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■ 報告:日本自閉症協会全国大会・記念講演
■ 連載:自閉症のトムくんの成長物語・7
■ 研究:気になる認知機能の実態とその改善 第1報
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■ 報告:日本自閉症協会全国大会・記念講演
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2年に一度開催される日本自閉症協会全国大会に参加しました。今回は多数の重度知的障害者を活用して、環境にやさしいダストレス・チョークを学校に提供する日本理化学工業、大山泰弘会長の記念講演から印象に残った点をレポートします。
1.知的障害者を雇用するきっかけ
1959年に東京都立青鳥養護学校※(現青鳥特別支援学校)の先生が同校卒業生の採用の依頼で訪問されたのがきっかけです。3度めの訪問の際に「卒業後は一生施設で暮らすことになる。せめて働く経験だけでもさせてやってほしい」と頼み込まれ、15歳の2人の少女を引き受けることになります。仕事は、製品にラベルを貼る、単調な仕事です。その仕事に二人は一心不乱に取り組みます。
実習期間中に出た法要で隣り合わせた禅宗の住職に「施設に入れば何もしないで暮らしていけるのになぜ仕事をしたがるのか」と話したところ、それは間違いだと教えられます。人の幸せは、1)愛されること、2)ほめられること、3)人の役に立つこと、4)人に必要とされること、と強く説かれます。
実習期間が終わった時、当時、20人足らずだった社員が大山氏に面会を求め、二人を採用してやってほしいと頼み込みます。住職の話を思い出し、採用を決めます。そこから試行錯誤を続け、50年を経て社員74人中、55人の知的障害者を雇用し、渋沢栄一賞を授与されるまでになります。
※筆者注:大江健三郎氏の長男、光さんの学校としても有名。
2.無言の説法・周利槃特(しゅり・はんどく)
青山学院初等部では、一人1社を選んで企業訪問をし、レポートをまとめるという取り組みをしているそうです。日本理化学工業を訪問した小学5年生の筒井君から次のような手紙が届きました。『先日は見学させていただき、ありがとうございました。僕たちの使っているチョークは、色々な工夫によって出来る事を知っておどろきました。また、知的障害を持った人達があんなに一生懸命働いていて、それに僕達には真似できないような技を持っていておどろきました。僕はチョークの出来るまでを学んでいるときに「神様は人間ひとりひとりに賜(おくりもの)をくださっているのだ」と思いました。僕も工場で働く人達に負けないように、何でも一生懸命がんばろうと思いました。発表では、チョークの作り方と工場で働く人達について発表したいと思います。お忙しいお時間に色々拝見させてくださり、説明してくださり、本当にありがとうございました。』
大山会長が話されたもうひとつのエピソードが釈迦の弟子、周利槃特(しゅり・はんどく)の話です。周利は自分の名前も書けないような頭の悪い人でしたが、釈迦は十六羅漢と称される高弟の一人に選びました。理由を問われると、周利の一生懸命、物事に打ち込む様子は、言葉を発せずとも周りに徳を与えると答えたそうです。同社で働く知的障害者の方々が筒井君にとってはまさに周利だったのではないかと感じました。
「周利槃特」のwikiページはこちら>>
※筒井君の手紙の引用元はこちら>>
3.知的障害者に力を発揮してもらうポイント
多くのことを記憶したり、判断できない人も多い知的障害者に、業務で力を発揮してもらうポイントは、2つあるとのことです。
1) その人ができる仕事のやり方を考える
例えば、交通信号を判断して通勤できる人なら、色の判別はできる訳です。そこで、材料の区別に色を導入する、という具合です。
また、知的障害者が業務を行えるような特別の器具を作る場合もあります。同社のメイン商品であるチョークはJIS規格に準じており、0.5mmの範囲で、太さが統一されている必要があります。縦方向に円筒形の穴を開けた、落下方式の検査器具は、入口の内径が規格の最大値で、出口が最少値になっています。穴に入れることができれば、最大値以内であり、落下の途中で止まることができれば、最小値以上になります。
特定のパターンに落とし込むというよりも、一人ひとりのできることを観察し、その範囲でできる方法を考えるのがポイントとのことでした。
2) ほめる、やりがいを大切にする
大山会長によれば、前項も大切だが、もっとも大切なことは「ほめる」ことだそうです。知的障害者に限らず、ほめることで人はさらに一生懸命、取り組んでくれます。
重度の人よりも、中度の障害の人の定着がよくないのを改善するために、班長制度を設けて、その状況を大きく変えることができたそうです。ほめて、やりがいを感じてもらうことが、もっとも重要なことだと思います。
最後に、大山会長が出演したテレビ番組「カンブリア宮殿」の司会者、村上龍氏の言葉を紹介して、私の感想の代わりとさせていただきます。
「大山さん。大山さんは、何も自分が得をしようとは何も考えていなかった。ただ、周囲の人のために何かをしていたら、それがブーメランのようにごく自然に戻ってきた。そういうことなんですね」
※村上氏の言葉の引用元はこちら>>
■ 連載:自閉症のトムくんの成長物語・7
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『伝えたい言葉 (2010年9月の記録)』
この頃、トムくんはLaQ(ラキュー)ができるようになっていました。
(注:LaQは、球面を含む立体を作ることができるブロック。詳細はこちら>>)
まだ平面だけとはいえ、ハサミやパイナップルの形をした図案を見ながら、図案通り器用に組み立てていきます。これは少し前まで簡単なおもちゃで遊ぶことも困難だったトムくんの姿からすると驚くような進歩でした。
トムくんがLaQに集中しているとき、私は隣に座って製作中の『赤いハサミ』を指して、「これはなあに?」とたずねました。
トムくんは素知らぬふりをしていました。
次に、再びその赤いハサミを指して、「これはなあに? りんご?」と尋ね直すと、トムくんがクスッと笑いました。
