学びの三つのアイデア

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2012.03.09

学びの三つのアイデア

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■ レポート:認知機能セミナーから「学びの3つのアイデア」
■ グッズレポート:「入浴手順書」「耳せん」
■ イベント:世界自閉症啓発デー2012・シンポジウム
■ あとがき
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■ レポート:認知機能セミナーから「学びの3つのアイデア」
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「認知機能の発達と学び」というテーマで、各地で勉強会をさせていただいています。五藤の元々の専門は「学習」です。子どもの認知機能を伸ばす、学びを成り立たせるための「3つのアイデア」を紹介させていただきます。

 

1.本物性 Authenticity(オーセンティシティ)

先日、筑波大学附属小学校での「授業のユニバーサルデザイン研究会」に参加しました。そこで、小貫悟・明星大学准教授が基礎学力を以下の図式で説明されました。

「基礎学力の2つの側面」
(1) 生活関連度 = 機能的学力
(2) その後の教科学習を支える度合い 例)九九と割り算

(2)は説明不要ですが、(1)は、子どもたちが社会や生活場面で必要とされる知識や能力を身につけることが優先されるべきであり、「機能的学力」と名付けて、基礎学力として重視すべきという考えでした。

その意見には賛成しますが、生活関連度の範囲は教育をする側のイマジネーションで大きく変わることを指摘したいと思います。さらには、学ぶ内容を子どもたち自身の生活と結びつけて捉えられるようにできることも指摘しておきたいと思います。それが「本物性」という考え方です。

一つの例は分数です。自分がピザを食べたい分量を伝えるには、例えば1/4という表現が必要になります。5人がお店に行って、一人1/4ずつ食べられるようにするには何枚ピザを注文すればよいかという場面、は分数のかけ算が必要になります。

子どもたちに知識や概念を身につけてもらおうと思ったら、その子が、その知識や概念を使って活躍できる「本物」の場面を設定し、そこで、子どもがその知識や概念を、できれば実際に使ってみられるようにすることが大切になります。

 

2.内省 Reflection(リフレクション)

知識や概念は、知っただけでは使えるようになりません。実際に使ってみることで、場面ごとに使い方が違うことや、使う場合にさらに必要となる別の知識に気づくこともあります。

一つの例は、国語の「読点」です。
A「ぼくは、大きく目を開けてえさを待っているネコを探した」
B「ぼくは大きく目を開けて、えさを待っているネコを探した」

読みやすくするために打つのが読点ですが、打つ場所によって、意味が変わるということは、読点を使ってみないと分かりません。

心理学に「応答する環境」という概念があります。いろいろなことができ、することによって、異なる反応が示される環境です。「やってみると反応がある」→「反応に興味をひかれる」→「もう一度やってみる」という流れは、子どもの行動を誘発します。

内省とは、それに関連して、次の一連のループが行われることです。「やってみる」→「反応を見る」→「うまくいかなかったら、次はどう修正したらよいかを考える」→「もう一度やってみる」

読点は、会話の場合では「区切り」や「抑揚」と同じ意味になります。自閉症スペクトラムの子どものように、会話に関心が持てない、会話がうまくできない子どもたちに、それ自体が楽しい「応答する環境」を用意し「内省」を可能にすることができれば、効果があると考えています。

 

3.足場かけ Scaffolding(スキャフォールディング)

意味は、高いところにあるものをとるための「足場」をかける(おく)こと。
発達障害や知的障害の子どもたちの学びや発達を促すためにもっとも大切なアイデアです。

社会科の地図で、方位(方角)があります。地図の上側が北、右側が東というのを覚えるのは簡単ですが、例えば、神社は学校から見てどちらの方角にあるかを読み取れないと、地図を実社会の道案内に使うことができません。

ただ、相対的な方位をどう説明したらよいかを考えてみていただければ、それが大変に難しいことをお分かりいただけると思います。

五藤が以前作ったデジタル教材の例をあげれば「方位定規」というツールがあります。地図の問題を解く画面で使えるもので、つまんで、いつでも地図上の好きなところに置けます。北、北東といった8方位の矢印があり、置くと矢印が伸びて、ある場所から見て、目的とする場所がどの方角にあるのかが、矢印に付記された方位を読むことで知ることができます。

