ICF (国際生活機能分類)を使った支援

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2013.02.08

ICF (国際生活機能分類)を使った支援

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■ 報告:国立特別支援教育総合研究所セミナー
■ 連載:小学校の学級全体でのビジョントレーニング
■ グッズレビュー:「ソフト下敷き」
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■ 報告:国立特別支援教育総合研究所セミナー
障害のある子どもの理解と指導、支援の充実のためのICFの活用
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国内唯一の、障害のある子の教育を研究するナショナルセンターが国立特別支援教育総合研究所(略称:特総研)です。毎年、その研究成果を公開するセミナーが行われており、全国から多数の教育関係者が参加します。今年は1月29日・30日に国立オリンピック記念青少年総合センターで開かれ、シンポジウム、文部科学省からの行政報告、3つの分科会等が行われました。

シンポジウムは、幼・小・中・高・特別支援学校・特別支援学級設置学校などの代表がパネリストとして初めて参加するという意義あるものでしたが、今回は編者がもっとも興味をもった第1分科会の報告をさせていただきます。分科会の名称は、「障害のある子どもの理解と指導及び支援の充実のためのICF(国際生活機能分類)の活用」です。特総研はその有用性に着目し、ここ数年、最重要テーマの一つとして取り組んでいるように見受けられます。

1.ICFとは何か

ICFは、WHO(世界保健機構)が提唱しているもので、個人の生活状況を表現する際の分類基準(項目一覧)です。原語は International Classificationof Functioning, Disability and Healthです。成人向けとは別に児童版ICF-CY(Children and Youth Version)があります。まずは下記の図をご覧ください。
★特総研ICFサイト内、関連図のページはこちら>>

これがICF関連図と呼ばれるものです。各項目があり、対象となる子どもについてそれぞれの項目を書き入れていくことで、子どもの理解と、その子に適した指導や支援方法を考える基本情報を作ります。

上段に、A.健康状態があります。ここで、疾病やけが等がある場合は、WHOの国際疾病障害分類であるICD-10の情報が付け加えられます。

※編者注 ここで各要素にABCを付記しているのは、メルマガ読者の分かりやすさのためと判断して、編者が勝手につけたものです。

中段には左から、B.心身機能・身体機能、C.活動、D.参加の3つの生活機能の要素が並びます。Bは精神や運動、視聴覚などの機能の状態です。上段の疾病名等とは別に、より細かな障害や困難さが表現されます。ここで注目すべきはCとDで、活動や社会等への参加を、できるできない、だけでなく、しているか、していないか、という生活の過ごし方という視点でも捉えます。

下段には、中段の各生活機能の状況を引き起こす原因となっていると考えられる、E.環境因子とF.個人因子が並びます。

特総研では、下段のDとEの右に、もう一つの要素が付け加えられて、活用実践が行われている例が多いとしています。その要素とは、F.主体・主観で、分類対象になっている本人の気持ちのことです。

2.ICFの活用イメージと有用性

ICFは、子どもの実態を把握するための枠組です。それを使うことで多角的に子どもを捉えることができると同時に、子どもの支援(学校や家庭など、様々な場所での指導や環境調整)に取り組むいろいろな人々に、支援のあり方を検討する際の共通基盤を提供してくれます。

特総研では、ICFを活用してのよりよい方法を探るために、以下のことを実施してきました。
1)全国の特別支援学校でのICF活用の実態の調査
2)ICFを利用する際の「活用支援ツール」の試作と有用性の実証研究
3)活用後の効果の検証
4)障害種別、多種間連携や子ども本人が利用するなどの事例の収集

この中でも、2)の活用支援ツールは、複数のものがあり、それぞれ有用なものだと感じました。まず、パソコンを使って、その手引きに従い書き入れていくと、ICF関連図が作成できます。関係者が、それぞれの目から見た情報をカードに記入して持ち寄り、それを入力すると集約されていきます。その際に、項目の不足が指摘され、見落としていた視点から情報を補完していけま
す。

活用場面では個人について利用する他に、例えば、特別支援学校のセンター的機能のあり方を考えるため、といった使用方法があります。それらの多様な活用場面ごとに別の活用支援ツールが考案され、実際に使用されて、ツール自体がブラッシュされているとの報告でした。

これらは、子どもの状況(個人や環境)を検討するために「必要十分な項目を含んだ共通基盤」として、ICFが機能することで様々な可能性をもつことを示しているといえます。

特総研メンバーが複数年かけて取り組んできた成果は、会場で発売された、最新刊「特別支援教育における ICFの活用 Part3」と、それに先立つ2冊の書籍でご覧いただけたらと思います。
★教育新社「特別支援教育における ICFの活用 Part3」の紹介はこちら>>
(五藤博義)

■ 連載:ビジョントレーニング 第5回
小学校の学級全体でのビジョントレーニング
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今回は、小学校の学級全体でビジョントレーニングを取り入れている事例を紹介します。この事例は「学ぶことが大好きになるビジョントレーニング2」図書文化社に掲載されている事例です。

眼の運動のトレーニングを、朝の会に取り入れてみたところ、子どもたちが静かに集中した状態で授業に入ることができるようになったとのことです。

眼の運動の体操は、2~3分ほどでできます。眼を動かす司令塔は、脳の前頭葉の中の「前頭眼野」という場所にあります。ここは、行動の集中抑制にも関わっているといわれている部分です。また眼をよく動かすことで、前頭葉の広い範囲に血流が集まってくるということが研究で分かっており、イメージや判断、思考といった脳機能が働きやすくなるのではないかと推測されています。個人で取り組むことは中々難しいですが、教室全体で目的意識を持って取り組んでみられてはいかがでしょうか?
(北出勝也)

