障害者週間の初日12月3日に改正障害者自立支援法が成立しました。この内容をめぐっては、障がい者関連団体が賛否の2陣営に分かれ、他方、国会では民主、自民が一致して賛成するという不可思議な状況が現出しました。
この法律の主な点について、厚生労働省がPDFで公開しています。
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/soumu/houritu/dl/171u.pdf
論点は、元々の障害者自立支援法が憲法違反であるとの訴訟で、国と障がい者団体が本年1月7日に同意書を交わし、その内容が今回の新法で満たされていないという点です。発達障がいが支援の対象に追加されたことには異論はないようですが、応能負担という新しい仕組みに反対の意見が多いようです。
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【目次】
(1)齊藤万比古講演:発達障害は二次障害を含めて対応を・2
(2)mayaさんの「スクールカウンセラー奮闘記」10
(3)おすすめコンテンツ「レインマン」
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(1)齊藤万比古講演:発達障害は二次障害を含めて対応を・2
前回に続き、齊藤万比古(かずひこ)先生の講演レポートです。この講演は本年5月16日に東京都文京区立本駒込交流館で、東京コーディネーター研究会主催で行われました。
齋藤先生は、厚生労働省のひきこもり対策委員会の委員です。発達障害の特性から、ひきこもりになりやすいことを指摘されています。そのユニークな点は不登校をひきこもりの一部として捉えるべきとされる点です。実際に不登校児を調査し、アスペやADHD、自閉症が数多く含まれていることを、データで把握されています。
現在、20歳以上の成人で26万人がひきこもり状態にあるそうです。また、生涯に一度でもひきこもり経験がある人は1.2%とのことです。子どもに関していえば、2006年時点で、ひきこもり状態にある子どものいる世帯は0.5%です。
齊藤先生のひきこもりに関する根拠と考え方は、下記の通りです。
http://bit.ly/c9C5pb (350KBのPDF)
そして、齊藤先生が中心になってまとめられた厚生労働省の「ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン」は、下記で全文をみることができます。
厚生労働省 http://bit.ly/dfOZhq
ひきこもりと、もっとも関係が深い発達障がいがアスペルガー症候群です。アスぺは一人でいることを好みます。ひきこもりはそれを満喫できる訳で、その状況をアスペにいったん始めさせてしまうと、止めさせるのは難しいと齊藤先生はいいます。その場合「社会と接することは楽しい」ということに気付かようとするアプローチは、アスぺにとって逆効果です。社会的な関係を持つことが嫌いなのはアスぺの性質ですから、それを変えようとするのは難しい訳です。
それに対処する齊藤先生の具体的なアイデアは「これだけやったら、一人で好きなことを10分させてあげる、というように、一人でいられる時間をご褒美として、アスぺに社会と接する機会に慣れさせていく」というものです。
つまり、アスペルガーに社会と接することを好きにさせるのではなく、その必要性を感じさせ、慣れさせていく、という方法です。この考え方は家庭でも学校でも応用でき、齊藤先生は実際にこの方略を使って、過去に成功されてきたとのことです。
最後に、感銘を受けた齊藤先生のまとめのことばを紹介させていただきます。
発達障害の治療ゴールは、症状が完全になくなることではありません。治療・支援により不適応状態が好転し、発達障害の特性を「自分らしさ」として折り合えるようになること、そのような情緒状態が優勢な時間が持続する中で「これが本当の自分」という肯定的な自己像を獲得することです。
この講演の内容が書籍として出版されています。「幼児期・学童期における二次障害へのケア」「家庭でできる二次障害への対応」「少年非行と二次障害」といった章が設けられています。書店あるいは図書館でご参照ください。
「発達障害が引き起こす二次障害へのケアとサポート」
http://bit.ly/emqFHR
齊藤万比古編著、2009年9月発行、学研、A5版、208ページ、1900円(税別)
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(2)mayaさんの「スクールカウンセラー奮闘記」10
<これまでのあらすじ>
小学校1年からずっと教室に入れず、休み休みながら保健室への登校を続けてきたA子。中学校に入学し、なんとか教室登校からスタートしましたが、2学期からは教室に入ることが難しくなり、校内の別室「ふれあい教室」から少しずつ授業への参加を始めました。1年3学期が終了する頃には、午前中の授業に、すべて参加できる程度の持久力がついてきました。2年生になり少しずつ自分と向き合い始め、進路を考えるようになりました。3年4月、進路候補の学校を選択するための取り組みを進めていく様子を紹介してゆきます。
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3年の1学期、A子の進路決定について話すようになりました。スクールカウンセラー(SC)は、A子の進路選択を手助けしながら進路決定を促すことをめざしていました。
