夢の実現に向けて、生徒自身が取り組むワークシート

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2015.07.10

夢の実現に向けて、生徒自身が取り組むワークシート

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■ 連載:聴覚認知バランサーの基本的な使い方
■ 連載:夢の実現に向けて、生徒自身が取り組むワークシート
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■ 連載:聴覚認知の仕組みと聴覚認知バランサーの活用のしかた
第2回 聴覚認知バランサーの基本的な使い方
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音声を用いた聴覚コミュニケーションをうまく使いこなすには、まず相手の発する音声を正確に聞き取る力が必要です。その能力をチェックするのが医療機関で行われている標準純音聴力検査です。別名オクターブ・オージオメトリとも呼ばれるこの検査は、125Hz、500Hz、1000Hz、2000Hz、4000Hz、8000Hzの周波数の音色の音が、どれくらいの音量で聞き取れるかを確認する検査です。1オクターブごとの音の高低が聞き分けられるかを調べる検査です。

音楽の場合、オクターブの聞き分けだけでは不十分です。オクターブに含まれるドレミファソラシドの音階も聞き分けが必要です。このドレミの音階区別はピッチクラスとも呼ばれます。ちなみに一般的な音感の人は音の高低、つまりオクターブクラスの識別には苦労しませんが、ピッチクラスを明確に言い当てることは難しいようです。音楽的な才能のある人はドレミの音も明瞭に聞き分けることができます。オクターブクラス毎に含まれるドレミを正確に聞き分けることができる人は「絶対音感」保持者と言われます。その類稀な聴感によって天才的な音楽的才能を発揮する人は少なくありません。

絶対音感の獲得には特別な教育が必要です。例えば日本の幼児対象の音楽教室は、ハ長調の楽曲が中心に行われています。そのため白鍵盤絶対音感(黒鍵盤の音はわからない)という不完全な音感に育ちがちです。ピアノの一番高い音から低い音までまんべんなく触れることは大事です。フルレンジに鍵盤に触れる機会がないと、充分な広がりのオクターブクラスを学べないからです。

楽器の練習は3歳以降にならないと始まりません。それは手指がしっかりしてこないためです。その結果、お子さんは言語獲得期の終わった頃、楽器に触れます。音楽性のある音感獲得を期待するなら、リトミックなどの音感教育を早い時期から始めることが大切です。3才になってからあわてて音楽の英才教育をはじめても音感獲得には少々手遅れだからです。その意味で幼児期から難解なラフマニノフの曲等を習わせフルレンジな音の存在を目と体で覚えさせるのもよいでしょう。

音声も音楽と同じ構造です。例えば、オクターブクラスとは、男性の声、女性の声、子供の声といったカテゴリーでしょうか。そうなるとアイウエオの単音がドレミに相当するのかなと思いがちですが、単音はわれわれが考えている以上に複雑です。

われわれが「あ」とか「い」などの単音を耳で識別するとき、われわれの耳は音楽の練習で行うソルフェージュ※1のような聴音分析をしています。
例えば「オ」の男性の大人の声には200Hz、500Hz、800Hzの3つの周波数が含まれます。同じオでもそれが大人の女性や子供になるとその音色はより高いオクターブになります。ことばの理解の場合にも、ことばに最適な音感が出来上がっていないと「聞こえるけど聴こえない(分からない)」という問題や、音楽でいう音痴のように、ことばでうまく感情を伝えられない、あるいはことばのあや(音韻メタファ)を聴き取れないといった問題を生じてしまいます。

私自身も耳鼻咽喉科外来という現場では、純音を用いた聴力検査でそうした困りをはっきりさせることができず、言語聴覚士の先生に評価をお願いする場面にしばしば遭遇します。より実際的なきこえの困りは、少なくとも男性の声、女性の声、子供の声、それぞれのききとりの具合を見る必要がありますし、立ち上がりの鋭いシュとかシッという子音を検知する力がとても大切になってきます。
※1 ソルフェージュ 音楽学習で楽譜を読むことを中心とした基礎訓練。
(Wikiはこちら>>)

