保護者は正々堂々と息抜きを

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2015.02.13

保護者は正々堂々と息抜きを

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■ 連載:「見る」機能と学習 視力と屈折異常
■ 連載:保護者は正々堂々と息抜きを(最終回)
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■ 連載:「見る」機能と学習 第2回 視力と屈折異常
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1.F君 6歳

F君は日頃、おちつきがなく集中力も続きません。次年度就学を控え、心配されたお母様が市のこども発達センターに相談されました。そこで心理士より、知能は正常だが周囲にあるものに次々関心を示し、注意はあまり持続しないことを指摘されました。さらに耳が良く聞こえておらず、ものもよく見えていないようなので、発達を診てくれる小児科医および耳鼻科医、眼科医に診てもらうようにアドバイスされました。

小児科では、薬物治療する状態ではないがADHDの要素を持っていることを指摘され、今後も定期的にフォローすることになりました。

耳鼻科を受診したところ、F君の両耳の聴力は低下しており右耳は全く聞こえていないことがわかり、補聴器等を検討することになりました。

眼科は当かわばた眼科を受診されました。初診時、F君は一見元気でものが見えていない様子はないのですが、何と驚くことに強度の遠視(+13D以上)で視力は両眼とも0.03、最も良く見えるように眼鏡で矯正しても0.1程度と弱視であることがわかりました。

F君は耳も良く聞こえず、ものも良く見えない状態だったのです。0.03の視力では、1年生の教科書の文字が大きいといっても読むことは困難です。即日精査を行い眼鏡を処方しました。とても強い度数の眼鏡ですが、A君は喜んで装用し、半年後に眼鏡視力は0.3、一年後には0.7に改善しました。まだ、弱視が完治したとは言えませんが、学習には十分な視力がでてきました。少々落ち着きはありませんが、眼鏡を掛け補聴器を着けて普通級で元気に勉強しています。

2.視覚機能について

前回述べたように、視覚系は外界の情報を取り入れる入力系(視機能)、見えている情報を処理して認識する視覚情報処理系(狭義の視覚認知)、見たものを、読んだり、書いたり、手足を動かしたりする機能等へ伝える出力系(視覚情報と運動機能の連携)から成り立っています。見たものを読んだり書いたりすることは、日常何気なく行っていますが、上手にものを見るには視覚系全体が適切に機能している必要があります。

3.視機能とその不調

近視、遠視、乱視(屈折異常)の為に視力が低下していたら、正確にものを見ることはできません。学校での視力検査は5メートル離れたものが見えるか(遠見視力)を確認していますが、遠見視力がよくても近くが見えているとは限らないのです。見たい距離に素早くピントをあわせる(調節機能)ことも大切です。もちろん、上手に眼が動かせなかったり(眼球運動障害)、両目の視線が揃わなかったり、両目で見たものがうまく一つにならなかったりしたら(輻輳(ふくそう)不全や斜視などの両眼視機能異常)正しくものを見ることはできません。

4.近見視力について

現在、学校で行われている視力検査は、5m離れた対象物を識別できる能力を測定する「遠見視力検査」です。子どもは老眼ではないのだから遠見視力が良ければ近見視力が悪いはずがない、ということで近見視力については検査されていないのですが、果たしてそうでしょうか?

私が学校医を務めるG小学校全学年の児童を対象に、近見単一視力表を用いて視距離30cmで行った日常近見視力検査(2010年5月)の結果では、次の表のように各学年8.1 ~16.6%の近見視力不良眼(0.8未満)があることが判明しました。
表 G小学校全校生549名の日常近見視力 (画像はこちら>>

この表には示されていませんが、同日に行った遠見視力の結果、遠見視力A(1.0以上)であった707眼中、近見視力0.8未満は42眼(5.9%)であり、左右眼とも近見視力0.8未満の児童は549名中32名でした※1。これらの児童は現在の学校健診ではフォローされない。さらに調査結果からは、遠見視力不良であるほど近見視力も低い傾向にあることがわかっており、遠見視力不良で眼科受診した場合、近見視力検査も受けるように指導する必要があると思われます。近見視力が不良の子どもは、手元で本を読んだり文字を書いたりするときに、鮮明な像が得られていないか、鮮明な像を得るために、眼のピントを合わせる神経と筋肉に過重な負荷をかけている可能性があります。小学校高学年以降では、学習時より速い読書速度が求められることを考えると、近くの物を苦労せずに見ることができることは、学習を円滑に進める上で大切です。近見視力の不良は、学習効率の低下を招き、また見ることにエネルギーを使うために疲れやすくなることも予想されます。

※1 参考文献 川端秀仁:視覚認知に問題のあるLD (Learning Disorders、Learning Disabilities)児への対応-眼科の役割について-日本ロービジョン学会誌10:31-28、2010

5.屈折異常について

ところで近視や遠視というのはどんな眼の状態のことをいうのでしょうか?
眼の構造をビデオカメラの構造にたとえると、光学部のレンズに相当するのが角膜(黒目)と水晶体、絞りに相当するのが虹彩で、撮像部に相当するのが網膜です(図1)。
図1 眼球断面図 (画像はこちら>>