SCは「進路として選べそうな学校が、いくつかあることを聞いた?」とA子に問いかけました。A子はうつむきながら小さくうなずきます。引き続きSCは話し続けます。「まず地元の全日制公立高校、隣町の定時制公立高校、通信制公立高校、私立高校、専門学校、通信高校のサポート校とあります」と1つずつ学校の特徴を説明していきます。うつむきながら聞いていたA子がこちらを向き直して「地元の全日制公立高校は、クラスメイトといっしょになるからイヤ!」と話し、「できれば小人数の教室が入り易い」と具体的な語りが出始めました。
すぐ母親と面接し、A子の進路についての希望内容を伝えます。条件を満たしている専門学校で通信制高校のサポート校を兼ねている学校を紹介し、具体的な入学手続きや諸費用の状況を示すパンフレット資料を手渡します。父親とも相談し、経済的にも入学可能かを確認して、A子の進路として提示してよいかを検討してもらいます。そして、5月連休前に、OKとの結論がでました。
A子のように発達障害を抱える状況で教室に入れなくなった場合には、その進路を検討する時に、本人自身がクラスメイトに対して、どのような意識を抱いているのかを確認しておくことは重要なポイントとなります。さらに、本人自身のイメージとして、“これならできそう”と思える教室の様子を話し合い、状況を確認するとともに、“これならできそう”という気持ちを育むアプローチが大切です。
A子のめざす学校が決定しました。しかしこれから具体的にオープンスクールなどに参加すること、本当に通学できる場所なのかをA子自身が確認し、安心感を持ち、新たな進路に納得していくという大きな作業が残されています。やっと教室に、午前中だけ入ることのできるようになったA子にとっては、新たな学校への出発は、高いハードルであることに間違いありません。
次回は、A子が専門学校をめざすため、まずはオープンスクールに参加する取り組みを進めていく様子を紹介します。
(文責:maya)
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(3)おすすめコンテンツ「レインマン」
1988年にアメリカで公開され、アカデミー賞作品賞に輝いた映画です。ウィキペディアで知ったのですが、ダスティン・ホフマン演じる主人公、レイモンドにはモデルがあり、サヴァン症候群のキム・ピークさんだそうです。
Wikipedia レインマン http://bit.ly/Tlcc6
同 キム・ピーク http://bit.ly/12PcTA
チャーリー(トム・クルーズ)はスーパーカーのブローカー。中古車の再販の検査が難航し、買付の借入金の返済の窮地に立っていた。そこに資産家の父の死去の連絡が入るが、ただ一人のはずの自分には中古のスーパーカーだけが残され、300万ドルは信託銀行に預けられ、自分以外の人間のために使われることを知る。苦心して調べると、それは自分が3歳の時に施設に預けられた、自閉症の兄レイモンドだった。
チャーリーは、レイモンドを施設からLAの自宅に連れ帰り、財産分与の請求をしようとする。ところが、レイモンドは驚異的な記憶力から、各飛行機会社の死亡事故数を主張し、飛行機に乗らない。そこでやむなく、車で移動しようとすると、今度は高速道路での死亡事故数を主張する。そこで、シンシナティからオクラホマ、ラスベガス、ロスアンジェルスと、アメリカを横断する二人の旅が繰り広げられることになる。
このロケ地を紹介するWebページ(あるトム・クルーズファンのブログ)ではこの映画で登場する建物や風景の写真が集められており、映画を見ていない人にも興味深いのでは?
http://bit.ly/ffVwU5
映画の中でのレイモンドの行動は、自閉症や発達障がいの人に共通するパターンをかなり忠実に表現しているように感じます。また、レイモンドの行動を、最初は反発しながらも、だんだんと受け入れ、最後には兄弟としての愛情を示すようになるチャーリーの様子は、とても感動的です。
私は、ツタヤでDVDを借りたのですが、旧作ということで1週間100円のレンタル料でした。まだ、ご覧になられていない方、久しぶりに見たいという方は近くのレンタルビデオ店に立ち寄られてはいかがでしょうか?
レインマン 原題 Rain Man 1988年 アメリカ映画
監督:バリー・レヴィンソン監督 原作:バリー・モロー
私が調べた中で推薦できる映画レビュー・ページ http://bit.ly/giJIrS
蛇足です。トム・クルーズは自分が学習障害(LD)だったことを2003年の講演で公表しました。その際に、読んで学ぶことができない障がいを「勉強の技術:Study Technology」を身につけることで解決したといっています。勉強の技術について、まだ十分に理解していませんので今後の課題です。
トム・クルーズの講演 http://www.dnj.jp/learning/
勉強の技術 http://www.dnj.jp/study/
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今年45回目となるNHK障害福祉賞の受賞者を取り上げるテレビ番組が今週、2日連続で放映されました。統合失調症の人たちがラジオ番組を中核としてつながり、社会復帰を実現する話題。2日目は、発達障害の子どもがピアノに関心をもったことをヒントに、独自の工夫をして発達成長を実現した話題です。
この2回の番組に、筆者は感銘を受けました。来週12月20日と21日、NHK教育テレビで、どちらも正午から30分の再放送が行われます。ぜひ、ビデオに録画するなどしてご覧いただければと思います。
7月14日の創刊準備号から始めたレデックス通信も今号で11号となりました。
後2週間で2010年も終わりです。これまでのご愛読ありがとうございました。
次号は、年末年始を挟んだ2011年1月7日(金)の予定です。
読者の皆様にはよい年をお迎えになられますよう、謹んで祈念申し上げます。
レインマン
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