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■ 連載:やるべきタスクをスムーズに行うためのアプリ(最終回)
■ 連載:成人ディスレクシアの独り言:小学高学年のころを振り返って
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──■ 連載 発達障害児の家庭療育に役立つ教材・アプリ
第3回 やるべきタスクをスムーズに行うためのアプリ(最終回)
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今回の連載では、子どもが日々のタスクやルーティンワークをスムーズに遂行するのに役立つアプリをご紹介します。
私の娘たち(小2、年長)は、短期記憶(一定時間、必要なことを覚えている力)が弱く、注意・関心のコントロールが苦手な特性があるためか、1つのこと、例えば、お片付け、着替え、出かける準備等を行うのに相当時間がかかることがあります。
「やるべきこと」をなかなか終えられない娘たちも大変ですが、「やるべきこと」をなんとか終わらせたいと四苦八苦する私もイライラすることが多く、感情のコントロールをすることが大変でした。
けれども、今回ご紹介するアプリを使い始めてからは、娘たちの「やるべきこと」への取り組みがスムーズになったり、それを最後までやり通せたりすることが増え、私の気苦労も大きく軽減しました。
1.できたよタイマー
子どもがやるべきタスクについて、ボタン一つで操作でき「ゲーム感覚」を取り入れることができるアプリです。時計が読めず、時間の概念がわからない子どもが使う場合でも、音または視覚で時間の進行具合がわかるため、タスクへの注意・関心を継続させることに役立ちます。このアプリは、主に次女が年少から年中の頃に利用しました。
タイマーは2種類あります。
※できたよタイマーの表紙と、できたよ!画面
(画像はこちら>>)
※2種類のタイマーのメニュー画面
(画像はこちら>>)
(1)いそいでできるかな?
使い方は、着替えやおそうじ等のタスクを選び、設定時間内に終えてアプリ画面の「できたよ!」ボタンにタッチして終了です。
例えば「おかたづけ」をして欲しい時。
アプリ画面から「おかたづけ」をタッチすると可愛いカエルの砂時計があらわれ「いそいでできるかな?お部屋のお片付け。アヒルさんがグワッグワッと鳴く前に終わらせよう!用意スタート!」のセリフと共に軽快な音楽が流れ、4分間のカウントダウンが始まります。
時間内にお片付けを終え、アプリ画面の「できたよ!」にタッチしてゲーム終了。
終了と共に可愛いお花や動物が画面に出現するのですが、例えばうさぎが出てくれば「うさぎさんが出たよ!」と次女は大喜び。
設定時間内にタスクを終了した場合に画面に出てくるアイテムには種類があるので、次女はどんなアイテムが出てくるのかを楽しみにしてお片付けに取り組んでいました。
(2) カウントダウン
決められた時間までに、歯磨きをしたり、おもちゃの順番交代等をスムーズに行うためのタイマーです。
約2年前頃から、娘たちは姉妹で仲良く遊ぶことができるようになった一方で、激しくおもちゃの取り合いをするようになりました。あまりに収集がつかなくなった時は私が間に入りましたが、譲ることになった方は、納得ができず機嫌を損ねてしまいます。
けれども、このタイマーを使い始めてからは、娘たちは最初から、またはタイム終了後に自発的に順番を譲ることが増え、また「自分の意思で譲ることができた」という成功体験を積み上げることができるようになりました。
※編者注 できたよタイマー iTuneストア
(ストアはこちら>>)
2.お出かけアラームあさとけい
長女が小学校に入学した頃、登校前に時計を見ながら行動することはできませんでした。そのため、私が声かけをしなければ、予定時刻に登校出発することはできず、素早く行動するよう長女に注意する毎日が続きました。
そんな毎日が続けば、いつも穏やかに優しく声かけすることも難しく、朝からぴりぴりした雰囲気になることもありました。
そんな毎日に終止符を打ってくれたのがこのアラーム時計(アプリ)。
私にかわって長女に「出発まで後何分か」を教えてくれるので、とても助かります。
