発達障害や知的障害は、一人ひとりの状態が多様で、年齢によっても変化があります。また、当事者や保護者のいる地域の情報も必要です。そこで、それぞれが持っている知識やノウハウを持ち寄ることで、必要な情報を整備できないかと考えて、ソーシャルメディアの活用を試してみることにしました。
世界に数億人、北米では人口の40%以上が利用しているといわれるFacebook。特定のテーマを設定して開設でき、Facebook会員なら誰でも書き込め、できたページはFacebookの会員以外にも公開される「ページ機能」を使って、「発達障害&知的障害」という名称のページを7月1日に立ちあげました。
http://on.fb.me/jf9mJG
実名での会員登録が原則となっている点で、無責任な書き込みや誹謗中傷はほとんどなく、役に立つ情報データベースが今後できていくことを期待しています。読者の皆さんも一度、立ち寄って見ていただければ幸いです。
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【目次】
(1)「見る」を高める・1
(2)小児発達医・まなみの診察室 第6話
(3)おすすめコンテンツ 「自分のこと」のおしえ方
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(1)「見る」を高める・1
埼玉県所沢市の軽度発達障害児を支援する会「よつばくらぶ」が、発達障害児の通級指導教室を担当する増本利信先生を招いて、5月15日に勉強会を開催しました。その内容を3回に分けてレポートします。
講師の増本先生は、ブログ「西風~LDのお子さんとともに」で、学習障害に関する実践内容を精力的にアップされています。
http://edublog.jp/nagasaki-northstars/archive/71
また、ズバッと解決の達人の一人として、「電脳・ズバッと解決ファイル」ページにも最近連載をされました。
http://www.denzuba.com/ ※更新でページが移動する場合があります。
1.LD通級指導教室の教育課程
増本先生の担当する「ひまわり通級指導教室」は、長崎県の佐々町立口石小学校にあります。口石小学校の在籍は587名、近くの佐々小学校は351名で、その2つの学校から13名が通級指導教室に通ってきています。
通級指導教室の利用についての国の基準は、子ども一人の時間数は、週8時間から1カ月に1時間の間で設定するようになっています。
ここでは、週に2時間や1時間の子ども、掃除の時間(20分)に週2回や、朝の時間(15分)に週3回という子どもがいるそうです。子どもの困りや指導課題に応じて柔軟に時間を設定しているとのことです。
在籍学級と通級の関係ですが、それぞれの学年の学習については、在籍学級の担任教師が責任を持って指導します。通級指導教室は、子どものもつ特徴的なつまずきを、アセスメントを通して明らかにし、在籍教室や家庭で活かせる手立てを提案し、維持する働きかけを行います。
増本先生は、子どもの困難さを理解するための概念として「氷山」を使って説明してくださいました。
1-1.氷山モデル
氷山は、海上に頭を出していますが、海中にはその何倍もの大きさが隠れています。
例えば、「漢字がなかなか覚えられない」という症状があれば、その下に、次のような問題が隠れています。
・不安定な環境
・規範意識
・不器用さ
・知的発達の程度
・セルフエスティーム
・ストレス耐性
・得意、不得意な学習様式
・眼球運動
・視知覚
アセスメントにより、問題の所在をつきとめ、対処方法を考えます。
例えば、以下のような方法が考えられます。
・量的な配慮
・質的な配慮
・機器の利用
また、対処の際には、次のようなことも考慮する必要があります。
・プライドへの配慮
・自発への方向付け
1-2.教育課程
通級指導教室の教育課程は、4つのSEC.(セクション)で構成されています。
SEC.1 視知覚と聴知覚
次の方法を組み合わせて実施します。
・ビジョントレーニング
・フロスティック視知覚トレーニングブック
・ジオボード
・各種パズル、等
SEC.2 巧みな動き
感覚統合療法を参考にしています。
・不器用さの改善
・着座姿勢を整える
ぴたっと身体を停止させるにはエネルギーが必要ですので、小刻みな動きなどは、許容することも検討します。
SEC.3 情緒の安定・社会性
次の方法から適切なものを選択します。
・SST(ソーシャルスキルトレーニング)
・CSST(学級内におけるSST)
・感情の学習
・各種ゲーム
・個別及び小集団活動
SEC.4 教科の補充
次の点を考慮して、一人ひとりへの内容を決定します。
・在籍教室で足りない部分を補うのではない
・教科学習の「基礎」にあるものへのアプローチ
・つまずきの場所を探す
・必要な関わり方の提案
・必要な支援教具の提供
次号では「見る」「読む」のメカニズムについて解説します。
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(2)小児発達医・まなみの診察室 第6話
今回は『大人の都合』と『子育て』について述べていきたいと思います。
私自身も子育て中の身なのですが、子育てに『親の都合』というものを出来るだけいれないように、日々心がけるようにしています。時間のある時は子どもの目線で色々な物事を考えることが出来るのですが、親の私たちに時間の余裕、心の余裕が無くなると途端に、『子どものため』という仮面に隠された『大人の都合』が出てくるように感じます。また、余裕があったとしても、持って生まれた子どもの個性や特徴を理解していないと、心から『子どものため』と思って行動していながら、実は『親の都合』であることに気づくことすら出来ないのかもしれません。
