ブレイブ・ストーリー

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2011.09.16

ブレイブ・ストーリー

好評だったリアル・ヴァラエティカフェの第2回の概要が決まりました。10月29日(土)に、神奈川県の大和市保健福祉センターで実施します。臨床心理士の五味純子氏の解説、先輩保護者、藤森省吾氏の体験談を聞いた後、今回はテーマ別の小グループに分かれて、ゆっくり時間をとって懇談会を実施します。詳細が決まり次第、当社の新ソーシャルネットワークシステム「発達障害・知的障害に関する情報交流コミュニティ-ヴァラエティ カフェ」等でお知らせします。大和市まで足を運べる方は、どうか日程を開けておいてください。

大和市保健福祉センター http://bit.ly/qpesQr
交流コミュニティ-ヴァラエティカフェ http://www.variety-cafe.net/

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【目次】
(1)講演会「理解しにくく誤解されやすい発達障害」2
(2)小児発達医・まなみの診察室 第11話
(3)おすすめコンテンツ「ブレイブ・ストーリー」
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(1)講演会「理解しにくく誤解されやすい発達障害」2

しばらく間が空いてしまいましたことをお詫びします。7月16日に埼玉県上尾市で開催された「発達障害の理解啓発セミナー」の田中康雄・北海道大学大学院教授の講演レポートの続きです。

7月29日刊行のメルマガ第26号では、最初の一歩として、代表的な発達障害の特徴が紹介されました。

●次の一歩
1.子どもの心に近づく
-どのような言動も子どもにとっては『意味ある、心ある行為』です。
2.その子の発達段階、ライフステージを尊重する
-子どもたちは『今』を生きています

1.子どもの心へ近づく
子どもたちは一人ひとり異なります。「診断名」でその子どもの言動が説明できれば役立つ名前となります。あまり役立たないなら、普段の言葉(言いやすい言葉)で表現しましょう。

例えば、孤高の戦士、一点集中者、○○博士、本番に強い子、などはいかがでしょうか?

目標は「診断」ではなく、子ども(わが子)の心にたどり着くことでは、ないでしょうか?

2.子どもの言動から思いへ近づく
子どもの言動には意味があります。それを理解することが大切です。
わが子はどれに当るのでしょうか?
質問したり、想像したりしてみましょう。

ア)行動面:じっとしているのが苦手
・あっちこっちに興味がある?
・ここにいることに不安がある?
・ここがなんとなく面白くない?
・実は別に目的がある?

イ)行動面:友だちとのトラブルが絶えない
・本当は楽しく遊びたいのに、そうなってしまう?
・嫌なことをされているように感じてしまう?
・なんとなく邪魔されているように感じる?
・雰囲気や声の出し方、風情が苦手?(相手が悪いわけではないけれど)
・実は、結構からかわれている?
・意地悪されていると誤解している?

ウ)行動面:不登園・不登校
・その場所(人)が苦手? 何か苦手なものがないかを調べる
・そこに行くと混乱するような、分かりにくい場所?
・対人面の苦手さ、学習面のつらさ、食事などの強要?

不登校になったある事例を調べてみると、教室の中に「にわとり小屋」があって、それがいやだった、という場合がありました!
子どもだけでは解決できないこともあります。場合によっては親の介入も必要です。

エ)情緒面:不安なときは、こんな行動をとる場合があります
・その場所から出ていく
・その場所から動けなくなる
・トイレに逃げ込む
・親を探す
・泣きわめく
・ニコニコする ※このケース、特に誤解されることがあります。

トイレに関してはいろいろな意味があります。
・困った時の隠れ場所
・遊びに夢中で、間に合わなくなる場合が
→トイレや食事は、無理強いせずに、楽しいことと感じられるように配慮し たいものです。

オ)学習面:できないことにはいろいろな意味
理解度か、不注意か、関心興味の程度か、観察してみましょう。
・学習を「する」という仕組みが分からない
・ぴんと来ない、分からない
・説明などが聞こえていない(聴いていない)
・「わからない」ということがわからない
・「わからない」と表現するのが嫌い

