性教育も安心・安全なコミュニケーションから こどもの発達を支える専門職(看護職)

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2024.07.12

性教育も安心・安全なコミュニケーションから こどもの発達を支える専門職(看護職)

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■   連載:性教育も安心・安全なコミュニケーションから
■□  コラム:こどもの発達を支える専門職(看護職)
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■ 連載:ADHDセルフケア物語
     第6回 性教育も安心・安全なコミュニケーションから
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皆様は、旭川の女の子の事件を覚えておいででしょうか?プライベートゾーンの写真をネットで拡散するといわれるなど、かなりひどい性的いやがらせを含むいじめが原因で自殺をしたのではないかと考えられた、大変悲しい事件です。

再調査委員会は、女子生徒がPTSD=心的外傷後ストレス障害を発症し、自殺に至るまでトラウマに苦しみ、自尊感情の著しい低下なども続いたと指摘し、「いじめにあわなければ自殺は起こらなかった」と結論づけました。

この種の事件は、残念ながら水面下ではまだまだ増加しているように思います。先日NHKの報道でもありましたが、未成年の子どものいかがわしい動画売買の闇サイトが存在するそうです。サイトの管理会社は摘発されるとまた別の会社を作り、会社が倒産しても画像は流布されたまま残ってしまうという状況です。

この種のことは以前からあった話ではありますが、SNSの発展により、問題は低年齢化し、地域を問わず起こり、拡散のレベルが以前とは格段の差があります。

このような時代、自分を守る・子どもを守る性教育が、早い時期から重要でしょう。特にジャニーズの問題で、この分野の教育や子どもの人権に対する日本社会の意識の低さが明確になりました。

私が留学をしていた30年前、アメリカでは既にCAP(キャップ)※などいろいろな性教育が学校現場で提供されていました。ということは、欧米と比較して、日本の性教育は40年以上遅れていると言わざるを得ません。

※CAP(キャップ)とは、Child Assault Prevention:子どもへの暴力防止の頭文字です。
子どもがいじめ・虐待・体罰・誘拐・痴漢・性暴力など様々な暴力から自分の心とからだを守る、暴力防止のための予防教育プログラムです。

認定NPO法人CAPセンター・JAPANより

このニーズに合わせて『親子で話そう!性のこと:3歳から始める性教育』※という本を、性教育の分野で活躍中の保健師さんと、大学時代の友人で産婦人科クリニックで思春期相談窓口を提供している薬剤師とつくりました。

親子で話そう!性のこと:3歳から始める性教育 

最近は保育園や幼稚園で、プライベートゾーンを見せない、触らせないなどの性教育の「基本のき」を教えるところが増えました。プールのシーズンになる前にと、急いで作った本です。

体のことについてわかりやすい、かわいい絵本も付いていますので、活用していただければと思います。ティーンエイジャーの子どもたちにも充分活用できる(自分で読んでもわかりやすい)内容です。

教育現場では性教育に関する考え方がバラバラで、重要性はわかっているけれどもできないと、苦しんでいる先生方もおいでです。他にも、親御さんから子どもの性の相談を受けて困ってしまったという声もあります。そのような場合、本を紹介するという対応も良いのではないかと思います。

多くの方に手に取っていただき、性的なトラブルで悲しむお子さんが一人でも減ることを願っています。

関連して以下のような記事もアップされていますので、参考になさってください。

子どもの性教育をどう始める?専門家が語る「自分のからだを守る」意識の育て方

子どもの性教育において「3歳からの親子関係」が重要になる理由

旭川の事件では後日談があり、子どもの異変に気づいた親が心配して、「いじめにでもあってるの?」と本人に聞いたとき、なんとこのような状態にもかかわらず、ないと答えたそうです。

なんと悲しいことでしょう。実の親にSOSが出せない、本当の気持ちを伝えられない…。ここにもこのような悲しい事件を起こさないようにするポイントがあります。

それはズバリ、自己開示ができる子どもを育てる、SOSを出せる子どもを育てるということです。そのためには、日々のコミュニケーションが重要です。ちょっとした機会に自己開示を促すような質問を投げかけてみたり、困っている様子のときにさりげなく声がけしてみたり、あるいは親が周りの人にSOSを求める姿を見せたりすることも大切です。

