大人のきこえと認知を鍛えるトレーニング

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2015.08.21

大人のきこえと認知を鍛えるトレーニング

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■ 連載:大人のきこえと認知を鍛えるトレーニング
■ グッズ:やるべきことが分かるデスクトレー
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■ 連載:聴覚認知の仕組みと聴覚認知バランサーの活用のしかた
第5回 大人のきこえと認知を鍛えるトレーニング
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前回は、大人のきこえ、認知の仕組みについて学びました。
今回は大人のきこえと認知を鍛えるための戦略、聴覚認知バランサーを使ったトレーニングについて解説します。

1.語彙を増やす!

英語のリスニングの成否は、ボキャブラリ(語彙)の量に左右されると言うことに異論のある人とはいないと思います。日本語の聞き取りも同じように語彙力は非常に重要なファクターです。

「なぜ日本語でも語彙力が必要なの?」
「生活の中で充分に勉強できていると思うけど・・」

とお考えになる方もいらっしゃるかも知れません。しかし、われわれのことばの記憶は、よく使われることばは比較的そのままの音韻情報として脳に記録されていますが、使用する頻度も少ないようなことばの場合には記憶されている音韻情報が、「平準化」「減衰」「強調化」といった変化をしてしまっていることが少なくありません(前号のメルマガを参照ください)。同音異義語の場合にはそうした変化はなおさらで、使わない方のことばは記憶の引き出しの奥深くほこりをかぶってしまい、そうそう表に出てくることもありません。

脳の中のことばの引き出し(処理資源)に入っていることばは、時間と共にさび付いてその音韻情報を歪ませてしまうのです。

加齢に伴い高音域の音の聞き取りに不具合が生じてくると、ことばの抑揚の中に隠された感情(音韻メタファー)を理解する力が衰えます。そうしたことばの持つ質感を理解する力が衰えてしまうことをひとつの理由として、ことばを聞いても「文意のまま」にしか理解してあげられないKYな性格が育ち始めていきます。

「ごにょごにょ言ってないではっきり言いなさい!」なんて言うようになったり、聞き取れなくても聞こえたふりの「ぬか返事」なんて状況は、まさしくその音韻メタファーを感じ取ることができなくなった証拠です。

わずかであっても難聴を抱える耳は、相手の発することばの音韻情報のすべてをしっかりと聞き捉えることはできませんから、そうしたエラーが生じる機会はますます増えてしまいかねません。

しかし、そうしたきこえの困りのほとんどは「聞こえない」のではなく「正確に聞こえていない」という状態でしかありません。難聴によってきこえたことばが歪んだ音で聞こえたとしても、日々声に出してしゃべり、耳で聞きと脳内の音韻情報の修正がなされていれば、少しくらい歪んできこえたことばでもすぐにそれを理解することができます。

難聴が進んでも日頃から会話を大切にして世代に関係なくいろんな方とのおつきあいを積極的にしている高齢者は、引きこもりがちな高齢者に比べると同じ聴力レベルであってもことばの理解力は格段に優れていることが少なくありません。それは、日頃から沢山のことばを聞いたりしゃべったりしているからです。

語彙を増やす。とは、なにも新しいことばを沢山覚えなさいということに限定されません。普段あまり使わない単語やことばを、耳(音声)と目(文字)から再学習し記憶の上書きをしていくことで、健聴だった時の脳内辞書を、難聴が進んだ耳に最適な状態へとアップグレードしていく。そんな意味を持つ訓練として語彙を増やすという訓練が役に立つのです。

聴覚認知バランサーで用いている単語は、日常的に使われることが多い=親密度の高い単語から、なじみの少ない単語まで実に多くの単語を搭載しています。似たような発音(音韻情報)のことばを聞かされた時、それを正しく本来の音情報の通りのことばとして正解していく訓練によって、知らず知らずのうちにあなたの耳は、いまのあなたの聴力レベルに最適化した音韻辞書を再構築することが出来ます。

