神奈川県大和市には、こども部という、他の自治体では見かけない部門があります。こども総務課、保育家庭課、こども・青少年課の3課で構成され、子どもと保護者を取り巻く状況を向上しようと精力的に取り組まれています。
その関連で、市内のNPOが主催し、大和市が協力する形で、特別(個別)支援を必要とする子どもをケアする人を育成する「特別支援ヘルパー」養成講座が、5月21日から月に2回ペースで6回行われることになりました。座学に加え発達障がいの子どもを実際に相手にして、学んだ知識と技術を使ってみる実践編も実施される予定です。前例のない革新的な取り組みなので、可能な限りこのメルマガで紹介したいと思います。
今回は、その講座の基本的な考え方をご理解いただくために、第1回の講師と講座全体の助言監修を行う、こども部の五味純子・臨床心理士の資料をご紹介します。
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【目次】
(1)子どもを伸ばす環境・係わり方とは・・
(2)小児発達医・まなみの診察室 第2話
(3)おすすめコンテンツ「頭のいい子は3歳からの『遊び』で決まる!」
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(1)子どもを伸ばす環境・係わり方とは・・
五味・心理士の資料「生活の中に構造化をとり入れよう」の紹介です。これは大和市の自閉症療育講座テキストとして使用されているものです。自閉症だけでなく、他の発達障がいにも有効と思います。また、構造化という考え方は、相手にやってもらいたいことを正確に伝える際の技術として、役立つ技術と考えます。
1.なぜ構造化が必要か
自閉症やアスペルガー症候群を含む自閉症スペクトラムの子どもたちには、3つ組ともいわれる次の特徴があります。
(1) 社会性(対人関係)の問題、困難
(2) コミュニケーションの問題
(3) イマジネーションの問題、こだわり、臨機応変のなさ
これらから起きる困難さは「意味理解障害」つまり『目に見える具体的なもの』に強いが『目に見えないもの』の意味理解が困難という点です。
具体的にいえば、
(1) ことば(のニュアンス)
(2) 対人関係
(3) 暗黙の了解事項、場の雰囲気、ルール
などが、理解しにくいのです。
そのことでピンとこないことができなかったり(怠けや、わがままでなく)意味のわからない対人関係やことばに対し、恐怖や苦痛を感じたり、退屈に思ったりしてしまいます。
そこで『目に見える具体的なもの』に状況を変えることが、その問題を解決するカギとなるわけです。
2.めざすのは、3J(自)、それに不可欠な、3A(安)
3J(自)とは、自立、自発性、自主性です。
大切なことは、自閉症スペクトラムに限らず、ひとりでできることを増やしていくことだと思います。そのためには、3A(安)、安全、安心、安定が必要になります。
自分を取り巻く環境が安全と思えること、安心して活動できるよう人間関係が安定し、様々な情報が本人に分かりやすいことが必要になります。
そのような環境をつくるには、子どもたちが、どのように感じ、考え、理解しているのかを知っておく必要があります。
3.子どもを理解する=評価(アセスメント)
評価(理解)の方法には、2種類があります。
・フォーマルな評価・・・発達検査、知能検査など
・インフォーマルな評価・・・行動観察、状況聴取など
これらの方法で、
・何ができて、何ができないか
・何が好き、何が嫌いか
・何に関心があるか、何に関心がないか
・強いところは? 弱いところは?
を知ることが大切です。
そして、強いこと、好きなことを活かして、育てる、教える、ことを目標とします。具体的には、
○できることは、ひとりでできる環境を設定します。
△できそうなこと、手伝えばできることは、できるように教えていきます。
×できないことは、助けていきます。
そこでは、好きなこと、関心があることは、本人にとって分かりやすい。嫌いなこと、関心のないことは、本人にとって分かりにくい、と考え、どのようにしたら、本人にとって分かりやすく、簡単にできるのか、と考えます。
「分かりやすい」と安心ができ、やりたくなり、一人でできることが増え、自尊心が育つ、と好循環になる訳です。
そこで必要な技法が、構造化、です。
構造化とは、
今何をする時間か、次にどうなるか等、世の中を「その人に合わせて分かりやすく示す方法
→伝えたいことを分かりやすく伝えるためのコミュニケーション手段
→目に見えにくい意味を分かりやすく伝えるための方法のことです。
構造化はどうやったらよいのか、は次号で紹介します。
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(2)小児発達医・まなみの診察室 第2話
こどもの発達は本当におもしろいなぁと日々思います。
小児科医になって14年になりますが、自分に子どもが生まれ、実際に子育てをしてみると、子どもの発達や成長、そしてそれに関わる大人との関係というものが益々興味深く思われます。