※お出かけアラームあさとけい 表紙と設定画面
(画像はこちら>>)
アラームで通知される時間は次の通り。
(1) 起床時間
(2) お出かけ時間
(3) お出かけまでの残り時間
長女は上記(3)の「お出かけまでの残り時間」の通知を意識しながら、朝のルーティンワークをこなしています。
設定している通知時間は「あと50分」「あと30分」「あと10分」「あと5分」。
通知時間になると「おでかけまであと○○分です!」と優しい声が流れます。
時間を意識して朝のルーチンワークを進めることが苦手な長女も、アプリからの通知音声を耳にすると、自然に残り時間にあわせて行動ができるようになりました。
大人でもそうですが、人(親)から注意されると「やらされている感」があるため、不愉快になったり、やる気が削がれてしまいます。
そのため、「親からの注意」ではなく「アプリからの通知」だと子どもは素直な気持ちで登校準備を進めやすいのかもしれません。
そして「自主的な取り組み」=自分ひとりでできた!と自信を持つことができるようです。
※編者注 お出かけアラームあさとけい iTuneストア
(ストアはこちら>>)
以上で、3回にわたる私の連載を終了致しますが、連載中にご紹介したアプリや教材の中で参考にして頂けるものがあればとても嬉しいです。
また、この連載に登場した姉妹たちの普段の様子にご興味があれば、ブログにも遊びにきてください。
にのの
ブログ:にののシステム科学講座
(ブログはこちら>>)
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──■ 連載:成人ディスレクシアの独り言
第4回「小学生時代のこと~高学年のころを振り返って~」
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高学年になるころには、すっかり自分に自信を無くしていました。「みんなが簡単にできることができない」自分は、どうしようもなくダメなんだという確信がありました。
体が大きく、運動神経もよかったので、そのころから何かにつけて「学校代表」としてスポーツの大会に参加し、優秀な成績をあげていました。当然、体育の時間は、独壇場です。毎時間のようにお手本になり、チーム戦では常にリーダーでした。不注意や衝動性の高さも、思いっきり動ける体育の時間には、そう問題になることもなく、他の授業のように叱られた覚えもありません。しかし、通信票の体育の評価は、常に5段階の「1か2」でした。
実は自分は、そのことに違和感を持ったことがありませんでした。他の教科も全てそんな感じでしたし、何より「読み・書き」なんて当たり前のことができない自分への評価は、1か2で当然だという思いがありました。
異を唱えたのは、妻でした。妻は、小学校の教諭です。「それだけ技能が高くて、筆記試験もない小学校で、参加態度にも問題がない子にそんな点数が付くのはおかしい。」と、私の話を聞いて憤っていました。「智はおかしいとか悔しいとか、思わなかったの?」と聞かれて、自分の記憶をたどりますが、前回書いたように、たくさんの教師の理不尽な対応への怒りや悲しみを覚えているのに、「自分はもっと高く評価されるべき」と思ったことは、本当にないんです。低学年の子でもすらすらできることができない自分の評価が1や2なのは、たとえそれが体育であっても「当たり前」なんだと無意識に受け入れていたと思います。
自分は、誰よりもできるものを持っていました。でも「読み・書きができない」の前では、その価値はなくなってしまう。体育につけられた「1か2」の評価は、自分にそう刷り込んでいたのかもしれません。
ただ、高学年の時は、今でも忘れられない出会いもありました。当時、担任だった設楽先生は、元気な女の先生で、悪さが見つかって叱られたこともありましたが、自分の言動に対して「智くんすごいねぇ。」「よく知ってるね」「このことは、大学でもっと詳しく習うんだよ」という声をかけてくれました。自分が大きく変わったわけではありません。字は読めなくても、生活の中でたくさんのことを知っていたし、見聞きしたことは、だれよりもよく覚えている自信はありました。でも、今まで、そんなことを話しても、どの先生も「そんなことより字の練習が先です」で、自分の知識が認められたことなんて、ありませんでした。まして、ひらがなの読み書きもスムーズでない自分に、「大学」の話をする大人なんていませんでした。高校だって無理だろう、自分もまわりもそう思っていましたから。
