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■ 新連載:場面緘黙(ばめんかんもく)って何?
■ 連載:制限を設けるテクニック
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以前から編者が関心をもっていた「場面緘黙」を、関係者の方に直々解説していただけることになりました。きっかけは、昨年10月に宮古島で行った講演会にかんもくネット事務局の方が出席してくださったことです。
◯かんもくネット (ホームページはこちら>>)
多数の方の参加による講演会の実現に協力してくださった株式会社ビザライと宮古島市福祉部の方々に、心より御礼申し上げます。
今回の連載は、複数の方がリレー方式で執筆いただけるとのことで、読者の皆さんと一緒に、編者も勉強させていただきたいと思います。
(五藤博義)
──■ 新連載:場面緘黙(ばめんかんもく)の子どもへの理解と対応
(第1回)場面緘黙って何?
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ここ数年で「場面緘黙」という言葉が、ようやくメディアに登場するようになりました。場面緘黙の定義は「家では普通に話すのに、幼稚園や学校など特定の場所で話せない状況が続く」というもの。日本では情報が乏しく5年ほど前まで、教育関係者や医療関係者にもあまり知られていなかったのではと思います。でも、「そういえば昔学校に全然しゃべらない子がいたな」と思い出す方も多いのではないでしょうか?
「場面緘黙」連載の第1回は、ロンドン在住の私が、イギリスと日本の現況を踏まえて「場面緘黙って何?」をお届けします。
1.発症率
場面緘黙の発症率は、子ども全体の0.4%とも、0.7%とも言われています。少なく見積もって0.4%としても、250人にひとり、つまり各学校に1~2人ずついてもおかしくない数字です。イギリスの国営放送BBCでは、昨年夏にテレビ番組で場面緘黙を取り上げ、発症率を下記のように推定していました。( )内はおおよその年齡です
・子ども(11歳まで) 150人に1人(0.67%)
・青少年(12~19歳) 1000人に1人(0.1%)
・若者 (20~29歳) 2500人に1人(0.04%)
・大人 (30歳以上) 不明
※この数字をみると、小学校を終える11歳頃までには6、7人のうち1人を残して緘黙を克服(克服率は約85%)する計算。イギリスでは5歳になる年齢から小学校が始まるのですが、早期発見&支援の成果が出ているように思います。
2.原因は?
どうして場面緘黙になるのか、原因や発症のメカニズムはまだ解明されていません。ただ、場面緘黙になる子ども(緘黙児)は、引っ込み思案で不安になりやすい気質(行動抑制的)を持つ傾向が強いといわれています。米国の発達心理学者、J.ケイガンによると人口の10~15%が行動抑制的な気質に生まれつき、その傾向は生涯続くとされています(J. Kagan 1989)。ただ、行動抑制的な子ども全てが緘黙になる訳ではなく、他に発達要因(感覚統合、ことばの苦手、知的発達など)や、環境要因(入園・入学、転校、バイリンガル環境等)が複雑に絡んでくるようです。
よくある誤解は、親の育て方が原因というもの。近年の研究で、場面緘黙の発症要因は子どもによって異なることや、抑制的な気質は遺伝によるところが大きいことが指摘されています。周囲から見ると「保護者の過保護のせい」と考えがちですが、家庭や養育態度が主原因という説は否定されています。
では、引っ込み思案の子どもと緘黙児とでは、どう違うのでしょう?どちらも自発的に発言したり行動することが苦手ですが、引っ込み思案の子どもは、慣れてくれば学校でも話し始めます。これに反して、緘黙児は1ヶ月以上経っても沈黙したままで、その状態が長期に渡って継続します。
ただし、入学してからずっと話さないのが緘黙児かといえば、そうでもありません。中には、口数は少なくても話していたのに、気づいたら全く話さなくなっていたというケースも、、、また、休み時間に仲の良い友達にだけささやける子、先生の質問には短く答えられるけれど、友達とは全く話せない子、放課後に校庭で遊んでいる時に少し声が出る子など、子どもによって緘黙の症状は異なります。重度になると、緊張で体が硬直する「緘動(かんどう)」状態になり、自分から動けない子もいます。
