保護者の方もお盆休みでご自宅でしょうか? 暑さ寒さも彼岸まで、という祖母のことばが懐かしく思い出されます。
今号から、教育現場でスクールカウンセラーとして小学生、中学生のケアを担当しているmayaさんが執筆陣に加わってくれました。
気になるお子様の対応等、読者のご質問ご要望にできるだけお応えする形で執筆していきたいとのことです。なんでも結構です。編集部までメールをお寄せください。
編集部: info@ledex.co.jp
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【目次】
(1)日本型インクルーシブ教育を目指して
(2)子どもの認知発達を応援してくれる機関・1
(3)おすすめコンテンツ「パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々」
(4)mayaさんのスクールカウンセラー奮闘記・1
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(1)日本型インクルーシブ教育を目指して
8月7日の毎日新聞で、難病のため人工呼吸器と車椅子で生活している3歳の女の子が公立保育園への入園を認められたという記事が掲載されました。
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20100807k0000m040142000c.html
当初は、立川市から拒否され、入園許可を求める4万2千名の署名を集めて4月から仮入園が認められていました。今回、安全性が確認されたとして、9月から正式な入園が許可されることになりました。現在、仮入園中ですが市から臨時採用された8名の介助員がシフトを組み、朝から夕方までケアしています。普段は目の動きなどで意思疎通しているが、仮入園後は表情が豊かになり、泣き出すこともほとんどなくなったということです。
インクルーシブ教育の一つの典型例です。日本の公立保育園や公立学校ではまだまだめずらしいケースといえるでしょう。
1994年に日本が批准した「子どもの権利条約」には、一般的な子どもの権利とは別に第23条を設け、障がい児の特別なニーズを認め、特別なケアへの権利を認めています。インクルーシブ教育はこの一貫にあるものです。
立川市の事例を見れば、一人に対するケアだけでどれくらいの費用が必要かが分かります。欧米などの先進国はその実現に多大な予算を費やして、既に取り組みを開始しています。ですから日本だけがインクルーシブ教育ができない、という理屈は通らないのです。
今年4月に内閣府の求めに応じて文部科学省が作成した試案では、A「基本的に通常学級へ就学、保護者の希望があった場合だけ特別支援学校に進学」教員等2兆1700億円、施設・設備9兆9800億円が必要。B「現行の特別支援教育制度を充実させ、保護者に必要な情報を与えて希望を聞き、教育委員会が総合的に判断」教員等1100億円、施設・設備1兆2400億円が必要、というものです。これらの莫大な予算をどのように確保するかという問題を、日本人一人ひとりが真剣に考えなければならないのです。
もうひとつ大切な問題があります。今年7月のある研究会で文部科学省初等中等教育局特別支援教育課の課長が話すには、現在、公立学校での障害者支援員が対応しているのは、ほとんど発達障害関連、ということです。つまり肢体不自由、視覚障害、聴覚障害、知的障害(重い発達障害を含む)は、特別支援学校で集中的に対応し、普通学校では、特別支援学級という形で発達障害に対応しているのが、日本の教育現場の実態ということです。そして、発達障害への対応に関していえば、それまではほとんど具体的な対応がなされていなかった状況が、2007年にスタートした特別支援教育制度で、各発達障害の特性が少しずつ認識され、対応方法が整備されることで、成果が出始めているといえるでしょう。
教育関係の予算は、地方自治体に対する交付金が原資となるもので、自治体の裁量で、何に使われるのかが決定されます。普通学校で肢体不自由や視覚聴覚障害等への設備に充てる費用と支援教員は、発達障害に対して充てられる費用や支援教員と同じ原資から捻出されることになります。
どのような順序で、また、どのような配分で、さまざまな障がいに対応するインクルーシブ教育を実現していくのか、日本人に課された大きな問題といえます。これについては、いったん筆を置き、今後、いろいろな形から考えることにしたいと思います。
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(2)子どもの認知発達を応援してくれる機関・1
7月30日NHKニュースは、厚生労働省「子どもの心の診療拠点病院機構推進事業」の調査で、保護者が子どものことが気になると思ってから実際に受診するまでに平均2.51年が経過していることを紹介しました。
#基礎データは下記ページで公開される予定です。後日、紹介します。
http://www.mhlw.go.jp/shingi/other.html#koyou
子どものことが気になり始めたらどこに相談すればよいのか、シリーズで紹介していきたいと思います。その体制は、就学前と就学後でかなり変わります。今回は、就学前の制度や機関、施設を書き出してみます。
●相談・検査
出生前には、妊婦健康診査があります。
出産後には、産科医や小児科医が相談相手に適当です。
自治体の実施する母子保健サービスとして「乳幼児の健康診査」があります。出生後1年以内の乳児健診、1歳6カ月児健診、3歳児健診です。この他に自治体によって発達障害の健診を行うところが出てきました。5月3日毎日新聞の記事では55の自治体で5歳児を対象にした発達障害の健診が行われているとのことでした(現在は、ネットで閲覧不可)。
2007年には、厚生労働省が「こんにちは赤ちゃん」事業として、生後4カ月までの乳児のいるすべての家庭を訪問する制度を始めました。これも自治体が実施主体です。
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/kosodate12/01.html
