ビジョントレーニングby北出勝也&高濱正伸

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2012.10.26

ビジョントレーニングby北出勝也&高濱正伸

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■ レビュー:ビジョントレーニング by 北出勝也
■ 連載:自閉症のトムくんの成長物語・13 『静と動のメリハリ』
■ グッズレビュー:TODOアプリ Wunderlist
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■ レビュー:ビジョントレーニング by 北出勝也
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11月6日発売のレデックス新ソフトは、見る・読むなど視覚機能改善の第一人者、北出勝也氏の原案・監修によるものです。「金スマ」「カンブリア宮殿」などのテレビ出演で話題の高濱正伸氏(花まる学習会)が考案した「社会で生き抜くために必要な力」を身につける教材を素材にしています。

北出氏が、その想いを伝えるべく寄せていただいたメッセージを、メルマガ読者にいち早くご紹介させていただきます。
北出勝也氏プロフィールはこちら>> 

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米国オプトメトリスト(検眼士)の資格を取得し、帰国してからビジョントレーニングに13年間携わってきました。

日本国内においても読み書きに、つまづいている子どもたちがいるのですが、その中でも眼球運動の問題と認知の問題があり、字を読み飛ばしてしまう、字の形が覚えにくい、図形問題が苦手という子どもさんが大変多いということが分かりました。また、簡単なトレーニングをすることで、能力を伸ばして自信を取り戻す人を多く見てきました。

トレーニングは家庭でもできる単純なものですが、なかなか続けることが難しく、途中で断念してしまう例も見てきました。継続さえできれば、と歯がゆく思ったこともあります。

そうした中、レデックスの五藤社長に出会いました。同社の既存のソフトを試してみて、一緒に協力すれば、子どもから大人まで楽しみながら続けられるソフトを開発できると確信しました。

新ソフト「ビジョントレーニングII」は、楽しみながらトレーニングが続けられるような工夫が、数多く組み込まれています。また、従来のビジョントレーニングでは改善できなかったような音韻認識(文字と音をつなげる)のトレーニングも可能になっています。

花まる学習会の高濱先生の原案も採用させていただき、漢字や空間認識のトレーニングも取り入れて、さらに学習に即したトレーニングも出来るようになりました。

5種類のトレーニングがあります。

1) アイムーブトレーニング 取組の目安: 1日5-10分
眼の運動機能を高めるトレーニングです。色々な方向に眼を動かす力を高めます。文字などの音声も出てきますので、音韻認識を高めるトレーニングも可能です。
方向の認識が弱い人は矢印ボタンを選択し、矢印の方向を声に出して行いましょう。
おてつきボタン設定にすると行動抑制のトレーニングになります。押す設定の色の文字だけをタッチして、押してはいけない文字をタッチしないで見送るようにすると得点になります。

2) テングラム 取組の目安: 1日5-10分
形を「面」で認知するトレーニングです。三角形、四角形などの基本的な形のパズルのピースを、見本の形にぴったりおさまるように並べます。
基本的な形の認識のトレーニング・高度な図形思考のトレーニングになります。

3) ジオボード 1日5-10分
形の線を認知するトレーニングです。点を線で結び、見本の線や形を模倣して作ります。
高度なレベルになると見本を90度回転、反転させたものをイメージして作るトレーニングになります。
基本的な形を認識することから、ハイレベルの図形思考のトレーニングが可能になります。

4) ばらばら漢字 取組の目安: 1日5-10分
基本的な形を認識することができるようになってきたら、このばらばら漢字の形の認識のトレーニングを行いましょう。
漢字のピースを頭の中で組み合わせることで、漢字の形がしっかりと頭の中に残るようになります。

5) どこにいる? 取組の目安: 1日5-10分
空間認識のトレーニングです。イメージを頭の中で動かす高度な図形、立体的思考のトレーニングになります。

これらのトレーニングを全部毎日行う必要はありません。特に必要と思われる課題を2~3選び、1日10-20分くらい行ってみてください。

難易度は自動的にその人のレベルに合わせて変化していきます。また、自分で、easy、normal、hard の3段階で自由に設定することもできます。

折れ線グラフやレーダーチャートで、トレーニングの記録を見ていくことができますので、励みになります。

子どもから大人まで視覚的な苦手さを抱えている全ての方に、このソフトを利用いただき、楽しく学習や生活が出来るようになっていただくことを願っております。
(北出勝也)

※編集部注
1) 新ソフトの特別価格事前申し込みページはこちら>>
Windows版とMac版を同時収録

2) 北出氏の書籍は多数。おすすめ最新刊を2冊紹介。

学ぶことが大好きになるビジョントレーニング2 図書文化社

1日5分! 大人のビジョントレーニング 講談社

3)北出氏の最初のソフト「ビジョントレーニング」(他社制作)の詳細はこちら>>

 

■ 連載:自閉症のトムくんの成長物語・13 『静と動のメリハリ』
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トムくんは月に何度かアトリエに通っています。そのアトリエの先生と親しくさせていただいていることもあって、わたしもトムくんのアトリエ通いに同行させていただきました。