ただ、それでも自己開示やSOSを求めるのが苦手な子もいますので、「練習する」ことも必要かもしれません。

そのような観点からおすすめしているのが、「ちょこっとチャット」※という教材です。ゲーム感覚で、傾聴や自己主張などのコミュニケーションを学ぶことができます。カードに書かれた質問に答える。周りの人は、評価しないで聴くというルールです。答えたくない質問には「パス」できることもあり、口下手な子たちも徐々にリラックスして答えられるようになり、安心安全な場ができてきます。聴く練習、話す練習とともに、自己開示や「NO」と言う自己主張の練習もできます。

ちょこっとチャット 

特別支援学級や学童クラブでは、このゲームから1日をスタートするところもあります。日常的に自分の思いを伝えられる練習は、きっといざというときに力になると思います。

最近出版した不登校の本や愛着障害の本にも、「ちょこっとチャット」を活用した簡単な講座ができるマニュアルをつけていますので、ニーズに合わせてご活用ください。

こころの安全・安心をはぐくむ不登校支援 子どもの心をいやすポリヴェーガル理論に基づく

発達障害・愛着障害・小児期逆境体験(ACE)のある親子支援ガイド

これまでのメルマガで、ポリヴェーガル理論など、安心安全な環境の大切さをお伝えしてきました。今回の性教育に限らず、子どもの良さを見つけたり、悩んでいることやストレス度合いをチェックしたりするためにも、子どもとのコミュニケーションは重要です。それは、子どもが安心・安全を感じられる環境で生まれます。この点をぜひ意識していただきたいと思います。

少しお休みしてまた秋ごろ、ギフテッドと2Eなどのお話をさせて頂きたいと思います。

◆高山恵子 
NPO法人えじそんくらぶ代表。臨床心理士。薬剤師。
昭和大学薬学部 兼任講師。
アメリカトリニティー大学大学院修士課程修了(幼児・児童教育、特殊教育専攻)、同大学院ガイダンスカウンセリング修士課程修了。
児童養護施設、保健所での発達相談やサポート校での巡回指導で臨床に携わる。
AD/HD等、高機能発達障害のある人のカウンセリングと教育を中心に、ストレスマネジメント講座等、大学関係者、支援者、企業などを対象としたセミナー講師としても活躍中。また、中央教育審議会専門委員や厚生労働省、内閣府などの委員を歴任。
これまでの経験を生かし、ハーティック研究所を設立。最新刊『発達障害・愛着障害・小児期逆境体験(ACE)のある親子支援ガイド』(合同出版)等、著書多数。

 
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■ コラム:公式Youtube「レデックスチャンネル便り」
     第3回 こどもの発達を支える専門職(看護職)
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1.こどもの発達を支える専門職
レデックスチャンネルにて公開された動画コンテンツ「こどもの発達を支える専門職」シリーズを、メルマガの読者様向けにコラムで取り上げています。
第1回は「医師・歯科医師」について、第2回は「リハビリテーション職」について取り上げました。

 第1回 レデックスチャンネル便り(医師・歯科医師)

 第2回 レデックスチャンネル便り(リハビリテーション職)
 
第3回の職種は「看護師・保健師」です。本コラムでは、看護師・保健師だけではなく、看護に関する周辺の職種がいくつかありますので、「看護職」に広げてまとめたいと思います。
Youtube本編もぜひご覧ください。

看護師・保健師(2024年4月26日公開)
2.看護職とは?
看護師は医療職種の中でも、非常に人数が多く、身近な存在です。
圧倒的な人数がゆえに、医療全体の中で非常に重要な位置を占めています。
近代の看護はナイチンゲールにより始まり、日本でも明治時代から看護師養成の歴史がスタートし、130年もの長い歴史があります。

2022年(令和4年)の厚生労働省の資料では、就業看護師は131万人を超え、公益社団法人日本看護協会は、国内の看護師、保健師、助産師の職能団体として政治的にも強い影響力を持っています。
新型コロナウイルスの影響等もあり、医療従事者の養成も含めて厳しい時期もありましたが、
就業看護師の割合は前回調査よりも増加しているとのことでした。

以前は女性看護師を「看護婦」というように、性別によって呼び方に違いがありましたが、法改正とともに2002年(平成14年)から、男女とも「看護師」という名称に統一されました。
現在では男性看護師も特に珍しくなくなってきた印象があり、その数は年々増加しています。
プライバシーや尊厳などの観点から、同性による看護・介護が叫ばれる時代になり、体力・精神力を必要とされる場面などで、男性看護師の需要も高まっているとされています。
看護職は、この国の変化とともに、日本の医療を支えている医療従事者です。