○小学校の通常学級でできるビジョントレーニング  報告:井阪幸恵先生

◆通常学級では
通常学級の中には、個別の支援を受けるかどうかのボーダー上の子がいる。こういった子どもは、自尊感情が低くなりがちである。

国語の時間、音読ではたどたどしい読み方になったり読み飛ばしや読み間違えが多かったりする。漢字テストはもちろん間違いが多く、練習の段階でもしっかりと見ているにも関わらず全然違う字になってしまう。算数では図形の単元で苦手さを持つ場合が多い。また、計算はできるのに筆算になると見間違えてミスをする。また、このような苦手さを持つ子は体の動きも悪いことが多い。努力だけではどうにもならず自分に悲しくなり、やる気を失うこともある。何の苦労もなく取り組む周囲の子どもたちの目が気になって、時には学校を休みたくなることもある。

担任は、温かいクラス作りや個別指導など精一杯がんばるが、なかなか改善できない。それだけに、通常学級ではこういった子どもたちが特別扱いにならない、学級全体での取り組みが必要になる。

音韻認識、知的能力など個人により原因はさまざまだが、視空間認知を改善したり集中力をつけたりすることで、もっと楽しく学習できる子が増えるのではないかと考えた。みんなで同じ取り組みをすることで苦手さを持つ子どもが特別視されることなく、さらにその子どもたちの能力を引き上げられるようにと、次のような取り組みを行った。

◆学級での取り組み
1)補助グリップの使用
低学年では、鉛筆に補助グリップを付け、正しい持ち方を意識させた。特に柔らかい素材のものを選び、指先の力をつけさせた。
★補助グリップの画像はこちら>> 

2)朝の会でビジョントレーニング
朝の会で、保健係が「1、2、・・・10」と号令をかけて、目の跳躍運動を左右・上下・斜めの動きで行う。次に二人ペアになり、指で大きく円を描いて目で追う追従運動を行い、最後に寄り目の練習をして両目のチームワークのトレーニングも行う。 (約3分程度でできる。)
★朝の会の様子はこちら>>

3)体育の時間にビジョントレーニング
体育の時間は感覚運動を多く取り入れ、その一環としてまねっこ遊びも取り入れた。みんなの前で担任が行ったポーズをまねる運動を行う。中学年になれば自分たちで工夫できるようになるので、交代で子どもたちが前で見本を示すこともできる。雨の日には教室で行うこともできる。
★雨の日の室内運動の様子はこちら>> 

4)休み時間にビジョントレーニング
晴れた日はできるだけ外遊びをして運動能力を高めるよう指導してきた。雨の日には、「点つなぎ」や「迷路」のプリント、「タングラム」「シェイプ・バイ・シェイプ」などで遊びの中に視空間認知トレーニングを取り入れた。「タングラム」「シェイプ・バイ・シェイプ」は、仲良く数人で取り組むことが多い。

◆結果 2年生の事例から
・漢字の形をとらえにくいA児
目の追従運動をするたびに痛がっていたが、3学期には筆圧が増し、漢字も正しく書けるようになった。板書の書き写しは時間がかかるものの、速くなり時間内に書ける量も増えた。

・マスの中に字が入らなかったB児
2学期にはマスに入る小さい字を書けるようになり、苦手な漢字については小テストで100点を取るようになった。

・筆算になると混乱するC児
5月に学習した時には、筆算をマス目のある特別な用紙を使って学習していたが、10月にはみんなと一緒に算数ノートで間違えることなく解くことができるようになった。

いずれの児童も、明るく大きな声で発言できるようになり、楽しく毎日を過ごせるようになった。

◆通常学級でビジョントレーニングに取り組んできて
朝の会で行うビジョントレーニングは、集中的なトレーニングのような即効性はないものの、毎日続けることで10月頃にははっきりと効果が出た。また、朝に行うことで脳の活性化になり、「朝の読書」をした後のようにその後の授業へ集中できるのでどの学年でも効果が期待できる。

ビジョントレーニングは遊びのように楽しんで取り組める。みんなで取り組むことで楽しみや達成感を共有することができるため、仲のよいクラス作りにも役立った。何より、学習への苦手さを持つ子どもたちが自信を持ち、笑顔が増えたことが最大の喜びである。

北出先生のサイト:視機能トレーニングセンター「ジョイビジョン」はこちら>>

 

■ グッズレポート:「ソフト下敷き」
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字を書くのがにがてなのが「下敷き」を変えると改善されるかも?

子どもは、筆圧の調節がにがてです。そして、筆圧が強すぎても、弱すぎても、鉛筆のすべりがうまくいかず、それが原因で、字がにがてになっている場合があります。

ビジョントレーニングの記事では、補助グリップが紹介されていましたが、ここで紹介されるソフト下敷きは、運筆改善にはより効果が高いはず。お試しあれ!


レヴュアー:小林雅子

 

■ あとがき
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次回メルマガは、通常より1週間先の3月1日(金)とさせていただきます。

3月3日(日)には甲府市の幼稚園で、NPOおやじりんくの金子さんと一緒に講演をさせていただきます。関心をお持ちいただければ、レデックスのWebサイト・ニュース欄をご覧ください。

金子さんのブログ:マサキング子育て奮闘記はこちら>>

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