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■ 報告:井上賞子先生の教室訪問レポート・1
■ 連載:「伝わる実感」を「伝えたい」意欲へ・3
■ グッズレビュー: 針が動かせる壁掛け時計
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■ 報告:井上賞子先生の教室訪問レポート・1
昨年9月から本メルマガで連載いただいている井上賞子先生。最近では、まほうプロジェクトに加えて、東大・先端研+マイクロソフトの DO-IT School プロジェクトでも、スレートパソコンを使った実践を発表されています。詳しい実践内容は井上先生の原稿に譲るとして、どんな学校で、どんな環境で一人ひとりの子どもたちに寄り添った取り組みをされているのかを探るため2月26日に、井上先生の勤務される赤江小学校を訪問してきました。
★赤江小学校のホームページはこちら>>
1学年2クラス+知的学級+情緒学級の14クラス構成の小学校で、井上先生は情緒学級の担任です。同学級に所属する児童は、2年生1人、3年生2人と少ないのですが毎時間、通常クラスから1~3人がその学級に来て、それらの児童が一緒に、あるいは情緒学級の児童と一緒に、国語や算数を学んでいます。
一緒に、と書きましたが、学習の形態は様々です。みんなで同じ活動をする場合もありますが、一人ひとりがそれぞれ与えられた課題をやり、井上先生が順にその進捗を見ながら指導する、という場合もあります。
iPad等のタブレットも使いますが、カードなどの教具やワークブックなどの冊子教材を使う活動が中心で、その補完にタブレットが使われているという印象です。
ここでいう「補完」の意味は2つあります。1つ目は一人ひとりの児童の特性に合わせて、その子の能力を引き出す、Assistive Technology としての使い方です。これについては、井上先生の連載をお読みください。
もう一つは、個別学習を可能にする、Interactive Media としての使い方です。敢えて書くまでもないことですが以下のような流れで、パソコンが子どもとキャッチボールをします。
P)はパソコン C)は子ども
P)問題を出し → C)答えを考え → P)状況に応じてヒントを出し → C)解答を記入し → P)採点と正解、必要に応じて追加情報を表示する
パソコンができることは限られており、また、子どものその時々の状況に基づいて対応を十分に変えることはできませんので、教師の代わりにはなりません。ただ、(予め教師が用意した)その子が今取り組むべき課題を、とにもかくにも子どもに取り組ませることはできます。その間に、教師は、一人ずつ、それぞれの子どもに必要な個別対応をすることができます。これは複数の児童の指導を同時にしなければならない学校というシステムでは、大変に有用だと思います。
もう一つ印象に残った点は、「一般に流通しているもの(教材、教具、アプリ等)の中から子どもに合わせて、役立つと思えるものを入手」して使っている点です。
一例を挙げれば、ノート代わりのワークブックがあります。ローマ字の学習では、下記のページを見ればお分かりのように、アルファベットの大文字、小文字それぞれが、縦方向でいろいろな位置に書かれることを覚える必要があります。
★ローマ字書き方の見本はこちら>>
※上記ページは井上先生の実践と無関係です。
正しい位置に書く練習をするためには、下記ページのように4本の罫線がひいてあるワークブックが便利です。
★英語罫線ノート無料ダウンロードはこちら>>
※上記ページは井上先生の実践と無関係です。
これらワークブックの価格は、一般のノートと比べて大きな違いはないそうで、それぞれの学習に合わせた複数のワークブックを、家庭に出してもらう教材費で購入して、使っているそうです。
同様にタブレットのアプリについても、国内外で大量に流通しているものの中から、井上先生自身が試用し、それぞれの学習場面や一人ひとりの特性に合わせて、適宜入手して活用しているそうです。
井上先生のアプリ評価は、井上先生が中心メンバーの一人として活躍している「魔法のプロジェクト」アプリレビュー・ページに集約されています。ご関心のある方はぜひご覧ください。
★魔法のプロジェクト アプリレビューはこちら>>
これらのアプリレビューと同様に、ワークブックや他の教具についても、多数の試用と評価をされていることが想像されます。授業の時間以外にも、常によりよい実践をめざして取り組まれている井上先生の姿勢に、改めて感動した今回の訪問でした。
次回は、その日に見学した、3年生の国語(ローマ字)と、1年生の算数(2ケタのたし算・ひき算、時計の見方)、さらに、学校外の地域での井上先生の活動を紹介します。
(文責:五藤博義)
■ 連載:賞子先生の「魔法のアプリ」 第11回
「伝わる実感」を「伝えたい」意欲へ・3
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「読む」「聞く」は意欲的に取り組めるのに、自分からの発信が極端に少なかったAさんのお話の続きです。
2.思いを伝え合う活動→伝わる実感と思いの共有へ
ここで使ったのは、交換日記ができるアプリ「ぼくらの交換日記」です。
○ぼくらの交換日記のiTunes App Storeの詳細はこちら>>
「交換日記のアプリを使ってみよう」と思ったのは、以下の点からでした。
