10月31日山梨県立盲学校の体育館で小児福祉機器展in山梨が開かれました。たくさんの当事者と家族の方々(発表では350名)が来訪され、展示されたいろいろな機器を試されていました。当社のブースには、据え置き式2種類とノート1種類のタッチパネルで、こども脳機能バランサーを使ってもらいました。
地元の療育センターや病院の専門士の方が、何人も当社ブースに子どもたちを連れてきていただいた御蔭でうっかりすると取り合いになるほどの盛況でした。パッケージソフトとタッチも何セットか、その場でご注文いただきました。この場をお借りして厚く御礼申し上げます。
====================================================================
【目次】
(1)認知障がいの子どもの親の会・4
(2)mayaさんの「スクールカウンセラー奮闘記」7
(3)おすすめコンテンツ「子どもたちの高次脳機能障害-理解と対応」
====================================================================
(1)認知障がいの子どもの親の会・4
今回は言語障害とダウン症の会を紹介します。
●全国ことばを育む親の会
Webページによれば、前身の「全国言語障害児をもつ親の会」の設立が40年前と、大変に歴史のある親の会です。ことばがつっかえる子どもを心配する親に加えて、耳の不自由な子ども、発音が不明瞭な子ども、ことばの発達が遅い子どもの親たちが結束して、全国に35の事務局を持つまでになっています。
親の会HP
http://www.npokotoba.jp/index.html
事務局一覧
http://www.npokotoba.jp/5kaiannai/tiku-jimukyoku.html
会報「ことば」を、当事者や親、ことばの教室の先生や幼稚園・保育園の先生向けに年間6回発行しています。(年間購読料1,000円)
http://www.npokotoba.jp/6jigyouannai/annai-kikanshi.html
また、療育指導用パンフレットも35種類発行しています。「ことばを育てるやりとり遊び」「発達の遅れた子どものことばと生活の指導」など、それぞれの概要がPDFで見られるようになっています。
http://www.npokotoba.jp/6jigyouannai/library/ichiran.html
ことばについての悩みや不安にメールで答える、ことばの相談室があり、最寄りの相談機関などの紹介が受けられるようです。
http://www.npokotoba.jp/2soudan/soudanannai.html
イベントについては、ちょうど掲載が少ない時期のようですが、ことばの相談会、療育キャンプ、全国大会など様々な催しが企画されているようです。
●日本ダウン症協会
日本ダウン症協会は、全国に53の支部と5,700名の会員をもつ財団法人です。
http://event.ds-news.jp/htdocs/
支部情報
http://www.jdss.or.jp/jds/shibuichiran22-6.htm
ダウン症は、染色体が1つ多いことで起きる、知的発達の遅れや心疾患などの症候群です。同協会のWebページによれば、どの国でも1000人に1人くらい発生しているとのことです。
同協会は全国大会、成人期セミナー、巡回セミナーなどを実施しています。また、トップページの「最新情報!」ページには盛りだくさんの情報がアップされており、一見の価値があります。
もうひとつの特徴は、先輩のお母さんたちが電話やメールでの相談に対応している点です。トップページの「ご相談」ページにその方法が記載されていますからご参照ください。
同協会とは直接の関係はないようですが、充実した活動を行っている埼玉県ダウン症親の会ネットワークもご紹介します。
http://homepage3.nifty.com/saitama_dn/
「未就学児と母親のためのワークショップ」「学童のためのドラマ・シブショップ」「中高校生プロジェクト・アドベンチャー・シブショップ」など、ダウン症の当事者や家族のために、ユニークな活動を行っています。
====================================================================
(2)mayaさんの「スクールカウンセラー奮闘記」7
<これまでのあらすじ>
