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■ まえがき
■□ 新連載:発達障害と依存症
■□■ 連載:視覚・聴覚者(児)向けのICT機器(現代)
■□■ 連載:視覚・聴覚者(児)向けのICT機器(現代)
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■□ まえがき ■□--------------------------
今回から、長崎大学生命医科学域,保健学系作業療法学分野,教授の今村明先生に「発達障害と依存症」について連載をしていただきます。
今回から、長崎大学生命医科学域,保健学系作業療法学分野,教授の今村明先生に「発達障害と依存症」について連載をしていただきます。
ご承知のように発達障害(神経発達症)の支援では、教育と医療のそれぞれの知見が求められます。ただ、文部科学省と厚生労働省という二つの官庁に分かれて所管されていることもあり、これまでは必ずしもよい連携になっているとは言い難い面がある気がしています。長崎県は、他都道府県に先駆けて、その連携に取り組んできており、その中心となったのが長崎大学の医学部と教育学部が連携して設立・運営されている「子どもの心の医療・教育センター」です。
今村先生はその副センター長で、同センターが発達障害に関わる高度人材を育成するために運営しているe-learning 講座でも多数の講義を担当されています。編者もその講座の修了生で、今回は恩師にお願いして、本メルマガに寄稿していただけることになりました。
年末年始にかけて、3回原稿を掲載させていただきますので、関心をもってお読みいただければ幸いです。なお、これら原稿は、雑誌「発達教育」発行元:公益社団法人発達協会に、2022年7月号~9月号に掲載されたものです。ご許可をいただいた発達協会に御礼申し上げます。
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■ 新連載:発達障害と依存症第1回 依存症とは?───────────────────────────────────…‥・
依存症は、いわゆる先進国でも開発途上国でも世界中のあらゆる国で、すべての健康問題の中でも特に重要と思われる領域の一つです。厚生労働省のホームページでは、依存症ってなに?という質問の答えとして「特定の何かに心を奪われ、『やめたくても、やめられない』状態になることです。」と回答されています。
日本で使われている「依存症」という言葉は、海外ではアディクション(嗜癖)という言葉で表されることが多いようです。アディクションは「奴隷状態」を意味するラテン語に由来し、「何かに強くとらわれ、習慣化しており、それをやめようとすると強い苦痛を感じる状態」と定義されています。海外では依存症という言葉は、アルコールや薬物などの「物質」へのアディクションに対して使用されることが多いですが、本稿では日本の読者にわかりやすいように、「依存症」をアディクションとほぼ同じ意味で使っていきたいと思います。
〇依存症の種類
依存症は大きく2つに分類されます。まず一つは上記のようなアルコールや薬物、嗜好品などの「物質への依存(物質使用障害)」です。アルコール類は、最近ではいわゆる「ストロング系チューハイ」などコンビニ等で手軽に購入でき、多量のアルコールが摂取できるものが多数流通しています。薬剤は、大麻、覚せい剤、コカイン、ヘロインなどの違法薬剤やシンナー、トルエンなどの有機溶剤が問題となりますが、一方で薬局で購入できたり病院で処方されたりする鎮痛薬や風邪薬、睡眠薬、そのほかの向精神薬などへの依存が起こっている場合もあります。鎮痛薬に関しては、救急車で病院を訪れて、医薬品としての鎮痛薬を強く要求するケースもあります。またカフェインやニコチンなどの嗜好品への依存も問題となる場合があります。
もう一つは、「行為への依存(行動嗜癖)」です。これについては、様々な調査結果より、米国精神医学会の診断基準ではギャンブルが、世界保健機関(WHO)の診断基準ではゲームとギャンブルが、それぞれ依存症として認められています。
しかしまだ認められていないものの中にも、依存症と言っていいのではないかと考えられているものがあります。現代では、ソーシャルネットワークサービス(SNS)についての依存は、若年層の人であれば、多かれ少なかれその傾向を持っているものと考えられます。買い物に関して、以前から依存症の状態があるのではないかと言われてきましたが、現代ではインターネットを通じたショッピングが盛んにおこなわれており、以前に比べて依存傾向の人も増えているようです。
また、以前から仕事、勉強、運動(マラソンなど)、そのほかの趣味への依存について、称賛されるべき場合もあるが過度の状態はストップをかける必要があるものと考えられてきました。また諸説ありますが、食行動へのこだわり(摂食障害)や常習的な万引き(窃盗症)なども、背景に依存症的な心の状態が想定されています。
