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■ 連載:ハマダ眼科(濱田恒一医院長)の実践研究
■ 書籍:記憶をコントロールする-分子脳科学の挑戦
■ SNS:編集部からの情報発信
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■ 連載:ビジョントレーニング 第11回
ハマダ眼科(濱田恒一医院長)の実践研究
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今回は大阪のハマダ眼科(濱田恒一医院長)の実践研究報告について、ご紹介させていただきます。眼球運動などの視機能の問題により、読みの困難が起きている児童がどのくらいの割合で存在するのか、などということを眼科検診で調べられた大変貴重な研究になります。この研究は「学ぶことが大好きになるビジョントレーニング2」図書文化社にも詳しく掲載しております。
大阪市内の公立小学校の児童357人を対象に、健康診断の眼科検診で養護教諭が行う通常の視力検査(遠見視力検査)に並行して、視能訓練士3名が複数の視機能検査:近見視力、輻輳近点(寄り眼検査)、眼球運動検査、DEM(数唱眼球運動検査)を実施しました。(平成22年4月)
輻輳近点というのは視標を両眼の間に近づけていったとき、両眼を寄せることのできる距離の限界を調べる検査です。この寄り眼の力が弱いということは近くを集中して長時間見ることができない、眼が疲れやすい、時折、字が二重に見えてしまう、などということが起こります。眼前から10センチ以上のところまでしか両眼を寄せられないという児童はこの力が弱いということですが、292名中25名(8.6%)いました。
跳躍性眼球運動(眼を縦、横、斜め方向にジャンプさせる力)追従性眼球運動(ゆっくりと動かしている視標を眼で追う力)などに問題のある児童は292名中17名(5.8%)でした。
DEM検査はランダムな数字の表を読んでもらって、時間とエラーの数を測定する米国の眼球運動の検査です。DEM検査で眼球運動に問題があると判定される児童は163名中12名(7.4%)でした。
読みに関するアンケート、で読みの困難に自覚症状が強い児童は4年生以上の163名中13名(8.0%)でした。このうちの8名は輻輳近点、眼球運動、DEMなどの各検査で問題ありとされた児童で、2名は眼球運動でやや難ありと判定された児童でした。視力不良の児童も含めると13名すべてにおいて何らかの視機能低下が認められました。
この研究から、視機能の問題により読みの困難が起きている児童は5~10%くらいは、いるのではないかということが推定されます。
平成14年に文部科学省が行った「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する全国実態調査」では、「読む」または「書く」に著しい困難を示す児童生徒は2.5%と報告されています。読むことの問題には、視機能だけでなく音韻処理(文字を音に変え、音のつながりを語として解釈する)の問題もあると考えられます。それでも、児童の眼球運動、輻輳近点などの評価を行い、早期に視機能も問題による読み困難を発見することは大変重要と考えられます。
ハマダ眼科の別の研究によれば、こうした眼球運動などの問題がパソコンのトレーニングによって改善することも有意に認められています(眼科臨床紀要4(5):2011)。
読み困難の児童の視機能の問題を早期に発見し、改善に取り組めるようなプログラムが世の中に広まることを期待いたします。
(北出勝也)
★北出先生のサイト:視機能トレーニングセンター「ジョイビジョン」 はこちら>>
■ 書籍:記憶をコントロールする-分子脳科学の挑戦
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かつて物理学は化学と融合しました。これからは生理学や医学、生物学が物理化学と融合する時代になっていくことを感じさせる本です。
認知機能の一つである「記憶」が、脳のどこで、どのように行われているかを、脳に含まれる物質の解析を通して行おうとしている井ノ口馨・富山大学大学院教授が、その最新の調査結果をまとめています。
記憶には、たくさんの種類があること。特に、最近の記憶(覚えてから数ヶ月から長くて2年以内)と、それ以前のものである遠隔記憶は、格納されている場所が異なり、また、それを思い出すための仕組みも異なることは、とても重要な事項です。これらの知見は、認知症や失語症(交通事故の後遺症、高次脳機能障害)の解明にすでに大きく寄与しているといえます。
また、遺伝子(氏)か、学習(育ち)か、と往々に二元論で論じられがちな発達障害の問題が、脳(機能、ひいては物質)の変化を調査するという方法で解明されることを期待させる一冊だと思います。
この本は、福岡伸一・青山学院大学教授が朝日新聞紙上に書評を書かれています。
こちらをご覧ください。
★BOOK asahi.com内の書評はこちら>>
記憶をコントロールする-分子脳科学の挑戦
井ノ口馨、岩波科学ライブラリー208、岩波書店