小学校1年からずっと教室に入れず、休み休みながら保健室への登校を続けてきたA子。中学校に入学し、なんとか教室登校からスタートしましたが、2学期からは教室に入ることが難しくなり、SCと話し合って、校内の別室「ふれあい教室」から少しずつ授業への参加を始めました。小学校時代に同じように1年生からずっと保健室への登校を断続的に6年生まで続けていた友人が、「ふれあい教室」に登校してくることになりました。A子にとってこれは事件です。
----------------------------------
「ふれあい教室」は、教室に登校することが難しくなった生徒を対象に登校を促し、再び教室に戻る取り組みを支援するための教室です。非常勤指導員(教員ではなく資格なし)が半日程度の時間で配置されており、登校してきた生徒を見守ってくれています。SCの勤務日には、SCがふれあい教室に入り、みんなと話したり、必要に応じて個別の面接を実施しています。
この頃のふれあい教室は、中3の男子が2名とA子の3名。中3男子2名は受験に備えて、1年~3年の復習のためのプリント学習や面接応答に備えて作文などに取り組んでいました。A子も「ふれあい教室」にいる時は、自分のできそうなレベルのプリントに取り組んでいました。
2年生の4月、A子にとって唯一の友人とも言えるB子が、ふれあい教室に登校してくる日となりました。A子は数日前から、やっと女の子同志の会話ができると喜んでいました。
B子は少し遅れて登校してきました。初日のB子は、ほとんど声を出さず、うなずいたり首を振ったりして応答しながら、みんなと同じように健康観察を受けてから、小学校の復習レベルのプリントに取り組んでいました。しかし2日目の朝、B子の母親から「何故プリントなどをやらせるのか!」「もっと生徒同士のおしゃべりの時間を持たせて欲しい!」と抗議とお叱りの電話が入りました。その日、B子はお休みでした。
B子は、中3の男子が受験に備えて勉強に取り組むムードにびっくりしたのかも知れません。B子には、無理をせずに自分ができそうな課題を選ぶように説明していたそうです。しかし、B子はA子と同じ課題プリントをいつも選び、分からないためになかなか進みません。B子のプライドが、そうさせているのかも知れません。
自分に合った課題を選択することは、たいへん重要なことです。自分にできそうな課題を選ぶことは、課題に取り組む意欲を育み、達成感を味合う体験的刺激を積むことが可能となります。このことが再度、課題へ取り組む意欲へとつながります。逆に選択した課題が不適切であれば、課題への取り組みの意欲を減退し、空しい時間の体験的刺激は課題取り組みへの拒否的反応を助長することになります。
A子に小学校の頃の様子を聞くと、その頃はA子がB子に分からない所を教えてもらっていたとのこと。中学に入って1年余りで、その関係が逆転してしまったようです。B子と母親の要望にも応えるように学習課題以外に女子に手芸や料理なども取り入れてみましたが、結果は同じでした。A子は分からないことを周囲に聞きながら取り組みを進めることができています。B子はA子が先に進むと取り組みを止めてしまうのでした。A子はB子の機嫌を損ねないように気を配りながら付き合っていました。
A子はB子に対して気を配りながら接するという行動を示しました。これは周りの人の行動や感情を意識しながら自分の行動を調整する、高次の脳機能としての自己認識に基づいた行動が現れてきた可能性が示されました。相手がB子だから現れたのかも知れません。それでも、行動することができたことに変わりありません。
B子と保護者に対してもSCとの面接を誘ってみましたが、予約が入ることはありませんでした。こんな状況が3週間が過ぎる頃、休みながらも継続していたB子の登校は止まりました。SCとしてB子、保護者との信頼関係が築けなかったことに反省するばかりです。
A子はこれまで休むことなく登校していましたが、このB子が登校していた期間は、週に1~2回休みながら何とか登校していました。A子にとっても負荷が大きかったのだと思います。A子はB子のために精一杯頑張りました。できるだけのことはしてあげていたと、面接の中でA子に話しました。この後も、B子の誕生日などに行事参加の誘いの手紙を何度か送りました。
その後のA子は、3年生の受験という緊張した雰囲気に触れ、少し進路について意識するようになってきました。「私でも行ける学校はあるん?」と面接で聞かれ、「大丈夫!色々と学校があるから、自分に合った学校を選べるんよ!」と答えました。A子は、授業に出ていないので評価は1と2でしたが、3年生といっしょに真面目に課題プリントで学習していましたので、テストだけなら得点はそこそこは取れていました。