最初はこれを使って問題を解きますが、何度かそれを使っているうちに相対的な方位の見方が身についていきます。これが「足場」です。

もっと簡単な例は、一十百千万などの位が記された「位どり定規」です。日本では、4つの桁ごとに、万、億と区切りがあり、その中が一から千まで、もう一段下の区切りがあることが、これも使っているうちに身についていきます。

足場かけは、Assistive Technology で実現が可能です。声が出せない子が、絵を選んで、自分の代わりに声で意思を伝えるVOCA(ボカ)は、声を使った会話ができることの便利さをその子に知ってもらうのと同時に、場面ごとの音声表現をだんだん身につけるための、よい足場になると思います。

認知機能は、終生、発達し続けます。ましてや発達途中の子どもたちは、どんどん成長を続けます。子どもたちがいろいろなことに興味関心をもち、それができるようになりたいと意欲をもち、実際に使ってみて、できるようになるために、ぜひ、これらの3つのアイデアを活用していただければと思います。

今後の勉強会では、3月24日大阪・阿倍野区民センターのものは満員御礼になりました。3月16日四日市の勉強会は若干、17日の愛知こどもの福祉機器展ミニセミナーはまだ残席があります。臨床家の発達障害セミナーとはちょっぴり違う、五藤のお話も聞いていただければと思います。

認知機能の発達と学び@四日市の詳細はこちら>>
※終了しております
脳の発達を知る-障害のある子の学びと支援方法 第1回の詳細はこちら>>
※終了しております

(五藤博義)

 

■ グッズレポート 「入浴手順書」「耳せん」
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【入浴手順書:からだをあらおう!】

短期記憶障害だけでなく、パニックになりやすい方にもおすすめ。
からだあらおうのグッズレビューはこちら>>

【耳せん】

こちらも、効果的に利用できそうですよ。
我が家にも、締め切り前用の工事現場向け防音ヘッドホンがあります。
耳せんのグッズレビューはこちら>>

 

■ イベント:世界自閉症啓発デー2012・シンポジウム
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世界自閉症啓発デー2012・シンポジウム

・日  時:2012年4月7日(土) 10:00 ~ 16:30
・会  場:灘尾ホール (東京都千代田区霞が関3-3-2)
・定  員:500名
・テ ー マ:『私たちの育ちを信じて!愛して!』
・内  容:
(1)式典
(2)シンポジウム
・テーマ「私たちの強みと生きにくさ」
・シンポジスト:当事者、保護者、福祉分野に関わる支援者
(3)被災地からのその後の報告
・テーマ「3.11当事者と家族の現実!」
・現地報告:岩手県、宮城県、福島県、茨城県
・支援者報告:医療・教育・報道から
(4)当事者によるアート&ミュージック
・テーマ「輝く明日へ」
(5)宣言「世界自閉症啓発デー2012」

※参加の申し込みの受付は、こちら>>

 

■ あとがき
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我が家の息子も、少し前までソーシャルスキルトレーニングに通っていました。

その前は一年近く某病院で親子ぐるみでトレーニング。電車嫌いの子供を1時間以上かかる場所に連れて行くだけでも大変なのですが、こちらは息子は喜んで参加、無事終了し修了証書もいただきました。

でもソーシャルスキルトレーニングは、すぐ近くなのにある日突然「行かない」と。

いつもと違いきっぱりと「いかない」と言う息子の言動に驚きながら、余程何かあったのだろうとトレーニング先にはお断りをいれたのですが、今回「発達障害児(者)の社会生活の充実を目指して」 を読んで妙に納得してしまいました。

詳しい事は省きますが、トレーニング前から行き違いなどがあり、彼にとって、そこでの体験は成功体験にならなかったのねと。

ソーシャルスキルトレーニングは良いものではあるのですが、お子さんによっては、その前に、他のトレーニングやセラピーが必要な場合があります。順番を間違えると本人に負担がかかるだけになってしまうので、お子さんとこれから何かを始めようとしている方・ご自身のセラピーを始める方は、主治医の方や相談員と充分に相談・検討してから、是非はじめてくださいね。

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