3.ライフステージごとに考慮すべきこと
ア)就学前:目指すことは、不安の軽減
無理強いはできるだけしないようにします。焦らないようにします。
ただ、無用に容認することは避けるべきです。
時々「チャレンジ・タイム」などとして、余裕をもって、取り組むようにしましょう。
・偏食指導
歯や口腔内に痛みがないかチェックします。
においや温度が原因でないかチェックします。
→周囲が「おいしい」といった食べる手本を示し続けます。
偏食で健康を害するよりも、不安が強くなって拒食になるのは避けなけれ ばなりません。
・トイレ指導
排せつは「うれしいこと、楽しいこと」と伝えましょう。
また「怖いところでない」と感じさせることも大切です。

イ)就学前:就学先の検討では、判断を急がない
前提として、その子のことを一番知っているのは親だということです。医師や専門士は、家庭と離れた特別な場所でしか、子どもを見ることができません。また、ごくごく短い限られた時間だけです。
・親が、その時一番良いと思ったことを自信を持って実践しましょう。
・最初から「もっともよい結果」を知っている人はいません。
・人に言われたことをして失敗するより、親の判断でつまづいた方が、気持 ちよくリカバリーに取り組めます。
・完璧な親はいません。
・人生に取り返しのつかないことは、ありません。

ウ)関係者への理解を求める時:求めすぎない
保育士や教師にわが子のことでお願いをする場合には、次のようなことを頭に入れておくとよいでしょう。また、お願いをするタイミングも大切です。入ったばかりよりも、5月の連休明け辺りがよいかもしれません。
・最初から情報をたくさん与えすぎないように。
・これまでの「親の頑張り」と同等の尽力を求めない。
・わが子を理解できるまでには「時間がかかる」。
・保育・教育の専門家であっても「この子の専門家」ではない。
・発達障害について学んでいても、この子については学んでいない。

エ)関係者への理解を求める時:小さな積み上げ
お願いはスモールステップでじっくり進めます。そして、必ずねぎらいの言葉かけをして、よい関係を築きましょう。
・関係者への慰労と感謝は大げさに。
・いざとなったら、どのような手立てをしても、わが子を護るという決意を 静かに持ち続けます。
・だから、簡単にケンカはしません。
・余裕をもって関わります。
・子どもの成長は、常につまづきと修復の連続です。
・よくない時期は、これも経験と考えましょう。

オ)小学1・2年生
・先生に仕切っていただき、いろいろな子どもがいることを当たり前になる
ようにしたいものです。

カ)小学3・4年生
・子ども同士の顔ぶれに注意して、いじめ、からかいを最小に食い止めるようにします。特に、休み時間に目配りをします。
・先生や子どもたちへの説明は、普段の言葉を使います。障害名は、役に立たないと考えましょう。

キ)小学5・6年生
・孤立、孤独になっていないか、アンテナを張ります。
・大人が支援者です。信じられる大人を作ります。同級生は難しいです。

ク)中学生
・僕の問題は何なんだろう、と自問自答をする時期です。
・プライドと現実に衝突し、投げやりになったり、落ち込んだりします。
特に、二次的気分の変化に注意しなければなりません。

ケ)高校生
・支援者は親から別の大人に変化します。
・学習と趣味のバランスを考慮します。
・特に、様々な機器をどう制限するかを考えます。
携帯電話、テレビゲーム、パソコンなど。
家族のルールとして毅然として実践します。一貫性が大切です。

4.発達障害の統合的治療としての4本柱
(1)親への関わり(育児助言やペアレント・トレーニング)
(2)保育・教育現場での関わり(学校や教室での工夫)
(3)薬物療法
(4)地域環境の整備(地域に慣れる、「地域が慣れる」)
※次回に続く
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(2)小児発達医・まなみの診察室 第11話

物事の捉え方、脳内での処理の仕方を「認知特性」といいます。
前回は聴覚優位者の中でも、特に『言語』を『音』として認知するのが得意な聴覚言語優位についてお話ししました。

今回は、聴覚優位者の中で、音色や音階やリズムといった『言語』とは結びつかない『音』そのものの情報を認知するのが得意なタイプを聴覚音優位者として分類してお話しいたします。

聴覚言語優位者の適職は、噺家や弁護士、教師、アナウンサーではないかと思うのですが(あくまでも私個人の見解です)、聴覚音優位者にはミュージシャンの方が多いのではないでしょうか。逆に、ミュージシャンには聴覚音優位者が多いともいえます。また、人のモノマネが得意な人もこのタイプの方でしょう。声色や声の抑揚、特徴を掴むことができ、脳の中で処理再現することが出来るのです。

