11月18日、埼玉県大宮ソニックシティさいたまで開かれた第34回日本高次脳機能障害学会学術総会に参加しました。1階の大ホールの他、6会場でシンポジウム、口演、ポスター発表など250を超える発表が2日間で行われます。
まだ初日の参加だけですが、患者を実際に相手にして、ビデオ撮影による症状の観察や、各種の認知テストと脳の測定、さらには同意を得て、亡くなった方の脳細胞の観察までも行われます。これら貴重な情報を活用しての研究調査ですから、様々な病理について毎回の学会発表ごとに知見が進んでいきます。
この学会には残念ながら、発達障がいや知的障がい、あるいは学習や教育の研究者の参加が少ないようです。この学会の可能性に気づいた人間の一人として、微力ながら、子どもたちの認知機能の改善の研究開発に役立てていきたいと思います。
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【目次】
(1)認知障がいの子どもの親の会・5
(2)mayaさんの「スクールカウンセラー奮闘記」8
(3)おすすめコンテンツ「リハビリテーション入門」
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(1)認知障がいの子どもの親の会・5
今回はこのシリーズの最後として、高次脳機能障害の会をご紹介します。
●日本脳外傷友の会
交通事故や病気などで脳に障害を受け、後遺症としての高次脳機能障害をもった当事者及び家族を会員とするNPO法人です。いろいろな障害についての正しい知識の普及、当事者の社会復帰、社会参加の促進、関係者の権利の擁護などを中心に、精力的に活動を行っています。
http://npo-jtbia.sakura.ne.jp/
全国に48の正会員団体及び準会員団体を擁しています。当事者の家族としてこの会を2000年に立ち上げられた、理事長の東川悦子さんが中心になり、各地の会員団体と協力しながら、多数の講演会や当事者、家族の交流会などを企画運営されています。
子どもの高次脳機能障害は、発達障害以上にその存在が知られていません。子どもたちはよく転びます。遊んでいて落下することもよくあります。頭部への振動は、外見からは分かりませんが、思った以上に深刻なダメージを与えている場合があります。また、その時は変化がなくても、しかるべき年齢になって、必要となる認知機能がうまく使えないことが分かる場合もあります。脳の機能ごとの発達の程度が異なる、という点は発達障害と似ていますが、例えば、かっとなる、という行動をとっても、その程度が発達障害と高次脳機能障害ではかなり異なるようです。
実は、筆者がこういったことを知ったのも、同会が先月開催した「父母と教師のための後天性脳損傷児童・生徒の理解講座」に出席したからです。同じ内容の講座(無料)が、11月27日に茅ヶ崎市民文化会館で開かれます。講師は、神奈川リハビリテーション病院小児科部長の栗原まな先生です。関心のある方は、下記ページを参照して、問い合わせてみてください。
茅ヶ崎の小児高次脳機能障害講座 http://bit.ly/dt6yqG
同会は、さらに大規模なイベントを来年2月11日に横浜で企画しています。実は2年前に、同会主催でやはり横浜で、子どもの高次脳機能障害に関するイベントが行われており、その資料を見つけました。なんとパネリストの欄には本メルマガの執筆者、mayaさんの名前が!!