◯日本語に対する「絶対音感」が獲得できているか、
「聴力チェック」で調べてみよう。

(今回は内蔵スピーカーを用いる場合について解説しています。)

1)まず音量を調節する
みなさんが抱えているかもしれない「きこえの困り」は聴覚認知バランサーの「聴力チェック」を使うと、自分で視覚的に確認することができます。
それにはまず、装置の音量を適正に設定する必要があります。

iPad版の場合はアプリ立ち上げ時に表示されるガイダンス通りに音量を設定すれば大丈夫ですが、パソコン版の場合には少し工夫が必要です。パソコン本体の出力は最大音量メモリの70~80%くらいに設定します。次に、内蔵または外部スピーカーから出力される音量を、MCLレベル(快適閾値)に設定します。MCLレベルとは、健康な20歳の男女数名がちょうど良い音量感と感じられる音の大きさです。うるさすぎず小さすぎない、そんな快適な聞き心地の音量を探し、そのメモリに固定して使います。プログラムの検査音そのものは自動的に音量が可変する仕組みになっているので、最初の設定をした後は音量の調整は不要です。

2) どんな場所で聴覚認知バランサーを使うと良いのか?
まずは静かな場所で使ってみることをオススメします。

#静かな場所の目安は、背景騒音のレベルが40dB以下の環境をいいます。
今はスマホで簡単にそうした環境騒音レベルを確認できます。
● HUNG HSUN LIN「Noise Meter - 騒音計」(詳細はこちら>>
● Phyar Studio「iAnalyzer」(詳細はこちら>>
などの有料アプリがオススメです。

静音下で「聴力チェック」を行い、すべての音素が話者に関係なく聞き取れるかの確認をします。ここで高い正答率が得られれば、あなたの頭の中には日本語を理解するに必要な音素が必要十分に到達していることがわかります。
聞こえの問題がないことをまず「聴力チェック」で確認してみましょう。

静かな場所での聞き取りで正答率が悪いときは、結果のスピーチバナナ画面※2の枠外にプロットされている音素がなんであるかをチェックします。この画面では、各音素が含む複数の周波数のうち最もパワーの大きい周波数のみを示しています。そのために、実際にはその最もパワーの大きい周波数での聞き取りで問題があったとしても、残りの周波数成分でことばの判断をしていた場合には正答できてしまう場合もあります。つまり耳鼻科の検査では難聴と言われているけど自分はそんなに困っていない、という人がそうした結果になると思われます。このように静音下で聴力チェックすることで、耳そのものの機能を評価することができます。
※2 聴覚チェックの結果:スピーチバナナの例 (画像はこちら>>

次いで、騒音下での聞き取りも行ってみましょう。騒音レベルは50~60dBくらいが良いでしょう。ラジオをつけたり、公園に出かけたり、いろんなところでチェックしてみてください。

騒音下で聴力チェックをすることで、トップダウン処理能力を評価することができます。トップダウン処理とは、脳内処理資源の豊かさとそれを活用する能力のことです。難聴の人が静音下に小さめの音声を聞くと、途切れ途切れに聞こえてしまい聞き取れないという状態が生じます。ところが、周囲に適度な騒音がある時には、騒音がそうした途切れ途切れのところを穴埋めしてくれるので、脳にある音韻修復という機能が働いてことばを予測しやすくなります。もちろん頭の中に予めそうしたことばが記憶されていないと、想像することはできないので正しく答えることはできませんが、脳機能が元気な人は難聴があっても騒音下で聴き取りがアップする現象が観察されます。

一方で、注意障害や学習障害のある人は、静音下では正答率が良いのに雑音下では誤答が増えてしまいます。前頭葉機能の低下など選択的な注意の保持が困難な状態を抱えているためにそうした結果になるようです。