この他に相談を常時、受け付けている機関として、保健所、児童相談所、発達障害者支援センターがあります。どの機関が担当しているかは、自治体によってかなり差があります。自治体に問い合わせて、情報を得るところから始めていただく必要があります。
意外なようですが、児童相談所には、保健相談、育成相談、障害相談など、乳幼児を含むあらゆる障害等に関する相談窓口があります。
発達障害者支援センターは、2004年の発達障害者支援法に基づいて、都道府県と政令指定都市に設置されたもので、下記のように現在71か所にあります。
http://www.autism.or.jp/relation05/siencenter2008.htm
●診断・治療
各障害に対応する診療科は、以下の通りです。
視覚障害:眼科、聴覚障害:耳鼻咽喉科、脳性まひ:整形外科・小児科・小児神経科、病弱や発達障害:小児科・児童精神科
残念ながら医師によって専門レベルが異なります。下記に、日本小児神経学会のサイトに掲載されている、発達障害の専門医がいる病院のリストを上げておきます。
http://child-neuro-jp.org/visitor/sisetu2/images/hdr/hattatsulist.pdf
●療育指導
療育センター、子育て支援センター、障害総合支援センター、知的障害児施設、肢体不自由児施設、さらに既出の発達障害者支援センターがあります。
代表的な機関の解説と、就学後の子どもや保護者を支援する体制については次号以降で。
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(3)おすすめコンテンツ「パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々」
固い話題が続いたので、僕の大好きなファンタジーの紹介で一息を。著者は米国人リック・ライアダン。ADHDで難読症(ディスレクシア)の小学生の息子からねだられ、ギリシア神話を読み聞かせました。それを読み終えた後にオリジナルの、息子と同じ障がいをもつ主人公パーシーが活躍する物語を考え出し、全5巻のベストセラーが誕生しました。
パーシーは、海神ポセイドンと人間の母親の間に生まれたデミゴッド(半神半人)。他にもたくさんのデミゴッドが登場しますが、全員に共通するのがADHDと難読症。危険に遭遇した時に、瞬時に身体を動かすために備え付けられたのが、いつも動き続けている性質、ADHD。また、古代ギリシア語に最適化された目は、普通の文字がぼやけるため難読症と言われますが、普通の人に見えない、古代ギリシア文字のキーワードを見つけ出すことで、危険な場面を脱出するなど、難問を解決していきます。
この二つの性質に限らず、さまざまな個性をもった子どもたちがアメリカ各地の有名な場所を訪問して、神々と戦い、地球を守る大活劇をぜひ、お子様と一緒にお楽しみください。
第一巻は映画になり、すでに、DVDレンタルも開始しています。難読症のお子様には、日本語吹き替えのDVDがお勧めです。
Wiki http://bit.ly/8JgFrM
映画公式サイト:http://movies.foxjapan.com/percy/
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(4)mayaさんの「スクールカウンセラー奮闘記」1
スクールカウンセラーという言葉を聞かれたことがあるでしょうか?主に中学校などの学校に配置されている心理士のことをスクールカウンセラーと呼んでいます。私は西日本のとある町で、スクールカウンセラーとして勤務しています。
これまでに経験してきた過去の失敗談や教わったことなどのエピソードを思いだしながら、「奮闘記」と題して、お話を書かせていただきます。
( このお話はフィクションです。実在の人物とは一切関係がありません )
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ある中学校で母親から相談を受けたことから話は始まります。母親から小学校に通う娘が小学校1年からずっと教室に入れず、休み休みながら保健室への登校を続けて、6年生の今も同じ状況なのだと相談がありました。さすがに6年間継続して教室に入れない状況であると聞いてびっくりするとともに何が教室に入りづらい状況を作っているのだろう?と考えていました。
実は小学校の保健室から先に相談があり、6年間も保健室に登校している女子がいることを聞いていました。新たに赴任してきた私は、「スクールカウンセラーという子どもの生活や成育を相談できる人がいるから一度相談してみませんか?」と保健室の先生から保護者に声をかけてもらいました。それで面接にこぎつけたのですが、母親はとても緊張されていました。話を聞いてゆくとその理由が分かってきました。これまで学校の教員や親戚から「娘を学校に何故行かせないのか」と言われ続けてきたようでした。母親もつらい6年間を過ごされてきたようでした。
小学校6年女子。1年生の1学期にクラスメイトとの些細なトラブルから学校を休むようになり、しばらくして落ち着いてからも教室には入れないということで保健室への登校を開始。保健室への登校も気分によって登校できず1カ月間くらい休むこともしばしばとのこと。対人関係、つまりコミュニケーションをとることが難しい状況にある。家族とは普通に話しているのにと母親は話してくれました。この小学6年女子を、ここでは「A子」と呼ぶことします。A子と母親との面接が、このようにして始まりました。
次回は、A子への支援に取り組み始めて試行錯誤する様子を紹介します。
このコーナーを読まれた感想などを寄せていただけると、うれしいです!皆様の感想を参考にさせていただきながら話題を選定してゆければと考えています。よろしくお願いします。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。
次号は8月27日(金)です。暑い夏に負けないようにしましょう。
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