耳で聞いた音という情報を創造的に脳内で処理するという点では、以前お話しした映像優位者と同じイメージ思考者であるとも言えます。

また聴覚音優位者には絶対音感を持っている方が多いようです。絶対音感とは、外的な基準音を参考にせずに任意の音の高さを判断したり、あるいは自らの声や楽器で任意の音を創りだしたりする能力のことです。医学的には、絶対音感に関する遺伝子が既に報告されており、遺伝性が認められる能力のひとつです。しかしながら絶対音感を遺伝的にもっている人でも、音楽的環境にいないとその才能が開花されずに、才能をもっていることにも気付かない場合もあります。逆に、早期教育をしても、遺伝的素因を持っていない子どもは絶対音感を獲得しにくいとも報告されています。

ヴァイオリニストの五嶋みどりさんは、2歳の時に、母親で同じくヴァイオリニストの五嶋節さんが数日前に練習していた曲を正確に口ずさんだと言います。節さんはその時に娘のもつ絶対音感に気づき、3歳にはヴァイオリンの早期英才教育を開始したところ、6歳でステージに立つほどに才能が開花したといいます。

プロの音楽家としての才能とまではいかなくても、例えば、幼い子どもがテレビのコマーシャルのフレーズを意味も分からずに繰り返したり、一度見た映画や劇の挿入歌のメロディーや歌詞を口ずさむことがあれば、聴覚音認知に長けている可能性が大です。歌詞がめちゃくちゃ(意味が通じない内容)で大声で唄っている子どもは音という聴覚情報のみで再生しているのです。自分、あるいは我が子もそうやって唄っていたと思われる方も多いと思います。決して珍しい認知特性ではないのです。

余談ではありますが、私自身はこの特性を持っていません。先日、劇団四季のミュージカルを家族で鑑賞し、その舞台演出や音楽に大きな感銘を受けたのですが、劇場を出たとたん、全く歌もメロディも思い出せませんでした。脳内で再生できないのです。おそらく聴覚的な短期記憶も悪いからだと思われますが。

これまでいくつかの認知特性についてお話ししましたが、一人の人間が一つの認知特性だけを持つというわけでは決してありません。もちろん『特性』というからには、個人の得意不得意はあります。それは、あくまでも特性の偏りであって、人間が外界からの情報を収集、処理する時には、場面や状況に応じたそれぞれの使いやすい認知の方法で処理しています。また、認知特性の偏りは、親からの遺伝や生活環境の要素も影響を与えていると考えられます。

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(3)おすすめコンテンツ「ブレイブ・ストーリー」
宮部みゆきの記念すべき本格ファンタジー第1作です。続く「ICO-霧の城」や「英雄の書」、連作の「ドリームバスター」と大きく異なるのは、主人公である思春期の少年、亘(ワタル)が直面する現実の問題とオーバーラップする幻界(ヴィジョン)が描かれていることです。そして、そこでのワタルの体験は人間が成長するために必要な心の葛藤であり、その問題が解決する時、ワタルに感情移入した読者に、必ずや大きな達成感を感じさせてくれる作品です。

皆さんがワクワクドキドキ読み進められるように、あらすじは書きません。ワタルが幻界に入って、自ら望み、与えられるものが「勇気」「知恵」「健康な身体-元気」「喜び」の4つであることだけお伝えしたいと思います。

なお、この作品は、アニメ映画(06年7月公開)やコミック、ライトノベル、文庫にもなっています。
アニメで関心をもたれたらぜひ文庫を手にとってください。子どもたちに読んでほしい、ベストセレクションの一冊です。

また、宮部作品は、「ステップファザー・ステップ」などの心温まる作品や「震える岩―霊験お初捕物控」などの江戸時代ものもお勧めです。
作品一覧 http://bit.ly/rjWITi

ブレイブ・ストーリー 宮部みゆき著、角川書店、2003年3月発行
※単行本は、在庫切れのようなので、文庫を紹介します。
文庫版1~4 各冊 560円~600円(税込)
http://bit.ly/qasNHu

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次回は9月30日金曜日です。小児発達医・まなみの診察室シリーズは最終回となります。メルマガリニューアルのためのアンケートも計画しています。
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