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■ 報告:かわばた眼科、川端秀仁「見え方のつまずきとチェック法」
■ 連載:パソコンソフトと現実の世界を連携させての理解
■ グッズレビュー:「くるんぱす」
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■ 報告:通常級の子どもにも見られる、見え方のつまずきとチェック法
かわばた眼科、川端秀仁・院長 医学博士
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念願だった川端先生の講演に2月24日参加しました。主催はNPO法人発達障害支援アカンパニストです。川端先生は、大阪大学で数学、早稲田大学大学院で累進焦点レンズを研究した後、千葉大学医学部大学院で近視を研究されたという、まさに視覚のプロともいえる方です。
1.認知活動のシステムと感覚受容器
講演でまず感銘を受けたのが、視覚を人間の認知活動の一部として捉えられている点です。人間の認知活動を、外界の情報を取り入れ(入力系)、その情報を処理し(中枢系)、それを運動(読み、書き、目と手の供応など)に伝える(出力系)という3つの部分に分けて考えます。
入力系である感覚系には、次の3種類があります。
1)遠隔感覚受容器 -聴覚・視覚
2)近接感覚受容器 -触覚・味覚・嗅覚
3)内受容器/重力・加速度感覚 -内臓感覚・固有受容覚/加速度感覚
人間を含む多くの動物では、3)~1)の順に育っていきます。逆に、より広く情報が受容できるのは、1)~3)の順で、視覚情報は全体の80%以上と考えられています。ですから、視覚は最重要なものといえますが、他の感覚に頼っている部分があることは事実ですし、視覚そのものに他の感覚が影響を与えている点を忘れてはなりません。
2.視覚機能(入力系としての視覚)
主に、以下の要素に分かれます。
・ピントを合わせる -屈折、調節
・鮮明に伝える -視力、色覚
・同時に認識できる -視野
・正しく視線を向ける -固視、眼球運動
・遠近感を把握する -両眼視
かわばた眼科と連携している視覚発達支援センターの調査では、02年8月から09年3月の間に、6歳から12歳、818名の視覚認知検査をし、発達障害の子どもには遠見視力と並んで、眼球運動が不良である場合が多いとのことでした。
※遠見視力…5mの距離をおいた視力表を使って測った視力
適切な方向に瞳孔が向いて初めて情報が得られます。眼球運動はその意味で視覚機能のもっとも大切なものといえますが、前述調査の示すように、発達障害の子どもに多く問題があるのは注目すべき点です。
眼球は6つの眼筋で制御されており、異なる方向に動く場合、使われる眼筋が異なります。また、眼球運動には5種類の動かし方があり子どもによってそれぞれ得意不得意があります。それらを調べ、適切なトレーニングをすることで、改善が得られます。
3.視覚認知(中枢系、情報処理)
得られた視覚情報を次の要素について処理をし、構造的に理解を行います。
・位置の把握 -2次元的、3次元的
・量の把握 -長さ、大きさ、傾き
・色の把握
・形態(構造)の把握
・動きの把握
それぞれが脳内で別の神経細胞や神経ネットワークが処理を行います。ですから、眼球運動と同じく、得意不得意がある訳で、それらを調べて対処することが大切になります。
関連して興味深い研究結果の紹介がありました。縦線、横線、斜め線などの直線、四角形、三角形、円などの複数の図形を見せ、その後にそれを描かせるというものです。描けた(思い出した)順から、縦線、横線、四角形、、最後になったのが三角形です。
感覚受容器のところで、内臓感覚として重力を挙げました。縦線は、重力の示す方向に伸びた線、横線は、重力が同じ状態を移動する方向、と考えればこれらの結果は納得できるものです。斜め線の理解は難しく、それが組み合わされた図形である三角形は、認識が難しいために、記憶にも留めにくく、再生(描写)も難しいことになります。
(続く)
次回は、チェック法とトレーニングについて紹介します。
(五藤博義)
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■ 連載:ビジョントレーニング 第6回
パソコンソフトと現実の世界を連携させての理解
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今回は北出先生に寄せられた、大阪府和泉市の小学校での実践の紹介です。
情報提供は知的障がい学級の担任の冨尾先生です。
冨尾先生は、6年前に北出先生の研修を受けられ、その折に知ったパズルを活用してこられました。また、昨年は和泉市の研修で、北出先生の話を再度お聞きになり、毎日、学習の始めに目の動きのトレーニングをされるようになりました。また保護者にも伝えて、ビジョントレーニングを広めておられるそうです。
11月からはPCソフト「ビジョントレーニングII」を購入され、教室で毎日使用しておられます。ただ、空間認知の問題は知的障がいのある子どもたちにはとても難しく、言葉で説明しても理解できない子ども達ばかりです。そこで、なんとか理解でき、楽しんで取り組ませられる方法はないかと、次のように具体物を作って考える手立てを考案されました。
●空間認知:どこにいる?