さらに、特殊な使い方として補聴器の装用前後で聴力チェックすることで、装用効果をみることや、補聴器に設定した周波数特性の良し悪しを視覚的に確認することにも活用できるでしょう。

中川雅文・国際医療福祉大学教授
国際医療福祉大学病院耳鼻咽喉科部長

 

■ 連載:子どもたちの夢や願いを支える
第4回:夢の実現に向けて、生徒自身が取り組むワークシート
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今回は、自閉症・発達障害などを含めた知的障害のある児童・生徒を対象とした特別支援学校での取り組みを紹介します。

学校の教育目標に「社会の中で、自分らしく、たくましく生きる子どもの育成」が掲げられており、子どもたちの「生きる力」を培うことを大切に実践しました。その中でも特徴ある授業の一つとしては、自立と社会参加につながる基礎的な力を身につけることをねらいとした「社会生活」がありました。小学部、中学部、高等部でそれぞれ、公共交通機関の利用や公共施設の利用などのスキルを系統的に身につける学習を行いました。学校は、大学の附属学校でしたので、子どもたちの社会参加と自立を目指し、「社会生活」の新設や「社会性を育てるための授業づくり」や「人と関わる力を育てる授業のあり方」など、生きる力を培うために子どもに何を学ばせるのか、という研究をしていました。近年は、子どもたちが授業の中で主体的に学べているのかを振り返るために、課題を明らかにし、子どもたちが自ら考え自ら動く授業のあり方について、キャリア発達の視点を取り入れる研究をしていました。

◯生徒の様子
学校に在籍する児童・生徒数は、その当時、小学部14名、中学部18名、高等部24名の計の56名、教員数34 (非常勤を含む)でした。クラスは学年で編成され、一つの教育課程(知的代替の課程)で学び、小学部から入学した生徒は、高等部までの12年間を同じ仲間とともに学びます。ここで紹介するのは、私が担任していたクラスで、療育手帳A1~B2※3を所持する生徒が8名在籍していました。意思表出の有無や生活及び社会経験も様々です。自信が持てず指示を待ったり、社会の出来事などに自ら関心を示さなかったりする姿が見られました。また希望する進路は様々で、一般就労・福祉就労・生活介護などがありました。そのような中、生徒は「スペシャルオリンピックに出たい」「パテシエになりたい」「女優になりたい」「ナースになる」など様々な夢を持ちながら日々のいろいろな活動に取り組んでいました。
※3 A1は最重度、B2は軽度。区分や表記は自治体によって異なる。

◯実践のキーワード
キャリア教育は、個々のキャリア発達や自立を促すものであり、日々の教育活動全般において実践していくものと言われています。そのため私たちは、子どもたち一人ひとりが社会の中で自分の役割を果たしながら 自分らしい生き方を実現していく過程を支援していかなければなりません。そして、子どもたちは、将来の社会の一員として自立と社会参加を目指し、生き生きと豊かに生きていくために必要な基礎的な能力や態度を、学校生活全般の中で段階的に積み重ねていく必要があります。そのような中で私たち支援者に求められることは、子どもたちが将来、自分の望む生活を歩めるように、日々の教育活動への意味付け・価値付け・方向付けを念頭に置き取り組むことです。さらに、子どもたち自身が、学んできたことの意味付け・価値付け・方向付けが分かるように、実践していくことではないかと考えます。過去を振り返り、今という時間の大切さに気づき、将来に目を向けさせる。今は現実であり、かつ将来の礎であり、今なら過去の遅れを取り戻すことができると、渡辺三枝子・筑波大学名誉教授は述べています。※4
※4 今回の実践のイメージ図 (画像はこちら>>

昨今はキャリア教育の実践においても、成果を論じる根拠が求められていますが、キャリア教育においては「できる・できない」という ability ではなく、課題への対処能力 competency を大切にしていることから、成果を量的に測ることは難しいという指摘があります。菊地一文・青森県教育庁指導主事・元国立特別支援教育総合研究所主任研究員は、量的評価に代わる評価方法の一つとして、行動観察などの記録を基にした質的評価、ポートフォリオを挙げています。