広義の依存症は以上のように多様であり、性差を考えると男性ではアルコール、ギャンブル、ゲームなどが多く、女性はSNSや食行動、買物などの問題が多いと言われています。またアルコールやギャンブルに比べるとゲームなどは圧倒的に対象年齢が若いと言われています。
〇依存症の症状
米国精神医学会の診断基準によると、アルコール依存症などの物質使用障害の診断基準は、コントロール障害、社会的障害、危険な使用、薬理学的な問題の4つで表されています。
(1)「コントロール障害」は、「渇望(こらえきれないほど強い欲求)」が出現して、当初考えているよりも物質を多量に使用したり、やめようとして失敗したり、物質に関連して多くの時間を費やしたり、という状態です。
(2)「社会的障害」は、職場、学校または家庭で自分の役割が果たせなくなり、人間関係が破綻したりしても、物質の使用をやめない状態です。
(3)「危険な使用」は、身体的、精神的に危険な状態でも、物質の使用をやめない状態です。
(4)「薬理学的問題」は、「耐性(同じ量を使っても前のような効果が得られず、使用量が増えていく現象)」と「離脱(いわゆる禁断症状が起こった状態)」とがみられる状態です。
このような症状は、ギャンブルやゲームなどの依存症(行動嗜癖)にもかなりの部分があてはまります。ギャンブル依存症では特に借金を繰り返したり、嘘をついたりすることが大きな問題となります。
このような依存症になる要因としては、生まれつきの傾向と発達の各段階での問題が複雑に絡み合って生じるのではないかと言われています。生まれつきの傾向として特に重要なのは、ADHDをはじめとした発達障害です。また育ちの問題としては、愛着形成やトラウマ体験などが考えられています。
次回は、発達障害と依存症との関係についてお話ししたいと思います。
◆今村 明
長崎大学生命医科学域 保健学系作業療法学分野
長崎大学子どもの心の医療・教育センター
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■ 連載:福祉・特別支援教育におけるICT機器~過去から未来へのICT機器の活用を考えてみよう~
第4回 視覚・聴覚者(児)向けのICT機器(現代)───────────────────────────────────…‥・
視覚障害者や聴覚障害者に対するICT機器を活用した支援は、日常生活やコミュニケーション、学習、仕事などにおいて大きな役割を果たしています。スマートフォンやタブレット端末が登場して以来モバイル性が高まりパソコンでの支援よりも更に利便性が高まっています。以下、視覚障害者と聴覚障害者に対する具体的なICTを活用した支援方法を紹介します。
1.視覚障害者へのICT支援方法
全盲の方は画面の小さいスマートフォンを活用して視覚情報を聴覚情報へ変換
弱視の方は画面の大きいタブレットを活用して視覚情報を拡大表示もしくは聴覚情報への変換が基本的な活用方法であると思います。
(1)スクリーンリーダー
スクリーンリーダーソフトウェア:視覚障害者がコンピューターやスマートフォンを利用するための主要なツールです。スクリーンリーダーは、画面に表示されるテキストや情報を音声で読み上げます。代表的なソフトウェアには、Windowsの「ナレーター」、iPad.iPhoneの「VoiceOver」、Androidの「TalkBack」等があります。これにより、メールの読み書き、ウェブの閲覧、文書作成などが可能となります。
同様に文書の読み上げには、Windowsの「イマーシブリーダー」、iPad.iPhoneの「読上げコンテンツ」、Androidの「選択して読上げ」等があります。
(例)iPadによる画面読み上げ
(2)点字ディスプレイ
点字ディスプレイ:視覚障害者が点字でコンピューターやスマートフォンを操作できるようにするデバイスです。スクリーンリーダーと連動し、表示されている情報を点字としてリアルタイムで提供します。これにより、視覚障害者は情報を触覚で得ることができます。
(参考)視覚情報リハビリテーション協会
(3)音声アシスタント
音声アシスタント:Appleの「Siri」、Googleの「Google Assistant」、Amazonの「Alexa」など、音声認識技術を活用したアシスタントは、視覚障害者の日常生活をサポートします。これらの技術は、音声で情報を検索したり、アプリを操作したり、リマインダーを設定したりすることが可能です。特に、ハンズフリーでの操作が求められる場面で便利です。
スマートホーム技術:音声コントロールが可能なスマートホームデバイスは、視覚障害者が家の照明、エアコン、テレビなどの家電を操作する際にも使用されます。音声指示だけで家の環境をコントロールできるため、視覚障害者の生活が大幅に改善されます。
(4)ナビゲーション支援
GPSナビゲーションアプリ:視覚障害者が外出する際に、音声で道案内を行うGPSナビゲーションアプリがあります。例えば、「Seeing AI」などのアプリは、GPS技術を利用して、周囲の建物や障害物、交差点などの情報を提供します。これにより、視覚障害者が安全に移動できるよう支援します。
(例)Seeing AI
電子点字地図:特定の地域の電子点字地図を使用することで、視覚障害者は触覚を通じて地理情報を理解しやすくなります。これらは屋内外の移動支援に役立ちます。