イギリスで緘黙治療の第一人者と評される言語療法士のマギー・ジョンソンさんは、場面緘黙を下記のように分類しています。
1) 場面緘黙の要素を持つ引っ込み思案
2) 純粋な場面緘黙
3) 言語に問題がある、またはバイリンガルのケース
4) 複合的な場面緘黙 - 自閉症スペクトラム障害(ASD)や学習障害(LD)などの障害が併存していたり、親の死など大きな心理的問題を抱えていたりするケース
5) 年齢があがってから発症する場面緘黙 - 多くは、不安が大きく、大人や子どもによるイジメに合って発症するケースが多い
教師が「あれっ、おかしいな?」と思ったら、注意して観察し、早い時期に保護者に連絡することが望まれます。家では普通に話しているため、保護者は言われるまで全く気づかないことが多いのです。かつては、家庭で話せているから大丈夫と思われ、「成長したら自然に治る」と放っておかれることが多かったのですが、支援がなければ、緘黙症状を引きずったまま大人になってしまう可能性もあります。
授業中に発言できず、友達や先生との会話に加われないことが続くと、自己評価の低下に繋がりやすく、いじめの対象になることも。また、うつや社会不安、登校拒否などの二次的な問題が生じやすくなります。何よりも、生きていく上で重要な、社会性やコミュニケーションスキルを身につける機会を逃してしまいます。それ故に、早期発見・支援が非常に大切といえるでしょう。自力で克服する子もいますが、何もせずに自然に治るケースは殆どありません。「本人の努力」と「ラッキーな環境」とのタイミングが偶然うまくいったと考えた方がよいでしょう。
まず理解して欲しいのは、「子どもは自分でしゃべらない選択をしている訳ではなく、不安のためにしゃべれない」ということ。自分でもどうして話せないのか解らないのです。話さなければならない立場におかれると、不安と緊張のために喉が閉まったように感じることが多いようです。
マギー・ジョンソンさんは場面緘黙を「恐怖症」に例え、解りやすく説明しています。大きなコンサートホールで大勢の観客を前に、ひとりステージに立って独唱するところを想像してみてください。心臓がドキドキして、頭が真っ白になり、冷や汗がでたり、喉がカラカラになったりするんじゃないでしょうか?緘黙児にとって、学校で話すことは、ステージにあがって独唱するのと同じくらい怖いことなのです。
次回は支援の第一ステップ、「場面緘黙児の不安を減らす」について書く予定です。
◯参考文献:『場面緘黙Q&A』学苑社 かんもくネット著・角田圭子編
(詳細はこちら>>)
場面緘黙支援団体 かんもくネット事務局
みく(ロンドン在住)
──■ 連載:ペアレント・トレーニングの活かし方
(第7回)制限を設けるテクニック
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これまで解説したように、好ましい行動に注目し「ほめる」、好ましくない行動には「反応しない(無視する)」ことで注目を取り去ると、子どもの好ましい行動が増え、好ましくない行動は次第に減ってきます。また、予告することや選択肢を与えること、「~と~どちらにする」というやり取りから子どもの協力を引き出すことができます。
前回は、より良い行動のためのチャートを使って、子どもの好ましい行動をほめる機会を作り、ほめることによって習慣化する関わりを作りました。「反応しない」「予告、指示する、選択肢を与える」「行動チャート作成」これらは全て「ほめる」ことのできる好ましい行動を導くためのものでした。ここまでのステップをしっかりと積み重ね、ほめることを習慣化することができると、互いに心地よい関係ができてきます。
「ほめるスキル」と「無視するスキル」をしっかりマスターして信頼関係が育った上で、次に、警告とペナルティで「制限する」スキルを身につけていきましょう。もし、まだ十分スキルが身についていないと思われる方は、一旦先に進むことはやめて、繰り返しここまでのスキルを身につけましょう。
【警告する】
警告とは、サッカーでいうイエローカードのことです。「次に~だったら、~です」と、レッドカードになることを知らせること(警告)です。最後のチャンスを出すという意味ですので、脅している印象にならないようにします。あくまでも、子どもが好ましい行動をとれるようになることが目的ですので、ただ「やめなさい」と知らせる(警告)のではなく例えば、具体的に「テレビを消して、宿題をしなさい」など、どのような行動をとればよいのかを伝えます。
