5月12日朝日新聞の朝刊記事、ダウン症児が連ドラ出演。
高井萌生君(10)がTBS 系の連続ドラマ「生まれる。」に中心人物の一人として出演することになりました。知的障がい児専門の芸能部門を立ち上げたケイプランニング国枝秀美社長は「障がいへの理解が進まないのはメディアへの露出が少ないためでは」と考えたそうです。
http://www.asahi.com/culture/update/0511/TKY201105110493.html
高井君のお母さんは「歌ったり踊ったりするのが大好きな子。元気で楽しいところを見てほしい」と話します。障がいのある人が、ドラマや映画にあたりまえに出る時代が来ることを願っております。
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【目次】
(1)自立の考え方・1
(2)小児発達医・まなみの診察室 第4話
(3)おすすめコンテンツ「自閉症のひとたちへの援助システム」
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(1)自立の考え方・1 -五味純子・心理士の資料から
神奈川県大和市保育家庭課の五味純子さんのもう一つの資料紹介です。
障害のあるなしに関わらず、人間は、3J(自)、つまり、自立性、自発性、自主性を目指す存在です。ところが自閉症スぺクトラムの人たちは、その特性から次のような困難さを伴うため、自立的、自発的、自主的な行動を育てることが難しいことが多いです。
・遊びを展開しにくい
・興味の範囲が狭い
・新しい行動を覚えにくい
・活動・行動を完了しにくい
・達成感を感じにくい
・集中が難しい
・周囲の期待に応えにくい 等
では、自閉症圏スペクトラムの人たちの自立性、自発性、自主性をどのように考え、育てていったら良いでしょう。
まずはじめに、自立とは何かを整理してみましょう。
1.Independence:自主性・自立性とは
・普通の生活に必要なこと
・他人に頼った生活から、自分で環境や関連性を理解し、できるかぎり期待されている役割を理解し活動する
・自分に対する自信や自尊心を育てていくこと
自分で課題や仕事を完成したという達成感や成就感によって、自信を持つことができる。
(1) 障がいの程度、年齢段階、発達段階がどうであれ、自立は可能
子どもの年齢、できることに応じた自立的な取り組みが大切
自立とは、「何もかも100%ひとりですること」ではない。
(2) めざすべき自立とは
・「できる」「できない」などと分けて考えない
・自立できるかどうか、は「環境」による
必要なのは能力ではなく、その能力を発揮する環境
できるようになったから、ひとりでするのではなく、できないところは助けられながら、ひとりでする生活の積み重ね
→ 自立的生活
2.「自立的生活」に必要なこと
(1) 障害特性の理解
障害は克服すべきことではない
障害ゆえのさまざまな行動特徴を、周囲が理解しているかどうか
「こだわり転じて福となす」新澤伸子氏
(2) 必要なところに必要なだけ支援を!
彼らが学ぶのは成功体験から。失敗体験からは学べない。
本人の能力を周囲がどのくらいとらえているか?
でも、できる部分まで、過剰な支援はいらない。
(3) あせらない。あきらめない。今日から少しずつ
身につけるのが難しいと思えることも、将来を見据えて、長期計画で、時間をかけて、あきらめないで。
必要に迫られて新しいことを自ら学ぶ(行動する)ことは難しい。
やったことのあることをやる(先行体験が優先する) 記憶が良い。
→ 身につくまではたいへんだが、身についてしまえば確実。
(4) 子どもは「親が育てたように育つ」もの:将来の自立度は、親の育て方しだい
・親に意識がないこと、教えないことは、子どもの身につかない。
・学校教育ができることは、きっかけ作り。習ったことを生活に根付かせる
(応用する)のは、親 <学校は子どもにとって通過機関でしかない>
・子どもの将来を作る中心は保護者。保護者を中心とした、学校、関係機関、地域の連携が必要
(5) 自立的な(一人でできる)余暇活動を育てる
年齢に見合った余暇活動の内容を考える。
家事は、彼らにとって取り組みやすい(余暇)活動!?
(6) 障害があってもなくても、守るべきルール・マナーは同じ
教え方が違うだけ。
マナーの良い、上品で、個性豊かな自閉症の人に育てよう!
(7) 家族の一員としての責任と役割をもてるように
王様にしない。
家族は、社会の最小単位。家族の中のルールを守る。
家族(人)の役に立てていることでの自尊心と誇りを大切に。
3.自立的な活動(生活)のために
(1) わかりやすい環境が用意されているかどうか
活動の場所が決められている
予定表がある(いつやるかがわかる)
活動内容が理解しやすく工夫されている
「何を」「どれだけ」「どうやったら終わり」で
「終わったら何をするのか」
ごほうびがある
※前回、前々回のメルマガ「生活の中に構造化をとりいれよう」を参照。
(2) 本人がとまどわずできる能力を持っているか
「できること」○ → ひとりでできるような環境を設定
「できないこと」は、「一人ではできない」
「できそうなこと」△ → できるように教えていく
「できないこと」 × → 助けていく
「やって」「教えて」のコミュニケーションの練習。
あらかじめ しないでよいように環境を調整する。
では、自立的な行動は、どのように育てればよいのでしょう?