トムくんの笑いに興味を覚えた私は、トムくんの作品に必要な色と明らかに異なるLaQをトムくんに手渡して、「これ?」「ちがう、ちがう?」と手振り
を交えて話しかけました。すると、トムくんは何か言いたそうに手をこぶしにして、「なおみせんせ~い、な~お~みせんせ~い!」と大きな声で繰り返し呼んで、何かを訴えようとしました。あまりの大声に驚いて、お母さんさんが近づいてくると、トムくんはいきいきとした様子で、何か話をしようとし続けました。
パニックや困惑で大きな声を出しているのではなく、内側に湧いてくる感情と、学んでいる何かが合致した感じ……そんな何ともいえないような知性のきらめきが、その時のトムくんから感じられました。
おしゃべりインコがする会話らしきものも、高機能のロボットが行う会話も、人間の会話とは似ているようでちょっとちがいますよね。
どこがどうちがうのだろうと考えてみると、前回の記事に書いたトムくんが、私がはさみを「りんご?」とたずねたことで、クスッと笑った「クスッ」があるかないか……なのかもしれません。
トムくんの「クスッ」は、教えこんだり、会話パターンをインプットしたりして、あるシーンで反射的にお決まりの言葉を使うのとは異なる、トムくんの内の衝動や感情や理解から生じているものでした。それはおそらく、「ちがうよ。はさみだよ」という言葉に置き換わるべき心の働きの何かなのでしょう。
トムくんの内から外の誰かに向かって、言葉にして伝えたいものが周囲がハッと驚くような全身の喜びの表現や大きな声となって出てき始めている、そう感じた3日間でした。
(未来奈緒美)
■ 研究:気になる認知機能の実態とその改善 第1報
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当社の製品、こども脳機能バランサー・プラス(以下、CB)は、2010 年5月の発売以来、3000人を超える子どもたちに利用していただいております。
これまで「注意集中のなさが改善した」など、様々な評価をいただいており、具体的にどのような日常生活の気になる点が、どのようにCB で変わるのかを調べるために、モニター調査を企画しました。
この度、同調査の分析の第一段階が完了いたしましたので、分析結果を第一報としてまとめたレポートを当サイトに掲載いたしました。下記のリンクよりご参照ください。
日常生活において改善したい気になる点(困り感)のある子どもの認知機能の事態調査ならびに、脳機能バランサーによる認知機能の改善~第一報
○ハイライト
ご協力いただいた方々の気になる点のタイプによって、認知機能の偏りが見られ、また、2か月後の課題ごとの得点(発達指数)の上昇の仕方にも違いが見られました。4つのグループについて、ここでは簡単にまとめました。
●Aグループ:注意と多動に困り感を持つ人
ここには、ADHDやADDと診断された人及び、自閉症や広汎性発達障害(PDD)でADHDの傾向があるとされた人合計17名が含まれます。
最初の取り組みでは、mogura(注意と抑制力に関するタスク)の発達指数がもっとも低く、次に、road(空間認識と抑制力)が低い状況でした。
改善率(最後の発達指数を最初の発達指数で除し、100を乗した数)では、moguraが159.3と、今回の調査を通して最大の値を示しています。
さらに、ADHDと関連が深いとされるワーキングメモリのタスク、lightと、roadの改善率が高いのが特徴でした。
●Bグループ:言葉、コミュニケーション、社会性に困り感を持つ人
ここには、自閉症、高機能自閉症、アスペルガー症候群、広汎性発達障害(原因不明を含む)と診断された人合計44人が含まれます。
最初の取り組みでは、全般的にやや低い傾向で、word(語のカテゴリー化)が他のグループよりも相対的に低いのが特徴です。
興味深いのが総合課題same(遂行機能、空間認識、注意)の改善率が全体でもっとも高いことです。こだわりの強い子に受け入れられやすいタスクであることが示唆されます。
改善率では、言葉、注意、空間認識とまんべんなく上昇しています。
●Cグループ:読字、書字、計算に困り感を持つ人
ここには、学習障害(LD)と診断された3人が含まれます。#年齢が低い時点で、LDという診断はされにくいようです。
最初の取り組みで、他と比較して、空間認識関連のタスク:blocks(立体と数)、cubic(立体の見え)、roadが総じて低いのが特徴です。
改善率ではそれらの値が高く、特にcubicの上昇は顕著です。
●Dグループ:知能全般に困り感を持つ人
ここには、知的障害、精神遅滞(軽度を含む)と診断された人合計15人が含まれます。
最初の取り組みでは、他のグループよりも一回り、全般に渡って低い結果となっています。
相対的に改善率は、他のグループよりも一段高い値となっており、また、他のグループではそれほど顕著でないタスクが目だって上昇しています。
改善率140以上のものが4つあり、listen(文の構造)、light(ワーキングメモリ)、mogura(注意)、blocks(立体と数)と、認知機能全般に渡ってまんべんなく改善されていることが示唆される結果でした。
■ あとがき
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2010年7月30日の創刊以来、節目の第50号になりました。号を重ねて来られましたのは、受け入れてくださった読者の方々と、すばらしい文章を寄稿いただいた協力者の方々のおかげです。この場をお借りして心より御礼申し上げます。
感謝を表したく、レデックスWebページでささやかなキャンペーンをスタートさせました。よろしければご利用ください。
こども脳機能バランサー・プラス及びPCはこちら
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次回、第51号は、8月10日(金)の刊行予定です。
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2012.07.27
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