2.単語のもつ意味カテゴリーについて頭の中を整理していく

「さかな」ということばには、「魚(さかな)」、「肴(さかな)」という同音異義語があります。また、文脈の中では「さかなクン」とか「サカナクション」といった固有名詞で取り扱われることもありますし、文脈の中で「そんな、さかなでするようなことは言うなよ。」とか「この1年のうるささかな」というような言い回しの中で使われる場合もあります。同音異義語としての使われようは実にさまざまです。

わたしたちはお互い機関銃を打ち合うように、実に沢山のことばの弾丸をお互いに打ち合っています。そんなあわただしいことばのラリーの中でも意味を取り違えず会話を楽しむことができるのは、ことばの持つ意味をしかと脳に刻み込んでいるからです。よく似た音韻情報のことばであっても、その会話の中での文脈的な意味あいからその「さかな」はあっちの意味での「サカナ」とは違うなんてことを瞬時に判断しているわけです。

聴覚認知バランサーに搭載されている、なじみのないことばから普段つかいのことばまで、そのことばの意味や属性をきちんと整理して、「同じ音韻情報の引き出しの中に入っていてもそのことばの意味は(音韻情報は似ていても)全く別ものだよ」と再学習していくことで、類音意義語を聴いた時に「あれなんだっけ?」と脳内休止してしまわない、つまりことばのキャッチボールを途切らせないような聴覚認知機能を育てていくことができます。

このソフトはまだリリースされてまもないため、ここに搭載されている語彙数はまだまだですが今後のバージョンアップによって、アドインで単語を追加したりすることで、知的なコミュニケーション能力に必要といわれるレベルまで収録語数を増やしていく計画です。

3.聞き取りの時間窓を衰えさせない

高齢者はメリハリがはっきりした明快なことばを好みます。ことばの連鎖を頭の中で整理整頓する力が衰えてしまっているため、句読点のはっきりした意味の取り違えの少ないことばを好むのです。これは加齢に伴い前頭葉機能が低下することが影響していると考えられていますが、それだけでもないようです。加齢によって視聴覚が徐々に衰えると、新しいことばは明瞭な音素(発音)で記憶することができません。またこれまでに覚えてきたことばの音素と(難聴が進んでしまい耳から入ってくる音素が歪んでしまうために)聞こえたままの音とのミスマッチに対して、適当にすりあわせて(冗長性をもって)理解する癖をつけてしまいます。年寄りの耳は都合のよいことしか聞いていないというのは、前頭葉機能の衰えをカバーするために、あらかじめ予測した範囲でものごとを聴いているからにほかなりません。そうした聞き取りのエラーの原因として、ことばの聞き取りにおける時間窓※の短縮があります。ただし、これは脳機能の衰えによる時間窓の短縮ではなく、脳というものが省エネ的な情報処理(らくをして、はしょること)をするために生じるエラーだと言えます。

※編者注: 思考の際にまとめて考慮できる時間の幅

こどもが「さかな」ということばを覚えていく時「な」とか「さ」という単音でサカナのことを表現することから始まり、「さかな」といえるようになり、しかし「おかさな」など語順の混乱を経験しながら最終的に「おさかな」という単語に辿りつくのとは逆に、高齢者の耳は、「さかな」も「おさかな」もだいたい同じとして記憶してしまっています。ですから「おかさな」のまちがいはすぐに指摘できるのですが「まさかな」とか「おさかん」とかいうことばがふいに出てきた時には、そのことばを聞き間違えてしまったりします。

聴覚認知バランサーには、単語を聞かせてその単語の最初の音素(語頭音)あるいは最後の音素(語尾音)を当てさせるゲームがあります。このタスクをくり返すことで、単語に対するへんな適当さをリセットする。本来ことばがもつ単語の長さや、そこに含まれる一つひとつの音素に気配りするトレーニングを通じて、子どもの時から徐々に培ってきた本来の聞き取りの時間窓を活用する癖を取り戻してください。このことは聴覚認知の脳力アップにとても大切なこととなのです。