次回は、自立的な行動を育てるための評価方法の1つ「課題分析」を紹介します。
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(2)小児発達医・まなみの診察室 第4話
子どもの発達を考える上で、無視できないのが『ジェンダー』つまり『性』の違いです。
1980年代に脳画像や脳活動をコンピューター解析できる技術が急速に発達し、男性と女性では脳のつくりや働きに違いがあることが解明されてきました。
男女平等の観点から、特に欧米諸国では性による能力の差を唱えることへは反発があり、脳科学者たちも大きな声では発表できなかった時代背景もあるようです。少なくとも15年前に私が在籍していた日本の大学医学部の教育課程でも男女脳の違いを習った記憶はありません。
そんな折にアラン・ピーズとバーバラ・ピーズらが『話を聞かない男、地図が読めない女』(藤井留美訳・主婦の友社)を著し、世界中で話題になりました。題名からも憶測できる内容なのですが、男女の思考や行動の違いというものは多くの人々が日常生活を送る上で感じており、実生活の中で共感、納得できる内容であったことが、本のヒットにつながったのだと思います。
男女の脳の違いについては本に詳しく書かれていますが、一言で言ってみれば、男脳は物の大きさや形など3次元空間に占めている状態を素早く理解する能力、すなわち空間認知力に優れており、女脳は言語力と相手の表情や場の空気に注意を払うことで相手の気持ちを推察する非言語力が優れています。
この能力の差は、狩猟時代の名残であると前著には書かれています。男性は生きた逃げる獲物を追いかけ仕留めたあと、その獲物の肉が新鮮なうちに出来るだけ早く自宅へ戻らねばなりません。そのためには通った道を覚えたり、方角を直感的にあてる能力が必要であり、『空間認知力』が優れた男性のみが生き延び、遺伝子として強く残っているそうです。
一方、女性たちはコミュニティを作り子育てをしながら、自宅のそばで果物や木の実を協力し合いながら採取していたために『コミュニケーション能力』が身についたといいます。食べ物が腐っていないかをジャッジするのも女性の役目であったために、女性の嗅覚や皮膚感覚は鋭敏化されたとも書かれています。また第六感的な直感も女性の方が優れているそうです。
男女脳の違いを書いたこの本を初めて読んだ時はそれほどピンとこなかったのですが、自閉症や発達障害の診療に関わるようになってから、改めて本を開いてみますと『男女脳』の差というものが子どもの発達に非常に重要な鍵であることが理解できます。
コミュニケーション能力に問題を抱える自閉症は男児が女児の4~5倍多くいることは、もともと男児にとって『コミュニケーション』というものが弱い部分であることと関係しているのかもしれません。
また、自閉症の症状のひとつに『固執性(こだわり)』というものがあります。私の主人をとってもそうですが、男性は大人になっても一つの興味ある物(例えばバイクや車、古いキャラクター玩具やプレミアものなど)を収集するコレクターが女性に比べて多いように思います。女性の方が現実的なもので、こんなものにそんなお金を出すのか?と正直思うのですが、何か興味あるものに大枚をはたいたり、努力して手に入れて満足を得るという行為は『こだわり』といえるのでしょう。
もちろん発達障害を男女の脳の違いだけでは説明はできませんが、自閉症の権威である著名な先生が『自閉症児の脳は超男性的である』とおっしゃっていたのには、そのような男女の脳の違いという裏付けがあったのでしょう。
次回は続けて、男女脳を踏まえた子どもの遊びや教育という面でお話ししていきたいと思います。
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(3)おすすめコンテンツ「自閉症のひとたちへの援助システム」
五味心理士のお勧めの書籍です。五味さんの考えの基礎になっている理論に米国ノースカロライナ大学で開発されたTEACCH(ティーチ)があります。この書籍の副題「TEACCHを日本でいかすには」が示すように、TEACCHの概要と、日本で展開されているTEACCHに基づく実践が紹介されています。
TEACCHは、Treatment and Education of Autistic and related Communication handicapped Children の頭文字をとったもので、ノースカロライナ州の自閉症児・者の療育・支援公式プログラムとして採用されています。
構造化の実例として、佐賀大学附属養護学校の校内の各コーナーや、手順書を持って卒業式に参加している様子などを写真で見ることができます。
また、自分でできることを増やすために、「机に向かって一人で行う課題」自立課題(インデイペンデント・タスク)の具体例が豊富な写真で紹介されています。
五味さんのお話しをより深く理解していただくために最適の書籍と思いますので、ご購入をお勧めします。
なお、続編に相当する「自閉症の人たちを支援すること:TEACCHプログラム新世界へ」(定価800円)も合わせて購入されるとよいと思います。どちらも書店でなく、朝日新聞厚生文化事業団のWebページから購入します。
「自閉症のひとたちへの援助システム:TEACCHを日本でいかすには」
藤村 出、服巻智子、諏訪利明、他3名 朝日新聞厚生文化事業団
1999年8月発行、B5判、88ページ、500円(税込、送料別)
http://www.asahi-welfare.or.jp/public_shtml/publication/index.html
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今週末は東京で、発達障がい関連のイベント、てんこ盛りです。
まず、5月14日(土)は、ズバッと解決Liveが東京・神保町の三省堂本店で。
阿部利彦先生によれば今回が最終回で、今後は別の形での展開とのこと。
http://www.books-sanseido.co.jp/blog/jinbocho/2011/04/514livein.html
次に、全国コーディネーター研究会と東京コーディネーター研究会の合同で講演会と交流会が文京区小日向で開かれます。
http://www.justmystage.com/home/ackenkyu/kenkyu%20annai5.html
さらに、東京都自閉症協会の定期総会記念講演が千代田区で行われます。
http://www.autism.jp/
そして、翌日曜日は、埼玉・所沢で西風さんこと長崎の増本先生の講演会。
「見る」を高める ~ビジョントレーニングの実践から~
http://yotsubaclub2.cocolog-nifty.com/yotsuba/2011/04/post-fd53.html
西風さんは学習障害についての豊富な実践をブログで展開中です。
http://edublog.jp/nagasaki-northstars/
分身の術の使えない私は、ズバッとLiveと西風さん講演会に出席します。
メルマガでレポート、あるいは、それぞれ登壇のご本人から寄稿していただけるかもしれません。ご期待ください。
次回メルマガは、5月27日です。
自閉症のひとたちへの援助システム
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