次回は、A子が小学校時代から「自分はダメな人間なんだ」という思いが強く、なかなか進路について向き合えない状況から、自分にあった学校を探そうとする様子を紹介してゆきます。
(文責:maya)
====================================================================
(3)おすすめコンテンツ「子どもたちの高次脳機能障害」」
筆者のこれまでの読書の範囲では偏りが心配で、今回はmayaさんのお勧め本を取り上げさせていただきます。
この本は、カナダのオンタリオ脳損傷協会がブロック大学との3年間に及ぶ研究開発の成果をまとめたものです。直接の外傷等が癒えても、感情や行動に様々な後遺症が残ります。そういった子どもに対し、学校でどのように対応するのがよいのかを具体的に解説している点がユニークです。
第1章では、脳の本来の働きと、損傷により影響を受ける認知機能について豊富なカラー・イラストで分かりやすく解説されます。第2章では、損傷がなかった場合の一般的な発達と、損傷の程度ごとに、発生する可能性のある発達への影響が、年齢ごとに行動学的と神経学的に解説されます。
第3章から第6章までが本書の中心で、学校での対応について構造的に分解し解説されます。
第3章は生徒のもつ課題です。一般的に学校内ですべての生徒に期待される態度や行動を整理し、それを妨げる、後天性脳損傷によって引き起こされる認知的課題、行動的・情動的課題、身体的課題が解説されます。生徒に困難が起きている時に、教師にはその生徒がどのように見えるかが記載されます。
第4章は方略です。生徒に起きる具体的な困難を解決するために、教師が支援することのできるアイデアが多数、紹介されます。ここでは学習障害との比較表も用意されています。
第5章は、生徒が家庭や地域社会で遭遇する可能性のある困難に対し、共通して適応できる手法が解説されます。方向転換(リダイレクション)、再構築(リストラクチャリング)、バックドア手法、正の強化法、積極的無視など、発達障がいにも応用できる方法が紹介されています。
第6章は、学校に復学させ、その経過を観察し、適応を支援するための個別プログラムの立案です。留意点として記載されている「生徒がある一定の認知的発達段階に達し、損傷した脳の部分を使う必要が生じるまで顕在化しない認知障害もある」は注意すべき点だと思います。
第7章は、評価及び計画立案に向けてのチーム・アプローチ、第8章は、保護者の役割、第9章は付録で、認知検査の解説や用語集です。
なお、オンタリオ脳損傷協会のWebページで、本書で解説する方略に基づく学校での対応方法をビデオで見ることができます。Primary、Elementary、High Schoolのそれぞれで、注意、記憶などの障がいのある子どもの振る舞いとそれへの教師の対応が、悪い(一般的な)例と、本書の方略に基づく例の2通りのビデオで見ることができます。
http://www.abieducation.com/
三輪書店:「子どもたちの高次脳機能障害-理解と対応」
著者:オンタリオ脳損傷協会
監訳:中島恵子(帝京平成大学健康メディカル学部臨床心理学科教授)
https://ssl.miwapubl.com/products/detail/1148
2010年7月発行 A4版、168ページ 定価3150円(税込)
====================================================================
先天的な障がいである発達障がいと異なり、事故や病気などで発生する高次脳機能障害は、脳の損傷部位がはっきりしている場合が多く、出現する症状との関係を調査研究しやすい側面があります。失語症はそのひとつの典型例で、その研究者のグループが日本失語症学会を作り、それが発展して日本高次脳機能障害学会となり、その成果が、発達障がいなどの研究にも活用されています。
来週の11月18日19日は、埼玉県の大宮ソニックシティで日本高次脳機能障害学会が開かれます。発達障害、認知リハ、といったテーマの発表もいくつかあり、とても期待しています。次回には間に合わないでしょうけれど、メルマガに適した発表があれば、ぜひ報告したいと思います。
名称:第34回日本高次脳機能障害学会学術総会
(旧 日本失語症学会)
会長:中島八十一(国立障害者リハビリテーションセンター学院長)
日程:2010年11月18日(木)~19日(金)