・メールでのやりとりを試みたところ、一方的に何通も送りつける状態が続いていた。
・メールを「意思伝達の手段として」ではなく落書きのような感覚でしている様子が見られ、返信しても開封しないなど、「双方向」になかなかならなかった。
・「交換日記」にすることで、「相手の反応を待って返信する」というルールが前提として共有できると考えた。
・「日記」として保存されるので、読み返したり振り返ったりすることができることも期待された。
さらにこのアプリでは、以下のような機能もあり、導入前の予想を超えて、Aさんは意欲的に取り組んでくれました。
・アドインで写真の添付もできるようになる。
・日記を書いた回数でポイントがたまり、日記の置いてある部屋に置くアイテムを手に入れることができる。
スタートしてしばらくは、交換日記とはいえ、相変わらず一方的な内容が続きました。Aさんの書いた内容に反応して私が返信しても、全く無視した内容が次には送られてくることが続いていました。それでも毎日続けている中で小さな「質問」や「お願い」が彼女から聞かれるようになっていきました。
それに対して答えたり、実際の授業の中で彼女の思いを反映させたりしていきました。当初はそのことに対しても全く無反応でしたが、次第に「わかりました」「ありがとうございます」といった短い返信が入るようになっていきました。この時期を後に振り返ってみると、彼女の中では大きな変化が起きていたのではないかと思います。「伝える」に「意味がある」ということを、感じ始めてくれたように思います。
一方的な「発信」から始まったAさんの交換日記でしたが、まずは今まで出せずにいた「質問」や「要求」が増えて行き、そのやり取りを通じて「この人は自分の思いを受け止めてくれる」という見通しがでてきた辺りから、相手の思いを受け止めての共感的な返信が増えはじめ、どんどんやりとりがスムーズになっていきました。
悩んでいること、困っていることを相談して来るようにもなりました。同じような場面に出会ったときは、以前の日記に私が書いた返信をコピーペーストしてはりつけるなど、繰り返し読んで受け止めている様子もも見られました。
また、返信内容の変化は、現実の関係の変化にもつながっていきました。彼女とは6年間共に学んできましたが、交換日記を始めてからの最後の一年は、とても幸せな時間でした。交換日記で知った彼女の興味関心のある事柄について声をかけると、本当にうれしそうにたくさん話をしてくれました。それまではその糸口を私は見つけられず、彼女も伝えることができずにいたんだと思います。彼女が本当はたくさん話したい子だったということに、やっと気づくことができた気がします。ただ、そのことを共有するまでにたくさんの時間がかかってしまったことについては、申し訳ない思いもいっぱいでした。
Aさんは卒業を控えていましたので、3月から5月までは、中学の先生を交えての3者での「Aさん応援団日記」も行いました。入学までは中学への不安を共有したり思いに答えたりしていき、入学後は中学での生活でのとまどいを支えました。新しい場所に「待っていてくれる人がいる」こと、卒業後も「今までのつながりは消えない」ということ、両面を彼女に伝えていく機会が持てたと思います。
Aさんの姿には大きな変化が見られましたが、iPadという手だてがあって、思いの共有ができている中での姿という部分が大きいと感じています。iPadが補助輪のような役割をしたB君のケースのように、「やりかたがわかったからもうなくても大丈夫」ではなく、「裸眼では見えにくい」状況の人が、「眼鏡」で自分の機能を補いながら力を発揮しているように、iPadを使ったコミュニケーションも、彼女の表現の方法の一つとして活用していくことが有効だと思いました。
○B君の事例 メルマガ15年12月6日号のバックナンバーはこちら>>
次回は、Aさんが先生の役割をした「A先生の活動」で使ったアプリをご紹介したいと思います。
(井上賞子・安来市立赤江小学校)
■ グッズレビュー: 針が動かせる壁掛け時計
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赤江小学校の小学1年生の算数の時間に、アプリを使って時計の見方の勉強をしていました。井上先生によれば、確認という位置づけの子が1人、これから理解・習得する段階の子が2人とのことでしたが、3人ともがかなり苦労しているようで、時計の見方は想像以上に難しいものだということを再確認できました。
そんな経験をしたばかりの時に、子どもたちが自分で実際に時計を動かしながら学習ができるグッズのレビューが届きましたので、ご紹介させていただきます。
ヴァラエティカフェ・グッズレビューはこちら>>
レヴュアー: 未来奈緒美
■ あとがき
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北陸で今年最初の春一番が吹いたようです。今日の食卓にはフキノトウが並びましたが、そろそろ最後かもしれません。なんとなく寂しい気がします。
末筆ながら、前回のメルマガで、東田直樹さんのお母さんのお名前を間違えました。正しくは、東田美紀さんでした。謹んで訂正の上、お詫び申し上げます。
では、次回メルマガは、4月4日(金)です。
井上賞子先生の教室訪問レポート1
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