やめなかった時に「消さないから、もう見れません」と、急にペナルティを科しては、本人は納得できませんし、「やめないと、どうなるかわかっているでしょ」などの曖昧な表現でも伝わりません。「今消さないなら、○○番組はみられないよ」など具体的に、今どうするとどうなるのか、子どもが自分で考えられるように伝えるのです。この場合に、事前に約束をしておくとスムーズに切り替えられるタイプの子どももいます。
例でいうなら、テレビを見る前に「△△番組が終わったら(または、~時になったら)宿題をしよう、そうすれば○○番組も見られるよ」と自分のメリットになることを伝えておくのです。もちろん、行動を変えることができた時には、ほめることを忘れてはいけません。
警告は、自分のメリットになることを知らせてもらえる最後のチャンスになるので、決して険悪な関わりにはならないのです。ここで、重要なことはメリットに対してのデメリットです。ペナルティという言葉で表現していますが、いわゆる罰のことです。ただ、「罰」と言ってしまうと言葉がとてもキツい印象になり、勘違いする大人もいますから、この「罰」については少し丁寧に説明していきます。よく理解していただきたいと思います。
【ペナルティ(罰)】
ペナルティは、子どもが自分で行った行動に対して科せられるものです。ですから、ここまでのステップの「ほめるスキル」と「無視するスキル」から「好ましい行動」「好ましくない行動」「許しがたい行動」を、大人だけではなく、子ども自身も自分の行動が今どれなのかを理解できていなくてはなりません。理解した上で好ましくない行動をとるのなら、自分で選択したその行動に責任を持たなくてはなりません。そのためのペナルティです。
ペナルティは、子どもにとってデメリットになるようなことですから、大切なことや意味があることでなくてはなりません。大切な時間やものが目の前から無くなる、取り上げられるといったことは辛いことですし、とても意味があることです。ですが、家族旅行やクリスマスパーティの取りやめをペナルティにしてしまうのは、対象が大きすぎてしまい、子どもがやり直すチャンスも与えてあげられません。大切なことは、大きなダメージを与えることではなく、子どもがどんな行動によって責任を取らされているのかがわかるような、関連性があるデメリットを感じることです。
ペナルティの期間は、一週間、数日間といった長期になると、何に対して責任を取っているのかがわからなくなってしまいます。短い期間であれば、ペナルティ終了後に行動を改めて、さらに適切な行動をとるきっかけにすることもできます。20分、30分といった短い時間でよいのです。
こうして、子どもが自分の行動をコントロールすることができるようになるために、行動を考え、選択してその行動に責任を取るようにするのです。そのために、指示(警告)に従うことができなかった時には、自分で好ましくない行動をし続けたことに対し、即座にペナルティを実行します。警告したのにペナルティを実行しなかったり、途中でやめてしまっては「いうばかりで何にも起きない」と子どもは思います。子どもにとってのデメリットにならないので、警告の効果は見られませんし、自分の行動に責任を感じることも出来ません。
ペナルティが終わったら、「どうしてできなかったの」「次はできるよね」などのお説教はしません。自分の行動に責任をとったのですから、水に流します。もしも、ペナルティ終了後に、すぐまた同じ行動をした時には警告はせずに直ぐに再度ペナルティを与えます。こうして、制限をすることで、より好ましい行動を引き出していきます。
行動についての振り返りや見通しがつかない子どももいます。あらかじめ家族の中で、好ましくない行動や許しがたい行動について、どのような問題なのか、そしてその解決策としてどんなルールやペナルティが作れるか、話し合っておくこともよいでしょう。
柳下記子
視覚発達支援センター 学習支援室室長
──■ あとがき
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次回のメルマガは、1月29日(金)です。
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