下記ページの下段にある「見る力を鍛える5つのタスク」の中の「どこにいる?」の画像と解説をご覧ください。
★画像と解説はこちら>>
見える柱の位置と色で、自分が図の中のどこに、どちらを向いて立っているのかを当てるゲームです。視点という概念を理解し、それを使って、ある方向から見た時の「見える様子」を想像します。
ただ、まずゲームの意味そのものの理解が難しいので、実物を使ってゲームの状況を理解できるようにしました。
★画像はこちら>>
画面と同じマス目に、色のついた柱が立ち、それを見る形で、うさぎの人形が立っています。こんな風に立っているとしたら、うさぎの目から色の柱が何本か並んで見えることを理解してもらいます。
★画像はこちら>>
次にパソコンのゲームに取り組みます。画面に問題図が出たら、それと同じ状況を、子どもがマス目の上に、色の柱を立てて作ります。
さらに、画面の「見えている様子」と同じような風景が見える位置を考えます。その時に、うさぎの人形をおいてみることで、「ある場所からの風景を想像する」という課題が考えやすくなります。
★画像はこちら>>
自分が考えた答えが正しいかどうか確認するために、その場所にデジカメを
おいて、実際に写真を撮ってみます。
★画像はこちら>>
こんな風に写真が撮れます。
★画像はこちら>>
写真が画面の問題と一緒だと確認できたら、パソコンに解答を記入します。
★画像はこちら>>
作業に大変時間がかかりますが、一つひとつの過程が児童の訓練になっているように思います。
●北出先生から
ソフトをこのように工夫して使っていただけて大変うれしく思います。
バーチャルとリアルなものを同時に使っていくことで相乗効果が生まれているようです。同じソフトの中の「ジオボード」や「テングラム」の課題も、リアルなパズルを使って行っていくことができます。
「どこにいる」という空間認知の課題ですが、自分の視点を頭の中で動かしてみることでイメージ力を鍛えるトレーニングになっているのです。このような力は算数の図形の課題、もの作り、空間をデザインするときにも必要になりますので、ぜひこのトレーニングを行って伸ばしていただきたいと思います。
★北出先生のサイト:視機能トレーニングセンター「ジョイビジョン」 はこちら>>
■ グッズレポート:「くるんパス」
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学習障害は学齢期になってから分かります。理由ははっきりしていて、学習に関係する「新しいこと」をするようになるからです。
その中には、さまざまな道具を使うことも含まれ、その中でも難易度が高いのがコンパスです。中心の針(支点)を移動しないよう固定して、別の部分を、ちょうど紙に触れるように回転させなければなりません。かなり難易度が高いといえるでしょう。
特に、発達障害のある子どもたちの中には、前述の川端先生のお話のように「目と手の供応」が難しい子が数多く見られます。道具の使い方のマスターも大切ですが、道具を使った「結果を見ることで考える」ことは、学習にはさらに大切です。
認知科学では、やって、結果を見て考え、またやってみることで、学んでいくことを、リフレクション(reflection)といいます。
そんな子どもたちの味方が簡単に使えるコンパス「くるんパス」です。
ヴァラエティカフェ・グッズレビューはこちら>>
レヴュアー:小林雅子
■ あとがき
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メルマガ五周年アンケートへのご協力ありがとうございました。
自閉症スペクトラムやADHDに比べ、学習障害は症状の理解や対応の手立ても遅れているという認識があり、関連した記事を集中してきました。今号では北出先生に加え、関東でもっとも著名な川端先生の講演も紹介できましたので、次号から別の話題を増やしていこうと思います。
次回は、3月15日(金)です。
かわばた眼科 川端秀仁「見え方のつまずきとチェック法」
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2013.03.01
かわばた眼科 川端秀仁「見え方のつまずきとチェック法」
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