(5)読書と学習支援
音声読書機器:視覚障害者が本や雑誌、新聞を読むための音声読書機器があります。これらのデバイスは、印刷された文章をスキャンし、音声で読み上げる機能を持っています。「Orcam My Eye」などが代表的です。
(情報)Orcam My Eye
電子書籍とオーディオブック:電子書籍リーダーやオーディオブックサービスは、視覚障害者にとって有益です。特に、スクリーンリーダーや音声合成機能と連携して、書籍の内容を音声で読み上げることができます。Amazonの「Audible」や「Kindle」などのプラットフォームが提供されています。
(情報)日本ライトハウス 情報文化センター
2.聴覚障害者へのICT支援方法
聴覚障害の方は基本的には聴覚情報を視覚情報に変換 最近では手話を音声・文字化するようなシステムも開発されています。
(1)字幕付きのコミュニケーションツール
リアルタイム字幕:リアルタイムで会話や会議の内容を文字に変換するアプリやデバイスが、聴覚障害者のコミュニケーションを支援します。例えば、「Google Meet」や「Zoom」などのビデオ会議ソフトでは、自動的に字幕が生成され、会話内容をテキストで表示する機能があります。また、「UDトーク」や「YYProbe」などのアプリは、会話をリアルタイムで文字化し、聴覚障害者が話し手の内容を理解しやすくします。
テレビやビデオの字幕:ほとんどのテレビ番組やビデオストリーミングサービスでは字幕が利用可能です。これにより、聴覚障害者は視覚的な情報を通じて内容を理解できます。NetflixやYouTubeなどの多くのサービスでは、多言語字幕が提供されています。
(例)UDトーク
(例)YYProbe
(2)手話通訳サービス
リモート手話通訳:聴覚障害者が必要なときに、遠隔で手話通訳者にアクセスできるサービスが利用されています。
(例)遠隔手話通訳サービス
手話ユーザーと音声ユーザーのコミュニケーションをより円滑にするサービス
手話と音声をリアルタイムでテキストに変換し、画面を通して会話を可能にするようなシステムも開発されています。
(例)SureTalk
(3)聴覚補助デバイス
補聴器と人工内耳:ICT技術の進化により、デジタル補聴器や人工内耳が改善され、聴覚障害者の音の認識能力が向上しています。これらのデバイスは、スマートフォンやタブレットと連動し、音声や音楽を直接補聴器にストリーミングすることができます。また、補聴器は周囲の雑音を除去し、特定の音を強調する機能も持っており、日常生活の質を向上させます。
遠隔マイクロホンシステム:遠隔マイクロホンシステムは、スピーカーが離れた場所にいる場合でも、話し手の声を聴覚障害者の補聴器や人工内耳に直接伝送します。これにより、騒がしい場所や広い部屋での会話もより明瞭に聞こえるようになります。
(4)ビデオ通話とテキストコミュニケーション
ビデオ通話アプリ:聴覚障害者が手話を使ってコミュニケーションを取るために、ビデオ通話アプリが活用されています。ZoomやSkype、FaceTimeなどのアプリは、視覚的な手話を介して遠隔地にいる人々とコミュニケーションを取るのに便利です。
テキストベースのメッセージング:テキストメッセージやチャットアプリも、聴覚障害者にとって重要なコミュニケーション手段です。WhatsAppやLINE、Messengerなどのアプリを利用して、文章ベースでスムーズに情報のやり取りができます。これらのアプリは、視覚的な表現やスタンプも使えるため、感情やニュアンスも伝えやすくなっています。
(5)音のビジュアル化
音のビジュアル通知:聴覚障害者は、音の代わりに視覚や触覚で情報を受け取るため、特定の音が発生した際に画面が点滅するなどのビジュアル通知機能が活用されています。例えば、スマートフォンのアラームや着信が鳴る際に、画面が点滅したり、バイブレーションで知らせたりすることができます。
音を体で感じるユーザーインターフェース「Ontenna」など必要な音を振動パターンでしらせてくれるようなデバイスも開発されています
(例)Ontenna
3.まとめ
視覚情報を聴覚情報へ、また聴覚情報を視覚情報へ、クロスプラットフォームへ
ICT機器のない時代には人が介したり、比較的高額な専用の機器を活用することが当たり前でした。スマホやタブレットなどのICT機器が普及した時代では、比較的安価で手軽に実現できるようになりました。AIスピーカーや手話を解析し文字化するなどのAIシステムは、益々進歩していくことと思います。
◆高松 崇
NPO法人支援機器普及促進協会 理事長
関西大卒。ICT・福祉情報機器コーディネーター。民間企業のシステムエンジニアなどを経て43歳で独立。2011年、障害児・者の学習や生活支援用の機器を提供するNPO法人「支援機器普及促進協会」を長岡京市に開設した。
現在は京都市教委総合育成支援課専門主事なども務める。長岡京市在住。
■□ あとがき ■□--------------------------
次回年内の最終号を12月20日(金)にお届けします。