看護資格の中には、いくつか異なる資格も含まれています。
一見すると違いの分かりにくい部分もありますので、今回は看護職について知っていただければと思います。

(1)看護師

看護師は、医師の診療の補助や患者の療養上の世話が主な業務です。

・診療の補助
医師が治療や診察する際に、診察、検査、処置などの診療の補助を行います。
医師が治療を行う際には、介助に当たるだけではなく、物品の準備なども看護師が行います。
脈拍、呼吸、血圧、体温といったバイタルサインの測定や、意識状態、痛みの程度などを確認します。
病棟生活中での食事摂取量や栄養状態、排泄回数、服薬状況などを把握し、患者の状態を医師に報告して診断を助けます。
医師の指示の元に、採血や点滴、投薬といった医療処置を看護師が行うこともあります。

・療養上の世話
入院中の身の回りの世話や日常生活のケアも看護師が中心となって行います。
入院中は、食事・入浴(清拭)・体位変換や移動といった日常生活動作(ADL)が困難な場合も多く、看護師が介助します。
退院後の生活指導や退院の調整といった事務的な手続きも看護師の業務です。
病棟看護師の場合は、夜勤もあり、就寝後も急変・ナースコールの対応や点滴の管理などが求められます。
患者や家族への精神的なサポートや他職種との連携も必要な業務です。

〇小児の看護師
小児看護師は、小児科という幅広い疾患に対する知識だけではなく、身体発達や認知発達を考慮して0歳から15~16歳、または18歳という成長の変化が著しい時期の子どもに対応する必要があります。
NICU(新生児集中治療室)といった部署では、高度かつ専門的な知識や技術も問われます。

加えて、患者である子どもに対し、治療や処置の内容が理解できるように、わかりやすく説明したり、手術などへの恐怖心や不安を和らげたりすることも、大きな役割です。
泣いてしまう子どもへの声かけや安心させるような対応も看護師がサポートに回ります。
入院や治療が子どもに与えるストレスは大きく、慣れない環境や未知の体験によって、混乱したり独特の行動を示したりすることもあります。
家族もまた不安を抱えており、小児看護師は、こうした面での精神的なサポートやきめ細かな対応が求められます。
様々な発達段階の子どもたちに合わせて、適切にコミュニケーションを図り、子どもたちや家族に寄り添った看護を行っています。

また長期にわたる入院の場合、子どもの成長や発達を促せるような看護を考慮する必要があり、医療を受ける子どもの権利が侵害されないよう、子どもらしい生活を守ることも小児看護師ならではの仕事です。
遊びやレクレーションの時間を設けているところもあります。
さらに、ご家族には退院後の地域での生活を支えるといった役割もあり、在宅での介助やケア方法を指導したり、必要な社会資源に関する情報提供をしたりします。
そのため、地域資源に関する情報や医療・福祉の制度の知識や、多職種・他機関との協働といった能力も求められます。

〇看護師はどこにいる?

看護師の就業場所は、病院や診療所が最も多く、医療に関わる場面で、看護師に出会う機会が多くなります。
近年では、訪問看護ステーションや介護保険施設等でも看護師の就業割合が増加しています。
また小児においては、医療的ケア児が増加していることもあり、在宅でケア・看護が必要な子どもに対する訪問看護の需要も高まっています。
それに伴い、放課後等デイサービスといった児童福祉施設や学校教育でも看護師が必要とされています。

(2)看護職の資格
看護職には「保健師助産師看護師法」によって、看護師、保健師、助産師、准看護師の4つの資格に分類されます。

看護師資格は、看護師養成校で3年以上の養成課程を修了し、看護師国家試験に合格することが取得の条件です。
その一方、保健師や助産師というのは、同様の看護師養成課程を修了するだけではなく、養成課程の中で「保健師」や「助産師」の専門分野を履修することや別途専門教育を修めるとそれぞれの国家資格の受験資格が得られます。その後、保健師国家試験や助産師国家試験に合格することで、保健師や助産師として働くことができます。


〇保健師
保健師は乳幼児から高齢者までを対象に、病気やけがを未然に防ぐための健康維持や健康増進のための指導を行います。
保健師は行政・公共機関で働く人が多く、市町村・保健所への所属が約半数以上を占めており、行政保健の分野で活躍する人が大多数です。
その地域の特徴に合わせて、保健、医療、福祉、介護の幅広い分野で活躍しています。