後天性脳損傷の子どもを支援するシンポジウム http://bit.ly/asHLaC
これら高次脳機能障害に関する最新情報は、理事長の東川さんが直接、執筆されているメール「JTBIAメールつうしん」で知ることができます。この申込方法は公開されていないようで、同会の講演会などに出席して、アンケートにその旨書くと、送っていただけるようです。もし、申し込みたい方がいらっしゃれば、筆者に連絡いただければ、東川さんにつなげるようにします。
この前の講演会で、東川さんが出席の当事者家族の方に「ぜったいに一人だけでは支えきれない。近くの、脳外傷友の会の人にぜひ、相談してほしい。お互い、支え合って、生きていきましょう」と呼びかけられた言葉が、今も印象に残っています。
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(2)mayaさんの「スクールカウンセラー奮闘記」8
<これまでのあらすじ>
小学校1年からずっと教室に入れず、休み休みながら保健室への登校を続けてきたA子。中学校に入学し、なんとか教室登校からスタートしましたが、2学期からは教室に入ることが難しくなり、SCと話し合って、校内の別室「ふれあい教室」から少しずつ授業への参加を始めました。1年3学期が終了する頃には、午前中の授業に、すべて参加できる程度の持久力がついてきました。2年生の後半に、A子の「自分はダメな人間」なんだという頑固な信念を少しずつ修正しようと取り組んだ様子を紹介していきます。
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3年生の先輩に受験が迫る2学期の11月「ふれあい教室」の掲示板には、「公立高校の志望校は、11月末の三者懇談会で最終決定!」と三者懇談会のプリントが貼り出されている。3年生達は「ああ、ここにずっと居れたらいいのに」「何も気にせずに話せる場所がなくなる」と別れを惜しんでくれる言葉が漏れていた。しかし3年生であれば、不登校であろうがなかろうが卒業後の進路を決定しなければならない。この場所に留まることは許されない。そう、まさに有無を言わさずに押し出される。その準備を迫られている。
A子にとって3年生の受験に臨む姿は強烈な体験刺激となったでしょう。A子は、将来のことを口頭で説明してもあまり理解してくれませんが、3年生の姿を見て感じることはできました。これがモデリングという手法です。取り入れて欲しい適応行動を他者の行動を観察することで学ぶ方法です。やかましく言って指導する手法より、発達障害を抱える子どもには効果的な手法であると思います。アスペルガー症候群の子どもでも自己認識の能力がある程度確保されている場合に適用できます。
それぞれの3年生が自分なりに進路と向き合う姿をみているA子。そんなA子が面接の中で再度、「私でも行ける学校はあるん?」と話しだしました。いつもは少し視線をそらしながら話すA子が、今じっと私の顔を見上げながら話しかけてきたのです。
SC:「A子は、いけそうな学校がないと思っているの?」
A子:「成績が悪いと学校に入れないんでしょ」
SC:「自分の成績が悪いと思っている」
A子:「通知表、1と2だから・・・」
SC:「そうねぇ、通知表は1と2ですね。試験の点はどうだった?」
A子:「あまりいい点はとれてないよ」
SC:「誰かと比べたの?」
A子:「比べる人がいないから」
SC:「学年の平均点とか知らない?」
A子:「知らない」
SC:「それなら平均点を聞きに行こう!」
A子:「えッ、・・・」
前回の中間試験の平均点を聞きに昼休みの職員室に出向きました。しかし、A子は職員室のドアの前で急に、こちらを振り向いて立ち止り「なんて言うん?」と聞いてきました。おぉ、あらかじめ話す内容を確認してきた!よしと私は呟いていました。主要5科目の結果は、各科目とも平均よりA子の成績の方が10点から20点程高い得点を取っていました。目を丸くして大きな瞳を見開いたままのA子は、きょとんとして聞いていました。担任からは「試験の成績は少しずつ上がってきたから、続けて頑張りなさいね」と声をかけてもらいました。職員室をを出る時に、「失礼しました」というA子の声は、いつもより少し大きく響いてきました。
「自分はダメな人間」なんだという頑固な信念に対しては、A子自身が理解し納得する具体的な基準(ここでは試験の点数)により、比較検討する体験的刺激を与えました。答えを伝えるのではなく、客観的情報を提示して本人が考える場(機会)を与えることを大切にした取り組み手法です。ここでのポイントは、この手法を実施するタイミングです。A子の方から何かしら気にかけるアクションがあった時を捉えて実施しました。
A子:「私の成績でも大丈夫?」