設楽先生の教室でだけ、あの、恐怖の音読も苦しくなかったです。どきどきはしましたが、自分の番が来ると先生が本当に自然に、隣で小さな声で読み上げてくれました。その優しい声をてがかりに、安心して読むことができました。
そんなある日の国語のテストの時間、こんなことがありました。テストは読まなければ始まりません。そのころになると自分にはできないものだとわかっていたので、名前だけ書いていつものようにぼうっとしていました。すると先生が、自分を先生の机のところに呼びました。そして、問題を読んでくれたのです。読んでくれさえすれば、内容はわかります。「答えは?」と聞かれてすらすらと応じると、先生がテスト用紙に書き込んでくれました。今でいう、問題の読み上げと代筆です。今ならわかります。自分にはそれが「必要」で「不可欠」でした。
結果は95点。毎回白紙で0点だったテストで、初めての高得点。「おれ、できるんや」と、ものすごくうれしかったことを覚えています。でも、「智君、ずるい。先生に教えてもらったんでしょう」という友達の声で、そんな思いはかき消されていきました。
(教えてもらってなんかいない。問題を読んでもらっただけだ。でも、他の誰もそんなことをしてもらっていない。みんな自分で読んで自分で書いている・・)
そう思うと、読んでもらった自分は、やっぱり「ずるい」ことをしたんだと、恥ずかしくなりました。それからも設楽先生は、何度も「読んであげるよ」と声をかけてくださいましたが、「いいです」と自分から断りました。だって、「ずるい」ことだから。あの95点は「ずる」で取った点数だから・・。望んではいけないことなんだと、あきらめました。
後年、自分がディスレクシアだとわかってから、数十年ぶりに設楽先生を訪ねました。先生は当時と変わらぬ笑顔で、迎えてくださいました。先生に、「なぜあの時、テストを読んでくれたのか」を聞いてみると、「そんなことがあったかな。覚えていないの。ごめんなさいね。でも、一人一人の子どもをしっかり見つめて大切にしていこうという気持ちで、毎日教壇に立っていたのは覚えているわ」と話してくださいました。
当時の先生に、ディスレクシアについての知識はなかったでしょう。でも、きっと、日常の自分の姿を見て、「この子はわかっているはず」と思ってくれたのではないかと思います。設楽先生は、そんなあたたかい方でした。それまで、日常の言動と読み書きの状況のギャップは、「馬鹿にしている」「怠けている」と、悪い方にばかり取られていたので、「できないくせになまいき」ではなく、「できるはずなのに結果が出ていない」とらえてくださったことには、ただただ感謝です。
それでも、先生も自分も「ずるい」という級友たちを説得する知識も言葉も、当時は持っていませんでした。もし、「これはずるいことでもなんでもない、学ぶために必要なことなんだ」とわかっていたら、、自分のそれからの人生は、今とは違ったものになっていたのではないかと思います。
この「95点」は、その後ずっと、自分の中で引っかかっていきます。「どうしようもないアホのはずなのに・・」「教えてもらってないのに・・」「確かに分かったけど、なぜだろう・・」できないはずの自分の「できた」体験。「できない」が当たり前になっていた自分にとって、瞬間的な「うれしい」が過ぎ去った後に残ったのは、大きな違和感でした。「何かの間違い」「偶然」と思うこともできず、かといって誰かに聞く事もできず、、「なぜ?」というこの時感じた違和感は、自分がディスレクシアだと分かる日まで、消えることはありませんでした。
井上智、井上賞子
ブログ「成人ディスレクシア toraの独り言」
(ブログはこちら>>)
──■ あとがき
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次回メルマガは、お盆前の8月11日(金)とさせていただきます。
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