ポートフォリオの作成は、子どもが目指す目標に向かって、達成した過程を表現するものです。子どもに達成感が得られ、自尊心や自己効力感を高め、次に何をすればいいのかを考える機会にもなります。そのことは、自分の学習活動を自分自身が制御するセルフコントロールに繋がるのではないかと考えました。

ポートフォリオのメリットとして (1)記録に残る (2)スキルをアップできる(3)自分自身に気づく等があげられます。子ども自身が自分の願う未来の姿を追いながら、向かう意欲を持続し、今までの歩みを振り返り、自分でもできるという自己効力感を育むとともに、次に繋がる改善やさらなる意欲など多くの気づきが得られればと思います。結果的にポートフォリオは、子どもたちが個々に持つ力に応じて取り組めるものであり、障害の軽重に関わりなく取り組めるものだと感じています。

◯指導の実際
高等部では、間近に迫った卒業後の生活を意識して、今まで身につけた力を実際の生活の場で汎化できる力をつけることが求められています。主体である子どもたち自身が将来展望を持ちつつ、自分が今している活動は何のためにしているのかを理解しながら積み重ねていくことが大切です。経験や体験の少ない生徒には、まだまだ自分の将来展望をイメージすることは難しいことです。

それを補うためにPATH※5を活用して導いた「ああなりたい」「こうなりたい」といった「本人の願い」を尊重し、その実現に向けて目標を設定することにしました。さらに、自分自身がどのように歩んできたか目標達成度が目に見える掲示をするなどの工夫を行いました。このような「本人の願い」は、やる気や意欲を引き出す動機づけになり、自分が学習していることに楽しさやおもしろさ、意義を感じ、キャリア教育の土台づくりとなると考えます。

また、高等部の子どもたちは、大人への移行期の中で、心身のバランスが伴わず精神的に不安定になりやすい段階にあるといえます。そのためできないことだけに目を奪われず、肯定的な目で子どもたちのいいところや頑張ったことを認めるようにしました。そのことで、自分を尊重できる力や友だちのよさを認める力を培いながら、クラスの集団の中で「自分らしさ」や「仲間意識」を身につけ、互いを認め合いながら共に活動できることを大切にしました。
※5 PATHとは、Planning Alternative Tomorrow with Hope(希望に満ちたもう一つの未来の計画)の略称。 PATHは1991年にカナダにおいてM.Forest氏らがインクルージョン教育を推進するための具体的な手だてとして開発したものである。国立特別支援教育総合研究所 教育相談年報 第30号から引用。

1)目標達成シート:レッツトライの取り組み
レッツトライは、主に一般就労を希望する生徒が取り組む目標達成のためのシート※6です。生徒は3年間、毎日コツコツと取り組みました。下級生も先輩の姿を見ながら取り組んでいました。学校にいる間は、教員が生徒をサポートしながら、目標達成に向けてアドバイスできますが、卒業後は誰かが手をさしのべてくれる環境ではありません。自分のやる気を促し、目標に向かって計画を立てて進めていくのは自分自身です。このレッツトライは卒業後に自分自身を毎日コーチングしていくツールとして活用してもらいたいというねらいがあります。1週間の目標を設定し、1週間の出来事を見通して計画や日々の目標を書く。その日が終われば1日を振り返るというものです。
※6 レッツトライのイメージ (画像はこちら>>
シート (画像はこちら>>