2013年5月発行、B6判、130ページ、1200円(税別)
★詳細はこちら>> ※立ち読みあり
■ SNS:編集部からの情報発信
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本メルマガの編者は、ソーシャルネットワーク(SNS)を使って定期的に認知機能や学びに関して情報発信をしています。すでにご覧いただいている方もいらっしゃいますが、SNSの使用に躊躇されている方も多いと思います。そこで、SNS利用の際の留意点と合わせて、ご紹介させていただきます。
1.Twitter
日に数件から10数件、発信しています。内容は、編者がより多くの人に知ってもらいたいと考える情報で、セミナーなどのイベント情報、書籍や公的機関等が配布する冊子などです。ネタ元は、編者がメルマガ等で受け取っている情報や、SNSやWeb閲覧で見つけた情報です。
★五藤のツイッターホームはこちら>>
最近の発信の一部を紹介すれば、以下のようなものです。
自閉症児を主人公にした絵本『ぼくはここにいる』
★該当の発信(ツィート)はこちら>>
子どもが自分で片付けしたくなる魔法の言葉9パターン
★該当の発信(ツィート)はこちら>>
文字数に制限があり、さらに、編者の発信した情報にフォロワー(定期的に閲覧する設定をした読者)のコメントをつけていただけるように、100文字程度での発信に心がけています。
Twitterは、他の人の書き込みを読むだけという使い方ができますので、使用に際して、注意することは少ないです。登録の際もニックネームが使用できますので、個人情報の流失も心配ありません。
ただし、ダイレクトメールという個人宛に送ってくるメールで、見慣れないもの(多くは英文)を開くとウィルスに感染することがあります。読んだものと同じ文の内容のメールを、ご自分のフォロワーに送り付け、その人が開くとさらにその人のフォロワーに、という、ねずみ算式にTwitterの負担を大きくするものです。現在は、Twitterのシステム自体にそれらをチェックする仕組みが組み入れられているようで、その種のメールが届くこともなくなりました。ただ、そういった仕組みをクリアする方法を考える人が出てこないとも限りませんので、ダイレクトメールにだけはご注意ください。
2.Facebook
Facebookは、個人名(実名が基本)で登録して、知り合い(friend)と交流する他に、ページという特定のテーマを設定して情報発信できる仕組みがあります。編者は、「発達障害&知的障害」という名前のページを使って、週に数回程度、発信しています。
★「発達障害&知的障害」ホームはこちら>>
Twitterと大きく異なる点は、知るだけでなく、「活用してほしい」情報だけを掲載している点です。そのことで厳選した情報を確実に届けたいと考えています。例えば、最近の書き込みは以下のものがあります。
「発達障害者のための問題解決技能トレーニング」マニュアルと資料、動画
★該当の書き込みはこちら>>
講演動画「認知機能の発達と学び」
★該当の書き込みはこちら>>
ページには更新を定期的に知らせてもらうのに活用できる「Like」というボタンがあります。それをクリックしておくと、ご自分のFacebookページに更新があったことを知らせる表示がなされ、それをクリックして内容を簡単に閲覧することができます。
Facebook利用の際に注意していただきたい点が2つあります。
一つは、friend 申請です。Facebook参加者の情報を得ることでビジネスに役立てようと、様々な名前で多数の人にfriend 申請を送り付けてきますので、その人からのメッセージの内容を吟味すること(メッセージなしの申請は受ける必要はありません)で慎重に判断いただきたいと思います。
もうひとつは、メッセージです。あなたと同じ名前の人の遺産を管理しています、とか、様々な魅力的な内容のメッセージが届きます。Twitterと違い読むだけなら何の問題もありませんが、返信はしないでください。返信すると、Facebookに登録されたあなたのメールアドレスが先方に伝わり、今度はパソコンの方にメールが届きます。あるいは、メールアドレスが売買され、その人以外からも今後、メールが届く可能性があります。
TwitterもFacebookも、多少は危険はありますが、一般的な注意をするだけで危険は避けられますし、得られるものは大きいです。編者からの情報だけでなく、ぜひ有効活用をしていただきたいと思います。
この他に知っておきたいSNSに、mixi、LINEやLinkedInなどがあります。特にLINEは、実際の知り合いの間だけでの情報交換が容易にできるもので、有用と思います。後日、機会があれば、紹介したいと思います。
(五藤博義)
■ あとがき
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次回メルマガは、お盆明けの8月16日(金)です。
ハマダ眼科(濱田恒一医院長)の実践研究
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