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■ 映画:ディスレクシアを知る映画「DXな日々」
■ 連載:自閉症のトムくんの成長物語・3
■ グッズレポート:「ごほうびシール」
■ イベント:日本自閉症協会 全国大会inほっかいどう
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■ 映画:ディスレクシアを知る映画「DXな日々」
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発達障害の中で、自閉症スペクトラム(ASD)や注意欠如多動性障害(ADHD)よりさらに研究が遅れている分野、学習障害(LD:Learning Disability)でもっとも多いのが難読症:ディスレクシア(Dyslexia)です。その有名人として名指しされるのがレオナルド・ダ・ヴィンチやトム・クルーズですが、意外とディスレクシアがどんな障害なのかは知られていません。
解説例として、大阪大学認知脳科学研究所のページを紹介します。
どうですか?分かったような分からないような、、、
大阪大学認知脳科学研究所のページはこちら>>
視覚障害と違って文字が読めない訳ではありません。映画「DXな日々」の中で描写される読み能力の検査シーンでは、登場人物の美(び)んちゃん(砂長宏子さん)の読む速度は1分間に86.7文字。比較して普通の小学1年生の読める文字数の平均は243文字だそうです。ですから同じ時間、文章に向かっていても小学1年生の1/3程度、大人と比べたら信じられない速度でしか文章が読めないことになります。ディスレクシアの人の外見はASDやADHDの人よりも普通の人と区別がつきません。ですから、サボっていると思われてしまうのがこの障害を持つ人の不幸なのです。
筆者がもっとも考えさせられたのが、母親との会話シーン。何度目かのクビになり、失意で実家に戻ってきた美んちゃんに「必死になって人の何倍かの努力をして資格をとれば」とつぶやき、美んちゃんを嘆かせます。障害が目に見えないために、20年以上、自分の子が苦労してきているのを知っていながら、その困り感を理解することができないのです。
そのシーンは、YouTubeにアップされている8分間の紹介動画に一部、収録されていますのでご一覧ください。
「DXな日々 美んちゃんの場合 」の予告編動画(You Tube)はこちら>>
この映画には、美んちゃんの他にもたくさんのディスレクシアの人たちが登場します。ぜひ一度映画を見て、ディスレクシアと学習障害について理解を深めていただきたいと思います。
関東在住の方なら、6月28日(木)夜に、国立オリンピック記念青少年総合センターで、なんと無料上映会が行われます。関西在住の方ならちょうど今、十三(じゅうそう)シアターセブンでロードショー中です。
上映情報はこちら>>
「DXな日々-美んちゃんの場合」
企画・演出・撮影・編集:谷光 章(たにみつ あきら)
公式ページはこちら>>
なお、この映画は5月10日に児童福祉文化賞を、厚生労働大臣から授賞されています。 (五藤博義)
■ 連載:自閉症のトムくんの成長物語・3『トムくんとの2日間』
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1日目の晩、「トムくんとお風呂に入ってもらえませんか?」とお願いされました。トムくんはお風呂が大好きで、お風呂場でのトムくんは他の場所より集中力があって、物覚えも良いそうなのです。
「シャワーの使い方をトムが教えてくれると思います」と言われ、私は半信半疑のまま風呂場に向かいました。というのも、それまでブランコに乗っている時以外のトムくんは、わたしの姿が透明で全く見えていないかのように振舞っていたからです。「トムくん」という呼びかけに振り返ることもありませんでした。ですから、他人に教えるという難しいやりとりが本当にできるのか疑っていたのです。
風呂場をノックして開けると、伸びてきたトムくんの手に手をつかまれて引っ張りこまれました。ブランコ遊びからずっと、親しみを感じてくれていたようです。わたしがシャワーのレバーをトントンたたいて、「どうやったらシャワーができるの? 教えて!」と繰り返すと、こちらのニーズを察したのか、レバーをたたくわたしの手を見てシャワーをひねることを思いついたのか、シャワーの湯を出してくれました。
風呂場でのトムくんの遊びは、うつむいた状態でシャワーをどんどん頭にかけて、その水が頬と鼻つたって落ちてくるのを両手をおわんのように構えて受け止めるというものでした。とても熱心に長い時間、それをしていました。わたしは「水がしたたるのを受け止める」ということへの熱心さは、トムくんとの関わりを深めたり何か教えたりする際に役立ちそうだと感じていました。