我が子は7歳の男児と3歳の女児です。性別はもちろん、顔、性格、興味の対象、根性、得意不得意、すべてが全く違うので、同じお腹から生まれてきたのにと不思議に思う毎日です。
親が「子どもを愛する」という感情は、母性本能、父性本能というように人間の本能として組み込まれているのに、「子どもを育てる」という行動は本能に組み込まれていないと、ある本に書かれていました。「子育て行動」が人間の本能的なものになってしまうと、子どもの個性に合わせた柔軟な対応が出来なくなるためだと説明されていましたが、本当にその通りだと思います。
ある意味、親にとっての「子育て行動」は「学習」によって成り立つのかもしれません。「学習」というとピンとこないかもしれませんが、子育てをする時、一昔前ならおじいちゃん、おばあちゃん、おじさん、おばさん、あるいは近所の親戚など周りの年長者が経験論に基づいた「子育てHOW TO」を若い両親に教えてくれていました。その HOW TO の中には風習的なもの・迷信的なモノも含まれてはいましたが、確固たる経験に基づいた情報に、若い両親は安心感をもちながら「子育て」を学ぶ機会がたくさんあったのでしょう。
前回、イルカセラピーの話をしましたので・・・イルカの子育ても面白いものです。子育て中のイルカの母子は複数の雌イルカの集団の中で生活をします。その中で若い母イルカは年配の雌イルカたちから子育てを学ぶといいます。日本の水族館でもイルカが出産したあとは、年配の雌イルカと一緒の水槽に入れるという試みをする施設もあるようです。イルカの世界も古き良き日本の家族構成と同じなのですね。
現代の人間世界はといえば、核家族化が進み、若い両親が子育てを学習するツールはインターネットやマスメディアが中心になっています。あるお母さんが赤ちゃんの1ヶ月健診に病院に訪れ、医師から「何か心配なことはありますか?」と聞かれ、「うちの子のオシッコが青くないんですが、どこか悪いのでしょうか?」と質問したといいます。テレビのオムツのCMでオシッコのかわりにコップの青い水を使っているのを見て、赤ん坊のオシッコは青い色と思いこんでいたという、小児科の笑い話のようですが、これぞ現代の核家族化の問題点が浮き彫りになる話です。
マスメディアで予防接種について特集すれば、翌日の外来では、必ずその内容の是非について数人のママから医師としての意見を求められます。また、同じ年代の母親達が公園などに集まって井戸端会議をしている姿をよく見かけますが、彷徨いながら子育てに不安を抱える母親にとっては、子育て情報の共有は息抜きであり、憩いの場であるのかもしれません。
けれど、人によっては我が子と他人の子を比べて、余計に不安になったり、子どもに必要以上の期待を抱いてしまうこともあるかもしれません。「うちの子の通っているピアノ教室、とってもいいのよ」と言われ、即座に食いついて我が子も入会させてみたものの、我が子は嫌がって泣くばかり・・こんなはずじゃなかった!と嘆いたり、嘆くだけならいいけれど、子どもを怒ってしまったり・・なんていうママもいるかもしれません。
インターネットやマスメディア、あるいはママ友からの情報などなど、抱えきれない氾濫する情報とうまく付き合いながらの子育ては本当に大変なものです。
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(3)おすすめコンテンツ「頭のいい子は3歳からの『遊び』で決まる!」
メルマガ連載の本田先生の近刊です。一言でいって大変ユニークな本です。認知発達の専門家が、我が子のことになるとそれまでの知識や経験を忘れ、強力なお受験ママになってしまいます。ところが、お子さんの脳が悲鳴をあげ、その兆候で本来の小児発達医に立ち帰り、適正な成長支援に立ち帰るという、実際の体験に基づいた、教育的「遊び」の解説書です。
いわゆるお受験の準備には「遊び」としてお子様の能力を育てる活動が含まれます。さらに、子どもに必要な認知機能を伸ばすという視点で、さまざまな教材や、だるまおとしといった伝統的な遊びに目を向け、子どもが楽しみながら取り組め、効果のあるものを紹介しています。活動に取り組ませる際の留意点についても、子どもの母親としての気持ちをふまえて記載されているので、大変説得力のあるものになっています。
第1章 子どものために親ができること
第2章 子どもの能力ってなに?
第3章 我が子の認知特性を知る
第4章 6歳までに身につけたい能力
第5章 子どもの能力を伸ばす秘訣
第6章 本田家の遊びながらの勉強法
「頭のいい子は3歳からの『遊び』で決まる!」本田真美著
2011年3月発行、PHP、B6判変形、192ページ、1200円(税別)
http://www.php.co.jp/books/detail.php?isbn=978-4-569-79511-9
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余震も原発も心配ですし、現地はさらに大変でしょうけれど、元気を出して進んでいきましょう。
次回メルマガは、4月29日昭和の日です。
頭のいい子は3歳からの「遊び」で決まる!
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