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■ 連載:本人告知と周囲告知、アウティングについて
■ 書籍:今日からできる!障がいのある子のお金トレーニング
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──■ 連載:母親として発達凸凹の子育てが面白い!楽しい!を広めたい
第7回 本人告知と周囲告知、アウティングについて
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うちの子が成長し、中学生になって、社会とのかかわりが増えて気付いたことがあります。それは、私がカウンセリングや学習支援をしてきた自閉症スペクトラムの子供たちのうち、支援教育を受ける対象とならず定型発達の子供たちと同じ教育カリキュラムを受けている子供たちが考えていることと同じでした。
それは、彼ら自身が自閉症スペクトラムの特徴を持つことを理解し、受容していても、だからといって、すべての自閉症スペクトラムの人が、障がい者という生き方がしたいわけではないということです。
私はかつて、障害特性の受容と、障がい者であることの受容は同列だと考えていたのですが、最近それは、同列ではない、違う次元のことだと気付きました。
障害の特性を理解していて、そのことを受容していても障がい者という枠組みで生きていくかそうでないかは、本人に決定できる能力がある場合、本人が決めることであって、周囲の人間が周りの都合で決めることではないと、考えるようになりました。
自閉症スペクトラムの子供たちは、小学生になる頃から、自身が周囲と違うことに気付き始めます。自分にどの様な特性があるのかを知って行動したり、学習方法に活かすことで、学習しやすくなったり、生活しやすくなったり、コミュニケーションが取りやすくなり、行動の幅が広がります。
また、ネット社会の普及で自閉症スペクトラムの知識や理解が少しずつ広がる中で、周囲の定型発達の子供たちも成長段階という状況の通常クラスでは、知的障害を伴わないタイプの自閉症スペクトラムの子供たちは、まだまだ誤った考え方や偏見に晒され、間違った対応やいじめ、排除に遭うことも少なくありません。
そのためにも、知的障害を伴わないタイプの自閉症スペクトラムの子供たちには、思春期頃までの本人告知が大切になってきます。本人がどのように自分の特性を知るかについては様々な研究があり、医師から告知するケース、親子で学びあうケースなど、子供の心理状態や保護者の受容の段階によって、丁寧に考えていく必要があります。※文献1
うちの子が育つ過程で、どのような本人告知、周囲への告知を行っていったかをまとめました。
うちの子が赤ちゃんの時期に、母親である私自身がうちの子の自閉症スペクトラムの特性に気づいたことで、様々な療育について勉強し、うちの子が小学生になったと同時に、応用行動分析のセラピストとしての活動を始め、2年後に教室を開きました。
うちの子は、その教室で放課後過ごす中で、論文や資料を読んだり、支援職の人たちと交流したり、自閉症スペクトラムの様々なタイプの子供たちとの出会いから、自閉症スペクトラムについて大まかな知識をつけていきました。
小学1年の時に読書感想文に選んだのが『ふしぎだね!?アスペルガー症候群(高機能自閉症)のおともだち (発達と障害を考える本)』※文献2、小学3年の時に読書感想文に選んだのが『みんなとはちがった人たち 自閉症の英雄のこと』※文献3で、自分からすすんで自身は自閉症であると公言していました。だからといって、特性から来る困難を許してというわけではなく、努力していたこともあり、クラスメイトに恵まれ、幸運にも先生方にも恵まれ、学校の関係でいじめられたことはほとんどありませんでした。
うちの子が小学低学年から自身の特性のことを積極的にアピールするようになったのは、私が自閉症スペクトラムの子供のための教室を主宰し、ネット上で子供のことを活発にカミングアウトして社会に自閉症スペクトラムについての知識を広げようとしていたことが影響したのだと思います。
中学進学を控え、音楽家への将来を希望して、ある私立中学を受験しようとしたときに、カミングアウト活動の方針に転機が訪れました。
私立中学を受験する場合、一部の学校では、事前に説明会に通い、その学校が開催する講習会や学習会に何度も通うことが事実上の試験となっています。その中で、ある学校側から、私の自閉症スペクトラムの子供たちへの教室での活動やネットでの積極的なカミングアウトを指摘され、自閉症のある子どもは、受験を遠慮してほしいと言われてしまったのです。
その中学校の言い分は、そのような子供を受け入れる準備がないということでした。通常クラスでうまくいっていたし、順調に試験のための準備を進めていたので、初めて、世間の自閉症に対する理解が画一的であることに気づかされました。学校側は自閉症の子供の多様性について知識がなく、自閉症といえば、すべての自閉症児が一般的な学校に通えず、ひとことふたことも話すことさえ困難な障害なのではないかと、考えているようでした。
同時期に、3歳年下の下の子供への、学校や習い事でのいじめやからかいが始まりました。上の子が障がい者であるというのが理由です。今の子供たちは、個人名でインターネット検索をします。下の子の名前を検索すると上の子が自閉症スペクトラムであるという記載がたくさん見つかり、それが原因で、からかわれていたのです。発達障害は遺伝だからお前も障害児だとか、結婚できねーなとか、障害が感染するなど、ひどい偏見からくるいじめです。
上の子の中学受験の時の経験や下の子が受けた被害から、親が自分の受容のためや社会活動として、障害について世の中に理解して貰いたい一心で、子供の特性についてネット上で暴露してしまうことによる、子供が被る様々な困難について、真剣に考えるようになりました。
親が子供の障害について氏名、顔などの個人情報が推測できる形でインターネットに公開してしまうことは、一種のアウティングとなってしまうのではないかと、考えています。
