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■ まえがき:視覚認知バランサー誕生の背景
■ 連載:「見る」機能と学習
■ 連載:苦手なことは上手に“しのぐ”
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■ まえがき:視覚認知バランサー誕生の背景
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かわばた眼科の視覚研究会に参加させていただいて、ちょうどまる2年になります。きっかけは毎年開催されている視覚発達支援講習会に参加したこと。その内容に感銘を受け、川端秀仁先生に話しかけたところ研究会への参加を進められました。
※かわばた眼科のサイトはこちら>>
※視覚発達支援講習会のサイトはこちら>>
視覚研究会のメンバーは医師や大学研究者、教育関係者、盲学校の先生まで実に多様で、それぞれが違った角度から持っている「見る」機能についての知見を交換しあい、よりよい視覚発達支援のあり方を見つけ出すべく研究を続けています。
そして私が研究会に参加した時点ですでに、視覚認知のアセスメントを行うプログラムができていました。川端先生とかわばた眼科が併設している視覚発達支援センターの簗田明教所長が案を出し、研究会の中心メンバーである長嶋祐二教授が担当する工学院大学人間科学・福祉情報科学研究室の学生がゼミの研究テーマとしてプログラム開発したものです。それらのプログラムは、視覚発達支援センターでトレーニングを受ける子どもたちに協力をしてもらい試用結果が集められて、研究会での検討を加えて改良されてきたものです。
※視覚発達支援センターのサイトはこちら>>
※工学院大学長嶋研究室のサイトはこちら>>
上記ページの情報学専攻、人間科学・福祉情報科学研究室の詳細情報
それを、より多くの人に使ってもらえる製品にしてほしいと要望され、2年間の開発を経て今回発売したのが『視覚認知バランサー』です。
※視覚認知バランサーの詳細はこちら>>
その意味でこの製品は、ここに記載したたくさんの方々の協力の基にできたものです。そして、そこに込められた視覚発達支援のアイデアについて、本メルマガで川端先生の連載で、紹介していただきたいと思います。
(五藤博義)
■ 連載:「見る」機能と学習
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1.文科省の学習障害の定義では、視覚障害が直接の原因でないとされていますが......
まず表1を見てください。表は、2008年1月から2009年7月までに、かわばた眼科と視覚発達支援センターを新規に受診した人の中で、他機関でLD(学習障害)、ADHD(注意欠如多動性障害、ASD(自閉症スペクトラム障害)のいずれかの診断を受けていて、さらにそれらの重複診断を受けていない3~16歳の人、191名の裸眼視力の結果です。それぞれの診断の内訳はLD47名、ADHD26名、ASD123名。
表1 (図はこちら>>)
表から、裸眼視力1.0未満の割合は、LD:右66%、左62%、ADHD:右50%、左54%、ASD:右69%、左66%です。
眼鏡をかけている人の割合はLD:19%、ADHD:23%、ASD:20%で、受診をきっかけに眼鏡を処方された人の割合はそれぞれ、32%、19%、20%でした(既にかけている者を含む)。また、左右どちらかの視力が区分Dに入る人の中で眼鏡をかけていない人はそれぞれ5人、4人、21人もいました。
平成20年当時の文部科学省の学校保健統計で、裸眼視力1.0未満の割合は、小学生で29.9%、中学生で52.5%、高校生58.0%ですから、視覚発達支援センターを受診している子どもたちは、視力の悪い子がかなり多いことが分かります。
ただし、これらの子どもたちはすべて弱視という訳ではなく、単に眼鏡装用等のフォローをされていない場合が多いのです。
文部科学省の定義では、「学習障害は、その原因として、中枢神経系に何らかの機能障害があると推定されるが、視覚障害、聴覚障害、知的障害、情緒障害などの障害や、環境的な要因が直接の原因になるものではない。」とされています。学習障害の原因はもちろん直接的に視覚機能等の感覚系の障害にある訳ではありませんが、視機能の不良が認知機能障害を増悪させていることは考えられます。
人は自分を取り巻く環境から必要な情報を感覚器を通じて取り入れ(入力)、中枢神経系で判断し(情報処理・認知)、運動器を用いて環境に適応すべく対処(出力)しています。情報の入力、情報処理・認知、出力のどの部分に障害があっても、私たちは環境にうまく適応できないのです。
次に、視覚機能に話を絞り、私たちがちゃんと見るにはどんな機能が必要なのか考えてみましょう。
2.視力1.0なら大丈夫?