先日、我が家でこんなことがありました。3歳になる娘が4月に保育園の年少クラスに進級しました。娘は非常に人見知りと場所見知りの強い、こだわり特性をもっている子どもです。新しいクラスや新しい担任に慣れるまでに毎年毎年、後追いで苦労してきました。昨年までは赤ちゃんクラスだったので、仕事に間に合わないという『母親の都合』だけで、クラスの前で行き渋り、泣きじゃくる娘に後ろ髪を引かれながらも、保育士にサッと預けて早々に出勤する毎日でした。
年少クラスになり、言葉もそこそこ通じるようになったので、年度初め、例年のように保育園に行き渋り、クラスの前で泣く娘に、「お姉さんクラスになったのだから、泣かないで頑張って保育園に行こうね。」と夜寝る前に諭し、約束をしました。「ルンちゃん(娘)が泣いたら、かあさんもお仕事で悲しくなっちゃうからね。」という説明も付け加えました。翌日から娘は泣かないで登園するようになったのですが、園の連絡帳に保育士から「お母さんと別れるときに泣くのは悪いことではないですよ」という内容のメッセージをいただき、目から鱗でした。
娘が泣いて困るのは私自身が後ろ髪を引かれてしまうという『母親の都合』で、初めての場所、慣れない担任への不安や寂しさという子ども目線で考えれば、後追いして子どもが泣くことは当然のこと、悪いことでも恥ずかしいことでもないのです。「泣いた時にその気持ちをしっかり受け止めるようにしますので安心してください。」という内容のメッセージが連絡帳には付け加えられており、頭の下がる思いでした。
『大人の都合』と『子育て』はまさに表裏一体、子どもの目線になる努力が必要です。
同じように、子どもの早期教育に関しても『大人の都合』でないかを考える必要があります。
人間誰しも向き不向き、得意不得意があります。子どもの将来を考えるのは親の役目ですから、当然『子どものため』を思って習い事や教育方針、進むべき道を選んでいきます。けれど子どもの特性を理解して、物事を取捨択一していかないと、親にとっても子どもにとっても不幸な結果になりかねません。
私の医学部時代の同級生は、先祖代々医師という家系に生まれ、親の言うまま医学部に進学したけれど「やはり医者になんかなりたくない」と途中でドロップアウトして違う道に進み、今では会社の社長として大成しています。
大学生にもなれば、自分が理系か文系か、将来何をやりたいかなど具体的、現実的に考えることが出来るようになりますが、幼児期、学齢期の子どもにその選択は出来ません。
次号以降、言語を用いた理論的思考が得意な人、空間認知に優れ直感的思考が得意な人、芸術的センスをもつ人、運動神経のいい人、色々な認知特性について述べていきたいと思います。
我が子の持って生まれた認知特性を知って、子育てや教育を選択すると『親の都合』という落とし穴に陥りにくくなるかもしれません。例えば、英語の早期教育は全ての子どもにとって有効ではないのです。バイリンガル脳が育つ子もあれば、母国語を全く持たないまま育ってしまう子もいるのですから。
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(3)おすすめコンテンツ 「自分のこと」のおしえ方
正式な名称は、自閉症・アスペルガー症候群「自分のこと」のおしえ方。
副題に、診断説明・告知マニュアル、とあります。
子どもに、自分がどういうタイプの人間なのかを告知する方法を解説した本です。自閉症スペクトラムに限らず、発達障がいのお子さんと関係するすべての保護者、教師、保育士、医師、専門士に読んでもらいたい本です。
全編を流れるのは、自閉症はヒトのタイプであり、その特徴を積極的に活用することで、ポジティブに生きていく方法を子どもたちに知ってもらおうという願いであり、それができるという信念です。
それには、自分がどういうタイプで、どんな長所と短所(表裏の関係)を持っているかをタイミング良く知らせることが大切です。
その告知に関連して、知っておくべき情報と具体的な方法、必要な素材が、この1冊にまとめられています。告知の際に使用する手紙と、長文がにがてな子どものためのプレゼンテーション資料も用意されています。
著者は、エリザベス・ニューソン、トニー・アトウッドといった数多くの研究者の告知方法を研究し、それらのよさを理解しつつ、自らの豊富な実践を通して、専門知識のない人でも上手に告知できる方法を作りだしています。
ぜひ一読をお勧めします。地元の図書館にもあるはずです。なければ、リクエストしていただき、より多くの図書館の蔵書となってほしいと思います。
最後に、私が強く感銘を受けた著者のことば:
あなたには、私たちがついている。
自閉症・アスペルガー症候群「自分のこと」のおしえ方
-診断説明・告知マニュアルー
吉田 友子、学研教育出版、2011年4月発行、B5判、128ページ、1575円
http://hon.gakken.jp/book/1340452900
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東京都自閉症協会が、被災地の当事者や家族を応援しようと、映画の上映とシンポを群馬・宇都宮と東京・調布で行います。6/19宇都宮、7/10調布です。映画は『音符と昆布』、2008年作品。姉の存在を知らなかった妹を突然訪問したアスペルガー症候群の姉と妹の交流を描いた作品です。
どちらも無料で参加できますが、被災地へのカンパをお願いしたいとのことです。私は調布に行きます。お時間のある方はご一緒しましょう。
音符と昆布 http://www.onkon.jp/
宇都宮 http://bit.ly/iBIeZz
調布 http://bit.ly/jPMxTx
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
次回は、6月24日金曜日の刊行予定です。
自閉症・アスペルガー症候群「自分のこと」のおしえ方
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2011.06.10
自閉症・アスペルガー症候群「自分のこと」のおしえ方
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