うちの子は、自閉症スペクトラムについて、特性を理解し受容していますが、世間の偏見のある人たちが考える「障がい者」として生きていきたいわけではありません。音楽家としての知識と訓練を積んで、社会の一員として人生を楽しんでいきたいという希望がある中で、私が良かれと思って活動してきたことが、子供たちを傷つけてしまいました。
うちの子供たちが色々と被害を受け始めたことで、私は、仕事での組織の屋号や教室の名称を変え、子供に関する書き込みに関して、フェイスブックなどでは、公開制限を付けていますが、過去のTwitterは転載が多く、なかなか削除が進みません。
これまで、特性について隠さず話していくことで、社会での理解につながると信じて来たのですが、社会には、心ない人たちがまだまだ多数派で、子供たちが被害に遭うことが増え、私が親としてインターネットで積極的に発言してきたことは、アウティング以外の何物でもなかったのだと気づきました。
中学受験での苦い経験は、上の子にとってトラウマになってしまいました。が、高校受験では、上の子にとって、自閉症スペクトラムを理解し、対応も丁寧で、特性を個性として伸ばしてくれる学校が見つかり、受験にチャレンジしています。
自閉症スペクトラムであることをカミングアウトして活動する方もいて、尊敬を集めていて、自閉症スペクトラムの理解の広がりに貢献していらっしゃいます。しかし、特性が明らかであっても、自閉症スペクトラムであることは公表せずに障がい者というアイコンを使わずに活動されている方のほうが多いと思います。
上の子は、そのことに気づき、自分の才能が評価されるようになってから自閉症スペクトラムであることを公表したほうが無駄につらい経験を避けられると考えるようになりました。世知辛い世の中を強く乗り切っていくためには、そのほうが自分にはよいと。
私の教室に通う中学生のクライアントも同様の体験があるそうです。幼児期に自閉症と診断を受けたお子さんですが、飛躍的に成長して、特性からくる困難も自分でコントロールできるタイプで、学力が高い私立の中学に通っていました。見た目には、どこに障害があるか、一般的な人には、わからないお子さんです。そのお子さんが自閉症と診断されたことがあると周りにカミングアウトしたことがきっかけで、周囲の保護者からも同級生からも教員からも排除的な態度をとられるいじめに発展しました。転校を余儀なくされましたが、転校先では、自閉症の話は一切していません。今は、人気者として学校生活に馴染んでいます。
自閉症スペクトラムの子供たちは幅広く多様で、いろいろなタイプの子供たちがいます。特性を理解していて、そのことを受容していても障がい者という枠組みで生きていくかそうでないかは、本人が決定できる能力がある場合、本人が決めることであって、周囲の人間が周りの都合で決めることではない。そのことを、発達に凸凹がある子供を育てる保護者や支援職の方、教育関係者の方々にも理解していただきたいと考えています。
○参考文献
文献1.自閉症スペクトラムの子供たちへの告知について
アスペ・エルデの会 (ホームページはこちら>>) 発行
「アスペ・ハート」19号と20号
現在の収録:支援としての診断名告知 (詳細はこちら>>)
文献2.ふしぎだね!?アスペルガー症候群(高機能自閉症)のおともだち (発達と障害を考える本)2006内山 登紀夫 (監修) ミネルヴァ書房
(詳細はこちら>>)
文献3.みんなとはちがった人たち 自閉症の英雄のこと 2006ジェニファー・エルダー (著, イラスト), マーク・トーマス (イラスト), 牧野 恵 (翻訳) スペクトラム出版 (詳細はこちら>>)
あしたん
スーパーバイザー
こころことば教室 (ブログはこちら>>)
──■ 書籍:今日からできる!障がいのある子のお金トレーニング
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9月16日の中日新聞で「カレンダーで『見える化』を 障害のある子に苦手なお金管理」と題した記事が掲載されました。「使う日のポケットに硬貨を入れるお金カレンダー。計画が目に見えて理解しやすい」と紹介文付きで「お金カレンダー」の写真も掲載されています。
(詳細はこちら>>)
このカレンダーを開発し、障がいのある子・人に、お金を使う能力を身につけさせようという講演を、最近では全国レベルで精力的に行っている鹿野佐代子さんの主著が、今回紹介する表題の本になります。
著者は、どちらもファイナンシャルプランナーの資格をもっている女性2人:鹿野さんと、分かりやすい家計のアドバイスで定評のある前野彩さんです。
内容は、以下の4章構成になっています。
第1章 自分でお金を管理して可能性を広げよう
第2章 お金の基本が身につくトレーニング
第3章 日常生活に役立つトレーニング
第4章 親もお金と上手につきあおう
さらに巻末に「今から知っておきたい障がい者とともにある制度」として、子ども向けと大人向け、その家族向けに分けた各種サポート制度の一覧と、そこからお二人がお勧めする11の制度とサービスが分かりやすく紹介されています。
自助努力としてのお金の使い方に関する学習と、支援制度の賢い使い方に関心のある方にお勧めします。
今日からできる! 障がいのある子のお金トレーニング
鹿野佐代子、前野彩著、2016年7月発行、翔泳社、A5判、176ページ
1700円(税別) (詳細はこちら>>)
(五藤博義)
──■ あとがき
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次号はいよいよ節目の150号です。編者が長く関心をもって取り組んでいる「認知テスト」について、専門家に連載を依頼しました。ご期待ください。
次号は、10月7日(金)の刊行予定です。
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2016.09.23
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