(1) 今週の目標
その日の学校の行事やクラスの取り組みや放課後の習い事などの予定を書く。
毎日書くことからはじめ、1週間の計画を立て見通しをもって記入する。
(2) 目標のチェック
できた日に○をする。○がたくさん増えていくことを楽しみにする。
(3) 今日の目標
ここが最も大切なところで、今日の目標を掲げてやるべきことを書く。社会人になって3年先を見通し、1週間の計画立案に繋がるメモの習慣をつける。
(4) 今日の気づき・感謝・よかったこと
その日の出来事や思いの中で、学んだこと、成長できたこと、感謝したことに気づく。
(5) 生活習慣
基本的生活習慣の確立を目的に、自分の1日の生活を見直すことを目指す。
(6) 今週の生活を振り返って
プラス思考で1週間の振り返りを書く。課題を発見できたら(7)に繋げることを目指す。
(7) 課題の解決策
解決策を考えて、書く。「どうすれば○○は解決できるか」と高等部2年に求めされるレベルで考えることを目指す。
※7 レッツトライ記入例 (画像はこちら>>

◯成果と課題
・レッツトライに取り組んでいる生徒の様子を見て、「自分もやってみたいです」という生徒がいました。やらされ感でなく、やりがい感を持って自ら取り組んでいるので、なぜ何のためにするのかが理解でき、今週や今日の目標の記入においても、課題を解決しようという意欲に繋げるこができました。
・当初は毎日、目標ややるべきことを書き、振り返っていたが、継続していく中で、1週間の計画を月曜日に記載できる生徒が増えてきました。見通しを持って学校生活を過ごすことができるようになりました。
・生活習慣の欄で起床の時間が遅れた理由を述べたり、自分のできなかったことを課題と認識して次にどうしたらいいか考えたりできるようになりました。自分の取り組みに対して自己評価することに繋がり、生徒の振り返りの姿が明確になりました。
・提出方法は自主性にまかせていますが、毎日提出しコメントを求めることで安心感を得る生徒が多いようです。目標設定や次への改善策には言葉がけを要しました。

2)自分の夢の実現!ドリカムブックの作成
自分の1年を振り返ることができるポートフォリオとして「ドリカムブック」を作成し、学校の行事における本人の様子の写真とそれに対する本人や友人のコメントを1枚のシートにまとめ綴じることにしました。1年間の自分の頑張りが時系列にまとめられたことで自分の歩みを確かめることができ、次年度への目標設定に活用できると考えたものです。課題としては目標への本人の意識や思いの継続と振り返りがあります。その課題を解決するために、3学期にまとめて1年間を振り返るのではなく、各行事やクラスの取り組みをタイムリーに振り返りながらドリカムブックを作成し、子どもたちの「なりたい自分」を丁寧に支えていくことにしました。
※8 授業の風景 (画像はこちら>>

(1) ドリカムブック作成
・事前ワークシートやしおりを見て、自分の目標や見学したところなどを確認する。
(2) A4版の写真で実際の様子を確認する
*当日の様子がわかる写真をたくさんプリントし各時に配布する。
(3) ドリカムブックをつくる
・写真を貼る
*自分の気に入った写真を選びシートに貼る
・全員で意見交換する ・できたこと・よかったことなど振り返りを記入する。
*自分や友達のできたこと・頑張ったことなどを発言する。ことばの表出のない生徒には仲間が発言したり、選択肢を用意したりする。
※9 記入の様子 (画像はこちら>>
※10 ドリカムブックの例 (画像はこちら>>

◯ドリカムブックに綴じる内容
年度当初…自分の夢・1年間の目標
(1) 通年 …学校の行事・校内実習・校外実習・現場実習・生活単元学習
(2) 学期末 …クラスの校外学習→学期の節目の活動とする。
(3) 学年末…1年間の振り返り・夢の木に掲げた自分の歩みの葉っぱ
★各行事や校外学習や現場実習などの記録やしおりやパンフレットなどの資料も振り返るための資料として一緒に保管する。
※11 ドリカムブックの例 (画像はこちら>>