次に、トムくんは手でお湯をすくってはそれを手桶に入れていました。トムくんが入れたあとで、私もまねして手をおわんのようにしてお湯をすくって入れ、次はトムくん、次はわたし、次は……と交互に繰り返しました。トムくんは、わたしがトムくんの真似をしていることに興味があるようで、表情がしだいに笑い顔に近づいていました。
「それなら、真似るのをいったんやめてみたらどうするのかな」とやめてみると、ちょっと突っ立ったまま考えていて、次に手桶をのぞきこんで、手桶がいっぱいになるまで湯を入れて、その後は、手桶を傾けて、湯がしたたり落ちるのを黙って見つめていました。そこですかさず、手をおわんの形にして差し出すと、わたしの手めがけてて湯を落とし始めました。
この察し方も、シャワーのとき同様、「手の中に水を落としてね」というこちらの要望を察してそうしたようにも見えるし、おわんの形にした手に反応してそうしたようにも見えました。
少しすると、トムくんは最初の遊びに戻って、頭に手桶の湯をかけて、したたる湯を自分の手で受け止める遊びをはじめました。トムくんの手からこぼれ落ちる湯を、その下でわたしがおわんの形にした手で受け止めようとすると、少し嫌だったようで、わたしの手をトントン叩いて、払うようなそぶりをしました。それでいったんは手を引っ込めおいて、今度はトムくんのおわんの形の手の上に割り込んで、湯を先に手で受けてしまいました。
おそらく(湯が自分の手の平に落ちるはずだった)というトムくんのルールがやぶられたからでしょう。驚いたような声をあげ、お湯をバシャバシャはねあげました。嫌がっているというより、面白がっているように見えたのは、ブランコでいっしょに遊んでいた時、私がトムくんの予想を裏切る行為をしたときと似ていました。
「トムくんがある遊びのパターンが楽しくなって、それを繰り返し出している時に、途中で私が予想外の出方をする」というのは、ブランコ遊びでいろいろ試してみたのです。トムくんは、急な変更を、「びっくりして一瞬固まる」態度でやりすごした後で、わたしが再び予想通りの行動を取ると、それまで見せたことがないようないきいきした表情を浮かべて、「いきなり両手を出してきて、私の手をにぎる」とか、「ブランコを大きくこいで、こちらに身体ごとぶつかってくる」といった積極的な行動に出てきたのです。
わたしは相手の動作が予想できる場面を作って期待させておいて、予測がつき出したところで変更して「あれっ変だな」と考えさせて、また元の状態に戻してみたり、新しい場面を作ってみたりすることがトムくんの成長を促進させるんじゃないかな、と感じました。
(未来奈緒美)
■ グッズレポート 「ごほうびシール」
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今回の発達障害の子のためのグッズは「ごほうびシール」です。
推薦してくれた小林雅子さんの、文章の冒頭を紹介します。
夏休みのラジオ体操で、毎朝行く度にカードにハンコを押してもらう。
漢字の書き取り問題を一枚ずつ終わらせるたびに、先生がシールを貼ってくれる。
誰にでもそんな経験、ありますよね。
発達障害の有無にかかわらず、頑張った結果をスタンプやシールで目に見える形にしてもらうのは、うれしいものです。
療育の場でもこの「頑張り」の「可視化」はよく使われています。ABAによる療育をやられている方にはおなじみの、トークンシステムですね。
続きは、下記ページをご覧ください。
グッズレポート「ごほうびシール」 はこちら>>
■ イベント:日本自閉症協会 第22回全国大会inほっかいどう
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2年に一度の全国大会が今年は札幌で開かれます。今回は、北海道大学子ども発達臨床研究センター教授の田中康雄先生や、発達障害の新しい療育の場として注目をあつめる「たすく」の斉藤宇開代表など、充実の講師陣です。
テーマ:はじめよう、自分らしい暮らしを自分のまちで
主催:社団法人日本自閉症協会
日時:2012年7月14日(土)12:00~16:45
同 7月15日(日) 8:45~16:20
場所:かでる2.7(北海道立道民活動センター)
詳細と申込は下記の通りです。
日本自閉症協会 第22回全国大会 ホームページはこちら>>
北大・子ども発達臨床研究センター ホームページはこちら>>
たすく株式会社 ホームページはこちら>>
なお、同一日同一会場で、筆者の学習会(14日9:45~と7:30~の2回同一内容)も開きます。ディスレクシアの解説します。
認知機能の発達と学習セミナーin札幌 詳細はこちら>>
■ あとがき
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初孫が生まれて早2週間、出産で我が家に戻ってきています。1カ月後に自宅に帰ってしまうのが寂しい、爺がお届けしたメルマガでした(笑)。
次回メルマガは、6月8日(金)です。
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