場所:大宮ソニックシティ・さいたま
士会、山梨県立盲学校
URL :学会 http://www.higherbrain.gr.jp/
学術総会 http://jshbd34.umin.jp/
次号は、11月19日(金)です。
子どもたちの高次脳機能障害
MAILMAGAZINE
メルマガ情報
本文からさがす
テーマからさがす
困り(診断名)
困り(その他)
支援技術
- ABA
- DIR/フロアタイム
- DSM(米国精神医学会統計と診断の手引き)
- ICF(国際生活機能分類)
- ICT活用
- K-ABC
- Response to Intervention(RTI)
- TEACCH
- WISC
- アセスメント
- 医師
- ウェルビーイング(well-being)
- 拡大教科書(デジタル教科書)
- 家族支援
- 環境調整
- 看護師
- 教科学習
- きょうだい支援
- 言語聴覚士(ST)
- コーピング
- 行動療法
- コグトレ
- 個別支援計画
- 作業療法士(OT)
- 視覚認知
- 手話
- 社会福祉士
- 周産期医療
- 情報活用能力
- スクールナース
- ストレスマネジメント
- 精神保健福祉士
- セルフアドボカシー(自己権利擁護)
- セルフケア
- ソーシャルスキルトレーニング(SST)
- 人工内耳
- 社会機能
- 創造性
- 就労支援
- 生活機能
- タブレット
- 注意機能
- 聴覚認知
- ディベロップメンタルケア
- デジタル教育
- デジタル教材
- 特別支援教育士(S.E.N.S)
- 認知行動療法
- 認知テスト
- 認知特性
- 脳科学
- バーチャル体験
- バリアフリー
- ビジョンセラピー
- ビジョントレーニング
- ビネー
- ファシリテーション
- プログラミング
- ペアレントトレーニング
- 包括的性教育
- 保護者支援
- 補聴器
- ポリヴェーガル理論
- マルチメディアデイジー
- ゆめ基金
- 予防医療
- リハビリテーション
- ロボット
- 教育のユニバーサルデザイン(UD)
- ソーシャルスキルトレーニング
- となりの専門士
社会制度
教材・資料
執筆者及び専門家
- maya
- 愛澤文祥
- 青木瑛佳
- 赤平若菜
- あしたん
- 阿部利彦
- 安彦忠彦
- 荒木友希子
- 飯野由里子
- 井阪幸恵
- 石井京子
- 石塚謙二
- 石橋幸緒
- 礒恵美
- 市川伸一
- 井上賞子
- 井上智
- 今井弘二
- 岩永竜一郎
- 巖淵守
- 榎本哲
- 大田優子
- 大野裕
- 大野 南
- 大山泰弘
- 大久保育美
- 荻野圭司
- 奥平綾子
- 小田和美
- 小渕千絵
- 堅田利明
- 金森克浩
- 兼田絢未
- かなしろにゃんこ。
- カニングハム久子
- 鴨下賢一
- 香山リカ
- 川上康則
- 河越眞介
- 川端秀仁
- 冠地情
- 菊田史子
- 北出勝也
- 北野陽子
- 岸和之
- 久保谷政義
- 栗田洋子
- 黒岩賢
- 黒田恭史
- 五藤博義
- 小玉武志
- 小林雅子
- 小林みやび
- 五味純子
- 小道モコ
- 小貫悟
- 齊藤智
- 齋藤秀一
- 斎藤万比古
- 坂本條樹
- 笹田能美
- 笹森理絵
- 佐藤功一
- 佐藤雅次
- 里見恵子
- 澤村清美
- 鹿野佐代子
- 志水宏吉
- 鹿内幸四朗
- 下茉莉
- 白石浩一
- 杉本陽子
- 鈴木慶太
- 高橋知義
- 高濱正伸
- 高松崇
- 高山恵子
- 篁一誠
- 竹川敦
- 田中太平
- 田中直人
- 田仲広明
- 田中康雄
- 柘植雅義
- 逵直美
- 土井晶子
- 藤堂栄子
- 對馬陽一郎
- 富田拓
- テンプル・グランディン
- 友田明美
- 中川雅文
- 中込和幸
- 中野民夫
- 永野和男
- 中邑賢龍
- 新村一臣
- 新山愛子
- 西牧謙吾
- にのの
- 橋本圭司
- 橋本美恵
- 林哲也
- 原佐知子
- はらさちこ
- 東田直樹
- ひつまぶし(内科医)
- 日野公三
- 平岩幹男
- 平林ルミ
- 広瀬宏之
- フェダック・佑子
- 堀野めぐみ
- 本田一輝
- 本田真美
- 松田修
- みく
- 三田地真実
- 美濃屋裕子
- 未来奈保美
- 宮尾益知
- 宮口幸治
- 宮口英樹
- 村上博行
- 安尾真美
- 柳下記子
- 山西潤一
- わかや
- 齊藤万比古
- 増本利信
- 松本俊彦
- 高橋雄一
- 濱田恒一
- 宮本信也
- 簗田明教
- 山本惠一
- 吉田ゆり
- 渡邉歓忠
- 渡邊典子