本日12月3日から9日まで障害者週間です。「心の輪を広げる体験作文」の最優秀賞の表彰や「障害者週間のポスター」原画展など多彩な行事が行われます。特に、6日~8日は、連続講演として、発達障がいや身体障がい、視覚・聴覚障がい等に関する催しが、東京・港区で行われます。お時間の許す方は明治学院大学白金アートホールに足を運ばれてはいかがでしょうか?
内閣府「障害者週間」行事
http://www8.cao.go.jp/shougai/kou-kei/h22shukan/index.html#10
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【目次】
(1)齊藤万比古講演:発達障害は二次障害を含めて対応を・1
(2)mayaさんの「スクールカウンセラー奮闘記」9
(3)おすすめコンテンツ「ギフト」
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(1)齊藤万比古講演:発達障害は二次障害を含めて対応を・1
以前、twitterで書き、多数リツィートしていただいた齊藤万比古(かずひこ)先生の講演報告を、2回に分けて紹介させていただきます。齊藤先生は国立国際医療研究センター国府台病院の医師で、ADHDを中心に発達障害児・者の治療や社会復帰支援で活躍されています。講演の中心テーマは「発達障害は二次障害を含めて、対応を考える」という点です。
ADHDや広汎性発達障害(自閉症スペクトラム)など、それぞれの発達障害には固有の症状があります。それらを一次障害と位置付けます。それぞれの一次障害は、アメリカ精神医学会が多数の発達障害のデータを統計して、いくつかの類型に分類したもので、例えば、ADHDなら、不注意というグループで保有するとされる症状9項目と、多動性・衝動性グループの症状9項目で、定義されています。
この分類は、DSM(ディーエスエム)と呼ばれます。第4版改訂版(DSM-4TR)が現在、主に使われています。第5版(DSM-5)も今年、公開されました。
#DSMは、Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders の略。
一次障害は、症状を類型として定義するためのもので、多くの発達障害者はそれぞれの一次障害が社会との関係で引き起こされる二次障害を伴います。そして、発達障害者をケアする際には、二次障害も含めてサポートする必要がある、というのが齋藤先生の考えです。
ADHDでは二次障害、つまり一次障害との関係で発生する併存障害には、1)行動障害:50%が保有、2)情緒的障害:同25%、3)神経性習癖:同30%、4)発達障害:同30%、という調査結果があります。
行動障害は、反抗的な態度や暴力を行う行為障害を引き起こします。
情緒的障害は、うつや母親との分離不安など強迫性障害を引き起こします。
神経性習癖は、チックとか夜尿などを引き起こします。
発達障害は、LDや自閉症的な症状を引き起こします。
ADHD児・者一人ひとりが様々な症状を持つ訳ですが、ほとんどの人が、注意と多動に加えて、前述の4つのタイプの二次障害を持っていることになります。ですから、そういった症状を持っていることを念頭にして、一人ひとりへの対応方法を考える必要があるのです。
これら二次障害は、時間的経過を考慮する必要があります。もちろん、すべて同じように進行する訳ではありませんが、どのような進行が想定されるのか、また、それぞれの段階でどのような対処をするべきかを知っておくことは重要です。
ADHDの場合、1)反社会性という方向への進行を想定することが必要です。
次に、2)反抗挑戦性障害、3)行為障害、4)反社会性人格障害、と進行する可能性があります。
例えば、小学低~中学年では、多動に対して、周りがいつも否定的な態度を取ることを嫌悪するようになります。中~高学年になると、それらの否定的な態度に対し、反抗的な態度を取ることが出てくるようになります。齋藤先生は、この段階での粗暴な行動に対して、親や学校が協力して、止めるように工夫して活動する必要があるとのことです。そこで押さえることができないと、そういった行動がだんだんと習慣化し、行為障害という状況に入ってしまいます。いわゆる非行少年には、ADHDへの対処がうまくいかずになっている場合が含まれているとのことです。
行為障害の段階になってしまうと、家庭や学校での対応は難しくなり、自立支援施設や対応少年院などの「境」を設けた対応が必要になってしまうとのことです。矯正施設に入り、強制的に粗暴な行動を制限される時に、「押さえてくれる人がほしかった」と涙を流して吐露し、社会復帰につながるケースもたくさんあるとのことです。
ADHDにはもう一つ、外に向かうのでなく、内在化した二次障害を引き起こす場合があります。次に、2)受動攻撃的反抗、3)不安障害・気分障害、そして、4)人格障害へと至る場合です。
受動攻撃的反抗は、自己主張しない、言われたことに反応しない、という形の反抗です。これが不登校や引きこもりという形態をとる場合もあります。
齋藤先生によれば、発達障害の現在の状態を理解することと、過去がどのような経過で今後どのような経過をたどる可能性があるか、の両方を考慮しながら、サポートの方法を考える必要があるとのことです。