そのアトリエでは活動の後で、その日の取り組み方や選んだ素材や色から察することができる子どもの状態や芽生えつつある能力についてのアドバイスがあります。

この日はトムくんが穏やかでのんびりした様子で活動していたことや、これまでにはなかった、色を混ぜて楽しむ姿があり「集中力が増してきたため、色の変化する様子を観察する余裕が出てきたのではないか」といった会話が、アトリエの先生とyoshikoさんの間で交わされていました。

そういえば、わたしが鎌倉に滞在している3日間、トムくんは終始穏やかでした。以前ならパニックに陥って激しく動揺していたような場面でも、誰かに助けを求めるようなかすかな声をあげながら、自分に注意を向けている人の表情をちらっとうかがって、そのまま静まって元の活動にもどるか、笑顔になるか、休憩スペースに黙って移動するかで事が収まっていました。

その日、左右の下唇に口内炎ができていたトムくんは、何かを口にするたびに沁みるようでした。かなり痛むようでしたが、小さな声で痛みを訴えて、唇に触れてみて、少し首をかしげて考えていたかと思うと、そのまま、また食べ始めることを繰り返していて、一度も激しいパニックには至りませんでした。

穏やかで落ち着いているトムくんの態度からは、メタ認知力がつき始めていて、見通す力がついてきたことによる精神的な余裕が見て取れました。が、その一方で、トムくんには「穏やかさ」とは真逆の態度も見られるようになっていました。

編者注)メタ認知:奈良教育大学の解説ページはこちら>>


アトリエの一角で、トムくんは金づちで木にくぎを打ち付ける作業をしていました。金物の本格的な金づちでガンガンと激しく釘を打ち付けているのです。危なくないかと怖いほどなのですが、意外に的を外しません。確実に狙いを定めて、荒々しいほどの激しさで金づちを振るっていました。

トムくんの活動はそのように『静』と『動』のメリハリがはっきりしてきているようでした。また『静』の時であっても、以前のようにぼんやりと意識がはっきりしていないような態度ではなく、静かに視線で何かに狙いを定めているし、ただバラバラと木製ビーズを手から落としているような『動』の時には、的になる缶やプラスチックの空き容器に狙いを定めていたことが思い当たりました。

そこでできるだけ「目的」や「因果関係」が目で見て確認できるような分かりやすい場面を作ってあげると、トムくんの心がいきいきと高揚してくるのが感じとれました。

しかし、そうしたトムくんの変化は良いことばかりでもありませんでした。トムくんはさまざまな場面で自分が取るべき正しい態度を知りたがるようになっていました。ある原因とある結果がシンプルな分かりやすく展開していくことを求める気持ちが強くなってもいます。

けれども現実には、ランダムで混乱するような場面がたくさんあります。特に、妹のジェリーちゃんは、トムくんがせっかく学んで推理できるようになっている展開を、たびたび混ぜ返します。トムくんがルールを把握しかかったところで、ジェリーちゃん自分のルールを押し通して混乱させがちです。

そのようにルールがあいまいで相手次第で状況がコロコロ変わるような場面は、学習意欲が高まっていて、様々な状況を読み取ろうとしているだけに、トムくんの神経を疲れさせて、強いストレスを感じさせているようでした。

こんなこともありました。すれ違いざまに「トムくん、手をつないで、あっちの部屋で遊ぼうか?ぶらさがるおもちゃのある部屋」と声をかけた時のことです。はっきり聞き取れなかったのか、トムくんはそのまま数歩先までいってから、後ろに下がってきて、わたしの手を取り「なあに?」という表情で顔を近づけてきました。

「あっちの部屋で遊ぼうか?ぶらさがるおもちゃのある部屋」と繰り返すと、すごくホッとした様子になって、手をつないで奥の部屋に向かいました。わたしとしては何気なくかけた言葉だけれど、トムくんにすると、きちんと正しい指示が読み取れているだろうかと、正しさを確認するまで緊張感が高まっていたようなのです。

見守る人々の対応が大切な時期にさしかかっているのかもしれません。
(未来奈緒美)

未来さんのブログ:虹色教室通信はこちら>>

 

■ グッズレビュー:TODOアプリ Wunderlist
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集中してしまうと、やることをうっかり忘れてしまう。そんな人にお勧めの優れもの無料アプリをSNSヴァラエティカフェ常連の金井さんが紹介してくださいました。

使い方のYouTube動画も用意されているので、簡単に使い始められそう!
iPhone、iPad、Android携帯、Windows、Macにも対応しています。

グッズレビューはこちら>>

レヴュアー:金井悠紗(かない ゆうさ)

 

■ あとがき
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10月13日に東大・福武ラーニングスタジオで行われたNPOおやじりんくのセミナーは多くの方から高い評価をいただくことができました。主催者の依頼で、11月23日(祭)に、大阪で第2回が開かれることになりましたのでご案内させていただきます。第二部の「発達障害児の就労を考えるシンポ」では、ファイナンシャルプランナーの鹿野佐代子さんが登壇され、今から楽しみです。
※大阪セミナーの詳細はこちら>>

メルマガの次回発行日は、11月9日(金)の予定です。

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