レンズ系の屈折力によって、見ているものの像が網膜上に正しくピントが合う状態が「正視」です。しかし、人によって眼球の大きさやレンズ系の屈折力が異なるため網膜上にきちんとピントが合わない場合もあり、これを「屈折異常」といいます。屈折異常には、網膜の手前にピントが合う「近視」と後ろにピントが合う「遠視」、およびどこにもピントが合わない「乱視」があります(図2)。
図2 いろいろな屈折状態 (画像はこちら>>

近視の割合は小学1年生の10%未満から年々増加し、小学6年生では50%以上に達します(図3)。
図3 小学校各学年の屈折異常分布 (画像はこちら>>

強い遠視は遠見視力も幼児期から低下し、眼鏡などで補正されていることが多いのですが、弱度の遠視は一見、遠見視力も近見視力も良いため裸眼で過ごしていることがほとんどです。しかし、遠視はピント合わせの負荷がより大きいため、体調によっては近見作業で疲れやすく集中力が続かないことから学業不振の原因となることがあります。

乱視眼の割合は、学年を通しほぼ一定(25%)で、強度の乱視は約2%程度です
※1。乱視眼の見え方は、個々のケースで異なりますが、手ぶれした写真のような見え方をしています。程度が強くなると文字の誤読やダブリが生じ、学習の妨げになります(図4)。
図4 乱視眼の見え方の例 (画像はこちら>>

6.屈折や調節に問題がある時の症状

(a)教室で目を細めて見ている
(b)読書など近見作業で根気が続かない、または近見作業を避けようとする。
(c)読書姿勢がよくない(極端に近くないか?)
(d)視作業に伴う眼の奥の痛みを訴える。

7.視機能の支援のポイント

視力検査正確にを行うことがまず大切です。また上記のような症状に注意してください。視機能の問題は眼科で治療できます。
保護者に学校での様子を説明し眼科受診の意義を理解してもらい、眼科受診に際しては、児童の気になる症状を具体的に眼科へ伝えることが大切です。

(川端秀仁・かわばた眼科院長)

 

■ 連載 子どもの発達障害に向き合う保護者の方へ(最終回)
第5回 保護者は正々堂々と息抜きを
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先日、拙著『発達障害の子を育てる58のヒント』で保護者の方の共感を最も集めのたが最後の項目、「お母さんこそ、息抜きを」だったと聞きました。

※ 発達障害の子を育てる58のヒント、2014年4月発行、学研教育出版
本メルマガ92号の書籍紹介はこちら>>

発達障害関連の本はたくさん出版されていますが、どの本も当然、子どもが中心。特性理解や接し方・療育方法についての情報がメインで、読んでいると「私もがんばらなくちゃ」と思わせてくれるものばかりです。保護者の方がいろいろと知識を得て、子どものためにがんばることももちろん大切だと思います。子どもを支えるためには必要なことです。

でも、保護者だってスーパーマンじゃありません。心底疲れ果ててしまうことだってあります。

たぶんよそのお宅よりもずっと、子育ての手間がかかっているのです。こだわり、癇癪、偏食、友だちとのトラブル・・・気の休まる暇なんてありません。その上、家庭でもしっかりとした支援を、と気を張っていたら、そのうち保護者のほうが倒れてしまうのではないかと思います。

そうならないように私は、保護者こそ正々堂々と息抜きをすべき、だと思っています。これはもう予防的に習慣としてやる。かかるお金も必要経費だと思うべきです。

たとえば、私は週に1回必ずスポーツクラブで汗を流すようにしています。
運動は鬱(うつ)を予防してくれるらしいし、実際ゼーゼーいいながら運動している時には、目の前の悩みはどこかへ行ってしまっています。そういう時間を週に1度でも、1時間でも持つようにしています。あと、気の合う療育ママ友と、学期に1度のランチ。日々起きた事件はそこで笑い飛ばして、明日の元気をもらいます。中には仕事が息抜き、という人もいれば、アイドルの追っかけだけは絶対止めない、なんていう人も。特に趣味もなく、ついでにお金もないわ、なんていう方でも、週に1度、降りたことがない駅で降りてぶらっとしてみるとか、近くの神社の境内へ行ってみるとかでもけっこうよい気分転換になります。

とにかく子どもが関係ないところで、自分が楽しめる時間を持つことです。
日常の中で「発達障害」を忘れる時間を大事にしてください。

保護者が元気じゃないと子どもは絶対に救われません。まずは自分の人生を大切に。
最初に支援が必要なのは保護者のほうだと、私は思っています。

(小林みやび)

 

■ あとがき
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メルマガ100号記念プレゼントで、視覚認知バランサーに当選された片岡麻實さんが、ブログにさっそくその紹介を書いてくださいました。
(ブログはこちら>>

すべてのタスクにまだ取り組めていないので、これから順次、使用感などをご紹介いただけるとのことです。第三者からの評価として、皆様も参考にしていただけるのではないかと思いました。

次回のメルマガは2月27日となります。

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