は、その場から離れられるなら離れます。どうしても離れられないのであれば、子どもの大好きなものを鞄の中にしまっておき、最後の手段として準備しておきます。
子どもがぐずった時は、子どもが成長するチャンスでもあります。繰り返すうちに次第に立ち直るまでの時間が早くなっていくでしょう。これは自分をコントロールする力が育ってきていることになります。
子どもの好ましい行動と好ましくない行動を関わる大人が決めておき、共有しておくことが大切です。その時の大人の気分でよかったり、駄目だったり、人によって対応が異なっては子どもが混乱してしまいます
株式会社児童発達支援協会
リハビリ発達支援ルームかもん
代表取締役 鴨下賢一
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● 連載:アメリカ便り:米国の学習指導要領(2)
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前回は、アメリカ国内50州がそれぞれに定めている学習指導要領の中でも、全州で足並み揃えて進めていこうと考えられたコモンコアについてお話をしました。今回は、私の住むマサチューセッツ州の中での、障がい児教育の指導要領がどうなっているのかについてご紹介したいと思います。
まず、障がい児教育を進めていく上の大前提として、各生徒のIEP(Individualized Education Program=個別指導計画)に掲げた目標に沿って進めていくことになります。小学1年生だから足し算・引き算を学ぶ、小学4年生だからシェイクスピアの詩を学ぶ、中学1年生だから南北戦争を学ぶ、という進め方ではなく、あくまで個々人のプログラムの中の目標達成のために日々の勉強を積み重ねていきます。
ところが、仮に中学1年生の知的障がいがを持つ子が、四則計算が2桁以上の数字では習得していないとします。算数・数学の基礎である四則計算がままならないまま代数や方程式に進む事は、現実的ではないように思えます。だからといって永遠と四則計算の練習を繰り返しさせる事は、その子の学ぶ機会を奪う事になってしまいます。
そこで、特別支援教育用の指導要領の中には、エントリーポイント(通常の学習指導要領の中で学ぶ内容の難易度を調整したもの)と、アクセスキル(発達スキル)が記されていて、障がいがあっても、様々な内容の学習機会が得られるようになっています。
例えば、小学校1年生で通常の足し算(計算)を学ぶとします。1+1=2(いち たす いち は に)という計算をするのが難しい場合、おもちゃの果物とお皿を使って、「お皿の上に1つイチゴがあるから、もう1つイチゴを足してみよう」という遊びをします。この時、「1つ」「【もう】ひとつ」「足して」という言葉は足し算に必要な言葉であって、この遊びを通して足し算を勉強していることになります(=エントリーポイント)。「加える」「合わせる」「一緒にする」「くっつける」なども足し算の概念に沿った言葉です。
これらの学びの過程で、物に触れたり、動かしたり、書いたり、測ったり、数えたり、付随する必要なスキルがあります。これらのスキルは、障がいを持つ子にとって習得が難しい場合もあるので、どんなスキルを必要としいて、どれだけ達成できたか、という点も注目することになります(=アクセススキル)。
マサチューセッツ州では、MCAS(=エムキャス、Massachusetts Comprehensive Assessment System)と言って、州が定めた学年時に全ての子供が受ける共通テストがあります。日本の小学校6年生と中学3年生が受ける全国学力テストと似ています。
IEPを持ち、特別支援教育を受けている生徒が、他の生徒と同じようにMCASを受けるのが困難な場合は、MCAS-Alternate Assessment(代替アセスメント)と言う、テストに代わるポートフォリオを提出します。ポートフォリオには、日々の学習内容サンプル、尚且つIEP目標達成の為のデータ(成功率、支援の程度など)、場合によっては録画テープなどが含まれます。
州内でも学区によって取り組み方は様々ですが、障がいがあっても学びたい意欲を伸ばせるように、教育の機会を奪わないようにとの思いを汲んで学習指導要領は作られています。
アメリカでは、1、2週間ほど前から学校に通う子供達は長い長い夏休みに突入しました。教師たちは1年を走りきった安堵と共に、新年度に向けて免許更新のための受講や、新しくなった指導要領の内容を確認している事でしょう。
外国人として、こちらの学習指導要領を見てみると、日本語で学んだ概念が全く違う形で記されていたり、幼稚園生でもわかる言葉だけど英語で知らなかった言い回しなどが発見できるので、個人的に興味深く読んでいます。将来子供が学校に通う時になった時の予備知識としても役に立つと思うので、また新たな発見があった時には紹介したいと思います。
礒恵美(いそ めぐみ)
ボストン在住
● あとがき
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次回メルマガは、7月12日(金)です。
発達を支援する生活動作
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