人は外界からの情報を、80%以上視覚から取り入れているといわれています。
適切な視覚情報があってはじめて、学習や作業など日常のすべての行動は安定したものとなります。
2-1. 視覚情報の入力=視機能について
適切に認識するには、まず情報が正しく入力される必要があります。強い近視や遠視、乱視(屈折異常)が未矯正のままでは、黒板の字が見えないのはすぐ分かりますね。しかし学校の視力検査で引っかからないような軽度の遠視でも、ノートがぼやけているかもしれません(近方視力障害)。さらに遠くをみたり近く見たりする時、ピントの切り替えがうまくいかない(調節機能障害)場合もあります。
両眼で立体感を感じることができない(両眼視機能異常)があると紙に書かれた立体図形の理解は難しくなります。さらに見たいものに視線が合わせられない、上手に目がものを追えない(眼球運動障害)場合、読書は当然困難になります。
以上のように視機能のいずれかに問題があると、視覚情報を正しく把握することはできません。5m視力に問題がなくても、視機能にさまざまな問題を持っている子どもは案外多いのです。
2-2. 視覚情報処理と視覚運動統合=視覚認知と目手の協応について
人は自分が見た世界を、過去の経験や記憶内容と照らし合わせて理解をしています(視覚認知)。これこそ人が高次の概念を築いていくのに欠かせない能力です。視覚情報処理・認知能力に問題があると、たとえ視機能に問題がなくても、見ているものが何なのか分からない。分からないものは記憶に留められませんし、イメージも形成できず新しい概念を獲得できません。
また、見ているものの形態が正しく理解できていても、それを書くときに手先が思うようにコントロールできなければ、書いたものは“おかしなもの”になってしまいます。
学習障害が疑われる場合、中枢神経系のどこかに障害があるといった漠然とした捉え方ではなく、まずどこに問題点があるのかをできるだけ明らかにし、個々の問題点へ対応策をとることが大切なのです。
次回以降、数回に分けて各視覚機能について、具体的に解説していきたいと思います。
(川端秀仁・かわばた眼科院長)
■ 連載 子どもの発達障害に向き合う保護者の方へ
第4回 苦手なことは上手に“しのぐ”
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世の中、努力すればなんとかなる、という風潮がありますよね。できないことはやらないからだ。できるまでやれ、的な。特に学校という場は、時に理不尽なまでに努力を子どもに強いることがあるように思います。リコーダーが吹けなくたっていいじゃない。逆上がりできなくたって人生何も困らないはず。学芸会で大勢の前で大きな声でセリフを言うのが嫌な子だっている。
でも、学校ではやらなきゃいけない。辛いですね。
特に発達障害の子は、得意なことと不得手なことの差が激しいことが多いもの。不得手なことの中には、どんなにがんばっても伸ばしきれない部分があります。がんばってもがんばってもできない、努力が結果として報われない、という経験は、できることなら子どもにはさせたくないですよね。
というわけで我が家では、苦手な教科については「できるようにする」のではなく「しのぐ」をコンセプトに対策を立てています。たとえば、絵を描くのが苦手なら「絵の描き方」という本を参考に、人の描き方や木の描き方などを練習しておく。マルを描いて髪を重ねて帽子をかぶせて・・・のようにパターンを覚えてもらいます。創造性なんて完全に無視です(笑)。
また、最近の学校は授業の終わりに感想を書かせることもあるようなのですが、我が子はそれがどうにも苦手なようでした。そこで筆箱の蓋の裏に「○○がわかってよかったです」のような定型文をいくつか付箋に書いてカンニングペーパーよろしく貼っておきました。そのほかにも先生に知られたら怒られそうなワザをひそかに繰り出しつつ、日々乗り切っている状況です。
でもこういうのって決してズルではないと思うんです。本当は学校の教室で子どもに合った支援が行われるのがベスト。でもなかなかそうはいかないので、保護者の側がズルの片棒…ではなくエア支援しているわけです。
その結果、我が子は例文がなくても感想が書けるようになったり、絵が描けるようになったりしてきました。これらを一から自分の力だけでやりなさい、ということだったらきっと今でも出来ないままでではないかと感じています。
ちょっとした手助けは、その子にとって決してマイナスではないと思っています。支えが得られない場所でこそ、その場を上手くしのぐための工夫を忘れないようにしたいものです。
(小林 みやび)
■ あとがき
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視覚認知バランサーの発売を記念して、2月末日までレデックス全パッケージ製品を20%オフというキャンペーンを実施中です。この機会をご活用いただければ幸いです。
次回のメルマガは2月13日とさせていただきます。
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