具体的には、生活習慣病や依存症に対する保健指導、集団検診や健康相談、高齢者向けの介護予防から若者のメンタルヘルス、感染症対策など様々な業務があります。
特に子どもの分野では、妊産婦の相談や乳幼児健診、赤ちゃん教室といった母子保健だけでなく、児童相談所では虐待や発達相談のニーズも高いです。
産業保健や学校保健の分野で働く保健師は、企業や学校で健康管理や保健指導、メンタルヘルス対策といった心身の健康予防・増進に貢献しています。
病院保健では、主に健康診断や健康相談に乗ります。

〇助産師
助産師は、妊娠から産後までの母子保健指導を行います。
助産師の受験資格は女性に限られていますが、男性も含めて性や生殖の専門家としても相談や支援を行います。

健康な妊婦であれば、助産師が分娩を介助することができ、産前産後の妊産婦の相談に乗り、新生児のケア方法や育児指導も行います。
ただし、医師の指示がなければ、出産時に薬や器械等の使用は認められていません。
母子の命に関わることなので、助産師は専門知識や技術に加えて、適切な判断力や対応力が求められます。
以前は「産婆さん」と呼ばれ、戦前は自宅での出産に立ち会い、赤ちゃんをとりあげていましたが、現在は、病院での出産が主流になったこともあり、多くの助産師は病院や診療所、助産所に所属しています。
助産師は、看護職の中では唯一独立開業が可能です。
出産は昼夜関係なく予測できない面もあり、体力的にはハードな職種といえます。

〇准看護師
「医師、歯科医師又は看護師の指示を受けて、(中略)行うことを業とする」と法律で定められているように、業務を行う上で指示の必要性に違いがあります。
看護師は准看護師に指示を出して自身の判断で臨機応変に看護業務を行うことができますが、准看護師は自己判断による業務はできず、医師や看護師の指示を受けてから処置を行う必要があります。

療養上の世話や診療の補助を行うことには変わりはありませんが、他の看護師への指示や看護計画の立案はできません。
また資格要件も准看護師の場合は、最終学歴が中学卒業以上、養成課程は2年間となります。免許は都道府県知事の交付であり、国家資格ではありません。
給与も差が生じる場合が多く、求人も少なく、管理職への昇進もできないため、キャリアアップという点では難しい面があるとされています。

准看護師養成の背景には、戦後の看護師不足や女子の高校進学率の低さなど当時の社会情勢が影響していたとされています。
近年の傾向としては、准看護師養成所とその入学者は年々減少しており、日本看護協会では、准看護師制度の停止に向けて取り組みを続けているそうです。
現在就業されている准看護師の支援や業務分担のガイドライン活用に力を入れています。

(3)看護師の活躍をご紹介!
メルマガのバックナンバーから、看護師であり、「思春期保健相談士」の資格も持つ新山愛子さんによる連載をご紹介します。
新山さんは、高校内での居場所カフェ(ナースカフェ)の取り組みについて寄稿いただいています。
ダイエットや食事、コミュニケーションなどの身近な話題から性教育やジェンダーの問題へと、高校生たちが自分を知る・自分に向き合うことで、自分自身も他者も大事にするという学びを深めていく様子が連載されています。
このような関わり方も看護師ならではの視点であると感じます。ぜひご一読ください。

 第1回 居場所カフェ×ナースの可能性:性教育を始めたきっかけ~ナースカフェに至るまで

3.おわりに
今回は看護職全般についてまとめました。動画と補い合いながら学びのお役に立てていただければと思います。
次回のレデックスチャンネルは7月下旬に配信予定です。最新動画もお楽しみに。

参考資料:
日本赤十字ウェブサイト 
公益財団法人日本看護協会 
厚生労働省「令和4年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概要」
 
◆大野 南(おおの みなみ)
レデックス主任研究員、言語聴覚士(ST)
適応指導教室で不登校の小・中学生の支援に携わる中で、発達障害による二次障害を目の当たりにし、一念発起して言語聴覚士の道へ。
放課後等デイサービスや自治体の発達センターでの発達支援の経験を活かし、現在はレデックスで教材開発や支援者への間接支援を行っている。
子どものことばの相談・療育も続ける二足のわらじST。


■□ あとがき ■□--------------------------
次回メルマガは、7月26日(金)の予定です。

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