次回は、補聴器を使った聴覚認知バランサーの使い方について説明します。

中川雅文・国際医療福祉大学教授
国際医療福祉大学病院耳鼻咽喉科部長

◯参考図書 中川雅文著 耳と脳 臨床聴覚コミュニケーション学試論
医歯薬出版 2015 (詳細はこちら>>

 

■ グッズ:やるべきことが分かるデスクトレー
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お盆ウィークも終わり、子どもたちの夏休みのゴールも近づいてきましたね。

学齢期のお子さんをお持ちのご家庭では、この時期、生活習慣や勉強のことで小言を言い続け、お子さんは言われ続け、親子とももうウンザリ・・・というところも多いのではないでしょうか。

わが家でも、なるべく親が毎日同じ注意や警告をしなくてもいいように、手を替え品を替え工夫をしています。しかし、年々成長するので毎年同じわけにはいきません。残念ながら小言がなくなるわけでもありません。

一方、変わらないものもあります。
それはセキセイのデスクトレーです。

夏休みになるとリビングで勉強する時間が増えるので、めだつ場所にA4サイズのトレイを3~4段積み上げ、それぞれに教科別、あるいは時間別の教材を入れています。
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今年の息子のトレイです。いちばん上の段には「学習する際に最低限必要な文具」、次の段には「算数プリント」、3段目には「国語プリント」、最後の段には夕食後に書く「日記」の教材が入っています。今年の娘のトレイは「朝ごはんの前の勉強グッズ」「日中の勉強グッズ」「その他の宿題」という分け方です。

タテ型とヨコ型があり、出し入れに関して言えば、ストレスが少ないのはヨコ型です(その分、場所はとりますが)。何色も展開していますが、わが家では、なるべく情報を少なくするために無色(クリア)のトレイを使っています。
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トレイは簡単に取り外しできますから、中身を整理し直すのも楽ですし、今やることを毎回いちばん上に持ってくるといった使い方もできます。ただ、同一保持の観点から、順番は元どおりにして翌日を迎えた方がいいと思います。

たくさん書類を入れたい時は、別売りのジョインターを連結すると取り出し口が4cmアップし、中の書類が見やすく出し入れがスムーズになります。でも、たくさん入れられるようにしてしまうと管理するのが難しくなりますから、気をつけてください。
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終わったプリントは学校へ提出するために、内容別にリヒトラブの「スケジュール&仕分けファイル」にはさんでいます。12の仕切りの間に書類をはさむだけで保管や持ち運びができるファイルです。

クリアホルダーで個別に整理してもいいですが、クリアホルダーをたくさん用意するよりも一括で楽に管理することができますよ。

最後に、これらの工夫は、学習内容が本人のレベルにあっているものというのが大前提です。どんなに構造化して、見て分かるような暮らしをつくったとしても、その内容が本人の能力に合わなければ長続きしません。うまくいかない時は、かたち(構造)だけでなく量や質を見直したり、本人の集中力の続く時間を見極めたりして、全体を調整するのがよいと思います。

◯参考:
セキセイ「デスクトレーシリーズ」
(詳細はこちら>>

リヒトラブ「スケジュール&仕分けファイル」
(詳細はこちら>>

レヴュアー: yoshiko

 

■ あとがき
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日本能率協会が1000人を対象にした調査では、2/3の親が夏休みの宿題を手伝っているそうです。
子どもが苦労している宿題は「自由研究」68.2%、「読書感想文」37.0%、「日記・絵日記」11.7%(以上、複数回答)だそうで、私の子どもの頃と同じだな、と思いました。
※日本能率協会プレスリリース (詳細はこちら>>

お子さんも親御さんも、新学期まで残り1週間、無理のないようにお過ごしください。

次回メルマガは遅い夏休みをとらせていただいて、9月11日(金)の刊行とさせていただきます。

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