SC:「大丈夫!色々と学校があるから、自分に合った学校を選べるよ」
A子:「授業にでてない私を入れてくれる?」
SC:「学校には登校しているから、そんなに心配しなくても大丈夫。公立高校の偏差値の低めの高校から公立高校の定時制高校、私立高校、専門学校、通信制高校のサポート校と色々あるよ」
A子:「私でもいける?」
SC:「いける! 受験がある所、手続きだけで入れる所と色々ある。通う元気があればいけるよ」
A子:「そうなんだ」
SC:「そういうこと」
A子:「・・・」
A子はずっと黙っていましたが、しばらくして「ありがとう!」といって立ち上がり、面接を終了しました。
面接でこれまでの自分への思い込み(信念)が一度に変わることはありませんが、少しずつ繰り返し確認していきながら認知の修正が進んでいきます。その結果が行動変容という形で現れてくることをめざしていきます。
次回は、A子が進路について向き合い、母親といっしょに自分に合った学校を探そうと取り組む様子を紹介してゆきます。
(文責:maya)
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(3)おすすめコンテンツ「リハビリテーション入門」
こども脳機能バランサーの生みの親、橋本圭司医師による、小児に関わるリハビリテーションの本です。橋本先生は、元々は大人のリハビリテーション医でしたが、抜擢され、今年始めから国立成育医療研究センターで小児を担当されるようになりました。子どもと大人のリハを両方経験して、改めて考えた「リハビリテーションとは何のために行うものか?」というテーマについて、いろいろな角度から書いています。
目からウロコということが多いのですが、その中でも感銘を受けたことは、次の2点です。
1.できるだけ早く学校や社会に復帰させる
病院で行えるリハは多くて週に1日、成育のような大病院だと月に1回という場合もあります。その時間だけではどうしても不十分であり、日ごろの生活の中でリハを行う、という意識を持たせる必要があります。さらに、環境が整えられたところで活動ができても、実際の生活の場で活動できるようになるまでにはさらに努力が必要です。それらの問題を解決させるには、一定の状況が整い次第、できるだけ早くに、学校や社会に復帰させることが大切というのが橋本先生の到達した結論です。
2.今、できることは何か
一通りのリハビリを終えて、何もやろうとしない元競輪選手に「何か今日からできることを1つ決めよう」「じゃあ、自転車なら触ってもいいな」そこから奇跡のストーリーが始まりました。最初は、毎日、単に触っているだけだったのですが、家の中でまたがり、ローラーの上で車輪を漕いだり、その内近所を少しだけ走ってみたり。その結果が、パラリンピックの代表選手になって、北京大会で金・銀・銅の3つのメダルを取るまでになりました。できないことにではなく、できることに目を向けて、着実に実行に移すことがリハビリに限らず、成功の秘訣です。
その他、第5章「毎日できるリハビリテーション」で述べられている「赤ちゃんへのタッチ」「子どものマッサージとストレッチ」「深呼吸」など、とても具体的で参考になる方法が紹介されています。
PHP新書:「リハビリテーション入門 - 失われた機能をいかに補うか」
著者:橋本圭司(国立成育医療研究センター・リハビリテーション科医長)
http://www.php.co.jp/books/detail.php?isbn=978-4-569-79308-5
2010年9月発行 新書版、202ページ 定価700円(税別)
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12月5日(日)、長野県松本市で開かれる「ながの こども療育用具・福祉機器展」に参加します。場所はサイトウ・キネン・オーケストラの会場として有名な長野県松本文化会館です。会場には、車椅子・座位保持装置・補装具をはじめ、知育教材、コミュニケーション機器などが展示されます。子ども用のものに限定なので、スペースもゆったりとして、納得できるまで試用が可能です。日本最古の天守閣の松本城を眺めながら、ぜひご来訪ください。
名称:第8回ながのこども療育用具・福祉機器展 ハートフルフェスタ
主催:社団法人長野県理学療法士会
日程:2010年12月5日(日)10:00-16:00
場所:長野県松本文化会館中ホール(松本市水汲69-2)
URL :同会館 http://www.valley.ne.jp/~matsubun/index.html
次のメルマガは、12月3日(金)です。
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