その際、発達障害に似た、神経心理的な疾患も多々あり、その場合は精神科的な対処ではなく、神経心理的な対処をしなければならないケースもあるとのこと。ですから一度は、認知機能関連の判断ができる小児科医への受診が必要とのことです。
(次号に続く)
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(2)mayaさんの「スクールカウンセラー奮闘記」9
<これまでのあらすじ>
小学校1年からずっと教室に入れず、休み休みながら保健室への登校を続けてきたA子。中学校に入学し、なんとか教室登校からスタートしましたが、2学期からは教室に入ることが難しくなり、校内の別室「ふれあい教室」から少しずつ授業への参加を始めました。1年3学期が終了する頃には、午前中の授業に、すべて参加できる程度の持久力がついてきました。2年生になり少しずつ自分と向き合い始め、進路について取り組みが始まりました。
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2年の3学期、A子と進路について話すようになりました。スクールカウンセラー(SC)は、A子の進路として、どのような学校が適しているのかを探ることが課題となっていました。
SC:「クラスメイトといっしょの学校は嫌なの?」
A子はうつむきながら小さな声で答えた。
A子:「いっしょの学校に行きたくない」
SC:「じゃあ、地元の○○高校は行きたくないの?」」
窓の外に視線を向けながら話し続けた。
A子:「別のところがいい」
SC:「クラスの人数は希望がある?」
A子:「今のクラスよりずっと少ない方がいい」
SC:「少人数がいいわけ?」」
A子:「うん。その方がいい」
SC:「お母さんにも相談しないといけないね?自分から言える?」
A子は顔をこちらに向けた。
A子:「はい、話してみます」
SC:「ケンカにならないように、落ち着いて説明できる?」
A子:「大丈夫です、ケンカはしません」
SC:「どんな話になったか、報告してね」
A子:「はい」
A子は話が終わると、深々と頭を下げて礼をして部屋を後にしました。その後の話では母親と話をした際に、やはりケンカになったようです。しかし今回は、A子のメッセージは母親に伝わり、母親とSCとの面接の時間を組むことになりました。
SCは母親にA子が考えていることを伝えました。近隣の進路として選択できる学校を紹介し、いっしょに進路を検討することを面接の中で進めることになりました。そして、数回の面接の後に、近くの専門学校で通信制高校のサポート校でもある学校を進路候補とすることを確認しました。この学校は1学年でも10名以下の少人数で、長年に渡って発達障害を抱える生徒の指導にも関わってきた実績がある学校でした。母親は、A子が進学すると言いだしたことに驚いていました。また、進学する気になったことを喜んでくれました。
A子のように発達障害を抱えて学校の教室に入りにくくなる生徒の大半は、長期の不登校となることが多く、その不登校対応や進路選択への支援がSCの重要な役割となっています。
次回は、A子が進路候補の学校を選択するために、取り組みを進めていく様子を紹介してゆきます。
(文責:maya)
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(3)おすすめコンテンツ「ギフト」
今月は、久しぶりに子ども向けの本を紹介させていただきます。指輪物語やナルニア国ものがたりと並んで世界中の人々に愛されるファンタジーの名作ゲド戦記。その作者、ル=グウィンが38年ぶりに書いた子ども向けの作品が、西のはての年代記シリーズ3部作です。
どの巻とも、生まれつきあるいは幼少の時のできごとがきっかけで、特別の才能あるいは障害をもつ子どもたちが主人公です。それら特別に天から授かった能力「ギフト」があることで、他の人とは違った人生を歩むことになります。
第1巻「ギフト」の主人公、オレックは、見たものを破壊する力を持って生まれます。その力を制御できるまでは目隠しをしていきようと自ら判断します。視覚のない生活の中で、家族や友だち、特に別の種類のギフトをもつ人との交流の中で様々なことを考え、体験し、成長していきます。
ギフト:西のはての年代記1
アーシュラ・K・ル=グウィン 谷垣暁美訳 河出書房新社
http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309204642
2006年6月発行 4/6版、308ページ 定価1600円(税別)
続編に、ヴォイス:西のはての年代記2、パワー:同3
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今週末は、長野県松本市の「ながの こども療育用具・福祉機器展」です。
みんなの天気予報 http://tenki.lbw.jp/ で調べると、5日(日)の予想最低気温は1度とのこと。久しぶりの信州で、一足先に冬を感じてきます。
では、次号、12月17日(金)まで、皆様も風邪をひかれませんように。
発達障害は二次障害を含めて対応を
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2010.12.03
発達障害は二次障害を含めて対応を
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