◯成果と課題
校外学習の振り返りでは「AさんとBさんはしおりをみて行動していたよ」「CさんとDさんは乗り越し料金を車内で払っていた。すごい」「私はインターネットの乗り換え案内で時刻表と運賃を調べた」「Eさんはお昼の注文を自分で選んだよ」など生徒同士で意見交換し合いました。友達や自分の新たな発見があり、互いを尊重しながらいい刺激を得ることができました。また、言葉の表出のない生徒や障害の重い生徒も、友達から意見をもらうことで話し合いに自分も参画しているという実感を得ることができたのではないかと考えます。
・ドリカムブックを作成していく過程で、学級新聞を作ろうという生徒の発言があり、各自が作成するドリカムブックを活用して学級新聞を作成しました。廊下に掲示することで、他のクラスの生徒や教員が写真やシートを見て言葉をかけるようになり、そのことが他者評価となって新たなモチベーションを高めることに繋がりました。
・ドリカムブックがポートフォリオされ、シートが積み重なっていくことで充実感・達成感が得られ、自分自身で振り返りができるツールになっていきました。
・学習の意味づけ・価値付けを意識して振り返るために、中核になる行事や活動において事前ワークシートを活用し、その活動の目標や役割、学習のポイントを意識させて当日の体験に臨みました。事前シートを使用してドリカムブックで振り返ると、なぜ・何のために学習してきたのか、により意識が深まることに気づかされました。
・個の実態に応じたシートを工夫し、より活用できるものに改善していく必要があるように思います。
・意思表出の手段をどのように繋げるか、早期からの対応や教育課程への話し合いなど課題も明確になりました。
※12 活用イメージ (画像はこちら>>

卒業後は学校のような支援は得られません。自分自身でセルフコーチングできるシートになってくれればというねらいで「レッツトライ」や「ドリカムブック」に取り組みました。毎日継続していく中で、その日の活動には、何のために、何があり、何をするのか、またその日を振り返り、自分が立てた目標に対しての感想を書く中で自らを振り返り、次はどうしたらいいのかを考えられるようになりました。3年間の継続で、何のためにするのか、将来どのような意味を持つのか、自分自身で考えながら取り組み、顧みる習慣をつけて「あ!そうだ!」という多くの気づきを得て欲しいと思います。

キャリア教育の評価において、生徒自身の振り返りなど内面の姿を評価することは難しいといわれる中で、ポートフォリオ評価は一つの解決策ではないかと考えます。

ポートフォリオとは、書類入れやファイルを意味する言葉です。ポートフォリオ評価は、単なる記録の積み上げではなく、学習のプロセスの中で何を保存していくのか支援者側の意図がなくてはならないものです。1年間の中で振り返る意義のあるものを選んで生徒がそのシートを作成します。目に見えて分かるファイルやシートを通して、生徒は達成感を感じ自分はこんなに頑張ったという自尊感情が育まれるのではないかと思います。支援者である私たちは、それがどんな価値があるのかを生徒に伝え、つぎの課題が何であるか示しながら、学習活動への意欲を高めていくこと求められています。これからも生徒のなりたい自分を支援する方策を模索しながら、生徒自身が自分の変化に気づき、フィードバックしながら成長していく姿を支えていきたいと思います。

◯参考文献 以下の逵の実践より抜粋
知的障害特別支援学校のキャリア教育の手引き
-実践編小中高の系統性のある実践
監修:尾崎祐三・菊地一文、編著:全国特別支援学校知的障害教育校長会
出版 ジアース教育新社
逵直美・東京都立光明特別支援学校教諭
前三重大学教育学部附属特別支援学校
(詳細はこちら>>

 

■ あとがき
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8月6日は三重県の南端、度会(わたらい)特別支援学校で、7日・8日は四日市の北勢きらら学園で、ライフサポートフェスタ2015が開かれます。今年は編者も、視覚認知バランサーや聴覚認知バランサー、いっしょに算数などの新製品を紹介に参加することにしました。

まだ、正式なページができていませんが、日にちが異なる以外は下記の昨年の内容とほぼ同じです。
※ライフサポートフェスタ2014 (詳細はこちら>>

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